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CSR報告書 — 役割、歴史、未来について

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財務報告以外の業績指標について、報告・発信を組織に期待する声は高まり続けています。

CSR(社会的責任)報告書は、主要な利害関係者に向けて、企業の社会的・環境的パフォーマンスに関する透明性を提示する方法の一つです。

当記事では、CSR報告書についてより詳しく包括的に説明・検討するとともに、CSRデータを取得しパフォーマンスを測定するための専門ソフトウェアの重要性について説明いたします。

 

CSR報告書とは?

CSR報告書は、組織の非財務指標のパフォーマンスを報告し、社会と環境に与える影響についての透明性を提示し報告するものです。通常、CSR報告書は年1回発表されますが、その発行は義務ではありません。

しかし、組織の非財務的な影響を投資家や消費者が評価しやすいように、大企業に対して社会的・環境的パフォーマンスの開示を義務づけている地域や国家もあります。

 

当初、CSR報告書の焦点は社会的指標に絞られていましたが、徐々にそれ以外の非財務的指標も包含する社会的責任全般へと対象を広げていきました。

最近では「CSR報告書」という言葉は、「ESG(Environmental Social and Governance)レポート」とほぼ同義で用いられています。

 

CSR報告書の歴史

産業革命期の1800年代から、組織は社会や従業員の労働条件、ウェルビーイングなどへの配慮を示してきました。当時から、実業家や起業家による慈善活動や、教育や科学振興のための寄付も珍しくはありませんでした。

現代のCSR報告書の嚆矢は、アメリカの経済学者ハワード・ボーエンがCSRという言葉を最初に用いた1953年まで遡ることができます。

CSRが企業で本格的に注目され人気が定着し始めたのは1970年代からで、1980年代には多くの企業が社会的責任の遂行をCSR報告書を用いてアピールし、ブランド評価を高め利害関係者に対応するようになりました。

かつて一部の組織ではあまり積極的に用いられることのなかったCSRも、現在ではあらゆる規模の企業で広く用いられており、任命されたCSR担当者が組織を率いているケースも少なくありません。

 

CSR報告フレームワーク

組織が温室効果ガス(GHG)排出量、経済的パフォーマンス、社会的インパクトのいずれに焦点を当てているかに応じて、

CSRレポートをサポートする報告フレームワークにはいくつかの種類が存在しており、企業が焦点を当てているのが温室効果ガス(GHG)排出量か、経済的パフォーマンスか、あるいは社会的インパクトなのかにより、適したものが異なってきます。

投資家から常に高い評価を得ているCSR報告フレームワークは主に3つで、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、DJSI(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)、GRI(グローバル・レポーティング・イニシアチブ)です。

 

これらのフレームワークには共通点と相違点があります。

CDPは、GHGデータ、水、サプライチェーンのパフォーマンスに重点を置き評価を行っており、天然資源の保護と気候変動の緩和を支援しています。

一方、GRIは、組織がステークホルダーに与える社会的、環境的、経済的影響により重点を置き、ガイドラインと測定の基準を提供しています。

 

上記2つのフレームワークが一般に公開されており、異なる組織を比較するのに用いやすいのに対し、DJSIは招待制であり、結果は公開されていません。

また、DJSIは、財務パフォーマンスとESG要素を統合する際のベンチマークとして、主に投資家により利用されています。

 

CSR報告書ソフトウェア

どのCSRフレームワークを選択するにしても、専用ソフトウェアはレポート作成プロセスに大いに役立つでしょう。

IBM Enviziのようなエンタープライズ向けESGデータ専用ソフトウェアを用いることで、信頼性の高いデータ取得が自動化され、単一システムに統合されるので、社内やグループ会社の各部署・チームとのコラボレーションと、CSRレポートの草案、作成、発行を容易にかつスピーディーに行うことができます。

 

IBM Enviziは、CSR指標数値の取得、組織のGHG排出量の計算、業界規制やベストプラクティスに準拠した監査可能なレポート作成を支援します。

CSR報告書作成の複雑なプロセスにおいて、時間、費用、労力に対して問題意識をお持ちの組織には、導入検討を強くお勧めします。

また、指標数値の取得とレポーティングだけではなく、CSR目標やイニシアチブの設定、パフォーマンス改善成果の的確な追跡を実施したい企業には、必須の支援ツールとなるでしょう。

 

CSR報告基準

CSRの要件は地域によって異なり、世界的に合意されている共通基準はほぼ存在していません。そのため、CSR報告書の内容や長さ・スタイルは、企業毎に大きく異なるケースも少なくありません。

デザインの柔軟性や、個々の企業がアピールしたい点にフォーカスしてブランディングを行えるという点などから、この相違がプラスに捉えられることもあります。

しかしCSR報告書に共通基準がないことの弊害も強く指摘されています。

どのような情報を開示し何を強調するかを自由に設定できることは、組織間の相違を分かりづらくし、比較容易性を弱めてしまうからです。また、グリーン・ウォッシュとしての非難や風評被害にもつながりかねません。

