生成ビジネス・インテリジェンスとは

スタンディングデスクを使っている従業員

共同執筆者

Matthew Kosinski

Staff Editor

IBM Think

生成ビジネス・インテリジェンスとは

「生成BI」または「Gen BI」とも呼ばれる生成ビジネス・インテリジェンスは、ビジネス・インテリジェンスのプロセスに生成AIを応用するものです。生成BIツールは、パターンの特定やデータの可視化など、主要なデータ分析タスクを自動化し、効率化することができます。

ビジネス・インテリジェンス(BI)とは、ビジネスのデータを分析してビジネス上の意思決定に役立てる一連のプロセスを指します。従来のBIツールとワークフローは手作業が多く、未加工のデータを実行可能な洞察に変換するにはかなりの時間と技術的な専門知識が必要です。データサイエンスのバックグラウンドを持たない利害関係者は、しばしばBIの手法を十分に活用できないことがあります。

生成BIにより、より多くの人がビジネス分析に参加できるようになります。生成BIツールは通常、大規模言語モデル(LLM)を搭載しており、ChatGPTやMicrosoft Copilotなどの他の一般的な生成AIツールとほぼ同様に動作します。ユーザーが自然言語による指示を入力すると、ツールがそれに合わせた応答を返します。

従来のBIとは異なり、ユーザーは特別なプログラミング言語を学んだり、手動での計算を実行したり、グラフをゼロから作成したりする必要はありません。生成BIツールに、わかりやすい言葉で高度な分析を実行し、レポートを作成するよう指示することができます。

こうして、生成BIではスキルセットに関係なく、組織全体のユーザーがセルフサービスでの分析を実行できるようになります。セルフサービス分析は、組織のデータ駆動型意思決定の促進に役立ちます。

生成BIは、比較的新しいテクノロジー・カテゴリーです。調査によると、生成BIを「完全に運用化」していると報告した組織は、わずか3%でした。ただし、半数以上の組織が生成BIの検討を進めており、さまざまな段階にあると報告しています1。生成BIツールがより洗練され、より簡単に利用できるようになるにつれて、導入率は上昇すると予想されます。

生成BIと生成AIの比較

生成BIと生成AIは異なる種類のテクノロジーまたはAIモデルというわけではありません。むしろ生成BIは生成AIのユースケースとして考えることができます。具体的に言うと、生成AIソリューションを使用して組織データを収集、管理、分析し、オペレーションに役立つ情報を提供する手法が生成BIです。

生成AIとは、人工知能(AI)および機械学習(ML)モデルの一種で、ユーザーのプロンプトに応じてテキスト、画像、コードなどオリジナルのコンテンツを作成できるものを指します。生成BIは、AI アルゴリズムを応用してビジネスデータを処理および分析するためのAI分析の一種です。

生成BIの仕組み

生成BIツールは、他の生成AI搭載ツールと同じように機能します。ユーザーが自然言語プロンプトを入力すると、ツールがそれに応答してコンテンツを生成します。

たとえば、ユーザーが「昨年のベストセラー・トップ5の製品を、各製品の売上高の割合で示した円グラフを表示して」と入力するとします。生成BIツールは、対応するデータセットを分析して、上位の製品を売上の割合ごとに分類した円グラフを正確に返します。

生成BIツール

ほとんどの生成BIツールは、次の3つの形式のいずれかで提供されています。

  1. MetaのLlamaなどの汎用生成AIモデルをBIタスクに応用するもの。
     

  2. AIモデルが組み込まれたBIプラットフォーム。例えば、Amazon QuickSight Qは、LLM搭載のチャットボットAmazon Qを、Amazon Web Services(AWS)のビジネス・インテリジェンス・ツールであるQuickSightに組み込みました。
     

  3. ビジネス・インテリジェンスに特化したAIモデル。例えばIBM Project Ripassoは、大企業に関連したコンテンツでトレーニングされ、データ・ガバナンス機能が組み込まれたLLMベースのプラットフォームです。

汎用生成AIモデルでも多くのBI機能を実行できますが、多くの組織ではより専門性の高いBIツールやモデルを選択しています。これらにより、通常、組織はデータの使用方法をより詳細に制御できるようになります。

機能はツールによって異なりますが、一般的な生成BI機能には以下が含まれます。

  • 自然言語処理(NLP)生成BIツールはNLPとチャット・インターフェイスを採用しており、ユーザーは構造化クエリ言語(SQL)やその他の特殊な構文を使用することなく、プロンプトの送信、データ・セットのクエリ、計算の実行が可能です。

  • カスタムダッシュボード、レポート、ビジュアル:ほとんどの生成BIソリューションには、ユーザーが手動で構築するのではなく、必要なものを説明することでダッシュボード、データの可視化、書面のレポート、データ・ストーリーを立ち上げることができるオーサリング・ツールが備わっています。

  • 提案:多くの生成BIツールは、関連するデータセットや関連するクエリの提案、レポートの最適化に関するフィードバックの提供、その他ガイダンスの提供によって分析を充実させることができます。

