データ駆動型インサイトで新型コロナウイルス感染症に真っ向から立ち向かう
トロント地域の病院、アナリティクスを活用し医療を改善
個人防護具(PPE)のユニフォームを着た医師

ノースヨーク総合病院(NYGH)の救急外来のドアをくぐるときに、人々が望んでいるのはただ早く効果的な治療を受けたいということだけです。

医師の診察やレントゲン、その他の診断を受けるまでに待ち時間がどれくらいかということは疑問に思うかもしれませんが、病院の医療提供の成果指標やオンタリオ保健医療供給基準への対応度までは考えていないのではないでしょうか。ただありがたいことに、Business Intelligence Specialist(ビジネスインテリジェンス・スペシャリスト)のSri Vijay Bharat Peddi氏とBusiness Intelligence(BI)チームはまさにそこに対応してくれているのです。

地域病院として、NYGHは資金提供の大部分をオンタリオ州保健と長期介護省から受けています。ノーストロント地域の多様なコミュニティに奉仕する資金を確保するため、同院は州の基準を満たし、それを上回る医療サービスを提供していることを証明する必要があります。オンタリオ州では、資金調達モデルの重要な要素のひとつにQuality-Based Procedures(品質に基づいた手順、QBP)の測定があり、病院は治療した患者の種類と人数に基づいて報酬を受け取ります。QBPは、提供される医療の質に関連する、エビデンスに基づいた料金に依存しています。

NYGHは長年にわたり、 IBM Cognos Analyticsソフトウェアを使ってQBPの測定と報告に成功し、一症例あたりの費用、入院期間、患者の年齢など個別の指標に関してレポートを作成し提出してきました。しかし、同院では、関係分析ごとに新しいレポートを作成するのではなく、変数間の関係をその場で動的に視覚化できる方法を必要としていました。

2017年、同院はIBMと提携し、QBPの成果モニタリングを強力かつ柔軟に行うために、アナリティクスのインフラ改革に取り組み始めました。それ以来NYGHは、データ駆動型のインサイトを活用し、病院全体の医療品質を向上する取り組みを続けています。この取り組みの中心人物であるSri Vijay氏は、病院のデータ主導型医療の案内を粛々としかし効果的に進めています。「スタッフがデータ・インサイトを日常業務の一貫として取り扱い、インサイトに基づいて自信を持って意思決定を行えるようにしています」と彼は述べています。

300万カナダドル

 

救急外来の効率改善による新規資金は300万カナダドル

2週間

 

新型コロナダッシュボードの立ち上げに2週間

すでに整備されていたインフラのおかげで、2週間弱で新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)のポータルを立ち上げることができました。 Sri Vijay Bharat Peddi氏 Business Intelligence Specialist, Analytics and Decision Support(BIスペシャリスト、アナリティクス・意思決定支援担当) North York General Hospital

2020年に新型コロナのパンデミックが病院の玄関口に到来したとき、Sri Vijay氏は、現在の感染者数を追跡し、病院のサービスに及ぼすパンデミックの影響を測定できる、動的なリアルタイムのダッシュボードをBIチームが作成しなければならないことに気づきました。「まず、患者の数、名前や、どこから来たのかを追跡する必要がありました」と彼は言います。「必要なすべての指標が何なのかさえまだわかっていませんでしたが、市中感染は病院に大きな影響を与えるため、ほぼリアルタイムで測定する必要がありました」

コグニティブ・インサイトで病院の応答率が向上

IBMと連携した同院のコグニティブの取り組みは、2017年にデータ・ウェアハウス・プラットフォームであるPureData System for Analytics powered by Netezza® technologyの実装から始まりました。その後、NYGHはAIを活用したIBM DataStageソリューションを導入し、病院全体の15台を超える情報元システムからデータ・サーバーにリアルタイムでデータを配信しました。これらには、Cerner Corporation、RL Solutions、TeleTracking Technologies, Inc.の内部臨床・非臨床の情報元システムや、トロント市やオンタリオ州保健局のデータセット、オープンソースの地理空間データセットなどの外部情報源が含まれています。また、NYGHは、予測分析のためにIBM SPSS Modelerを導入し継続利用しています。

