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セッションレポート – ウェアラブルの伝道師による「産業用ウェアラブルデバイスの動向と将来」

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「私は18年間ウェアラブル生活を続けています。その間、何度か”これはいよいよ大ブレイクが来るぞ!”と感じたのですが、なぜか不発で本格化しなかったんですね。でも、今年から来年にかけては、これはついに来るんじゃないかという大きな波を感じています。」
— そんな言葉で幕を開けたのが、「ウェアラブルの伝道師」こと神戸大学大学院工学研究科教授の塚本昌彦教授のセッション「産業用ウェアラブルデバイスの動向と将来」です。

今回は5月22日にIBM箱崎本社事業所で開催された「AIとIoTによる安全管理・健康管理セミナー」から、塚本教授のセッションをレポートいたします。

 

 

■ ウェアラブルコンピューティングの定義と現況

「ウェアラブルコンピューティングの定義は幅広く一概には言えないところもあるが、私は”装着した状態で実生活の活動を行えること。そしてコンピュータを用いていること”がポイントだと考えています。
その観点で見ると、VRだとか農業や介護支援に用いられるパワーアシストスーツは少し違うもので、異なる分野に属しているものだと思っています。

また、ウェアラブルは実は歴史も古く、もう50年近く前から取り組みは続いているんです。
現在の主流はスマートウォッチと呼ばれる腕時計型のもので、先ほどの定義に当てはめて言えば、現在世の中に出回っているウェアラブル端末6,000万台のうち、70%が時計型。さらにその中の2,000万台がApple Watchです。圧倒的大人気ですね。」

 

ウェアラブルコンピューティングの定義と現況をこのように説明した後、塚本教授は自身が装着している端末について解説した。

「ここ数年は眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が注目されています。私が18年装着し続けているのもこのタイプですね。
HMDにも色々あるのですが、私の頭についているこれは”単眼、大型、シースルー”タイプで、情報は片目にだけ表示されるんです。

分かりやすいところでは、アニメ『名探偵コナン』の”コナンのめがね”とか、『ドラゴンボール』の相手の戦闘力を測定する”スカウター”のようなものですね。」

 

■ ウェアラブルのビジネス分野における国内外の動向

「2020年の東京オリパラ、2025年の大阪万博を踏まえて、日本では産業界でもHMDやスマートウォッチが成長を続けています。特に顕著な産業分野が「ヘルスケア」「スポーツ」「観光」「建築」などです。

そしてここ1〜2年で急速に注目を集めているのが「着る」タイプのウェアラブル。海外ではネクタイや下着、シューズやペンダントなど種類も豊富なのですが、日本では何と言ってもミツフジ社の肌着タイプのものが急進しています。」

 

続いて欧米と日本との違いと、それが日本のビジネスにもたらす重要な影響について、塚本教授は語った。

「欧米では、さまざなウェアラブル端末がクラウドファンディングで資本を集め続々と世に出てくるサイクルが確立しています。ただ日本はそうした状況になく、新しいアイデアを持ったものが少なく、残念な状況と言わざるを得ない。比較すると5年は遅れを取っています。

この遅れはビジネス価値の観点で非常に大きい。と言うのも、産業用ウェアラブルは、まだ課題が多いとは言え先行者メリットが大変大きな分野だからです。」

 

「現在、省庁や市町村は職場に安心・安全をもたらすための取り組みに力を入れていて、事業者公募や入札も少なくありません。ここで大きくものを言うのは”口先だけではない実績”で、これまでに実際に取り組みを実施しているか、継続しているかが問われるのです。」

 

■ 産業用ウェアラブルの課題とこれから

「産業分野で特に注目されているのが、建築・建設現場における安全管理や業務管理。毎年のように悪化を続ける酷暑の中で、国をはじめとした行政は熱中症予防や対策への必要性を強く感じています。

技術的に難しい点が残ってはいるものの、ウェアラブルによるヘルスケア関連は進歩を続けており、脈拍、脈波、不整脈の検出や精神状態などを測るものも増えていくでしょう。そして医療機器認可を得るものも近いうちに続々と出てくるのではないかと思っています。」

 

一方で、産業界の期待と現実のギャップやそれが生まれる理由を、塚本教授はこう説明した。

「数年前からとりわけ大型の建築現場では期待が高まっているものの、実際にはなかなか導入が進んでいないのが現状です。二次受け孫受けなどの日本の建築業界特有の事情などからゼネコン本体と現場の関係性が遠いこともあり、作業員への指示や教育が徹底しづらいなどの理由で思うように浸透していません。

また、これは建築現場に限りませんが、”トイレの回数まで監視する気か!”という声に代表される労使関係の問題などから、なかなか導入が本格化しないなんて話も耳にしますね。」

 

 

最後に、塚本教授は今後IoTを導入する上で、何が難しく何が導入しやすいのか、そしてその理由がなぜなのかを「まとめ」として紹介してセッションを終えた。

「ウェアラブルなどのデータを別のITシステムにつなぎ、さらにまた別のシステムにつなぎ、さらにそれを…というシステム間のインタラクションが多いものは、やはりまだリスクが高いというか、うまくいかないことがあるのも事実です。これはやはりIoTがオンラインだけで完結するものではなく、現実世界と地続きなものであることを鑑みればそうならざるを得ない。」

 

「その点からも、非常におすすめしたいのが”遠隔作業支援”です。なぜなら人間がそこに介入することで、システム的には難しいところを人間が吸収してくれるから。そして介護や医療の現場など、コミュニケーションが重視される分野も同じ理由から有望です。
またエンターテインメントの分野は成功例が多く、ここから産業界に取り入れられるものも今後一層増えてくるでしょう。

みなさんが先行者有利を手にできることを願っています。」

 


 

塚本教授の後には、「現場の安全管理におけるITの活用」と「Watson IoT 作業員の安全・健康管理ソリューション」と題された2つのセッションが続いた。

「現場の安全管理におけるITの活用」では、冒頭に、現在都心を中心に電車内や駅で放映されている「ミツフジ+IBM – 作業員の体調を見守るIoTソリューション」の広告が紹介された。

 

 

その後、IBMのIoTチームの豊富な経験から、お客さまとのディスカッションやコンサルテーションの場で頻繁に聞かれる6つの現場における危険 — 「屋外作業における熱中症」「高所作業現場での転落」「車両との接触」「地下ピット作業での窒息・中毒」「夜間・一人作業時の急変」「設備不良による危険」 — と、それに対する提案が紹介された。

 

そして最終セッションとなる「Watson IoT 作業員の安全・健康管理ソリューション」では、講演者の日本情報通信 柿沼広伸氏が自ら肌着型のIoTウェアラブルセンサーを着用し、ご自身のリアルタイムデータを表示しながらのデモなどが行われました。

 

なお、最後の2セッションは、7月9日の「AIとIoTによる安全管理・健康管理セミナー」でも再び開催される予定です。

 

関連ソリューション: IBM Maximo Worker Insights

 

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