  • ビジネス用語集:一部の生成BIツールは、ビジネス用語集をサポートまたは統合しています。用語集では、組織が重要な用語、概念、プロセスを定義できるため、ツールはそのビジネスに固有の文脈に基づいた応答を返すことができます。

ビジネス・インテリジェンスにおける生成AIの活用方法

生成AIはビジネス・インテリジェンスのプロセスのどの段階でも使用できますが、最も一般的にはデータの収集、分析、可視化、アクション・プランニングのサポートに使用されます。

データ・ソース、データ収集、データ分析、視覚化、アクション・プランの5つのステップを含む、BIの仕組みを示す図
ビジネス・インテリジェンスの典型的なワークフロー

データコレクター

生成BIツールは、ユーザーが分析のためにデータを検出、クリーニング、変換、集計するのを支援します。

例えばユーザーが生成BIツールに、事業単位ごとの支出に関するレポートをまとめるよう指示するとします。このツールは、事業全体の財務記録と事業単位固有の記録の両方を含む、統合されたデータ・ソース全体から関連するデータを検索して、データ・ポイントの形式を標準化し、すべてを一貫性のあるレポートにまとめます。

データ分析

生成BIツールは、膨大な量の複雑なデータを処理して、パターンの抽出、質問への回答、トレンドの特定などを行うことができます。手動計算を実行することなく、データから洞察を導き出すことができます。

たとえば、ある事業単位の支出に関するレポートを作成しているユーザーは、過去8四半期で継続的に予算を超過している部門を特定するよう、生成BIに指示することができます。ユーザーはまた、これらの部門で支出超過が考えられる理由を特定するよう、生成BIに質問することができます。

データの可視化

生成BIでは、その結果を理解しやすく共有可能なグラフィックと要約文にして、主要なメトリクスやその他の重要なデータポイントと洞察を強調することができます。

例えば、ユーザーは四半期ごとの事業単位の支出を割り当てられた予算と比較する棒グラフを生成して、計画された支出と実際の支出の差異を強調することができます。

アクション・プランニング

生成BIツールは、データ分析に基づいて組織が実行すべきステップを推奨することができます。例えば継続的な投資を正当化できるほど十分な利益を達成していないプロジェクトを特定するため、プロジェクトごとに事業単位の支出を分析することを推奨する場合が考えられます。

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生成BIのユースケース

生成BIツールを使うと、セルフサービスによる高度なデータ分析が可能になります。ユーザーは、データを扱うための特定のプログラミング言語、数式、ツールを習得する必要はありません。代わりに自然言語を使用して、クエリ、計算、レポートを生成することができます。

これまでビジネス・ユーザーは、負担の大きいBI業務の多くをデータサイエンティストやビジネスアナリストに任せてきました。生成BIはビジネス・インテリジェンスの複雑さを大幅に取り除き、ビジネス全体のユーザーが現実世界のリアルタイムデータを意思決定に活用できるようにします。例:

  • 人事(HR)ユーザーは、生成BIツールに人材の傾向分析と要員計画の推奨事項の作成を依頼できます。

  • 財務チームは、生成BIツールに指示を出して、顧客、製品、チャネルレベルごとの収益を分析し、より詳細な予測を作成することができます。

  • サプライチェーンや調達チームは、生成BIに過去の傾向を踏まえて将来の購入パターンを予測するよう指示することで、在庫を最適化できます。

  • マーケティングチームは、生成BIツールを使用して顧客フィードバックのセマンティック分析を行い、顧客体験の強化に使用できる洞察を引き出すことができます。

  • 営業チームは生成BIツールを使用して、さまざまな価格帯が顧客の支出に与える影響を分析することができます。その成果を活かして、料金体系を最適化することも可能です。

さらに、セルフサービス分析の導入によって、データサイエンティストやビジネスアナリストはより戦略的なプロジェクトに取り組むことができます。専門家は、ユーザーが自分で答えられるようになった小さな質問に答える代わりに、新しいデータツールを構築したり、独自のAIモデルをトレーニングしたりすることができます。

生成BIのメリット

生成型 BI ツールには、次のような多くのメリットがあります。

  • ビジネス・インテリジェンス・ツールの導入と活用を促進する
  • ビジネス・インテリジェンスの成果を向上させる
  • データサイエンスのスキル不足に対応する
  • より大量で複雑なデータの分析
  • BI業務のコスト削減

ビジネス・インテリジェンス・ツールの導入と活用を促進する

ある調査によると、ビジネス・インテリジェンス・ツールを使用していると報告しているユーザーはわずか25%でした。 2導入率の低さは、従来のBIプロセスの技術的な複雑さにも起因しています。

生成BIツールを使えば、データサイエンティストやアナリストを介さず、より多くのユーザーがデータを直接取り扱えるようになります。これは、より多くの人がビジネス・インテリジェンスを利用して、組織でより多くのデータ駆動型の意思決定をサポートできることを意味します。

