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「CASE時代のクルマづくり基盤」セッションレポート @東京モーターショー

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■ CASE時代のクルマづくり基盤

講演者: 藤巻 智彦(日本IBM Watson IoT シニア・スペシャリスト)

 

自動者業界では、ここ数年で急速に、今回のセッションのタイトルにもある「CASE(ケース)」という言葉が知られるようになりました。

今回のモーターショーに出展されている自動車メーカーや関連企業の方々の中では、おそらく聞いたことがないという方はいらっしゃらないことでしょう。

CASEとは、「Connected: つながる」「Autonomous: 自動運転」「Shared: シェアする」「Electric: 電動化」 — この4つの頭文字をつなげたものであり、自動車業界の急激な変革を表す4つの事象です。

 

そのCASEと、IBMがどう関係しているのか。本日、東京モーターショーにいらっしゃられている方々の中には、そんな風に疑問に思われている方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

「なぜIBMがモーターショーに?」と。

答えは、IBMはWatsonなどに代表される自社テクノロジーを用いて、CASE時代のクルマづくりにおいて最も重要な役割を果たすソフトウェアを提供しているからです。

IBM自身は直接的に車の開発をしていませんが、ソフトウェアとテクノロジーを通じてその開発を世界中でご支援させていただいています。

 

■ 設計と開発の現場 – 自動追従機能を例に

本日は、短い時間ではありますが、CASEを支える「デジタルエンジニアリング」について、そしてその分野においてIBMが具体的にどのように開発を支援しているかをお伝えさせていただきます。

それでは、アダプティブ・クルーズ・コントロールとも呼ばれる「自動追従機能」の開発を一つの例とし、そこでデジタルエンジニアリングがどのような働きをしているか、具体的にどのような製品が用いられているかをご覧いただきます。

 

 

どのような機能開発も「要求仕様」を必要とします。そして仕様が開発に携わるあらゆる部門や組織、関係者にとって適切で明確であることが、最終的な機能の完成度やそこに至る効率の点で重要な役割を果たします。

私たちが提供している一連のシステムにおいては、その要求のすべてを1つのデータベースに登録していただきます。こうすることで、プロジェクトの全関係者が、常に最新の要求仕様を確認できるようになり、その結果「抜け」「漏れ」「誤解」といった機能開発において大きな問題を引き起こしてしまうトラブルを大幅に減らすことができるわけです。

 

要求仕様には、さらに「お客様からの仕様」「それに対するシステムとしての仕様」「システムに対するソフトウェアの仕様」というように、段階を追ってさまざまな範囲や局面ごとにおける仕様が生まれるわけですが、それら仕様のつながりや関連性もすべて1つのデータベースで管理されていくことで、関係者の誰もが状況や関連性を一箇所で確認することができます。

 

それではここで、設計を要求仕様からさらに先へと進めていきましょう。

それぞれの要求仕様文書に対し、それを実現する設計機能はなんなのか。そうした設計機能の関連性を、実行順序などと共に表していくのがシーケンズ図と呼ばれるものです。

シーケンズ図には「ダイアグラム」と呼ばれる要素が要求仕様とリンクした形で表されていて、設計のプロセスが進む中でも、常にそれらの関連性や状況は最新の状況に保たれます。

 

また同様に、設計の先にはテストがあり、テスト手順や実施結果があり、テスト失敗の場合は原因究明やテスト条件変更…というた具合に開発プロセスが続いていきますが、それらもすべて1つのソフトウェア・システムの中に収められていくこととなります。

それら開発にまつわるあらゆる事柄が、すべて関連性を持った形で記録され可視化されます。それにより詳細な分析が可能となり、そこで発生した経験を抜け・漏れ・誤解なくすべて次期プロジェクトへとつなげていくことができます。

 

■ デジタルエンジニアリングが実現するバリューチェーン横断

上記の要求仕様定義からの製品にまつわる全プロセスをトラッキングできるように管理することを私たちはトレーサビリティー、あるいはデジタルスレッドと呼んでいて、それらを効率化する「デジタルコンティニュイティ」が非常に重要だと位置付けています。

また、こうした開発の仕組み自体も重要ですが、自動車開発の複雑さが増していく状況に合わせて、プロセスの標準化というものも同様に重要になっていきます。

 

こうした動きが、先行して特に顕著に現れてきているのが欧米の自動車業界です。

欧米では「Automotive SPICE(オートモーティブ・スパイス)」という業界標準のプロセスモデルとフレームワークが一般化しており、これが自動車関連会社が各社それぞれの強みを活かし、効率的かつ高品質なアウトプットを生み出す協業の土台となっています。

 

 

上の図は、その「Automotive SPICE」において「V字工程」と呼ばれるプロセスフローです。

ここで図の中の具体的なソフトウェア製品をいくつかピックアップし、エンジニアリング全体においてどのような働きをしているのかをお伝えします。

 

  • DOORS Next – 製品の開発ライフサイクル全体の収集・管理システム
  • Requirements Quality Assistant – AIを活用した要件/要求定義仕様支援ツール
  • Rhapsody / Model Manager – モデル駆動型と呼ばれるより迅速な設計手法を支援する設計・開発ツール
  • Workflow Management – Automotive SPICEのようなプロセスを定義し、コントールする管理ツール
  • Lifecycle Integration Adopter – ソフトウェアとハードウェア、それぞれの変更箇所や状況を連携させ1つのプラットフォームに載せるためのアダプター

 

これらのソフトウェアは名前はそれぞれ別のものとなっていますが、全体として関連する1つの集合体となっていて参照しあえるようになっています。

またさらに、外部サプライヤーのシステムとも連携できるようになっているので、ソフトウェアとハードウェア、メカ・エレキ・ソフトがそれぞれ全体の中で与え合う影響を把握、分析できるわけです。

 

本日はCASE時代における車づくりについて駆け足でお話しさせていただきましたが、11月20日午後、対象を自動車製造関連業のお客様に限定させていただき、より詳しく「開発品質・効率の向上」と「レギュレーション対応」にフォーカスしたセミナーを日本IBM本社事業所にて開催させていただきます。

自動車製造関連業のお客様に対象を絞らせていただくことで、より多くの時間を専門的な分野や事例に割いて解説させていただきますので、ご興味をお持ちの方は以下アドレスにメールにてご連絡ください。

  (件名に「自動車プロセス変革」とお書き添えください)

セミナー詳細: 【11月20日開催】CASE時代の 自動車開発プロセス変革セミナー

 


 

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