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量子コンピューティング時代に遅れを取るな――先進事例と経営者の視点

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小野寺民也
日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所 副所長
技術理事
理学博士


1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専門課程博士課程修了、同年日本IBM入社。以来、同社東京基礎研究所にて、プログラミング言語、ミドルウェア、分散システム等の研究開発に従事。最近ではとくにビッグデータおよびAI基盤ソフトウェアに興味をもつ。現在、同研究所副所長、同社技術理事。情報処理学会第41回(平成2年後期)全国大会学術奨励賞、同平成7年度山下記念研究賞、同平成16年度論文賞、同平成16年度業績賞、各受賞。理学博士。Association for Computing Machinery Distinguished Scientist、日本ソフトウェア科学会フェロー、情報処理学会シニア会員。

 

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池田和明
日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルティング&デザイン統括
執行役員


事業戦略策定、組織改革および経営管理制度改革を専門領域とし、同分野で20年以上のコンサルティング経験を持つ。大手の電機、重工業、製薬、エネルギー企業、通信企業などに対し、責任者として同コンサルティングを多数実施してきた。近年は、先端アナリティクスによる競争優位性の構築、ソリューション事業戦略、テクノロジーベースの新規事業戦略、さらなるグローバル展開のための戦略・組織・オペレーションをテーマにしたプロジェクトを手がけている。
1996年にPwCコンサルティングに参画し、2001年に同社のパートナーに登用された。2002年のIBMによるPwCコンサルティング買収によりIBMコンサルティング事業部門に参画。

 

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西林泰如
日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルティンググループ
シニア・マネージング・コンサルタント


総合電機メーカー、米国系戦略コンサルティングを経て、IBMに参画。専門はビジネス・テクノロジー両輪に関する、経営企画・経営戦略、事業開発・事業戦略、提携・投資/M&A、海外進出(米国シリコンバレー、シンガポール等での海外駐在経験)、情報通信・インターネット技術(日米120件超の特許の筆頭発明者)。IBMでは、Global Digital Strategy Groupに所属。IBMがリードする破壊的テクノロジーによる革新をテーマに、経営戦略・事業戦略、デジタル戦略、オペレーション戦略、組織チェンジ・マネージメント、テクノロジー・データ戦略の戦略業務に従事している。工学修士(MEng)、および、経営管理修士(MBA)。

 

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橋本光弘
日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルティンググループ
マネージング・コンサルタント


日本学術振興会特別研究員(DC1)、国内大手電機メーカー研究員(中央研究所、米国研究所他)としてストレージデバイスの研究開発に従事。その後、米系戦略コンサルティングファームおよびIBMにて、電機・機械・エネルギー・金融業界のコンサルティングプロジェクトに参画。専門領域は全社戦略(中期経営計画、ポートフォリオ戦略、シナリオプランニング)、新規事業戦略、M&A(ビジネスデューデリジェンス・PMI)、オペレーション改革、組織再編。近年は特にIoT・AI・ブロックチェーン等のテクノロジーを活用した新規事業戦略策定やオペレーション改革をテーマにしたプロジェクトを多数手掛けている。博士(工学)。

 
2019年3月5日、「日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)」本社において「量子コンピューティング・ビジネス 特別セミナー」が開催された。本記事はセミナーの抜粋レポートであるが、量子コンピューティングの概要や現状、海外最新動向を伝えるとともに、ビジネスにおいてのアドバンテージにどのように影響を及ぼすのか紹介。企業は量子コンピューティングにどう向き合うのか、そして、今取るべき行動について提言したい。

量子コンピューターは、量子状態を操作して超並列計算を実現し、理論上は現在のコンピューター(以下、古典コンピューター)に比べ数千倍ともいわれる計算能力を実装する可能性があるという。この量子コンピューターの開発、実用化への取り組みにおいて、IBMは最先端を走っている。すでに一部の企業では、この量子コンピューターをビジネスに用いるための取り組みを始めており、同時に、それは業界の垣根を越えて大きく加速している。

 

