IBM Consulting

電機・電子業界における低環境負荷な物流の重要性と進め方

記事をシェアする:

シリーズ「日本の電機・電子業界におけるサステナビリティー」

第5回は、低環境負荷な物流の重要性と進め方を紹介しています。

物流領域におけるサステナビリティーの取り組みは、20年以上前に遡り、1997年に開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(京都会議)において、 二酸化炭素(CO2)排出削減の取り組みの1つとして、モーダルシフトが注目されたときから始まります。その後、物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)も定められ、「輸送網の集約」「モーダルシフト」「輸配送の共同化」等の輸送の合理化が促進されました。

昨今の物流分野における労働力不足なども相まって、流通業務の省力化及び物資の流通に伴う環境負荷の低減を図るための物流効率化の取り組みが改めて注目されるようになりました。本ブログでは、物流領域におけるサステナビリティーを取り組むステップについて説明致します。

ステップ1「規制遵守(Comply)」

物流領域の炭素排出量や環境負荷の開示

多くの企業が、自社の物流網やサプライヤー、流通会社、消費者までのエンド・ツー・エンドでの物流上における炭素排出量の報告方法などを検討しています。今後、規定の追加や変更が発生することも見据え、実績算出の根拠とその実績を遡って把握することができるように、統合的に管理するデータ基盤と管理・報告業務の柔軟性ある設計が必要です。

TMS(Transportation Management System)の導入も検討する必要があります。定型ルートで物流が一定の場合は、行政への報告や開示内容は比較的シンプルなデータとなります。さらに、次のステップであるエンド・ツー・エンド最適化実現に向けては、このステップでの取組段階から、早期にシステムやデータ基盤を導入・構築することで、体系的に整理された情報をもとに、時系列や項目毎の分析が実施できるように備える必要があります。

ステップ2「エンドツーエンド最適化(Optimise)」

炭素排出量が最小限となるように最適化された物流網の実現

エンド・ツー・エンド最適化のステップでは、規制遵守のステップで可視化されたサプライヤーからの情報(実施している具体的な改善施策やリスク削減施策も含む)を元に、精度が高い実績値の把握と、更なる改革による将来の改善予測値を算出する事が重要になります。

これからの改革に必要な視点は、これまでの物流コスト削減や納期優先のルート策定ではなく、環境負荷が最も軽くなるルートを推奨するような視点が重要で、そのためのソリューションが必要になります。例えばIBM Vehicle Routing Plannerは、車両・拠点、時間、距離といった切り口に加え、二酸化炭素排出量(燃料使用量)ベースでの最適なルートマップを提案する事が出来ます。また、RFID(Radio Frequency Identification)などを導入し、デジタル化されたデータ入手により迅速かつ多元的な分析も実施して、エンド・ツー・エンドの環境負荷最適化のレベルを向上していく事が重要になります。このように最適化ソリューションを統合的に組み合わせて、規制遵守を超えた最適化を実現していく必要があります。

さらにこのステップでは、オートメーション技術を活用して最適化されたルートについて、トラックドライバーへの連絡がシームレスに行われるような仕組みづくりが重要となります。国際貨物輸送では、これまで以上に厳しくなる製品・物質の取り締まりや陸海空路の規制に従って、最適化ルートの計画と実行、そしてトラッキングが出来るITと業務の仕組みが必要になります。このステージでは、システムとともに業務も大きな影響があるので、定常業務を自動化し、新しい業務や、機械的には判断できないビジネスに重要な影響を及ぼす判断が求められるような高付加価値業務への集中的な人員配置を検討する事も重要なポイントになります。

ステップ3「製品とサービスの刷新(Reinvent)」

刷新された製品とサービスを社会に提供する物流

このステップでは、製品やサービスの刷新に伴い、物流は大きな影響を受けます。企業は、可視化されたエンド・ツー・エンドでの環境負荷情報をもとに、設計やビジネス・モデルの変更が及ぼす物流などへの経済的(コストや作業負荷)インパクトのみならず、環境負荷インパクトについてもシミュレーションと分析を行い、企業戦略と照らし合わせて統合的な判断をする必要があります。

製品やサービスの刷新を実施するタイミングでは、物流モデルを“リモデル”したり、モーダルシフトなどを考え直したりする必要があります。ここで欠かせないのは、自動運転や、ロボティクス・ドローンなどの新技術、また、それらを支えるためのデータ基盤や分析ツール、AI技術です。気候変動リスクや将来に課税対象となるリスクなども踏まえて、データ分析で人間の判断を補うような業務と運用を設計する事が重要です。

ステップ4「サステナブル・リーダー(Lead)」

統合的な物流管理と社会貢献の実現に向けて業界横断で協業

このステップでは、刷新した製品とサービスをより継続的に進化させていきます。例えば、グローバルに展開されている企業においては、IBM Environmental Intelligence Suiteと連動することで、気候変動の影響やタイムリーな気象情報をもとに、企業の独自の物流網や物流ルートの判断が適宜実施される、といったことが自動的に実行されます。それが更に社会基盤となる港湾や空港のデジタルツインなどと連動して、物流網を最適化し続けるような仕組みにまで発展します。各企業独自の物流網を超えて、社会全体の物流網を率いる、リーダーとしての取り組みが必要であり、物流網全体に及ぼす経済的・環境的インパクトを統合的に評価できる基盤が必要になります。物流は、製品やサービスを提供するためだけではなく、物流領域に新技術を組み込んで進歩し、社会貢献を先導する事が重要となります。

結論

物流は、炭素排出量の影響が大きいため、早期から多くの企業が取り組みを着手している領域です。今後の炭素排出量を含むサステナビリティーへの取り組みは、長期のロードマップを見据えた上で、AIやロボティクスなどの新技術を業務とシステムに組み込みながら、サプライヤーや時には社会インフラを巻き込んだエンド・ツー・エンド全体でステップアップを実現していく必要があります。

小野 真理の写真

小野 真理
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部

製造業の戦略やリスク調査、M&A、デジタル・トランスフォメーション(DX)を目的とする、ITシステム導入、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)、リスク管理などの案件を中心にコンサルティング経験を多数有する。オーストリアと米国のMBAを持ち、米国、日本をはじめとし、東南アジア、欧州、北南米のプロジェクトや赴任経験、また、バーチャルでのプロジェクト推進経験を多数有する。

シリーズ「日本の電機・電子業界におけるサステナビリティー」


関連情報

More IBM Consulting stories

お客様との信頼関係の築き方-IBMコンサルティング流 営業職のコミュニケーション

IBM Consulting

日本IBMの事業の柱の1つであるIBMコンサルティングでは、2021年10月のブランド創設以来、時代に即したビジネスを、これまで以上に迅速に、そしてより多くの共感とオープン性を持って進めています。社員はプロアクティブに自 ...続きを読む


進まない物流DX 。その原因と物流クライシス対策のすすめ

IBM Consulting, デジタル変革(DX)

物流クライシスとは 「物流クライシス」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。日本では近年、高齢化によるトラックドライバーの労働人口不足や「物流の2024年問題※」などを背景に物流危機が起きる可能性があると言われていま ...続きを読む


顧客が期待する「DXパートナー」としてのIBMに求められる姿勢

IBM Consulting, デジタル変革(DX), 事例

DXの波が急拡大し、DXグランプリやDX銘柄等の政府認定の仕組みなども普及して行く中で、製造業各社において実際のDX推進を自社単独で推進するのは、非常に難易度が高く、外部からの支援を求めるケースが増えている。この波に便乗 ...続きを読む