生成AIで財務業務の効率を向上させるには

動きを抽象的に表現した背景、ビジネス・サイエンスとテクノロジー向けの波線無限ループ

生成AI(Generative AI)について学んだとしても、それが財務・会計(F&A)の将来にどのような影響を与えるのか、十分に理解していないかもしれません。その名の通り、生成AIは画像、音楽、音声、コード、ビデオ、テキストを生成すると同時に、既存のデータを解釈・操作することができます。F&Aのリーダーにとっては、ナラティブ、コメント、業績報告などの財務データを変換・活用する可能性があることを意味します。AIの導入はハードルが高く感じられるかもしれませんが、新しい基盤モデルの柔軟性と拡張性により、企業はF&Aプロセスの戦略的中核にAIを組み込み、導入を加速させることができるでしょう。

F&A向けの新しい生成AIソリューションや独自のAI基盤モデルに触れると、その選択肢の多さに圧倒されることもあるでしょう。選択するモデルがF&Aユースケース全体の導入を効果的に加速し、価値実現までの時間を短縮できると確信して選ぶことが重要です。

財務報告のナラティブ(および解説)は、企業の財務実績に関する有意義な洞察と文脈的理解を提供する上で極めて重要な役割を果たします。現在は金融アナリストがこれらのナラティブを作成していますが、この方法は非常に時間がかかります。今後は、綿密な分析や批判的思考、効果的なコミュニケーション能力を必要とする手作業のプロセスから、業務効率を合理化し改善するAI搭載プロセスへと変革していく必要があります。

課題を克服し、より強力なナラティブを生み出す

IBMは、企業がレポートや文章・解説を作成する際に、以下のような課題に直面することが多いことを認識しています。

  • 財務情報の複雑さ: 財務報告書には膨大な情報が含まれており、この情報を簡潔で理解しやすい文章や解説にまとめることは、大きな負担となります。
  • 解釈と文脈の提供: 財務報告書では、単に数値を示すだけでなく、財務データを解釈するための意味のある背景情報や洞察を提供する必要があります。報告書の作成が不十分だと、業績の根本的な要因を説明する能力が制限される可能性があります。
  • さまざまな利害関係者への対応: 財務報告書は、投資家、アナリスト、規制当局、従業員など、さまざまな利害関係者を対象としています。利害関係者のニーズに応じて文章や解説を調整することは困難です。それぞれのグループにとって関連性があり、理解しやすく、洞察に富んだ情報を提供することは、多くの労力を要します。
  • 適時性と遵守: 財務報告は、厳格なスケジュールや期限に従って作成される必要があります。そのうえ企業は、さまざまな情報源から財務データを収集・分析・まとめるという課題に直面しています。この制約と作業負荷により、十分な分析や解説に充てられる時間が減少し、その結果、レポートは必要なほど包括的で洞察に富んだものにならない場合があります。

これらの課題にもかかわらず、F&A業務に生成AIを戦略的に導入することで、生産性の向上と業務の合理化が可能になると私たちは確信しています。

たとえば、財務報告書の文章や解説を生成する際に、生成AIがサイクル・タイムをどのように改善できるかを示しました。図1は、完了までにほぼ2週間かかっていた財務プロセスを示しています。図2は、生成AIをプロセス全体に適用することで高速化され、リアルタイムで文章や解説が生成される様子を示しています。

図1は、手動プロセスステップを含む現状のワークフローを示したものです。 図1は、手動プロセスステップを含む現状のワークフローを示したものです。
図2は、AIオートメーションを導入した未来のワークフローのイラストです。 図2. 未来の状態:生成AI作成の財務報告の解説とナラティブ

F&A資産を手動で検索する代わりに、AIを活用することで、競合他社との比較における企業の業績、実行すべき主要な施策、想定されるアナリストからの質問や企業の回答など、必要な洞察を収集・分析する時間を短縮できます。AIは財務諸表、メモ、開示資料、その他の関連データを分析し、それを解釈・翻訳して、質問に対して文脈に沿った回答を提供します。図3は、対話型AIテクノロジーがもたらす付随的なメリットを示しています。

図3は、AIによるセマンティック検索がどのようにデータを分析するかを示した図です。 図3. 将来の状態:会話機能(AIによるセマンティック検索)

生成AIを活用して財務報告向けの解説文やナラティブを作成することには、次のようなメリットがあります。

  • 効率性の向上:AIにより、ナラティブ作成にかかる時間と労力を大幅に削減できます。また、大量の財務データを分析・処理し、主要な傾向や洞察を抽出して一貫したナラティブを生成することが可能です。これにより、財務チームは貴重な時間を節約し、より付加価値の高いタスクや分析に集中できます。
  • 一貫性と正確性の向上:異なるレポートや調査対象期間でのメッセージの一貫性を保つことができます。適切にトレーニングされたモデルは、事前定義されたルールや基準、ガイドラインの遵守を支援し、エラーのリスクを低減するとともにナラティブの不整合を防ぎます。また、反復的なトレーニングとフィードバックにより生成コンテンツの精度をさらに高めることも可能です。
  • 高度なデータ分析: 生成AIは複雑な財務データを分析し、人間だけでは把握しづらいパターンや相関、異常値を特定できます。
  • 拡張性と適応性の向上:増加する財務データや報告要件に柔軟に対応できる能力を強化します。生成AIを活用することで、増え続けるレポート需要に効率的に対応しつつ、必要に応じて技術も進化に合わせて適応します。
  • 意思決定への価値ある洞察の提供:AIが生成する財務報告ナラティブは、利害関係者にタイムリーかつ価値ある洞察を提供し、戦略的意思決定やリスク評価、業績評価を支援します。
  • コラボレーションと反復計画の促進: 生成AIは、財務の専門家とAIシステム間の協働を促進します。反復的なトレーニングや微調整を通じてシステムの性能を継続的に改善し、組織固有の要件や好みに適応させることができます。

