ERP統合とは

ERP統合により、関連部署の連携が可能になり、利害関係者が企業データに簡単にアクセスできるようになります。ビジネス全体の健全性を不明瞭にし、従業員がさまざまなアプリケーション、プラットフォーム、部門にわたって情報を検索しなければならなくなる可能性を生じさせるデータ・サイロを、ERPソリューションは排除します。ERP統合により、データが一元化され、ビジネス・プロセスの可視性が向上し、より迅速かつ情報に基づいたビジネス上の意思決定が可能になります。

エンタープライズ・リソース・プランニングは、組織が企業全体でデータを収集、管理、共有すできるようにするビジネス管理ソフトウェア・システムです。これらのシステムは、統合モジュールとも呼ばれるビジネス・アプリケーションで構成されています。ERPを導入することにより、財務部、サプライチェーン管理・調達部、人事部などのビジネスのコア機能を統合プラットフォームで管理できるようになります。

最新のERPソフトウェアでは、事前に組み込まれたコネクターとアプリケーション・プログラミング・インターフェース（API）が使用されます。これらは、異なるシステムが相互に通信し、それらのシステム間のデータフローを促進できるようにするプロトコルのセットです。ERP統合戦略では、企業が意思決定を行うために使用するデータと、そのデータを使用してビジネス機能を最適化する方法が考慮されます。

統合ERPソリューションは、ERPソフトウェアと他のエンタープライズ・システムおよびアプリケーション間の効率的なデータ・フローを促進し、関係者が必要な情報に簡単にアクセスできるようにします。現代の企業は大規模なデータセットを収集していますが、ERP統合により、大量のデータをより適切に表示および分析できるようになります。この機能により、チームはシステムの非効率性やセキュリティの脅威を発見し、成長の機会を探り、変化するビジネス環境に迅速に適応することが可能です。

ERPベンダーは、事前に組み込まれたオプションとカスタマイズ可能なオプションの両方を備えたERP統合サービスを提供します。ビジネス・ニーズは、ITリソース、企業が実行するソフトウェア・アプリケーションの数、アプリケーションがクラウドベースかオンプレミスでホストされているか、拡張性のニーズ、予測されるビジネスの成長などの要因によって異なります。

ERP統合方法には、ポイントツーポイント統合、エンタープライズ・サービス・バス、統合プラットフォーム・サービス（iPaaS）などがあります。

ポイントツーポイント統合により、2つのシステムを直接連携できます。ITチームはカスタム・コードを使用して2つのシステム間の直接通信を設定し、高度な管理を実現します。ポイントツーポイント統合は、ソフトウェア統合が最小限の基本システムの場合、低コストのオプションとなることがよくあります。

多くのアプリケーションが関係する大規模な統合の場合、このモデルではIT部門が拡張性を維持することが困難になる可能性があります。ポイントツーポイント接続では、IT部門がコードを作成および管理する必要があり、コストと時間がかかります。

ESBは、さまざまなソフトウェア・システムの統合を管理する集中型ソフトウェア・コンポーネントです。オンプレミス・アーキテクチャー内の複雑な統合によく使用されます。

ESBは、アプリケーション間で情報を変換するコネクターを使用して情報を標準化します。この変換の中間層は通信バスと呼ばれます。ESBはレガシー・システムを統合する際には強力なツールですが、クラウド・アプリケーションにとっては最適な選択肢ではありません。ポイントツーポイントと同様に、ESBを統合および保守するには、IT部門の技術的な専門知識が必要です。

iPaaSは、異なるIT環境でホストされている複数のアプリケーションからのデータを連携するために使用される、セルフサービス型のクラウドベースのツールとソリューションのスイートです。iPaaSは、大規模な組織で採用されているソフトウェア・アズ・サービス（SaaS）ソリューションの拡大するエコシステムを管理できるように設計されています。

iPaaSクラウド連携サービスは、ますます複雑化するIT環境（ハイブリッドクラウド環境など）でのアプリケーションやデータ・ソース、サービスの連携において増大する課題に対するソリューションを提供しています。これらは、企業が連携フローを調整し、異種システム間の相互運用性を最大限に高めるのに役立つ、事前に組み込まれたコネクター、マップ、変換ツールなどを提供することで、エンタープライズ・レベルでの連携とデータ管理の課題に対処しています。

iPaaS統合は、その拡張性とSaaSおよびクラウドベースのアプリケーションとの適合性により、多くの現代のビジネスにソリューションを提供します。

ERPシステム統合には、組織の種類と構造、目標、ニーズに基づいたさまざまなビジネス機能とソフトウェアが含まれます。ERP統合のユースケースには以下が含まれます:

• ビジネス・インテリジェンス（BI）
• CRM（顧客関係管理）
• プロジェクト管理
• サプライチェーン・マネジメント
• Eコマースプラットフォーム
• 人事

ビジネス・インテリジェンスとは、組織データの分析を通じて洞察と改善されたビジネス戦略を生み出すために設計された一連のプロセスを指します。企業は、さまざまな部門にわたってデータを収集、管理、整理し、関係者に事業運営の詳細な状況を伝えるツールを導入しています。

ビジネス・インテリジェンスERP統合により、組織はAIを活用したツールを導入して、データの収集と分析を自動化できるようになります。このプロセスを自動化すると、リアルタイム・データに基づく分析情報が提供され、ワークフローとビジネス・オペレーションを積極的に更新できるようになります。