量子コンピューターの研究動向と展望

セミナーの前半では、日本IBM東京基礎研究所副所長 技術理事で理学博士の小野寺民也氏が、「量子コンピューターの最新の研究動向・将来展望」と題して量子コンピューターにおける研究の現状と展望、日本での活動を紹介した。

「量子力学で定義される量子状態を計算に利用するのが量子コンピューターの動作原理です。古典コンピューターでは、1か0のどちらかを表す「ビット」が使われています。一方、量子コンピューターでは1と0の重ね合わせであり得る量子状態をとる「量子ビット」が使われ(※)、超並列計算が可能になるのですが、それには、この量子状態を操作する仕組みが必要になるわけです」(小野寺氏)

クオンタム・ビジネス――量子コンピューティングによるインパクトと可能性(出展:THINK Business)

この「量子状態を操作する仕組み」は、演算の速さだったり、エラーの発生率だったり、さまざまな要素からいくつかの方式が知られているが、「超伝導回路」と「イオントラップ」、この2つが先行している方式といわれている。超伝導回路による量子ビットは、東京大学の中村泰信教授と東京理科大学の蔡兆申(ツァイ・ヅァオシェン)教授が、NEC時代に発見したもので、現在、IBMも超伝導回路の量子ビットを採用している。

「量子コンピューターは、潜在的な可能性として、指数関数的に処理量が増加する問題に対して超並列計算ができる計算力がある。強引に既存のスーパーコンピューター(以下、スパコン)と比較すると、世界1位のIBM製のスパコンはテニスコート2面分くらいの面積が必要なため、計算力を2倍にしようとすると、さらにテニスコート2面分必要なわけですが、量子コンピューターであれば1量子ビット足すだけです。量子コンピューターでは、基本的には、古典コンピュータと比べると大きな設置面積の増加を伴わずに、1量子ビット増加させる都度、計算力を指数関数的に増強できることが期待されています。そのあたりも重要な可能性だと思います」(小野寺氏)

この量子コンピューターを利用すれば、古典コンピューターが解けないもの、数億年かかると予測されるものも解けるようになる。注目すべきは、「現状で何か凄いことができるようになった」ではなく、ここ数年で、ミディアムスケールと呼ばれる「100から200、小さくても50量子ビットくらいの量子コンピューターが登場してくるだろう」という点にある。

小野寺氏いわく、それが登場してきた時、何か凄いことができるのではないかという期待があるという。そして、その何かを見つけるというのが現状の課題であり、同時に、エラーなどのリスクもある「近似的ミディアムスケールの時代」に適したものを見極めていく必要があるというのだ。

IBMの取り組みに目を向けると、2016年に世界初、5量子ビットの量子コンピューターをクラウド上に公開して、世界中の誰でも使えるようにした。このプログラムは「IBM Q Experience」と呼ばれ、主にヨーロッパやアメリカ、もちろん日本でも利用されており、利用者は2018年の10月に10万人を突破した。

さらにIBMは、2017年12月に「IBM Q ネットワーク」を発足し、量子コンピューターの可能性を探索し何ができるようになるのか、「宝物探しの旅」をクライアントと一緒に歩んでいこうとしている。このネットワークは、ビジネス的に価値のある量子アプリケーションの開発を加速させようとする取り組みで、AIにおける人材問題よりももっと深刻な、量子コンピューティング界の人材不足に備えた人材育成も行う。

その後、2018年5月には慶應義塾大学量子コンピューティングセンター内に、慶応義塾大学がハブとなる「IBM Q ネットワークハブ」を発足した。参加企業は、JSR株式会社、株式会社三菱UFJフィナンシャルグループ、株式会社みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカル株式会社の4社。このハブにおいては、IBM、各メンバー企業の研究員が、リモートではなく慶応義塾大学の矢上キャンパスに通い、最上位の量子コンピューターにアクセスしながら量子アプリケーションの研究開発を進めている。

ハブも、IBM Research、オークリッジ国立研究所、オックスフォード大学など各大陸に広がっており、また、アメリカの有力なスタートアップとエコシステムを作るなど、IBM Q ネットワークは順調に拡大している。

