第四章

ここまでの章で、RPAが最大の利益を実現できるようなケースや方法を示しながら、プロセス・マイニングを活用してRPAの価値を最大限に引き出すための方法をご説明してきました。

では、その価値とは具体的には何でしょうか。

まずは、RPAをスタンドアロン・ソリューションとして使用した際のメリットをまとめると、その価値が分かりやすくなります。データ入力やファイル名のバッチ変更など、反復的で日常的なタスクをRPAで自動化すると、このようなメリットがあります。

  • 価値を迅速に実現:ボットはロー・コードのRPAツールで簡単に素早く作成できるため、RPAのメリットはわずか数日から数時間で得られます。
  • 人的エラーをなくす:ボットは割り当てられたタスクを毎回正しく実行するため、コピー・アンド・ペーストやデータ入力に関わる作業での人的エラーがなくなります。
  • 生産性の向上:インテリジェント・ボットは労働集約型タスクを人間よりもはるかに高速に処理し、24時間365日パフォーマンスが低下することはありません。
  • 従業員の積極性の向上:AIによる自動化により従業員は日常的なタスクからから解放され、より価値が高く、やりがいのある仕事に集中的に取り組めるようになります。
  • 労働力不足の解消:従来は人手に頼っていたタスクをボットに代行させることができるため、慢性的に労働力が不足している今日こそ事業継続のお役に立ちます。

RPAとプロセス・マイニングを併用すれば、こうしたメリットは飛躍的に増加します。それでは、この2つのソリューションの併用で実現するメリットを見ていきましょう。

RPAを企業全体に浸透

プロセス・マイニングは企業全体からRPAの適用候補となるタスクを特定できるため、企業の戦略的な可能性を大幅に向上させます。

最大限のタスクを自動化

タスク・マイニング(プロセス・マイニングの中核的な要素)は、RPAで自動化できるすべてのタスクを、個々の従業員や部門に限らず、すべて見つけ出すことができます。

適切なタスクを確実に自動化

企業全体のプロセスの全体像が見えていないと、不適切な箇所を自動化してしまいがちです。プロセス・マイニングは、自動化で最もメリットを得られるタスクを識別します。

タスクを適切な方法で確実に自動化

プロセスの一部だけを場当たり的に自動化してしまうと、様々な場所に悪影響が起きることが少なくありません。プロセス・マイニングではプロセスの全体像を把握するため、最も効果的な方法でタスクを確実に自動化します。

RPAボットの構築を高速化

プロセス・マイニングをRPAに統合すると、プロセス・マイニング・ツールからボットを自動的に生成できるため、さらに時間を節約できます。

RPAを使用して継続的に最適化

大抵の場合、RPAは最も容易に解決できる問題にだけ使用されて、その後は忘れ去られてしまいます。プロセス・マイニングは他にも自動化に適した箇所がないかを継続的に探索することで、RPAに対する投資の価値を長期的に可能な限り高めていきます。

RPA障害の予測と防止

プロセス・マイニングは企業のプロセスに変更が加えられても継続的にモニターするため、その変更内容が現在自動化されている箇所に支障をきたすリスクがないかを予測できます。これにより企業は自動化に支障化をきたさぬよう事前に修正を加えることが可能となり、プロセス障害に起因するコンプライアンス違反などのリスクを回避できます。

センター・オブ・エクセレンスの構築

プロセス・マイニングとRPAは、共に堅固な技術的基盤を構築することによって、継続的な最適化と自動化を実現します。この基盤を基に専門的なセンター・オブ・エクセレンスの基礎を形成することで、プロセス・マイニングとRPAの価値を企業全体で確実に活用できるようになります。

プロセス・マイニングとRPAを併用して実質的な価値を引き出してきた企業の例:

Max Mara Fashion Group

Max Mara Fashion Group社のROI主導プロセスの改善

グローバルな高級ファッショングループであるMax Mara社は、特に季節的に販売が急増する時に、調達から支払までのサイクルに悪影響を及ぼしていたフルフィルメント・プロセスでボトルネックを経験していました。同社はこのようなボトルネックをより詳細なレベルで理解することを望んでいたため、問題の所在を特定するだけではなく、どのような修正が最も高いROIを生み出すかを理解する必要がありました。

Max Mara社は、実装の柔軟性ときめ細かいプロセス・モデリング機能を組み合わせたプロセス・ディスカバリー・ツールを求めていたのです。そして同社が評価したツールの中で、データ駆動型のプロセスを最も包括的に最適化する基盤としてIBM Process Miningが候補に挙がりました。同社はIBM Process Miningで注文から入金までのプロセスを可視化し、最適化の機会を特定しました。

今日ではIBM Process Miningは同社のビジネス全体にわたる複雑なプロセスを分析し、プロセスの変化と自動化によるROIをモデル化して理解するために使用されています。一例を挙げると、IBM Process Miningが実現した自動化1件だけで、Max Mara社は顧客サービスの解決時間を90%削減し、問題解決ごとの平均コストは46%も削減されました。

全文を読む購入体験をより良いものにするために注文から入金までを再設計

Credito Emiliano S.p.A

Credito Emiliano S.p.Aでは数百万ドルを節約

イタリアの地方銀行Credito Emiliano (Credem)は、顧客体験と従業員体験の両方を最適化することを目的に2013年にデジタル変革のジャーニーを開始しました。

当初は個々の部門が同行の小規模なプロセスやプロセスの一部を自動化していましたが、同行はより包括的なアプローチを取ることでさらに価値を引き出せることを確信していました。同行は、バックオフィス・プロセスや重要な顧客サービス関連プロセスを含めた行内のあらゆるプロセスを分析して自動化するために、IBM Process MiningIBM RPAを実装することを選択しました。

ある事例では、同行はクレジット・カードの審査や承認プロセスの一部を自動化する機会を特定し、承認時間を4日から1日に短縮し、年間約50万ユーロ(約521,000米ドル)を節約しました。また別の事例では、従業員による融資申請プロセスの時間を70%短縮することができました。同行はこれまでに91件の自動化を実現し、運用コストとサービス・コストで数百万ドルの節約につながりました。

全文を読む顧客体験と従業員体験を変革

多国籍企業の製造メーカー

大規模な多国籍企業の製造メーカーで注文から入金までを合理化

大手の多国籍企業製造メーカー(MMC)ともなれば、そのビジネスは複雑でかなりの広範囲に渡るため、物流で発生する遅延の根本原因の解明には困難を伴います。MMCの物流管理マネージャーはこうした遅延を最小限に抑えるよう何度も努力しましたが、取得できる情報が不完全で統一が取れていなかったため、是正措置が適切に機能しませんでした。

MMCはPoC(概念検証)を検討した結果、IBM Process Miningを実装して同社のデジタルツインを作成し、社内での問題を明らかにしました。同社はプロセス・マイニングをRPAと併用することにより、これまでに数十万ドルを節約し、リード・タイムも数日間短縮できました。現在同社では、注文から入金までのプロセス全体にわたるボトルネックと非効率性の解決に取り組んでいます。

全文を読む:AIがもたらすメリット - ワークフローの簡素化と最適化の方法

第五章

今日から自動化への変革を踏み出す