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ESGの優先事項と影響要因について—経営幹部100人への調査から

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低炭素経済への準備のために、同業他社は何をしているのか?

多くの企業にとって、持続可能性の課題はすでに目標設定ではなく、いかに持続可能性を業務に統合し、 サステナビリティ・パフォーマンスの向上を推進・実現するかに移っています。

独立系調査会社であるVerdantix社は、2022年後半、米国、カナダ、英国、オーストラリアを含む地域で、金融サービス 、製造業、石油・ガス、テクノロジー、公益事業、専門サービスの5つの異なる業界セグメントで、オペレーション、不動産、持続可能性の各分野で活躍するエグゼクティブ100人へのインタビューを分析し、サステナビリティの運用化というコンセプトを掘り下げました。

 

事業全体を通じて、どのように野心的な持続可能性の目標と戦略を実施していくのか。

当記事では、サステナビリティ・プログラムに組み込まれたビジネス目標、優先的な持続可能性ユースケース、データ収集の実践、およびサステナビリティ・プログラム支援など、低炭素経済下でのビジネス展開に備え、同業他社がどのような取り組みをしているのかを理解し、先手を打ちたいエグゼクティブへの提言を、全16ページにおよぶレポートから抜粋して紹介します。

レポート『Operationalizing sustainability』全文(英語)ダウンロードはこちらから:

https://www.ibm.com/resources/sustainability/verdantix-report#form

 

Verdantixレポートから見えたのは、組織はすでにサステナビリティの取り組みに優先順位をつけ指標を用いているものの、不十分なデジタルツールや限られたデータ共有がその足を引っ張っている状態であるということだ。

それでは早速、業界を超えたさまざまなシニアレベルの経営幹部からの回答と洞察を5つのトレンドで見ていこう。

 

Verdantixレポート |サステナビリティ運用主要トレンド

トレンド1

取締役会は持続可能性に焦点を当てたビジネスの拡大を推進している

 

回答者の大多数は、事業部門に対して財務リスク・ガバナンスを改善するよう圧力をかける取締役会は、企業の持続可能性戦略を形成する上で「非常に影響力がある」と回答した。

「これは、2010年代初頭の『取締役会の議題にサステナビリティ項目を盛り込むこと』が大きな課題であった時代からの、大きな社会変化を示している」と報告書は述べている。

 

企業の取締役会は、持続可能性への投資を長期的な財務の回復力と結びつけている。

「取締役会レベルの圧力が持続可能性に大きな影響力を持つ原動力である」と答えている回答者、51%。


 

トレンド2

中核的な業務上の意思決定に影響を与えているサステナビリティ指標

 

報告書によると、サステナビリティ指標、ESG報告、データ管理は、業務上の意思決定や投資の形成に役割を果たしている。

注目すべきは、回答者の30%近くが、財務リスク評価指標と同等の方法で、すでにサステナビリティ評価指標を業務に組み込んでいると回答していることである。投資家からの圧力と持続可能性に関連する法律が、このような展望の変化を促している。

 

経営上の意思決定においてサステナビリティ指標を考慮していないとの回答はわずか9%。

持続可能性に影響を与える経営上の意思決定を行う際に、サステナビリティ評価指標を影響力のある考慮事項として見ている回答者、43%。


 

トレンド3

GHG排出量報告はサステナビリティの重点分野

 

企業は、持続可能性に関する要素の中でもとりわけ「排出量報告」「従業員の健康と福祉」「社会的影響」をトップ3とみなして優先事項にしている。

ある金融サービス会社のオペレーション部門のエグゼクティブは、「行動計画を立てるためには、さまざまなスコープを測定する必要がある。ESG市場の動向を踏まえ、現在の投資に将来性があるかどうかを評価する。」と語っていた。

 

企業は、長期的な温室効果ガス(GHG)排出量削減計画を考える前に、排出量測定データを整えなければならない。

温室効果ガス排出量に強または中程度の重点を置いていると答えた回答者、84%。


 