最終的に、NYGHはAIを活用したCognos Analyticsソフトウェアにアップグレードし、複数のサービス提供指標を網羅するリアルタイム・レポートとダッシュボードの開発に使用しています。同院はまず、これらのAIのインサイトを20種類超のQBPに適用してダッシュボードを作成し、これにより少なくとも100件のさまざまな静的レポートを差し替えることに成功しました。一つのダッシュボードですべてのQBPに関するインサイトが得られると同時に、患者レベルなど、許可された詳細とインサイトまで掘り下げて見ることができます。

Sri Vijay氏は、Cognos Analyticsソフトウェアのインタラクティブで豊富な視覚化とユーザー重視の設計のおかげで、多くの病院スタッフにすぐに活用してもらえたと評価しています。「おかげさまで、リアルタイムでインサイトを確認することができます」と彼は言います。「また、ユーザーがセルフサービスで、必要な方法でデータを細かく分析することもできるようになりました」医長や看護師長はグラフを見て、一目で何かがおかしいかがわかります」また、データをフィルタリングし、強力な患者レベルの詳細レポートを利用して、成果と結果についての深いインサイトを得ることができます。

その後、BIチームは特に救急外来に着目しました。Sri Vijay氏によれば、「患者の待ち時間や入院期間などの指標は、救急外来や入院病棟の成果としては大切なものですが、運用の観点からは、それらの指標を左右する要因が何十個もあるかもしれない」のです。同院は、治療の待ち時間が長くなった患者の未処理状況を調査しました。救急外来を画像診断を再診理由として再受診したあるケースでは、これが全体の救急外来患者の流れに連鎖的に影響を及ぼしていることが判明しました。患者の初診時に、さまざまなタイミングで画像資料が利用できるようにすることで、同院は救急外来の再診の負担を一部減らすことができ、その結果、全体的な患者の待ち時間を改善できました。

また、NYGHは、Cognos Analyticsソリューションを使って、来院患者のほとんどが集まる地域の人口健康決定要因を分析しています。「当院ではCognosソリューションのマッピング機能を使って、罹患率の拡大地域と人口動態を特定します」とSri Vijay氏は言います。「地域社会により良いサービスを行えるよう、サービスに差が発生しているかが知りたいのです」

ごく最近では2020年に、新型コロナのパンデミックが発生し、病院の患者流入への対応能力が逼迫しました。NYGHは、段階的にCognos Analyticsソリューションを適用し、検査可能数や救急外来、入院病棟やICU病床数など、さまざまなリソースに対する新型コロナウイルスの影響を分析しました。病院は、リアルタイム・レポートの作成に加え、SPSS Modeler ソフトウェアを使って、予測モデルに基づいて将来のリソースへの影響を予測しました。

「Incident Management Team(インシデント・マネジメント・チーム)のメンバーとして、新型コロナダッシュボードの情報から、ICUや急性期治療の新型コロナ入院患者数、人工呼吸患者数、新型コロナウイルス感染症アセスメント・センターで完了した検査数など重要な情報をリアルタイムで確認できるようになりました」と、NYGH Clinical Director of Mental Health Program(精神衛生プログラム臨床部長)、Sandy Marangos氏は述べています。

最終的に、NYGHでは、新型コロナに関するさまざまな指標と予測のモニタリングを行うためのサービス回復ダッシュボードを構築することができました。「これは、私たちの核であるサービスを確実に強化するという点では課題がありました」とSri Vijay氏は言います。「たとえば、新型コロナウイルス感染症患者の影響でシステムが対応不能にならないようにしながら、すべての手術で基準を満たせるようにする必要がありました」

Incident Management Team(インシデント・マネジメント・チーム)のメンバーとして、新型コロナダッシュボードの情報から、ICUや急性期治療の新型コロナ入院患者数、人工呼吸患者数、新型コロナウイルス感染症アセスメント・センターで完了した検査数など重要な情報をリアルタイムで確認できるようになりました。 Sandy Marangos氏 Clinical Director of Mental Health Program(精神衛生プログラム臨床部長) North York General Hospital
現在のサービスを改善し、将来に備える

数年前、NYGHは、IBMの高度な分析ツールの助けを借りて、データ駆動型の医療を導入する戦略に乗り出しました。現在、同院はCognos Analyticsソフトウェアを使い、院全体の主要な成果指標を定量化し評価することで、成果を測定するだけでなく改善しています。