最後に小野寺氏は、「ミディアムスケールの時代で動かせる量子アプリケーションを、1つでも2つでもいいから作りたいと考えています。そして量子コンピューターによって解くことができる、ビジネス的に価値のある“何か”を見つけることを目指しています」と、今後の展望を表明した。

 

経営サイドから見た量子コンピューティングの可能性

小野寺氏に続き、「経営者の視点から見た“クオンタム・ビジネス”の可能性」と題し、日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング&デザイン統括 執行役員の池田和明氏が登壇。量子コンピューターが近い将来実用化された場合のビジネスにもたらすインパクトなど、経営サイドから見た量子コンピューティングの可能性が語られた。

2018年9月の日本経済新聞で、AIが日本の大手企業の主要な関心ごとであるにもかかわらず、「データが使える状態にない」「データ収集できていない」など、6割もの企業がAI導入に課題を抱えていることが報じられた。今は第三次AIブームといわれており、そのアプローチは、世の中に存在している莫大なビッグデータを基に機械学習を行い、示唆を引き出すという方式である。つまり裏を返せば、適正なデータが不足している状況では、AIも有効活用できないということになってしまうのだ。

ここに、AIと量子コンピューターの違い、また量子コンピューティングが起こす変革があるともいえる。単純対比することに懐疑的な意見もあるというが、経営サイドからの視点ということで紹介する。

「ビジネスにおける量子コンピューターの本質的な価値は、量子ビット数が増えるごとに指数関数的に計算力が上がり、超並列計算ができることによって組み合わせ爆発に高速で対処できることです。そして、この価値を有効活用するにあたり大切なのは、「いかに課題やビジネスをモデル化するか、定式化するか」ということです。それさえできれば、ビックデータがなくてもモデルから演繹的に答えの可能性を探索して、その中から最適な答えを導き出せるようになる。そしてそれが、量子コンピューティングの可能性であり、AIとの違い、ビジネスにおける変革だといえるでしょう」(池田氏)

この本質的な価値が具体的に、どうビジネスに生かされるのかを以下に提示する。

「図の左上部に記されたグレー部分のような一連の企業活動において、量子コンピューティングを生かすためには、青い部分に記した5層の進歩が必要です。下から、量子計算の世界、そこで動かす量子アルゴリズム、さらにそのうえのプログラミング。そこまでは、今もの凄い勢いで研究が進められ進化しています」(池田氏)

だからこそ今後大切になってくるのは、その上のプロセスである。解くべき課題を定式化すること、企業活動をモデリングすること、であるいう。IBMのコンサルティング部門は、ここに焦点をあてて、その部分の進歩に貢献していきたいと考えている。

「2-3年後には、100量子ビットくらい、ミディアムスケールの量子コンピューターが実用化されるということは確かだと思います。そのもう一歩先のためにも、企業の活動をどのようにモデル化するのか、その中で解くべき課題をどのように定式化するのか、ということが、経営サイドに与えられた命題になってくるでしょう」(池田氏)。

そこに対するひとつの答えとして、システムダイナミクス的なアプローチがある。複雑なシステムについて、構成する要素をあぶり出し、その要素間の関係性を数学的に比率してモデルを作る。そのモデルを使って、システム全体の挙動をシミュレートしてプランを作る。これが、システムダイナミクス的なアプローチである。

「量子コンピューターによって、クオンタム・システムダイナミクスが実現できるのであれば、今まで以上に大規模、かつ複雑なモデルを構築できるようになります。さらに、これまでの、事前に用意した複数のシナリオを使い、そこからベターなモデルを作るということではなく、シナリオを用意しなくとも、目指すべき答えから逆引きして最適なモデルを作り出してくれる、ということが可能になるのではないでしょうか」(池田氏)

量子コンピューターを用いることによって導き出される最適な戦略は、これまでのプランの答え合わせなのかもしれないし、また、まったく新しいプランなのかもしれない。どちらにしろ、膨大な打ち手を探索し、最適であろう答えを導き出せるということは、ビジネスの世界において極めて価値が高く、それができない他社に対して優位に立てることは間違いない。

