IBM Sustainability Software

予防保全から予知保全へ | 採掘に変革をもたらす機械学習

記事をシェアする:

 

このブログ記事は、サンドビックグループのRock Drills & Technologies社の社長パトリック・マーフィー氏が書かれた『Predict to prevent: Transforming mining with machine learning』を抄訳し、日本向けにリライトしたものです。


 

鉱業界は過去数十年にわたり生産性低下に悩まされてきました。全体として、生産効率は下がり、コストは上昇し続けてきました。

もちろん鉱業会社も手をこまねいていたわけではありません。さまざまな打ち手を探し続けており、その中でもデジタライゼーションは現在最も有力な手法の一つと考えられています。

 

鉱業会社がデジタライゼーションに手をつけるのは当然とも言えます。なぜなら、地下作業で用いられる設備・機器はあらゆるところに多数のセンサーが用いられており、自由に使えるデータを大量に有しているからです。

しかしここで問題が生じます。鉱業会社にとっては、データを活用してそこから洞察を得ることというのは、ほぼ未経験のエリアのため非常に難しいのです。

 

サンドビックグループ Rock Drills & Technologies社 社長

パトリック・マーフィー氏

 

鉱業会社にとって最も重要なデータとは何に関するものでしょうか? 答えは「設備・機器」に関するデータです。採掘ビジネスは非常に資産集約的なもので、岩石の掘削、切断、破砕、選別、除去の各段階で重機が重要な役割を果たします。設備・機器の働きがビジネスの成否に直結するのです。

設備・機器が故障し計画外のメンテナンスが必要になると、生産性が下がりコストは上昇し、採掘の資本効率の重要な尺度である設備総合効率(OEE)が低下します。

 

■ 予防のための予測

鉱業会社にとって、設備・機器を稼働させ続けることは非常に重要です。

私たちサンドビックグループRock Drills & Technologies社は、世界中の鉱業会社にサービスを提供する企業として、定期的なメンテナンスを最適化することで計画外のメンテナンスを最小限に抑えようと、最前線で取り組んできました。

私たちのお客さまは、設備・機器の運用生産性の改善方法を常に探し求めています。中には、自分たちのデータを自由に用いて、設備・機器の故障発生時期を高精度かつ的確に予測する方法を見つけ出すことで、定期メンテナンスへのアプローチに変革をもたらせるのではないかと考えられているお客さまもいらっしゃいました。

 

そこで私たちはIBMと提携し、弊社の情報・プロセス管理ソリューションOptiMineを強化する戦略を取りました。そして共同開発に成功したのが、分析・予知保全アプリケーションOptiMine Analyticsです。

OptiMine Analyticsは、IBM Watson IoTとIBM Maximo Asset Managementソリューションを組み合わせて構成されたソリューションです。

コンベアベルトなどの搬送装置に取り付けられたセンサーや、トラックやホイールローダーなどの移動体に取り付けられたセンサーから無線で送られてくる大量のデータは、データレイク/リポジトリーにインデックスが作成されて保存され、IBM Cloud上で分析されます。

 

■ よりスマートな決定を制御室から

OptiMineが他のソリューションと大きく異なるのは、機械学習アルゴリズムを使用して、コンポーネントレベルで装置・機器のセンサーデータを分析することができる点です。

つまり、特定コンポーネントのメンテナンスと障害パターンに関する十分な量のデータセットがあれば、それを分析してエンジンの一部やトランスミッション、あるいはブレーキといったコンポーネント単位での故障を高確度で予測することができるのです。

アイデアはとてもシンプルですが、その効果はとても強力です。なぜなら、各コンポーネントの余寿命が予測できれば、メンテナンス間隔を最適化することができます。そして各々のメンテナンス間隔が最適化できれば、全装置・機器を通じた全体オペレーションの最適化も実現できるからです。

 

この最適化は、オペレーション業務の中枢である鉱山現場の制御室に、次のような大きな意味をもたらします。

制御室のスタッフに、OptiMineダッシュボードがリアルタイムで機器の状態を表示します。スタッフは問題に発展しそうな何らかの兆候を発見したら、潜在的な問題箇所を作業員に伝え、通常の確認や交換作業を指示します。

このようなオペレーション作業を通常業務内で行えることで、特殊な修理作業ができるスタッフを呼び出したり、装置・機器の長時間停止を余儀なくさせる故障とそれへの対応作業を行う必要がなくなります。

つまり、生産フローにほとんど影響を与えないということです。

 

■ 価値を物語るライセンス更新率

私どものIoTソリューションOptiMine Analyticsをご利用いただくことで、お客さまは先を見越したより予測的なアプローチを取ることができ、それが設備資産の連続稼働へとつながっていきます。

クラウドベースの分析スピードと能力、そしてオペレーションの透明性の高さが組み合わさり、これまでとは異なるレベルの洞察が生み出されるようになりました。制御室のスタッフは、生産効率を上げるためのアクションを、その洞察に基づいて取ることができるようになったのです。

実際に、OptiMine Analyticsをご利用いただいているお客さまは、すでに鉱山生産のダウンタイムを最大30%削減し、その結果1トン当たりの鉱石生産費用を最大50%削減されました。

 

クラウドサービスにおいて最も分かりやすい成功指標は、ライセンス更新率です。

OptiMine Analyticsのライセンス更新率を見れば、お客さまがどれだけの価値をサービスに見出しているか、そして実際に多額の利益をあげているかが明確になります。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM Maximoで資産集約型産業の運用リスクとコストを削減

 

関連記事: [事例: 掘削機大手サンドビック社] Watson IoTを用いて鉱山産業に第四次産業革命を

関連記事: 想定外のメンテナンスを一掃するMaximo Asset Monitor

関連記事: IBM Open Technology Summit 2020 「本番志向!!業界特化型 IBM IoTソリューション」レポート

 


藤 泉也  データ戦略活用アドバイザー, AI Applications

 

More IBM Sustainability Software stories

日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。   石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む


トヨタ紡織「 A-SPICE レベル3」取得活動事例 | シートシステム/車室空間開発の未来に向けて

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

「Automotive SPICE(A-SPICE)の取得を意識し、実際に検討を本格化したのは2021年です。そして昨年2023年3月にレベル2を取得し、そこから約1年半で今回のA-SPICE レベル3の取得となりました ...続きを読む


「何度でもやり直せる社会に」あいふろいでグループ代表 吉谷 愛 | PwDA+クロス9

IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

「日本は一度ドロップアウトした人にとても厳しく、いわば『敗者復活』の機会が残念ながらとても限られています。ただそんな中で、半年程度の準備期間で再チャレンジの機会を手に入れられるのが『IT』です。 私自身、ITに救われた身 ...続きを読む