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先進テクノロジーの採用で、ミッション・クリティカルなワークロードに対応する

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この投稿は、2020年11月20日に、米国 IBM Cloud Blog に掲載されたブログ(英語)の抄訳です。

先進テクノロジーを採用する際に、最初にどのようなワークロードにフォーカスすべきでしょうか?

ある銀行の最高技術責任者(CTO)と、会社の最初のワークロードを IBM Cloud Pak® for Integrationに搭載することについて話し合った際のことです。そのCTOは、新しいテクノロジーを利用する際、最初のワークロードとして、常にミッション・クリティカルなワークロードを優先するとおっしゃったことに、私は驚きました。そこで、新しいテクノロジーを利用する最初のワークロードには、ミッション・クリティカルなワークロードを避けたほうがいいという、ごく普通の業界標準的な推奨事項について、この方にご意見を求めました。私は、その後よく調べた結果、一定の条件が満たされ、測定可能なメリットがある限り、企業は新しいテクノロジーを利用する際のパイロットとして、ミッション・クリティカル・ワークロードを使用することを躊躇するべきではないという結論にたどり着きました。

 

先進テクノロジーを戦略的にアプローチする

新しいテクノロジーを採用する際に私がお勧めするのは、そのテクノロジーの有効性を証明するために、そのテクノロジーの初期ワークロードを本番環境に展開し、テクノロジーから価値を迅速に引き出し、その採用に向けてスキル、自信、賛同を獲得することに重点を置くということです。企業が新しいテクノロジー・プラットフォームを「構築すればついてくる」というアプローチで採用し、理由はさまざまですが予定していたワークロードが実現しないのをこれまで多く見てきました。私どもIBM Garage チームは、あらゆるタイプの新テクノロジーの採用に適用できるように、革新的なMVP (Minimum Viable Product)を開発するためのアプローチを採用しています。重要なのは、非機能的な要件を満たし、スキルを構築する一方で、本番環境に展開して価値を提供し始めることができる、ワークロードのほんの一部薄を選択することです。

新しいテクノロジーを本番環境に導入するには、そのテクノロジーがワークロードの機能要件と非機能要件 (NFR:セキュリティー、レイテンシ ー、信頼性、監視など) を満たすことができ、ワークロードを開発したチームとテクノロジーを運用するチームが、これらの要件を満たすためのスキルと確立されたプロ セスを持っていることを確認する必要があります。これまで私は、ビジネス価値を提供するワークロードを推奨してきましたが、ミッション・クリティカルではなく、リスクを軽減するためにほどほどに簡単なNFRを満たすワークロードを推奨してきました。

しかし、今日のテクノロジーとプラクティスにより、新しいワークロードが NFR を満たしていない場合でも、その影響を無視できる程度に低減することができますので、ミッション・クリティカルなワークロードの導入を検討しない理由はないでしょう。適用すべき重要なプラクティスとテクノロジーには、カナリアテスト、ダークローンチ、リバーシビリティーなどがあります。

こうした機能により、必要に応じて新たに採用したテクノロジーを中断することなくスイッチ・オフすることができ、最初ののトラフィックを処理することができます。その後、徐々にトラフィックや機能を追加していくことができます。そのためには、新しいテクノロジーに自信が持てるようになるまで、古いインフラストラクチャーを一部のトラフィックを処理できるようにしておくか、アクティブなバックアップとして維持する必要があります。残念ながら、検証されたバックアップやバックアウトのオプションがないままスイッチ・オーバーが行われると、大きな問題が発生するのを私は見てきました。さらに、メンテナンスやリカバリのための自動化を含むサイト信頼性エンジニアリング(SRE)の実践を採用することで、運用リスクをさらに低下させることができます。

 

最初のワークロードにミッション・クリティカルを検討するメリット

リスクを軽減することができたとして、他に何がミッション・クリティカルなワークロードから始めることを妨げるのでしょうか?よくある間違いは、ミッション・クリティカルなワークロードを、最も大きくモダナイゼーションが難しいワークロードと関連付けることです。

