予測とは

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共同執筆者

Rina Diane Caballar

Staff Writer

IBM Think

Cole Stryker

Staff Editor, AI Models

IBM Think

予測とは

予測とは、パターンを分析し、以前と現在のデータの傾向を明らかにすることによって、将来の出来事や状況を予測する手法です。数学的アプローチを使用して、統計モデルを適用することで、予測を立てます。

ビジネス予測とは、製品やサービスに対する顧客需要の推定、売上の予想、あるいは成長や拡大の推定を行うことを目的とするものです。これにより、予算、資本、人材などの割り当てが容易になります。つまり、ビジネス予測は、意思決定プロセスに役立つということです。

予測は、多くの場合、ビッグデータ分析予測分析に関連付けられています。今日、多くの予測手法では、人工知能(AI)機械学習の手法が利用されており、より迅速かつ正確な予測が可能となっています。経営コンサルティング会社のMcKinsey社の調査によると、AI搭載ツールを使用すると、予測誤差を最大50%削減でき、その結果、在庫不足が減少し、売上の損失も最大65%減少します。1

しかし、予測はあくまでも予測であり、100%正確ではないことはよくあります。予測の時間軸も重要です。短期的な予測は、長期的な予測に比べると正確かもしれません。また、データを集約したり、いくつかの手法を組み合わせたりすることで、精度を高めることができるかもしれません。あるいは、予測を意思決定の最終的な決定要因ではなく、あくまでも目安として考えることも可能かもしれません。

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予測の仕組み

予測プロセスは組織ごとに違った面を持ちますが、通常は次の手順が含まれます。

予測する内容を定義する:企業は、予測したい具体的なビジネス・ケースやメトリクスを特定し、関連する仮定や適用可能な変数を考慮に入れます。

データを収集する:このステップには、必要なデータの収集が含まれます。過去のデータがすでに存在する場合は、最も適切なデータ・セットを決定する必要があります。

予測手法を選択する:ビジネス・ケースやメトリクスだけでなく、関連する変数、仮定、データ・セットにも最適な予測手法を選択します。

予測を立てる:選択した手法でデータを分析し、その分析から予測を立てます。

予測を検証する:予測をチェックし、より正確な予測を行うために最適化できるかどうかを確認します。

予測を提示する:データを可視化すると、予測をより視覚的な形式で表現できるため、利害関係者は理解しやすくなり、意思決定プロセスで活用しやすくなります。

予測はさまざまな方法で行うことができますが、各アプローチは通常、定性的予測と定量的予測という2つの主要な手法のいずれかに分類されます。

定性的予測

定性的予測は、消費者の意見、専門家の洞察、上級管理職の見解など、人間の判断に基づいています。この予測手法では、定性的情報を定量的データに変換する体系的な手段として、評価メカニズムが適用されます。

ここでは、よく使用される定性的予測のアプローチをいくつかご紹介します。

デルファイ法

デルファイ法では、複数の専門家を招いて、予測対象のビジネス・ケースやメトリクスについての見解を求める一連のアンケートに回答してもらいます。回答は匿名で行われるため、さまざまな視点を平等に検討することができます。以前のアンケートの回答は、次のアンケートの作成に使用され、このプロセスは予測についてコンセンサスに達するまで継続されます。

市場調査

企業は、市場調査会社の協力を得て、顧客調査を実施し、製品やサービスについて意見を求めます。このような調査から収集されたデータは、売上予測や、製品・サービスの改善に役立てられます。

定性的予測のメリットと限界

定性的予測には、次のメリットがあります。

  • 新製品やテクノロジーの市場受容率や市場浸透率を評価する場合など、データが限られている場合に使用できます。
  • この予測では、定量的データでは収集しにくい、専門家や、企業とその製品・サービスについて高度な知識を持つ人々からの情報が統合されます。
  • 多くの場合、危機や災害など、1回限りのインシデントや異常なシナリオが検討されます。つまり、状況が常に変化するような場面には、定性的予測が適している可能性があります。

しかし、このタイプの予測には欠点もあります。

  • 定性的予測は人間の判断に頼るため、主観的になり、バイアスがかかって、要因や仮定が過度に強調されたり、見落とされたりする可能性があります。
  • 定性的情報では、最新の出来事や直接体験したことだけが検討されることもあるため、過去のデータから得られる長期的な傾向やパターンを見落とす場合があります。
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定量的予測

定量的予測は数値データに基づいており、数学モデルと統計的手法を使用して予測を立てます。多くの定量的予測手法では、プロセスの強化に、データサイエンス、AI、機械学習が活用されています。

ここでは、一般的な定量的予測ストラテジーをいくつかご紹介します。

時系列予測

この定量的手法では、時系列としてモデル化された過去のデータを使用して、将来の結果を予想します。時系列とは、起こった順にプロットされた一連のデータ・ポイントのことです。

時系列予測モデルは、サイクル、不規則な変動、季節性、その他のばらつきの影響を受けるデータの予測可能な傾向を明らかにするのに役立ちます。

時系列分析と時系列予測はよく一緒に言及されます。時系列分析は、時系列データを理解し、そこから洞察を得ることを意味しますが、時系列予測は、分析の域を超えて将来の値を予測するものです。

時系列予測には、次のようなさまざまな手法があります。

ナイーブ

ナイーブ法では、前の期間のデータ・ポイントが、次の期間の予測値として使用されます。最もシンプルな時系列予測手法であり、多くの場合、予備的なベンチマークと見なされます。