 

このような事態を避けるため、企業は報告書を可能な限りオープンにし、成功例だけでなく、CSRにおいて不足している点や改善が必要な分野もしっかりと開示することを目指すべきです。

透明性が高ければ高いほど、消費者は、組織が問題を本当に重要と捉え、強い意識を持って取り組もうとしていることを理解し、組織への信頼を高めるのです。

 

CSR報告書において考慮すべきこと

優れたCSRパフォーマンスは優れたビジネスパフォーマンスを意味します。さまざまな調査で、CSRの実績が、組織に真の価値をもたらしていることが一貫して示されています。

CSR報告書は、重要なPRツールとしても機能しています。企業の環境への取り組みを伝え、その成果を紹介し、社会的使命と説明責任を果たしていることをアピールするメディアとなっています。

社会的・環境的パフォーマンスに対する投資家や消費者の監視の目が厳しくなっている現在、しっかりとパフォーマンスと報告を行うことは、企業にとって必要不可欠な戦略となっているのです。

 

企業は自主的に、CSR目標の達成に向け全面的にコミットしなければならず、従業員はそのプロセスに積極的に参加し、日々の業務を通じて良い影響を与え目標到達に近づくように奨励されるべきです。

そしてそうした活動を投資家や消費者に継続して分かりやすく明確に伝えるコミュニケーションは大変重要であり、企業はCSRへのコミットメントを的確に伝えていく必要があります。

完全性や正確性を損なうことのないよう、すべての報告書においてデータによる裏付けを提示すべきでしょう。

 

CSR報告書の将来

最近では、CSR報告書が、次世代のサステナビリティレポート(環境・社会・ガバナンス(ESG)報告書)に切り替えられるケースが増えています。

サステナビリティレポートはより包括的で具体的であり、ESG開示フレームワークはCSR報告フレームワークと比べて、より認知されています。

 

サステナビリティレポートでは、社会的責任を伝えるだけでなく、環境や持続可能性への取り組みを定量化し、数値を用いて開示することに重点を置いています。組織は比較可能な指標を基盤に、将来に向けた測定可能な数値目標を設定してパフォーマンスを測定し、進捗度合いを評価します。

このように、サステナビリティレポートは、企業が気候危機をはじめとした現況の課題に対して、どれくらい高い倫理性を持って対応しているかが示されるものとなっています。

 

CSR報告書に関するよくある質問

——CSRとは何ですか?

CSRとは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略です。CSR報告書は、組織の事業慣行における倫理的、環境的、慈善的、経済的な影響を評価するための、社内外向けの報告書です。

CSR報告書は、企業の社会的責任およびサステナビリティーへのパフォーマンスについて、投資家や市民とのコミュニケーションを図るために使用されます。

 

—優れたCSR報告書とは?

優れたCSR報告書は、柔軟性と透明性を持ち、現在および将来の報告要件を満たすためのデータ基盤を詳細かつ適切に提供するものでなければなりません。

報告書には組織が影響を与える主要サステナビリティ指標の全データを提示する必要があり、組織に悪影響を及ぼす可能性のあるデータも省略するべきではありません。

優れたCSR報告書は、組織とステークホルダー間の信頼を育むものであり有意義な対話を促すものであるべきなのです。

複数のステークホルダーが特定の報告フォーマットを好むのであれば、複数のCSR報告フレームワークを使用するのも理にかなったことでしょう。

 

—CSR報告書に最適なフレームワークとは?

CSR報告書に最適なフレームワークは、報告書の対象者や目的、また有用性によって異なります。

例えば、組織の炭素排出量や気候変動緩和策を知りたい投資家は、CDPやDJSIといったフレームワークを最適な選択と判断する可能性が高いでしょう。

また、同業他社とのデータ比較を目的としているのなら、比較性の高さで高評価を得ているCSR報告フレームワークを用いることが理想的です。

しかし、CSR報告書の対象がNGO、サプライヤー、従業員、顧客などのステークホルダーで、環境だけではなく社会や経済に与えるインパクトも判断しようとする場合は、GRIのフレームワークの方が適しているかもしれません。

 

—CSR報告書は義務ですか?

CSR報告書は大部分において任意ではあるものの、オーストラリア、カナダ、英国など一部の管轄区では、大企業や特定の業界に属する企業に対して社会的・環境的パフォーマンスに関する報告が義務付けられています。

なお、米国では現在義務化はされていないものの、近いうちに変更される可能性も少なからずあり、今後制度や法律の変更があるかもしれません。

また、現在はサステナビリティレポートが義務付けられていない国においても、多くの企業が自主的にCSR報告書を発行しています。こうした取り組みは、ステークホルダーの参画を支援し、投資家や顧客からの評判を高め、情報開示目標の達成にも大いに役立つものとなります。

 


当記事は『CSR reporting, explained』を日本の読者向けに編集したものです。

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