ミッション・クリティカルとは、ワークロードの機能がビジネスに深く影響を与えることを意味しますが、それは大きくて困難でなければならないということではありません(これについては後ほど詳しく説明します)。新しいテクノロジーを採用する際の焦点は、新機能の導入スピード、低コスト、処理の改善、新しい地域への拡大など、直接的なビジネス価値を提供することにあるべきです。したがって、新しいテクノロジーをミッション・クリティカルなワークロードに適用することで、より大きな利益を得ることができます。

一般に、ミッション・クリティカルなワークロードは、単純なものでも複雑なものも、一貫した可用性、信頼性、およびパフォーマンスの要件があります。また、他のワークロードよりも厳しいセキュリティー、レイテンシー、および監査の要件がある場合もあります。これらはすべて、新しいテクノロジーの価値を迅速に享受したい場合にはデメリットになるかもしれません。しかし、テクノロジーがクリティカルな NFR のサブセットを満たす準備ができているかどうかをテストする機会として、また、チームにテクノロジーを運用する準備ができているかどうかを確認する機会として、ミッション・クリティカルを選択することができます。場合によっては、テクノロジーを迅速に稼働させるために、クリティカルではない単純なワークロードから始めて、徐々に学習していくとよいでしょう。どのワークロードと関連するNFRに最初に取り組むべきかは、最終的には、独自のIT要件、スキル、テクノロジー導入のビジネス・ケースに基づいて、バランスを取る必要があります。

 

小さく始めて段階的に大きく適用する

ミッション・クリティカルなワークロードを適切に選択することにより、最も大きく複雑な作業ワークロードを選択しないですみます。こその代わりに、よりシンプルなワークロードを選択し、インパクトがあり、最終的なNFRのサブセットを満たすためのテクノロジーと組織を必要とします。

例えば、ワークロードが、より大きなビジネス・プロセスの一部としての単一のAPIであったり、リアル・タイムに在庫状況をチェックするなど、クライアントが直面しているものであったりする可能性があります。この場合、NFR には低遅延と高可用性は含まれますが、コンプライアンスや機密情報の取り扱いは含まれません。選択されたワークロードが、例えばオンライン・ショッピング・エクスペリエンス全体であった場合、多くの追加のNFRが必要となりますので、新しいテクノロジーを導入して価値を受け取るまでには相当の時間がかかるでしょう。

大規模なワークロードにアプローチする場合、私は一部を近代化することを推奨しています。戦略的かつ段階的なアプローチにより、より複雑なワークロードを展開するための信頼性と準備が、プロセスが継続するにつれて高まっていくでしょう。

 

ビジネスの成長と規模の拡大を支援するための全体的な先進テクノロジー採用戦略を

最初のワークロードを選択することは、新しいテクノロジーの導入のジャーニー全体の一部であるべきです。新しいテクノロジーは、最終的なターゲット・ワークロードのNFRを満たすようにアーキテクチャーを設計する必要があります。アーキテクチャーに加えて、より多くのNFRと機能的な機能を段階的に追加するためのロードマップが必要です。ロードマップとターゲット・アーキテクチャーをサポートするために必要なものを取得する計画があることを確認する必要があります。例えば、パブリック・クラウドは、規制されたワークロードをサポートするために必要なコンプライアンス認証を現在、または最終的に取得する必要があります。

スキル・アップもロードマップの重要な要素です。私は、デジタル学習や教室での学習だけでなく、体験的な学習にも焦点を当てることを強くお勧めします。新しいテクノロジーを導入する際には、アーキテクチャー、ロードマップ、スキル開発の構築を支援するコンサルティングの専門家をお勧めします。

新技術の採用とイノベーションに対する私のチームのアプローチについては、弊社が発行している IBM Garage メソッドをご参照してください。IBM Garage チームが、新しいテクノロジーの採用についてのご紹介をさせていただくこともできます。このトピックについてさらに詳しく知りたい方は、こちらのブログ(英文)をご覧いただくことをお勧めします。

このブログの執筆に貢献してくれたIBM GarageのIBM FellowsであるKyle BrownとStacy Joinesに感謝します。

著者: Rachel Reinitz, IBM Fellow | Founder & CTO, IBM Garage


翻訳:IBM Cloud Blog Japan 編集部

*このブログは、2020/11/20に発行された “Adopting New Technology: Go for Mission Critical Workloads”(英語)の抄訳です。

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