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電機・電子業界における設備保全の重要性と進め方

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シリーズ「日本の電機・電子業界におけるサステナビリティー」

第4回は、設備保全の重要性と進め方を紹介しています。

生産領域における環境負荷の削減に向けた主たる取り組みは「設備管理」です。工場や生産設備の稼働時間や稼働レベルが、炭素排出量や電力、水、廃棄物の増減に大きく影響するため、それら設備の管理体制最適化が重要です。同時に、コト売りビジネスやサーキュラーエコノミー実現を見据えた検討を行い、企業戦略と照らし合わせてロードマップを策定することが重要です。

設備管理の領域におけるサステナビリティーの目標として、これまでは資産・設備の使用期間の長期化や、作業待機時間、人件費、保守コスト、保全在庫コストなどの削減が挙げられてきました。昨今では、これらに加えた新たなKPIとして、設備稼働の環境負荷、設備及び予備品の再利用、廃棄物・排出量管理などが挙げられるようになりました。これら多岐に渡る管理指標は、統合的に管理されることが求められるばかりでなく、先端技術を組み込んだ形での設備管理や予防保全の検討、更に一歩進んで、業界横断での設備共有の検討が求められています。

ステップ1「規制遵守(Comply)」
設備管理基盤(EAM)の導入と規制遵守

設備管理に関しては、企業がメーカーに委託しているケースも多くあるものの、企業として、統合的な設備管理基盤を導入する事が重要です。各設備の基本情報や所在地(ロケーション)は言うまでもなく、稼働状況、点検・保全状況、修理・保全履歴、作業員との契約状況やスキル・資格情報、保全に必要な部品・工具の情報などを一括管理できる情報基盤が必要になります。そして、情報基盤上で一元管理されたこれらの情報を元に、設備の稼働時間や稼働レベルからの環境負荷を算出し、情報開示を行うことで、一貫性と透明性ある報告になります。業務では、これらを整理して開示するフローとそれに関連する承認業務の設計が必須です。

IBM Maximo Application Suiteでは、情報開示の基本となる設備稼働情報などを統合的に管理することが可能です。IBMは、その業界専門知識、構成可能性、柔軟性、パートナーのエコシステムによって、IDC MarketScapeより、EAMアプリケーションのリーダーに選出されました。このような設備管理システムを導入することで、次のエンド・ツー・エンド最適化のステップへ進むことが可能となります。

ステップ2「エンドツーエンド最適化(Optimise)」
需要予測や生産計画と設備稼働の連動・最適化

サプライチェーンにおけるエンド・ツー・エンド最適化のにおいては、需要予測や生産計画と設備稼働の連動・最適化が重要な鍵になります。設備に取り付けられたセンサーからの各種データを用いて、計画値と実績値の差異分析を通じた設備稼働の最適化を検討するとともに、当該設備の状態予測や保全作業の要否予測を行う業務とシステムを備える事が推奨されます。

それらを実現するシステムは、資産パフォーマンス管理(APM)と呼ばれます。APMの一つであるIBMのMaximo Application Suiteでは、設備の稼働状況をモニタリングするモジュール(Monitor)、画像解析を行うモジュール(Visual)、設備のスコアリングを行うモジュール(Health)、性能予測や予防保全を実践するためのモジュール(Predict)、労働現場の安全管理をするモジュール(Safety)、作業者をAIでサポートするモジュール(Assist)、作業者にARで遠隔支援をするモジュール(Remote)などによって資産パフォーマンス管理をサポートしています。これらのモジュールを用いて、設備稼働の透明性を高めつつ、環境負荷を最低限とする為のデータや情報を提供出来る基盤を具備する必要があります。

こうしたシステム導入と同時に、保全業務の改革も必要です。従来の事後保全ではなく、設備の点検をロボティクスやドローンを用いて画像解析を行ったり、分析を用いた予防保全を実施したりすることで、保全回数や作業内容を最適化するなど、大規模な業務変革が求められる場合もあります。また、保全備品についても、人間の判断ではなく、在庫状況を元に自動発注するなどのオートメーションを導入することにより、作業者や管理者の業務効率が大きく向上します。