単純移動平均

単純移動平均法は、過去T期間のデータ・ポイントの平均値を算出します。その平均値が、次の期間の予測値となります。

加重移動平均

この手法は単純移動平均法に基づいていますが、過去T期間の各データ・ポイントに重みを付けます。

指数平滑法

指数平滑法は、指数関数的に重みを付けた平均値を時系列データに適用することで機能します。データが古くなるにつれて重みは指数関数的に減少し、データが新しいほど重みは大きくなります。

平滑化係数(平滑化パラメーターとも呼ばれます)は、過去と現在のデータに割り当てる重みを制御します。このような重みを使用して算出された加重移動平均が、予測値となります。この予測は、時系列を平滑化したものとなり、データから変動、ノイズ、外れ値、ランダムなばらつきが排除されます。

指数平滑法は通常、膨大なデータ・セットを必要としないため、短期的な予測に適した手法といえます。また、現在のデータにより重点を置くため、新しい傾向や変化する傾向にすばやく適応できます。

季節指数

季節指数は、商品やサービスの生産や需要が季節に左右される企業に役立ちます。

季節指数を算出するには、特定の季節の平均需要をすべての季節の平均需要で割ります。これらの平均は通常、移動平均法を用いて算出されますが、当該季節のみの時系列データを使用して指数平滑法を適用することもできます。結果として得られる季節指数が1未満の場合は、平均需要よりも低いことを示し、1より大きい値の場合は、平均需要よりも高いことを示してます。

次の季節の予測を立てるには、当該季節の予測需要に、対応する季節指数を乗算します。

因果モデル

因果モデルは、データ内の因果関係を数学的に表現したものです。この予測モデルは、時間軸が長めの予測に適しています。

回帰モデル

回帰ベースのモデルは、予測変数または従属変数と、1つ以上の説明変数または独立変数との関係を分析します。回帰モデルの例としては、予測変数と説明変数との線形関係を表す線形回帰があります。

計量経済モデル

計量経済モデルは回帰モデルに似ていますが、金利やインフレなどの経済変数や、市場の状況や資産価格などの経済関係に焦点を当てています。

定量的予測のメリットと限界

定量的予測には、次のようなメリットがあります。

  • 数字と数学に基づいているため、より客観的な予測が可能です。

  • 一貫性があり、再現可能で、構造化された出力が得られるので、特定の時間枠での分析を効率化することができます。

しかし、この予測アプローチには次のような落とし穴もあります。

  • 専門家の洞察、インサイダー情報、その他の定性的データを定量的予測に統合することは困難です。

  • 信頼性の高い予測を立てるには、十分な過去のデータが必要です。

AI予測

AI予測では、時系列予測や回帰モデルのような定量的予測手法に、AIと機械学習アルゴリズムが使用されます。AI予測は、膨大な量のデータを処理し、すばやく計算を行い、複雑な予測に取り組み、相関関係を迅速に明らかにすることができます。

ここで、AI予測で使用される一般的な機械学習モデルと手法をいくつかご紹介します。

AI予測を使用する場合、企業の予測目標とモデルの整合性を評価することが重要です。モデルのパフォーマンスを定期的に監視して、パフォーマンスを最適化するためにモデルを新しいデータで再トレーニングする必要があるのか、あるいは微調整する必要があるのかを判断します。また、モデルが説明可能かどうかも検討して、すべての利害関係者が、予測がどのように行われたか、そしてその予測をどのように解釈すればいいのかを理解できるようにします。

予測の応用

予測はさまざまなビジネス分野で実施することができます。

ファイナンシャル・プランニング

組織は予測を使用してコスト、収益、その他将来の財務結果を予測することで、予算編成や投資に関する意思決定に役立てることができます。ファイナンシャル・プランニングにおける予測では、ビジネスの現状だけでなく、経済状況などの外部要因も検討されます。

例えば、アルゼンチンのある銀行は、AI予測によって、スプレッドシートベースの「what if(仮説)」財務シナリオの作成時間を数日から数秒に短縮することができました。

生産計画

予測は、企業がより優れた生産計画を立てるのに役立ちます。例えば、ある製材業者は予測ソフトウェアを使用し、製品、配送、在庫のデータに基づいて予測を定期的に更新しています。工場監督は、日々の予測を立てることで、スケジュールに優先順位を付けて、ワークロードのバランスを取ることができるようになり、その結果、同社は財務部門全体における予測とレポート作成の取り組みにかかる時間を25%節約しました。

売上予測

定性的手法、定量的手法のいずれも、将来の売上高や売上高成長率といった売上数値を予測するのに利用することができます。例えば、回帰モデルを使用すると、売上に関する、経済状況とマーケティング費用の相関関係を分析することができます。

サプライチェーン予測

予測手法を使用すると、正しい製品がスケジュール通りに意図された目的地に届くように、サプライチェーンを管理することができます。サプライチェーン予測は、企業が在庫を常に把握し、顧客の需要に応え、顧客体験を向上させるのに役立ちます。

しかし、規制や消費者需要の変化、メーカーやサプライヤーのリードタイム、季節性など、いくつかの要素により、サプライチェーン予測が困難になる場合もあります。

予測ソフトウェア

予測ソフトウェアは、さまざまなソースからのデータを統合したり、複数の変数間の相互作用を分析したりするなど、高度な機能を提供します。これにより、企業は信頼性の高い予測を立て、予測モデルとシミュレーションを効率的に更新および管理できます。その他の予測ツールにも、ワークフローの自動化、精度の向上、プロセスの迅速化を実現するためのAI機能が組み込まれています。

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