AIで進化する、モビリティーとアフターサービスの未来

2035年を見据えて―モビリティ×AIの新たな価値創出の道筋とは
2035年を見据えて―モビリティ×AIの新たな価値創出の道筋とは

【このレポートでわかること】
 

  • EV化がアフターサービスを「継続的な収益源」にする
    電動化によるメンテナンス需要の減少に対応し、AI・ソフトウェア・サブスクリプションを活用した新たな収益モデルが求められている。
  • 収益性と顧客満足の両立のカギは、AIにある
    最大42%のROIが見込まれる予知保全や、消費者の71%が期待するリモート診断など、AIによる高効率なサービス提供が競争力を左右する。
  • SDV*との連携が、アフターサービスの戦略的中核となる
    OTA更新や車載ソフトのサブスクリプション化を通じて、顧客接点を維持しながら継続的な価値提供と収益化を実現する。

*SDV(Software Defined Vehicle):ソフトウェア定義型車両

 

【関連情報】
 

自動車業界はSDVの時代へと転換期を迎えつつあります。IBVのレポート「2035年自動車業界の将来展望」では、今後10年間の自動車およびモビリティー業界の発展に関する調査を実施しました。この調査を踏まえ、本レポート「AIで進化する、モビリティーとアフターサービスの未来」では、アフターサービスの領域にフォーカスした洞察を提供します。


EV化が収益構造を変える

電動化が進むにつれ、アフターサービスやメンテナンスによる収益は縮小することが見込まれます。このような収益減少を見越して、アフターセールス領域では、業務の最適化や新たなビジネスチャンスの創出が求められています。

現時点では、自動車メーカーの収益の80%以上を、車両本体やアフターパーツが占めるものの、今後はアフターサービスやデジタル・ソフトウェア関連の継続的な収益が主流になることが予測されています。

図:自動車メーカーの売上全体に占めるデジタル・ソフトウェア関連収益源の割合


新たな価値を届けるために

2028年に向けて、経営層は現実的な収益化の可能性を模索しています。
 

  1. フリート管理
    AI活用により、車両の稼働率向上、メンテナンスの最適化、ルート選定などにおける大きな進展が期待されます。
  2. 車両サブスクリプション
    収益性の高さに期待が集まる一方、運用コストの予測や顧客の利用率の見極めなどにおいて課題があります。
  3. AIアシスタント
    収益化には、AIアシスタントが運転時の“なくてはならないパートナー”として、実用的に設計されることが重要です。
  4. EV充電
    消費者の期待とは裏腹に、大きな収益源とはなっていないのが現状です。業界全体での連携や、役割分担・収益配分などのビジネスモデルの明確化が必要です。

 


データで進化する予測型アフターサービス

アフターサービスは今後、データに基づいた予測型のサービスへと進化します。
 

  1. リモート診断
    消費者の期待(71%)は、すでに2035年の業界予測(63%)を上回っています。AIを活用した緊急時支援や、車内コンシェルジュなどのサービス拡充が急務と言えます。
  2. AIを活用した予知保全
    2025年から2027年の間に42%のROI(投資対効果)が見込まれる一方、現在この分野を優先的に取り組んでいる企業はわずか27%にとどまり、アーリーアダプターが市場を牽引する可能性があります。
  3. 部品物流の最適化
    2027年までに36%のROIが期待されるこの領域で、自社の成熟度が高いと認識する企業は24%、将来的な進展を見込む企業は30%にとどまっています。
  4. データに基づいた個別提案
    消費者の80%以上が、AIによる個別提案に抵抗がないとする一方、2028年までに大きな進展を見込む経営層は31%にとどまり、機会損失が生じている可能性があります。

 

このようなサービスの変化に伴い、ディーラーがアフターサービスやモビリティー・サービスにおいてより大きな役割を果たすことが予測されます。


SDVとモビリティーの融合が未来を変える

アフターサービスは、SDVとモビリティーを支援する重要な要素です。SDVは、製品ライフサイクルの中で継続的にアップデートされるため、自動車業界にとって新たな課題となっています。

今後3年間でSDVへの移行は急速に進むことが予測され、経営層の79%がその進展を見込んでいます。しかし、OTA(Over-The-Air:無線経由でのソフトウェア更新)は2035年時点でも依然として大きな課題として残ると考えられています。

はたして自動車業界は、期待に十分に応えられるのでしょうか?

本レポートでは、これらの課題に対するアクションプランやケース・スタディーをご紹介しています。ぜひダウンロードしてご確認ください。


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著者について

Rami Ahola, PhD

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, Global Industry Leader, Industrial Manufacturing, IBM Consulting


Peter Schel

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, Senior Partner, Industrial Sector Lead DACH and Lead Client Partner for BMW Group, IBM Consulting


Jorge Malibrán Ángel

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, Senior Partner, Manufacturing Industry Leader, IBM Consulting


Noriko Suzuki

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, Electronics and Automotive Industry Leader, IBM Institute for Business Value


Christian Kirschniak

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, European Leader, Big Data & Analytics, IBM Consulting


Mardan Namic Kerimov

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, Associate Partner, North American Automotive Accounts, IBM Consulting

発行日 2025年10月10日