ビジネス・インテリジェンスの成果を向上させる

ビジネス・インテリジェンスの利用を促進するだけでなく、生成BIはビジネス・インテリジェンスの成果を高めることもできます。

AI駆動型のBIツールは、人間のユーザーや従来のBIツールよりも多くのデータを速く処理できるため、しばしば他の方法では見逃されてしまうような傾向を発見できることがあります。

多くの生成BIツールは、分析の改善に役立つ質問、データ、洞察の案もユーザーに提示することができます。また、生成BIツールを使用することで、データ分析の結果をビジュアルやレポートにまとめて、簡単に共有したり利用することができます。

データサイエンスのスキル不足に対応

従来のBIではデータに関するある程度の専門知識が必要で、それは必ずしも誰もが身につけているものではありません。すべてのBIプロジェクトに十分な人員を配置するだけの、熟練したデータサイエンティストやビジネスアナリストを見つけるのは難しい場合があります。

生成BIツールはセルフサービス分析を可能にすることで、データサイエンススキルの不足がBIの取り組みに与える影響を軽減するのに役立ちます。

より大量で複雑なデータの分析

生成BIツールは、データサイエンティストやビジネス・ユーザーが手動で処理できるよりも大量のデータを処理します。

また、ビジネス・データに占める割合が増加している、ドキュメントや画像などの非構造化データも処理できます。従来のルールベースのAIアルゴリズムは、厳格な形式に従っていないデータの取り扱いを苦手としていましたが、生成AIツールにはその制限はありません。

BI業務のコスト削減

生成BIは、計算の実行やレポートの作成など、ビジネス・インテリジェンスにおいて最も時間とリソースを必要とする部分の多くを自動化することで、組織の時間とコストを節約するのに役立ちます。つまり、組織は実行可能な洞察を犠牲にすることなく、ビジネス・アナリティクスに費やす費用と労力を削減できるのです。

生成BIのリスクと課題

生成BIには多くのメリットがある一方、生成BIツールの実装には課題がないとは言えません。最も一般的な障壁としては次のものがあります。

  • 透明性と説明可能性
  • データ・セキュリティーとプライバシー
  • ハルシネーション
  • 非効率的なデータ・アーキテクチャー

透明性と説明可能性

一部の生成AIモデルはブラックボックスのように動作し、そのアウトプットの背後にあるプロセスについてはほとんど洞察を与えません。これはビジネス・インテリジェンスの取り組みにおいて問題となる場合があります。生成BIツールの結論を信用するには、データがどのように分析されたかをユーザーが理解する必要があるからです。

さらに、 EUのAI法などの一部の規制では、AIツールが人々のデータをどのように処理するかについて組織が透明性を保つことが求められています。

使用したデータや結論の導き方など、根拠を明示する生成BIツールを使用することが、組織の透明性と説明可能性の維持に役立ちます。

データ・セキュリティーとプライバシー

データ・セキュリティーデータ・プライバシーを優先することは、法的にもビジネス上も理に適ったことです。EU一般データ保護規則(GDPR)などの特定の法律では、企業によるさまざまな種類のデータの利用方法が制限されています。さらにIBMのデータ侵害のコストに関する調査 によると、組織はデータ侵害1件あたり平均488万ドルの損害を被っています

一部の生成AIモデルでは、強力なデータ・プライバシーとセキュリティーの対策が欠けています。特に懸念されるのは、モデルがデータを取り込んだ後でどのように使用するかを組織がコントロールできない場合です。

データ・セキュリティーとデータ・ガバナンスの機能が組み込まれた生成BIツールであれば、組織がデータのコントロールを維持し、不正アクセスを防止するのに役立ちます。

ハルシネーション

生成AIモデルはハルシネーションを起こす場合があります。つまり、作話による虚偽のアウトプットを生成することがああります。ハルシネーションは誤情報に基づくストラテジーや行動ステップの策定につながり、ビジネス・インテリジェンスのプロジェクトを頓挫させるおそれがあります。

組織は、ビジネス関連の高品質なデータ・セットのみを使用して生成BIツールをトレーニングすることで、ハルシネーションを軽減できます。また、LLM が事実に基づく外部の知識ソースに基づいて応答できるようにする検索拡張生成(RAG)などの他の手法も検討できます。

非効率的なデータ・アーキテクチャー

他の生成AIモデルと同様、生成BIツールも大量の高品質なデータにアクセスする必要があります。データがサイロ化され組織全体に分散している断片化されたエンタープライズ・データ・アーキテクチャでは、生成BIツールが必要なデータにアクセスできなくなる可能性があります。

統合データ・ファブリックに適切なデータ・ストレージ・システムを接続して、効果の高いデータ・アーキテクチャを整備すれば、生成BIツールが高品質のアウトプットを生成するために必要なデータを確実に取得できるようになります。

脚注

1 The Future of BI & Analytics, Slalom, March 2024.

2 Solution brief: Project Ripasso, IBM, April 2024. (PDF, 112 KB).

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