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スターツ出版 事例発表:新しい市場の可能性を探るFGIの効果と勘所とは

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20~30代の女性のこれから起こる「変化」に目を向ける

丸の内アナリティクス@天城は2日目に入り、事例紹介の3社目には出版社 マーケティングのA氏が登壇しました。

女性誌、ケータイ小説を中心とする書籍物、地域密着型コミュニティー誌などを発行しているこの出版社は、マーケティング強化の一環としてECサイトの成長戦略に関する調査や研究にも取り組んでいます。

今回、A氏が発表したのは、そこでの重要テーマの1つに位置付けている「女性がどのように人生設計を行っているか」を深掘りするための調査・分析です。女性には結婚や出産など人生の多くのターニング・ポイントがあり、そのまま仕事を継続する人がいれば、専業主婦になる人もいます。そういった女性をどうすれば上手くセグメントできるかというのが、この取り組みの出発点でした。

「20~30代の女性のこれから起こる『変化』に目を向けることで、新しい市場の可能性を探りたいと考えました」とA氏は話します。

いかなる仮説を立てられるかがFGIのメインテーマ

セグメンテーションを考察するにあたり、同社はまず女性の5大関心事とされている「結婚」「仕事」「お金」「健康」「コミュニケーション」に「海外」を加えた6つの要素に注視。その上で「仕事」に関する積極性に基づいた「バリキャリ」「ワークライフバランス重視」「退職志向」、結婚・恋愛観に基づいた「個人志向」「家庭的」という2つの軸から女性の志向を分類し、さらに「海外」(旅行、渡航)に対する積極性を加味することで、計10タイプのセグメンテーション案を策定するに至りました。

これらのセグメントに対してFGI(Focus Group Interview)を実施するというのが、同社の調査・分析のアプローチです。もっとも全セグメントのユーザーを集めてインタビューを行うことは時間的制約、予算的制約などから困難です。

そこで今回は、「ワークライフバランス重視」かつ「家庭的」に該当するセグメントを中心にFGIを実施することにしました。「ある程度の規模があり、なおかつ女性向けECサイトと最も相性が良いと想定される市場であることから、このセグメントを重点的に調査するのが合理的と判断しました」とA氏は話します。

では、FGIを通じて同社は具体的にどんなことを「知りたい」と考えたのでしょうか。

「結婚、育児、仕事、海外のそれぞれについて、『どのような選択が迫られたのか』『その場面で心の支えになったものは何か』『それとはどうやって出会ったのか』『選択を行動に移したきっかけは何か』『行動の結果として解決したこと、あるいは後悔していることは何か』といった節目となるシーンに対して、いかなる仮説を立てられるかが今回のFGIのメインテーマです」とA氏は話します。

こうして実際にFGIを実施した結果から得られたのが、「ユーザーの環境変化(転職、転居、婚約、結婚など)に対応できなかった場合、ユーザーがそのECサイトから卒業(離脱)してしまう原因となる」という仮説です。

そして現在、同社はこの仮説をさまざまな社会生活統計やWebサイトのアクセス・ログなどのデータから、詳細な検証を行っている過程にあります。

FGIから得られる“気づき”は背景にあるシーンを想像する宝の山となる

質疑応答に入り、オイシックス株式会社の米島 和広氏からも「どのセグメント(年代)に寄り添うのかを最初から意識しておくことは、ECサイトにとって非常に重要」という意見が寄せられました。有機・無添加食品の宅配サイト「オイシックス」で最も需要が多いのは、子どもが生まれて間もない若い世代の家庭であり、「無理にすべてのライフステージをカバーしようとすると社内のリソースが分散され、担当者のモチベーションも下がってしまいます」と米島氏は強調しました。

A氏も、「ECサイトはどうしてもより多くのセグメントで売上を伸ばしたいと走りがちですが、注力すべきセグメントとそうでないセグメントがあることを、データで明確に示していくことも分析者の使命と言えそうです」と共感を示しました。

株式会社ベネッセコーポレーションの三浦 祐二氏から寄せられたのは、FGIを実施するタイミングに関する質問です。

「弊社の『進研ゼミ』のような通信教育サービスでは、学年によって大きく違った特性があらわれる場合があります。ちょっとした年代の違いで志向が大きく揺れる、変化するといったタイミングがあるため、FGIを実施するにしてもどういったサイクルで繰り返すべきかが悩みどころです」

これに対してA氏は、「サービス内容や予算によってFGIを行うべきタイミングやサイクルはさまざまだと思いますが、私たちのケースで言えば週1回から隔週のペースでインタビューを実施しました。タイミングもさることながら、その場でどこまで“根掘り葉掘り”聞き出せるかも大切ではないでしょうか」と答えました。

そして株式会社パルコの林 直孝氏からも、次のような感想が寄せられました。

「パルコのような店舗でもテナントのスタッフの接客力を上げるためには、お客様との会話を通じて『なぜその商品を求めているのか』の背後にあるシーンを想像する力がとても大切になります。購買履歴データを追いかけるだけでは読み取れないことがたくさんあり、その前後のプロセスや“行間”を埋めるうえで、FGIから得られる“気づき”はまさに宝の山なのだと実感することができました」

 

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