エンド・ツー・エンド最適化のステップにおいて、設備管理や保全業務の改革は、業務やシステムともに大掛かりなプロジェクトとなります。そこで多くの企業では、まずは一部の拠点にのみ導入を行なったのち横展開を検討するなど、ビッグバンではなく拠点ロールアウトを実施する事で、生産へのインパクトやリスクを最小限にしています。

ステップ3「製品とサービスの刷新(Reinvent)」
製品とサービスの環境負荷削減を実現する設備の刷新

刷新のステップでは、設備管理の領域において、大きく2点のアプローチが必要になります。

1点目は、既存設備の刷新であり、エンド・ツー・エンドの環境負荷の観点から設備稼働を見直す必要性です。これは、通常行われているような各企業での生産計画をベースにした設備稼働の最適化に留まらず、設備の共用なども視野に入れた環境負荷削減の実行です。

2点目は、新設備の刷新であり、環境負荷が最小限になるような新設備を設計・開発・導入することです。このことにより、製品とサービスのリモデル・リエンジニアリングにおける環境負荷の削減に生産過程でも貢献する事が出来ます。

以上2点のアプローチで欠かせない技術は、デジタル・ツインやXR技術です。既存設備が最適稼働できるようにシミュレーションしたり、新設備導入による環境負荷をシミュレーション・分析、評価した上で物理世界に実現するステップが必要になったりするため、それを支える技術が不可欠になります。こうした技術を支えるシステムについて、各社個別で取り組むと同時に、共用の可能性がある設備については、データ基盤や共用システムを構築することになります。更には、通常の点検・保全業務だけでなく、管理やシミュレーション、評価業務についても、新たな業務設計が必須となります。
業務を支えるためにも、データ分析技術、オートメーション技術を強化し、組織全体で効率的に実行出来る仕組みの設計が重要です。

ステップ4「サステナブル・リーダー(Lead)」
統合的な設備管理と社会貢献の実現に向けて業界横断で協業

サステナブルという視点を加えて刷新された製品とサービスを継続的に進化させ、業界横断や社会のプラットフォームと連動することでリーダーとなるステップでは、刷新のステップで導入したシミュレーション技術やデジタル・ツイン技術を活用して、業界横断での設備共用化と保全作業実施の最適化により、設備を長寿命化させる事が重要になります。設備を刷新する際は、新たなテクノロジーを組み込んだ設備のライフサイクル全体における経済的・環境的インパクトを統合的に評価できる基盤が必要になります。

刷新した製品とサービスは、複数企業または業界横断のプラットフォームや公開データと常時連動することにより進化し、自社設備の運転は、共用設備や生産計画に準じて稼働を最適化されていきます。そしてその結果を個々の企業のKPIや開示情報として各種ステークホルダーに提供していく事になります。

結論

近い将来に保全領域は、ロボティクス、ドローン、AR、デジタル・ツイン、社会基盤などとの連動が求められてくる領域です。そのため、企業の設備管理の要となるシステムやデータ基盤の導入、データ整備に早期に取組むことが必要になります。結果として設備の予防保全に着手することで、保全業務と設備の稼働率の最適化が実現されます。こうした企業努力は、サステナビリティーへの取り組み成果としてステークホルダーへ開示出来る場合もあるため、取り組みの優先順位や範囲を明確にして取組むことが推奨されます。
 

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小野 真理
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部

製造業の戦略やリスク調査、M&A、デジタル・トランスフォメーション(DX)を目的とする、ITシステム導入、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)、リスク管理などの案件を中心にコンサルティング経験を多数有する。オーストリアと米国のMBAを持ち、米国、日本をはじめとし、東南アジア、欧州、北南米のプロジェクトや赴任経験、また、バーチャルでのプロジェクト推進経験を多数有する。

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