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モノづくりを次フェーズに | SPRESENSEとMaximoのワンストップIoTサービス

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今年2021年は、ローカル5Gや通信コストの値下がりなど、ビジネスを取り巻く通信環境にも大きな変化が起こりそうだ。そんな中で注目されているのがビジネスにおけるIoTとエッジコンピューティングであり、それを実現するためのデバイスだ。

 

2018年の発売開始以来、電子工作愛好家からビジネスの製造現場にまで幅広くその活躍範囲が広がっているマイクロボード「SPRESENSE(スプレンス)TM」。

昨年末には、国内外の多様な半導体を取扱っており、ソニーセミコンダクタソリューションズの特約店でもあるレスターエレクトロニクスから、下記のリリースも発表されている。

レスターエレクトロニクス、日本IBMと現場の「見える化」に向けた新たな取組み エッジデバイスとクラウドサービスのパッケージ提案で開発工数を大幅削減

 

今回、SPRESENSEの開発・販売元であるSSS(ソニーセミコンダクタソリューションズ)の早川さんと斎藤さん、レスター(レスターエレクトロニクス)の白崎さんと大林さん、そしてIBM Cognitive Applicationの橋本 茉奈実の計5人の方がたに、SPRESENSEの強みや今後の展開予定などについてお話を伺った。


 

■ SPRESENSE(スプレッセンス)単体ではなく、課題解決のためのソリューションを

 

— ズバリ、SPRESENSEとはどんなデバイスなのでしょうか。

 

SSS 早川知伸さん(以下「早川」)

はい。SPRESENSEはSSSが作ったボードコンピュータです。

その特長は大きく6つありますが、中でも「省電力(ローパワー)」と「演算能力の高さ(ハイパフォーマンス」)という2つが、他のマイクロボードと呼ばれている製品群との最大の違いだと私は思っています。

この図を見ていただくのが分かりやすいですかね。

SPRESENSEとは? | 6つの特長

SPRESENSEとは? | 6つの特長

 

マイコンボード本体がGPS機能を搭載している点だとか、ハイレゾリューションオーディオ機能や最大8チャンネル同時録音可能なマルチマイク入力、500万画素のCMOSイメージセンサーを搭載したカメラボード接続と、オーディオ・ビジュアルの領域でも強みを持つソニーらしさが詰まった唯一無二のボードですね。

ただ、強調しておきたいのは、最初に言ったローパワーとハイパフォーマンスがあってこそ、こうしたAV関連の強みも活かされるという点です。

マイコンボードにもいろいろありますが、これだけの機能を持つ製品で、電池でこれほど長時間動作するのはかなり珍しいものです。そして交流電源を使わないが故にノイズ発生を抑えられるわけで、それがハイレゾ録音にも活きてきます。

 

— なるほど。6つの強みはそれぞれが強みでもあるけど、相乗効果でさらに強みを増しているわけですね。ところで、昨年の「SPRESENSEとIBM Maximoの連携パッケージ化」というリリースはどういう経緯があったのでしょうか?

 

レスター 白崎力裕さん(以下「白崎」)

SPRESENSEは発売直後から電子工作ファンの間ではすぐにその高性能さと低価格が話題になり、あっという間にいろいろなものに実装されるようになりました。
一方で、大規模ビジネス、特に製造業のお客様からは「センサー単体ではなく、課題解決のためのソリューションとして持ってきて欲しい」という声を、多数いただきました。

 

私たちレスターエレクトロニクスは、SSSさんの特約店として約50年のお付き合いがあり、IBMさんとはセミナーを通じて製品を勉強し関係を構築していましたので、SPRESENSEのIoTエッジデバイスとしての強みもIBM Maximoのスマートプラント・プラットフォームとしての強みも理解していました。

それならば、強いパイプと信頼関係を両社と持つ私たちが間に入ってパッケージ化し、お客様の使用環境に合わせて最適化してお届けしようじゃないかという話になったんです。

こうすることで、開発工数や期間、費用といったお客様の負担を大幅に軽減することができます。

 

■ 機器の故障予知に。工場の人員不足に。そして宇宙探索に!?

 

–どのような業種のお客様にパッケージ化は喜んでいただけそうでしょうか?

 

レスター 大林航太郎さん(以下「大林」)

製造業、建設業、運輸業、小売業など、広い業種・業界でご活用いただきやすくなったんじゃないかと思いますが、やはり製造業のインダストリー4.0という切り口が一番最初に頭に浮かびます。

「うちのような複雑な現場では自動化は難しいだろう」と思われていたお客様にも、まずは気軽にお試しいただき、その効果を実感いただきやすくなったんじゃないでしょうか。

 

 

IBM 橋本茉奈実(以下「橋本」)

具体的なユースケースで言うと、メーターがデジタル化されていないアナログ計器を使用されている工場や、製造機械や耕作機などのモーター音を聞いて異常箇所の特定や何かしらの判断を行われている現場かなと私は思っています。

SPRESENSEがアナログ計器上の指針やメーター数値を読み取り、あるいは機械のモーター音などをデジタル変換してIBM Maximo Asset Monitorに送信します。IBM Maximo Asset MonitorにはAIによる異常検知アラートの仕組みがあるので、従来であれば匠の技を持つベテラン作業員にしか判別できなかったような違いをAIが感じ取り、作業員に異常検知アラートを送ることができます。

