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Think 2019で開催:IBMのAIシステムと人間のディベート・チャンピオンによるライブ・ディベート

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古代ギリシャ時代から、優れた公開ディベートは私たちの想像力を刺激してきました。サンフランシスコで行われるIBM Think 2019で、この知的な伝統に新たな命が吹き込まれます。このThink 2019において、IBM ResearchIntelligence Squared U.S. が、2月11日(月)に人間とAIの公開ライブ・ディベートを主催します。

その中心となるのは複雑なトピックに関して人間と議論することができる初のAIシステム、IBM Project Debaterです。効果的に議論を進めるために、このシステムは関連する事実と意見を収集し、論拠の構造を組み立て、明確かつ説得力のある方法で正確な言語を使用します。

Project Debater初の公開ライブ・ディベートは、少数の観客の前で昨年6月に実施されました。今回のThink 2019において、Project Debaterは、会場にいる多数の観客だけでなく、ライブ・ストリーム(日本時間 2月12日午前10時 こちらでご覧ください)を通じて視聴するさらに多くの観客の前で、ディベートのチャンピオンと対決します。

Harish Natarajan, Project Debater’s opponent at Think 2019, is 2016 World Debating Championships Grand Finalist and 2012 European Debate Champion. Harish holds the world record for most debate competition victories.

Project Debaterの相手は、2016年世界ディベート・チャンピオンシップ(World Debating Championships)の決勝進出者であり、2012年欧州ディベート・チャンピオン(European Debate Champion)のハリシュ・ナタラジャン(Harish Natarajan)です。両者はディベートの準備のために15分のみを与えられ、その間に、所定の論題に賛成および反対する議論の準備をします。次に、両者は4分間の立論と4分間の反駁を行い、2分間で要旨を示します。サンフランシスコ湾岸地帯の学校からディベート能力の高い学生と、100人を超えるジャーナリストが出席するこの公開対決が盛り上がることは確実です。

ハリシュ・ナタラジャンはProject Debaterがこれまで対決してきた中で最も能力が高いため、テクノロジーの限界が試されることが想定されます。しかし、このような挑戦に対してAIを準備する難しさは、すべての観客に十分に伝わっていないかもしれません。以下にディベートに組み込まれる機能の詳細を示します。

  • Project Debaterの知識ベースは、新聞と雑誌から収集された約100億の文から構成されています。
  • ライブ・ディベートでは、Project Debaterは、論題を説明する非常に短い文を与えられ、前もって学習したことのないトピックについて議論します。最初のステップでは、論題に賛成または反対する立論を作成します。Project Debaterは、この目的のために役立つ可能性があるテキストの断片を大規模なコーパスから検索します。これには人間の言語とその繊細なニュアンスを深く理解し、賛成と反対の立場を非常に正確に特定することが必要です。これは、人間にとってすらも必ずしも簡単ではなく、コンピューターにとっては非常に困難な処理です。
  • このプロセスによって、数百の関連するテキスト断片を生成することができます。効果的にディベートを進めるために、このシステムは、その意見をサポートする最も強力で多様な論拠を構築する必要があります。Project Debaterは、重複する論拠のテキストを排除し、残りから特に強力な主張と論拠を選択し、テーマごとにこれらを配置し、論題に賛成または反対するための論述のベースを作成することによって、これを実現します。
  • また、ディベートの論題が呼び起こす人間にとっての難問(政府が個人の選択の自由を侵害しても国民に行為を強制することが正しいのはどのような場合か、など)をサポートする論拠を見いだすことができるように、ナレッジグラフも使用します。
  • Project Debaterは、選択したすべての論拠の断片を組み合わせて約4分間続く説得力のあるスピーチを作成します。このプロセスは数分で完了し、立論を発表する準備が整います。
  • 次のステップでは、相手の反応に耳を傾け、理解し、反駁を構築します。適切な反駁をすることは、人間とマシンの両方にとってディベートの最も困難な部分です。Project Debaterは、相手の論拠を予測・特定する技法を含む多くの技法を適用します。次に、この論拠に対抗する主張と証拠で反駁することを目指します。

上記の機能はプロジェクト期間を通じて開発され、IBM Researchのチームは研究結果を文書化して共有するために、30を超える論文を発表してきました。

ディベートの形式に従ってProject Debaterの機能は形成されましたが、私たちは、ディベートを超えるテクノロジーの未来を構想しています。例えば、Project Debaterを使用して、オンライン意見交換フォーラムで人々の議論を促進することができるようになることでしょう。裁判の準備をしている弁護士は、判例を調査し、模擬裁判での議論を用いて判例の強みと弱みを検証するためにProject Debaterを利用できるかもしれません。金融サービス業界において、Project Debaterは投資戦略を支持または批判する財務上の事実を特定するでしょう。または、多様かつ複雑なカスタマー・エクスペリエンスを実現する音声対話レイヤーとして応用したり、さらには若い人の批判的思考と批判的ライティング・スキルを高めるために応用したりすることもできるでしょう。

ディベートとはつまり人間の言語です。人間の言語を習得することは、AIの非常に野心的な目標の1つです。Project Debaterにより、私たちはこの目標に一歩近づきました。全体的な構想の中でProject Debaterは、人間の知性を拡張するために、さまざまな分野を横断的に学習するBroad AI (広範なAI)を開発するというIBM Researchのミッションを反映しています。Project Debaterはある1つのシンプルな目標を追求するために、大量の情報と観点を収集しています。すなわち、より良く、より確かな情報に基づいた意思決定を下すために人間を支援するという目標です。古代ギリシャ人は、Project Debaterを誇りに思うことでしょう。

2月11日(月)午後5時~6時(太平洋標準時、日本時間2月12日午前10時)にProject Debaterライブを視聴するには、ここをクリックしてください。この時間に、ライブ・ディベート全体を視聴し、テクノロジーを支える研究員のコメントを聞くことができます。エミー賞を4回受賞し、Intelligence Squared U.S.ディベート・シリーズのホストであるジョン・ドンヴァン(John Donvan)氏が、セッションの司会を務めます。

※この記事は米国時間2019年2月8日に掲載したブログ(英語)の抄訳です。

ラニット・アハロノブ(Ranit Aharonov)
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ノーム・スロニム(Noam Slonim)
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