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ロボットが絵画する日 〜③ アート/SXSW編〜

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第1回の概要+ロボティックス編、第2回のAI編に続き、第3回のアート/SXSW編をお届けします。

ロボットアートは先日、SXSWというアメリカのイベントに参加し、それを機にForbsなどのメディアにも取り上げていただけました。今回はSXSWの参加経緯とアートの側面からプロジェクトを紹介いたします。

 

# SXSWとは

SXSW(South by Southwest:サウス・バイ・サウスウエスト)は、アメリカテキサス州オースティンで開催される世界最大級のカルチャー&テクノロジーの祭典です。名前の由来はヒッチコック監督の映画「North by Northwest」をもじったものだそうです。1987年に音楽祭として始まり、現在はカンファレンスや、音楽祭、映画上演、ゲームショー、展示会など、様々なイベントやブースを通して次時代のイノベーティブな情報を発信したり、様々な業界の人達がネットワーキングしたりする場になっています。今や超メジャーなSNSであるTwitterは2007年にSXSWでウェブアワード大賞を受賞したことがきっかけになり広まりました。2019年には106カ国、合計約417,400人が参加したと報告されています。このように、大規模でかつテクノロジーとアートの色合いをもったSXSWは、ロボットアート・プロジェクトにとって魅力的な場でした。

 

# テキサスへの道

しかし出展に向けて二つの課題がそこにはありました。一つ目は、どうすればSXSWに出展できるのか、です。出展にはそれなりの費用が必要です。予算のアイデアがない中、1月の中旬にアートディレクターの潘さんから一通のメッセージが届きました。Todai To Texas (TTT)というSXSWへの派遣を支援するプロジェクトがあり、選考はあるものの応募してみないか、という内容でした。応募締切は1週間後でした。もともとTTTはスタートアップの支援が主旨であり、応募の際に「なぜSXSWか」「なぜあなた達であるのか」「大きなゴールは何か」というような鋭い質問項目が多く、準備に時間が掛かります。限られた時間の中、期限ギリギリに書類を形にできたのはひとえ潘さんのおかげです。書類審査は無事に通過し、10日後に控える英語によるプレゼン審査に向けた準備する日々が始まりました。Winners発表でチームの名前が最初に呼ばれたことはとてもうれしかったことを覚えています。こうしてSXSWへの出展が決まりました。

 

# 創造する主体

もう一つの課題は、アート面でどのようなコンセプトを打ち出すのか、です。アートのプロジェクトである以上、その文脈を踏まえた上で新規性を提示する必要があります。AIを活用して絵を描く事例は既に存在します。そこで、何を目指すべきか、アートディレクターの潘さんとの夜遅くまでのディスカッションが何日も続きました。最終的に到達したのが「創造する主体」というコンセプトです。既存のAI/ロボットによる描画はすでにある入力画像やデータセットを変換したものが多く、ロボットが自発的に描いているとは言えないものです。その壁を超えるアプローチの一つが、入力されたテーマからAI側が最適だとする調色や配色、ストロークの形や軌道を選び絵を生成する、という方向性です。図にある作品は、入力したテーマに対してAIが最適だと見なし生成したストロークの集合で構成された絵です。もちろん、入力するテーマを人間側で決めているため真に自発的とは言えないが、今後はロボットが独立したアーティストとして、自由に作品のテーマを設定し表現手法を探求していくのが目標です。人の価値観から離れ、ロボット自身が作品や作風を構築できるようになると、これまでにない表現体系が生まれ面白いに違いありません。

図 単独テーマからAIが生成した出力と、複合テーマからの出力

図 単独テーマからAIが生成した出力と、複合テーマからの出力

 

# SXSW本番

コンセプトを整えながらSXSWに向けて準備しました。今年のSXSWはコロナの影響を受け、初のオンライン開催でした。そのため、ネットでの宣伝やウェブコンテンツの充実が大事になります。TTT事務局の下川さんはじめみなさんから様々なサポートをいただきました。宣伝の部分についてはTTT事務局を通して海外の広告代理店にプレスリリースを作成いただき、コンテンツについてはプロモーション動画を本郷製作局の城さんが情熱をかけて作ってくださいました。SXSWの期間中には「AI Painting Project」という名前でオンライン・ブースを設け、海外のアーティストと夜な夜なウェブ会議したり、ライブ・プレゼンをしたり貴重な経験ができました。5日間の会期に900人以上の方がオンライン・ブースに訪れ、無事に展示を終えることが出来ました。
今回はロボットアート・プロジェクトにとって初の本格的な外部露出であり、SXSWがトリガーになり、Forbsはじめ、Engadget、The liberty Timesなど25以上のメディアで取り上げていただくことができました。言語も英語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、アラビア語、中国語、ロシア語と多岐に渡り、すごくありがたい出来事でした。

 
SXSWに向けて製作いただいたプロモーション動画

 

図 SXSWにおけるロボットアートのオンライン・ブース

図 SXSWにおけるロボットアートのオンライン・ブース

 

# ロボットアートの今後

SXSWの参加を経たことで、こうして3回に渡る連載をお届けすることができました。いかがでしたでしょうか。ロボットアート・プロジェクトはまだ継続で今後どんどん進化して行く予定です。折に触れてアップデートしてまいりたく思いますので、ぜひ動向を楽しみにしてください。

 

<執筆者>

日本IBM 頼 伊汝

 

頼 伊汝 / Yiru Lai
日本IBM Technology

 

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