Cognos Analyticsダッシュボードを使って救急外来の成果を追跡し始めたとき、同院はサービスのボトルネックを発見しました。新しい人員配置戦略によりこれらの問題に正面から取り組んだことで、NYGHはサービス効率を上げ、KPIを劇的に改善しました。その結果、年間300万カナダドルの政府資金が追加提供されました。トロント広域圏じゅうにわたり高い評価を受けている救急外来ダッシュボードのソリューションは、現在、他のさまざまな病院組織でも利用され利益をもたらしています。

同院では、医療経路とそれに関連する費用と資金を把握し、より低コストでサービス提供をより良くできる方法を見つけることで、QBPの改善を続けています。同院では、人口健康ダッシュボードのデータを分析することで、協力的な地域医療チームを作り、周辺地域の人口動態的な医療問題に対応できるようになりました。目標は、患者が入院を必要とする前に、病気の予防と一次治療および予防治療を向上させることです。

新型コロナのパンデミックに積極的に対応する時期が来たとき、NYGHは当然ながら、愛用していた分析ツールに目を向けました。「すでに整備されていたインフラのおかげで、2週間弱で新型コロナポータルを立ち上げることができました」とSri Vijay氏は述べています。「これは私たちにとって大きな勝利でした」

 

リアルタイム・ダッシュボードを使って、同院は入院とICU入院の傾向と病院全体のさまざまなリソースを追跡できるようになり、市中感染の新たな増加にすばやく対応できるようになります。「これは、病院スタッフ全員が一目で確認できるコマンドセンターのダッシュボードです」と、Sri Vijay氏は言います。「約5,000名のスタッフがダッシュボードにアクセスして、現在の指標と最新情報を確認することができます」

パンデミックが始まった当初、新型コロナ患者の流入の可能性に対応するために、多くの手術や処置がキャンセルされました。時間が経つにつれ、同院は、新型コロナの対応数が急増する恐れがあることを予定に組み込みつつ、手術の滞りを避けるためのサービス回復の取り組みに、IBM SPSS Modelerなどの分析ツールを使っています。

 

「私は新型コロナのダッシュボードを毎日利用して、院内の総患者数と、医療プログラム内や重症管理室内の対応可能数への影響を確認しています」と、ノースヨーク総合病院Director, Medical Program(医療プログラム部長)のWendy Cheung氏は述べています。「患者数、対応可能数、重症度に関してジャストインタイムのデータが表示されます。このダッシュボードでは、オンタリオ州の中央地域保健統合ネットワーク(CLHIN)内や他の組織の対応可能数と重症度を比較するためのインサイトが表示されます」

「当院ではCognos Analyticsツールの新しい使用例を継続して構築していくため、人々がより良い医療を受け、さらには命を救えるよう支援するという点で、病院に対して多くの経済的な価値を継続的にもたらしていると言えます」とSri Vijay氏は結論づけています。

新型コロナのダッシュボードを毎日利用して、院内の総患者数と、医療プログラム内や重症管理室内の対応可能数への影響を確認しています。患者数、対応可能数、重症度に関してジャストインタイムのデータが表示されます。 Wendy Cheung氏 Director, Medical Program(医療プログラム部長) 総合病院
ノースヨーク総合病院のロゴ
ノースヨーク総合病院について

ノースヨーク総合病院(NYGH)(ibm.com外部へのリンク)は、カナダ有数の地域の大学病院として、患者とその家族にきめこまやかな医療を届けています。1968年以来、NYGHはノーストロント内外の約40万人からなる多様なコミュニティに誇りを持ち奉仕してきました。5,000名超のスタッフ、医師、ボランティアが、急性期治療、外来長期治療の幅広いサービスを行っています。

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Sri Vijay氏はBIを活用して、新型コロナウイルス感染症のさなかでも高品質の医療を提供しています Nukissiorfiit社:インテリジェント・アナリティクスを使って、グリーンランドの資源利用を環境に優しく無駄のないものにできます Mohegan Sun社:エクセレンスを実現 - モダナイゼーションされた世界が登場
脚注

© Copyright IBM Corporation 2021. IBM Corporation, IBM Analytics, New Orchard Road, Armonk, NY 10504

2021年3月、米国で作成。

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記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本資料の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。