戦略的ロードマップは重要なステップ

生成AIやその他の機能は現在すでに利用可能かもしれませんが、可能な限り総合的かつ戦略的な視点で取り組み、最も有望なF&A施策を展開するために、情報技術部門などの関係者とともに適切な生成AIテックスタックを評価・検討することをお勧めします。図4は、F&A組織全体にこれらの新機能を効果的にデプロイする際に考慮すべきアプリケーション、モデル、インフラストラクチャーを反映した生成AIの予備的なテックスタック(またはアーキテクチャー)を示しています。

図4は、IBM Consultingの生成AIスタックのモデルを示したものです。 図4. IBM Consulting:生成AIスタックのモデル

中核となるプロセス全体にわたるF&A機能への生成AIの導入を検討する場合、このテクノロジーが万能薬ではないことを理解することが重要です。AIはすべての問題を解決したり、人間の専門知識に取って代わるものではありません。むしろ、F&Aチームの能力を強化し、より効率的で正確かつ洞察に富んだ業務を可能にし、戦略的な取り組みに集中できるようにするツールとして捉えるべきです。

ビジネス価値を最大化するために、F&Aの実務者は、目的を明確に理解し、段階的かつ具体的なロードマップに基づいて生成AIを活用する必要があります。F&Aの専門家が推奨する重要なポイントは以下の通りです。

  • 健全なAI戦略から始める。当社のブログシリーズでは、財務レポートの要約を通じて得られる経験やビジネス価値の向上など、これらの基盤モデルがもたらす能力の大幅な強化について解説しました。まず、AI主導の新しいF&Aインサイトを企業全体に広めるために、コスト、効率、戦略への意図する影響を反映し、マッピングすることから始めます。
  • テクノロジーを試験運用する。特定のビジネス課題や問題に対応するパイロットプロジェクトを立ち上げます。このプロジェクトは、迅速に成果を出すことができ、かつ結果を厳密に測定してパフォーマンスやROIへの影響を判断できるものであるべきです。その後、アプローチをさらに改良し、徐々に他のユースケースに拡張します。
  • 明確に定義されたF&Aロードマップを設計する。生成AIは、より迅速で正確かつ洞察に富んだ意思決定を可能にすることでF&A機能を変革する可能性があります。AIの能力と限界を十分に理解したうえで、ビジネス目標に沿った段階的かつ時間ベースのロードマップに基づき、慎重かつ戦術的に導入に取り組むことが不可欠です。
  • F&Aの専門知識を持つテクノロジーパートナーと共創する。新しいテクノロジーをビジネス課題の解決にどう適用するかを考慮することが重要です。生成AI導入の前に、共創可能なパートナーと提携し、戦略的な財務主導のテクノロジーロードマップの構築と価値実現のサポートを受けることが不可欠です。
  • 倫理的な影響を考慮する。モデルのトレーニングに使用するデータは、偏りがなく代表性のあるものであることを保証する必要があります。また、使用するアルゴリズムが既存のバイアスを永続化・増幅しないようにすることも重要です。さらに、テクノロジーの意図しない結果を検知して対処するために、結果を定期的に監視する必要があります。
  • F&Aチームとコミュニケーションをとる。チームは、このテクノロジーがどのように業務を強化するかを理解する必要があります。企業全体の非常に有能なF&A専門家の役割を奪うのかという疑問も生じるでしょう。しかし、F&Aチームによって適切に検証・導入された場合、生成AIは人間とデジタルのハイブリッド労働力を形成し、従業員がワークフローを迅速かつ正確に完了できる能力を高めます。

大規模な生成AIを導入・運用する際には、生成AIに関するIBMのセンター・オブ・エクセレンスが、安全に信頼できるAIを導入し、IBM watsonxや各種AI製品ポートフォリオ、独自仕様またはサードパーティモデル(あるいはその組み合わせ)を活用するための適切なAIツールキットの選定を支援します。さらに、トランスフォーメーションに向けた戦略的ロードマップの構築をサポートし、生成AIが大きなビジネス価値をもたらし、業務効率を向上させることを可能にします。

このブログシリーズ「生成AIによる財務の未来」では、F&A専門家が生成AIをどのように活用し、F&A機能を効率化・強化できるかについて、さらに詳しく解説しています。

 

著者

Juan Jimenez

Senior Product Marketing Manager, Finance Transformation

IBM Consulting

Honor Sherlock

Product Marketing Manager, Data & Technology Transformation (Data, AI and Automation)

IBM Consulting

Lucas Juarez

Partner, Global Finance Transformation

IBM Consulting

Shobhit Varshney

VP & Sr. Partner, AI, Data & Automation Leader, Americas

IBM

Vasanti Pillutla

Associate Partner, Global Finance Transformation

IBM Consulting

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