「このような量子コンピューティングの活用は、おそらく10年後くらいには現実化するとみています。我々はそこに量子コンピューターの大きな可能性を見出していますし、これから2-3年は、それに至るロードマップを描くことに専念することでしょう」(池田氏)

では、企業や経営者はどのように向き合う必要があるのだろうか。

「ITテクノロジー部門には、この量子コンピューティングの特性の理解、量子アルゴリズムの理解、開発ツールを活用したプログラミング力などが要求されると思います。また、そういった人材を自社の中でどのぐらい育成できるかというのが、量子コンピューティングの活用に大きく影響を与えるでしょう。一方、経営サイドに要求されることは、やはり大局思考でビジネスを考える能力だと思います。量子コンピューティングに限ったことではない度量なのかもしれませんが、自社が直面する事業環境だったり、自社のビジネスモデルだったりを大きく捉えてそれを構造化できる力、その上で正しく課題を設定する力だと思います」(池田氏)

ただし、この発想自体も将来においては「過去にとらわれた発想」になるのではないかと、池田氏は懸念している。つまり、ネイティブに量子コンピューティングに触れ合う時代の人たちは、モデリングや課題の定式化自体に、もっと新しい発想を持つのではないか、とういことだ。今答えが出せない、楽しみな懸念といったところだろう。

 

“Q2B Conference 2018”からの事例報告

講演後半では、日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループの西林泰如氏より、「リーディングカンフアレンス“Q2B Conference 2018”の最新動向」と題して、すでに量子コンピューティングに取り組み始めている欧州の航空機メーカーの事例が紹介された。

数百億円から数千億円単位でオーダーを受け、米国の大手競合と市場を二分する競争を繰り広げている同社にとって、市場環境の変化に対する判断を読み間違えることは死活問題である。そのため、事業を進めるうえで、より精緻な分析力が求められる。

「路線の多様化、エンドユーザーの多様化、燃費の最適化、積荷の上げ下げなど空港オペレーションに対する最適化、さらには、研究開発コストの最適化、航空機を作る前の機体シミュレーションなど、さまざまな課題を解決することは競合に対するアドバンテージに直結します。とはいえ、これは簡単に解ける課題ではなく、非常に莫大で複雑な組み合わせ爆発などが生じ、古典コンピューターで解こうとすると途方もない計算量と時間を要する、非常に難しいタスクなのです」(西林氏)

この状況を踏まえ、同社は、2015年に量子コンピューティングを専門とするチームを立ち上げ、本格的な取り組みを開始した。十数名程度からスタートしたこの組織は、活動・検討結果を2016年にプレリミナリーレポートとして経営サイドにあげた。どのような技術的なインパクトが社外に起こっていて、これに取り組むことで競合に対してアドバンテージを取る可能性があるところを明確化したのである。

続いてPoC(Proof of Concept)ということで、研究戦略の策定、そうしたものを実際に事業部門に組み込んで行く際の組織体制などを具体化していく。2018年の年末、シリコンバレーで開催された「Q2B Conference 2018」で「クオンタムコンピューティング・チャレンジ」という構想を発表。これは、自社の中での方向性を定めた上で、その事業課題に対してのアイデアを外部に公募する取り組みだ。

「同航空会社は、『Q2B Conference 2018』で非常に注目を集めていた事例ですが、実は、同様のアプローチを取る企業は、他にも幾つかあるのです。たとえば、同じくヨーロッパの大手自動車メーカーは、量子コンピューティングへの取り組みを2017年の6月に始めています。技術探索をまず行い、その上でテクノロジーレポートという形で経営サイドに向けての示唆を与え、PoCで組織化を行うというところまで、非常に戦略的に進めてきています」(西林氏)