また、こうしたセンサーデータが蓄積されてくれば、過去のセンサーデータと設備・機器の資産情報や保全データと紐づけて管理することが重要となってきます。ここまで来れば、実際にセンサーデータが来たタイミングで異常を把握するのではなく、事前に設備・機器の故障発生時期の予測をすることが可能になります。

IBM Maximoはこうしたリアルタイムデータと設備データの管理、予知保全の分析まで一貫してソリューションをご提供しているため、各システムの個別構築、連携のためのカスタマイズ開発が必要なく、システム運用・管理がより容易となります。もちろんAPI連携も対応していますので、既存システムとの連携もできます。

SPRESENSE × IBM Maximo Asset Monitor

SPRESENSE × IBM Maximo Asset Monitor

 

早川: 人員不足が深刻化している工場などにおいて、100カ所ものメーターを巡回して読み取るというような単純作業を人が行なっており、こうした現場にはぜひこのワンストップIoTサービスを役立てて欲しいですね。

 

それからもう一つ、これはとあるレガシーなデバイスを作っている工場で聞いた話なのですが、現在その工場で使用している機器は1台1億円を超える高価なものらしいんです。

でも、すでにレガシーなデバイスは需要のピークを超えている、と考えられています。そうした事情から、新たに機器を購入することは難しいし、そもそも機器そのものもすでに製造されていないんだそうです。

つまり、こうした現場では、現存するものをいかに壊さず、メンテナンスしながら使い続けていくかが非常に重要だそうです。

先ほど橋本さんが危機の異常モーター音を感知する話をされていましたが、機器故障の前兆ということでは振動音に表れるケースも多いそうです。危機を故障させないことを最重要視されている工場の方にもかなりお役に立てるんじゃないでしょうか。

 

大林: ここまでは製造現場や工場でのユースケースについて話してきましたが、SPRESENSEは他にもすでに幅広い範囲でご活用いただいています。

例えば沖縄県南城市様での小型モビリティを活用した観光型MaaS実用例だとか、東京工業大学様での牛の行動観察であるとか、ライゾマティクス様のパブリックアートプロジェクトですとか、実に多彩な実装や実用試験が行われています。

おそらく、私たちが知らないところでも山ほど利用ケースがあると思われますね。

参考: SPRESENSE活用事例

SPRESENSEの多彩なユースケース(SPRESENSE活用事例)

SPRESENSEの多彩なユースケース(SPRESENSE活用事例

 

とは言えやはり、導入効果がすぐに形となって現れやすいのは製造業界であり、日本の大規模工場を運営されている約3千社様だろうと私は予想しています。

と言うのも、やはりMaximoとの組み合わせによる予知保全実現は、とりわけ細心の注意が必要とされる精密機器や医療機器などの製造現場では、長く待ち望まれてきたものですから。

 

早川: 精密機器と言えば、今年SPRESENSEは宇宙ロケットに搭載され、大気圏を突破する予定です。
これはSPRESENSEのコンピューティング機能が高性能にもかかわらずほぼ発熱することがないため熱暴走や故障の心配が不要だということ、さらに、放射線や中性子線からの影響を受けにくいロバスト性(耐久性や頑強性に加え、外部の影響を受けにくい性質)があるのでそれを実証する予定です。

そしてもちろん、価格の点も評価いただけたものと思っています。なにしろ、この機能とロバスト性を有していて、数千円で購入いただけるマイクロボードというのは他に見当たりませんから。

 

■ 日本の誇る「モノづくり」を次フェーズへと進化させたい

橋本: ここ数年、Maximoの引き合いがすごく強いのですが、その理由は先ほどお話しさせていただいた予知保全の実現、人材不足や技術継承ももちろんですが、Maximoの統合DXプラットフォームとしての力を活用し、日本の誇る「モノづくり」を次フェーズへと進化させたいというお客様がとても多いからなんです。

そうした点からも、今日お聞かせいただいた高性能、省電力、高ロバスト性のことは、Maximoをご利用・ご検討いただいている製造業やエネルギー事業のお客様に、もっとしっかりとお伝えしなくちゃいけないなって思いました。

私にとっても、たくさんの学びとなるとても有意義な時間でした。皆さん本当にありがとうございました。

 

 

SSS斎藤敏幸さん

あ、ちょっと待ってください。終わる前にちょっとだけ、私のSPRESENSEについての自慢と言いますか、こだわりの部分を紹介させてください。

 

まずSPRESENSEの周辺デバイスとの拡張性です。特にさまざまな拡張ボードに対応していることで、通信規格もBLEとWi-Fi、LTE-M、Sigfox、LoRaといったLPWA規格も使えるようになっています。さらに、工場などでも使いやすい有線LANの拡張ボードもご利用いただけます。

 

それから、これまでも話に出ていますが、最後に改めて演算能力の高さと映像や音声データについての関係についてです。

通常画像や音声データは大きくなりがちですが、SPRESENSEはハイパフォーマンスのエッジコンピューティング能力を持っているからこそ、送信が必要なデータかどうかを判別したり、送信前にデータを省サイズ化する処理を実施することができるわけです。

この演算能力の高さが、SigfoxやLoRaなどの低ビットレート通信での送信を可能にしています。

 

こうした特性を考えると、今日話に出てきたインダストリー4.0系の活用方法だけではなく、未来社会のソサエティー5.0だったり、新たな価値創造や社会課題解決にも役立てられるんじゃないかと私は思っているんです。

 


 

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TEXT 八木橋パチ

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