トレンド4

不十分なツールへの依存とサイロ化されたモニタリングがサステナビリティを阻害

 

サステナビリティ・データ取得については、多くの回答者がその価値を事業の長期的な回復力と結びつけているものの、持続可能性の問題を測定し対処するには不十分なツールに大きく依存していることが調査で分かった。

持続可能性の指標を測定するためのデジタルツールとして最も挙げられたのはマイクロソフト・エクセルであり、その数は実に95%以上だ。エクセルは基本的なデータ解釈には役立つが、より洗練されたソフトウェアツールが提供する拡張性や分析的洞察には遠く及ばない。

 

サステナビリティを運用化し、サステナビリティの洞察を意思決定プロセスに統合しようとするとき、企業は一連のハードルに遭遇している。回答者の3分の2以上が、デジタルツールの不足にとどまらず、サイロ化した意思決定とデータ収集に悩まされていると答えている。

持続可能性の運用化における最大の課題は、関連するデータを解釈し、そこから価値を生み出し運用するためのツールが不足していることと答えた回答者、70%。


 

トレンド5

持続可能性を組織に統合するために。企業は専門家の支援を求めている

 

多くの場合、企業は持続可能性に関する課題を明確にし、それに対処するための十分な社内リソースを持ち合わせていない。

回答者の3分の2が、持続可能性とクリーンエネルギー戦略を定義するための支援を求めており、持続可能性と低炭素移行戦略を定義し現状とのギャップを埋め、本当になすべきことについて新たな視点を与えてくれる第三者のコンサルティング・サービスを求めている。

また、回答者の半数以上は、自主的なサステナビリティ・レポートの提出について、支援を必要としていると答えた。

このニーズは、サステナビリティ・パフォーマンスについてのより透明性の高いデータ提供を求める投資家の声の高まりから生じている。たとえ法的に義務付けられていない場合であっても、サステナビリティ戦略を推進する経営陣は、こうした市場の要求に応えなければならない。

 

持続可能性と低炭素移行戦略を定義するためのコンサルティング・サービスを最も必要としていると答えた回答者、66%。


 


 

サステナビリティ・パフォーマンス運用に重要な4つのステップ

Verdantixレポートで明らかになったトレンドとその詳細な分析に基づき、サステナビリティ・パフォーマンス運用の実践に取り組む企業に以下のステップを推奨する。

 

ステップ1

投資を行う前に、事業に適した持続可能性戦略を確立する

サステナビリティ・パフォーマンス運用とは、デジタル・ツールを活用して、持続可能な社会の実現を促進するプロセスを指す。多くの場合、マテリアリティー (重要課題)分析・評価に従って、目標や戦略を策定する。

 

ステップ2

エネルギーおよびGHG排出量管理をサステナビリティ戦略の中で最優先事項とする

サステナビリティに取り組む企業であれば、それがどのような戦略であろうと、炭素排出量に重点を置かないものにはなり得ないだろう。事業タイプや地域に関わらず、炭素報告規制の実施は近づいており、GHG排出の源の多くはエネルギー使用に基づいている。

 

ステップ3

サステナビリティ・データ管理向上のためのデジタル・ソリューションへの投資

持続可能性を成功裏に運用したいのであれば、さまざまなデータの流れを把握し、分析する必要がある。目標に対する進捗状況を追跡し、継続的な業績改善を推進するためには、適切なデジタル・ツールを持つことが不可欠である。

 

ステップ4

意思決定の枠組みにサステナビリティを組み込む

約束や政策だけでは意思決定アプローチの転換を達成するには不十分である。企業はパフォーマンス評価と個々の目標を、持続可能性を考慮したものに調整し、労働者の目標と業績インセンティブを一致させるべきである。

 

レポート『Operationalizing sustainability』全文(英語)のダウンロードはこちらから:

https://www.ibm.com/resources/sustainability/verdantix-report#form

 


当記事は『Embedding ESG Data to Operational Decisions』を日本の読者向けに再構成したものです。

 

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