航空会社の事例だと2015年から、この大手自動車メーカーの例でも2017年から時間をかけて徐々に形にしている。これは、2021年を境に、古典コンピューターで解が得られる領域の同じ課題に対して、量子コンピューターの方がより効率的かつ短時間で解を得られるようになる時代「クオンタム・アドバンテージ」を迎えると考えられているからである。つまり、自社が競合に対してアドバンテージを得るためには、「クオンタム・アドバンテージ」の時代を迎えてから準備を始めても非常に厳しいのである。

「量子コンピューティングでいわれているのは『Winner Take All』ということ。進めるべきは、今このタイミングであり、事例で紹介したような企業が数多く出てきている状況です。準備期間から実際に運用する時期『クオンタム・アドバンテージ』にシフトしつつある中で、競合に対してアドバンテージを取るためには、エコシステムへの関わり方であったり組織人材の作り方であったりが重要になってくるということが海外の事例から分かると思います」

「Q2B Conference 2018」は、IBMもゴールドスポンサーになっており、2017年より年に1回、シリコンバレーで開催している。2018年の参加者は、約400名、日本からの参加者が米国に次いで2番に目に多い40名弱である。参加者には、量子コンピューターの開発サイドだけではなく、量子コンピューティングを自社に取り込みたい企業も多いという。

 

IBM“クオンタム・コンサルティング”とは

海外における事例からわかることは、企業内で量子コンピューティングの導入を検討し、事業活動に組み込むまでには準備期間が必要であり、経営サイドは、今取り組みを始めるべきだということ。西林氏に続いて、日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループの橋本光弘氏が「IBM最新オファリング:“クオンタム・コンサルティング”のご紹介」と題して登壇した。

「今クオンタムレディ(準備期間)にある量子コンピューティングは、古典コンピューティングではできなかったことができるようになるクオンタムアドバンテージという時代を迎えようとしています。しかしながら、量子コンピューティングにより社会や事業環境がどの様に変わるかを現時点で見通すことは非常に困難です。この非常に不確実な環境においてはシナリオ・プランニングの考え方が有効であり、特に量子コンピューティングの文脈で企業が考えるべき戦略は、形成型の戦略が最適だといえるでしょう」(橋本氏)

形成型の戦略においては、未来シナリオを見定めた上で、それに必要な企業能力を主体的に獲得することが求められる。その結果、非常に早い段階で量子コンピューティングを有効活用できる圧倒的な競争優位性を獲得できると考えられるからだ。

橋本氏はさらに、この形成型の戦略を実現するには、自社だけでなく、他社や研究機関なども含めたエコシステムの形成を考えていく必要もあると述べた。その上で、戦略を実行に移すステップとして、以下5つを提言した。

①責任者の決定
②事業機会や有望アプリケーションの特定
③実機での検証
④ロードマップの構築(事業アプローチの決定)
⑤量子コンピューターや事業環境の変化に合わせた柔軟な事業推進

「特に重要なのはステップ②だと考えています。この事業機会や有望アプリケーションを特定するためのプロセスを、クオンタムバリューアセスメント『QVA』と呼んでいますが、肝になるのは、量子コンピューターを単体で考えるのではなく、AIやIoTなど他の先進技術との組み合わせも含めてその価値を考えるということです」(橋本氏)

IBMが想定するこのQVAは、まずは量子コンピューティングが適用できる事業機会をアプリケーションレベルで見定め、それがどのようなインパクトをもたらすのかを推定する。その上で、複数の戦略シナリオを描き、そこからバックキャストでロードマップに落としていくというプロセスである。推進体制としては、全社レベルで推進するため、経営企画や各事業部門のキーマンがこのプロジェクト体制に入っていることが重要であると考えている。

最後に、橋本氏からの提言でセミナーは締めくくられた。

「量子コンピューティングで何か凄いことができそうだと考えています。テクノロジーというのはその登場時に想像されていた未来よりもはるかに凄い世界を作り出して来た歴史があり、量子コンピューターもそうなる可能性があると考えています。今後の進化が不確実なものを、自社の中に組み込んでいくということを考えると、クオンタムレディ(準備期間)からクオンタムアドバンテージというところにシフトを遂げようとしているまさに今この時から取り組んでいくべきでしょう」(橋本氏)

 

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