CRMツールは、顧客または潜在顧客とのやり取りに関連するデータを記録および管理するのに役立ちます。CRMシステムには、購入履歴、連絡先情報、顧客サポート・チームとのやり取りに関連する情報などの顧客データが含まれます。このデータは、営業部、マーケティング部、顧客サービス部の各チームが顧客維持率を高め、新規潜在顧客を開拓し、顧客体験を向上させるのに役立ちます。

ERP統合により、このデータがさまざまなチーム間で可視化され、より情報に基づいた意思決定と最適化された販売およびマーケティング活動が可能になります。

ERPシステムとプロジェクト管理ツールを統合すると、組織のリーダーはさまざまなチーム間でタスクを調整し、期限を守ることができます。プロジェクト・マネージャーはこれらの統合を使用して、イニシアチブと製品スプリントをより効率的にし、プロジェクト計画を改善します。ERPシステムとプロジェクト管理ソフトウェアを統合すると、プロジェクト・マネージャーは1つの統合システムを使用して、ワークフローや手順に影響を与える可能性のあるビジネス全体の取り組みについてチーム・メンバーに最新情報を提供できるようになります。

ERP統合は、販売、出荷、倉庫在庫、製造システムからのデータを統合することで、サプライチェーン管理を支援することができます。ERPシステムは、注文の作成から履行までのすべての手順と担当者を含む注文管理の最適化に役立ちます。製造段階で問題が発生した場合や出荷が遅れた場合、統合システムによって在庫管理チームへのアラートが自動的に送信され、倉庫、顧客、ビジネス管理チームに予想配達時間に関する最新情報が提供されます。

ERPe-コマース統合により、在庫管理、製品データ、発注履歴、顧客データが一元化されます。このデータを一元管理することで、組織は、Webサイトのリストが現在の在庫と一致するようにするなど、eコマース・サイト上の多くの機能を自動化できます。

eコマース統合により、組織間での自動化と効率的な情報共有が可能になります。例えば、この統合により、出荷情報の流れをフルフィルメント倉庫に自動化することで、注文処理を簡素化できます。マーケティング部と営業部は、eコマース情報を使用して、需要の高い製品と販売パターンを把握し、それに応じて戦略を調整できます。eコマース・データは、製品を段階的に廃止する必要がある時期や価格モデルを調整する時期をビジネス・チームが決定するのに役立ちます。

人事（HR）部門は、採用や解雇、福利厚生の管理、業績評価、給与追跡など、多くの組織タスクと、大量の従業員データや文書を処理することがよくあります。ERP統合により、個々の従業員のプロファイルの作成と管理が容易になり、安全に保存されるため、このデータを統合できます。

HRシステムとの統合により、HRチームはより広範なビジネス・ニーズを把握できるようになります。これは、新しい従業員を採用したり、求人情報を作成したりするときに役立ちます。ERP統合により、オンボーディングや有給休暇（PTO）の承認など、多くの手動のHRタスクを自動化できるため、HRチームはより戦略的な作業に集中できるようになります。

ERP統合には、組織の支援をはじめとするさまざまなメリットがあります。

• リアルタイム・データを統合
• 信頼できる唯一の情報源を持つ
• ワークフローの自動化
• オブザーバビリティーの向上

リアルタイム・データの収集、統合、分析は、チームが組織的な知識管理体制を確立し、ビジネス機能をより深く理解するのに役立ちます。データがサイロ化されていたり、さまざまな部門間でアクセスできなかったりすると、組織はリソースとビジネスニーズを総合的に理解できなくなります。このサイロ化されたデータにより、ワークフローの冗長性やその他の非効率性や問題が発生する可能性があります。

ERP統合により、以前は分散していたデータが統合され、チームはデータからより大きな価値を引き出し、組織プロセスの改善に役立つ洞察を発見できるようになります。

ERPアプリケーションを他のエンタープライズ・アプリケーションやデータベースと統合すると、データの集中化が可能になり、部門間の内部コミュニケーションが改善されます。また、従業員がデータの検索に時間を無駄にすることもなくなります。

一元化されたデータ・リポジトリーにより、リアルタイムのデータ報告と分析結果の配布が容易になり、すべての部署が信頼できる単一の真実のソースが組み込まれます（また、関係者全員が同じ情報に基づいて行動していることに確信が持てます）。多くのERPシステムでは、収集されたデータを明確に視覚化するチャートとダッシュボードを自動的に作成できます。

集中型データ・ストアには多くの実用的な用途があります。例えば、営業、マーケティング、eコマースの各チームがサプライチェーンのタイムラインと生産フローを共有していれば、チームは予測を改善し、供給が中断した場合や品切れの場合に営業とマーケティングの取り組みが効率的に調整されるように調整することができます。

データ入力は手間がかかるだけではなく、人為的エラーが発生しやすくなります。ERPソリューションは、データ入力プロセスを自動化し、データの精度を高めるのに役立ちます。また、請求書の生成、請求書の承認、在庫の更新、その他の業界固有のプロセスの自動化も促進します。

つまり、ERP統合は、組織がビジネス全体をより正確に把握するのに役立ちます。この強化されたオブザーバビリティーにより、リアルタイムのデータ分析が促進され、リーダーは自信を持って意思決定を行うために必要な包括的な視点を得ることができ、チームは将来の問題を積極的に回避できるようになります。

広範なオブザーバビリティーと統合システムは、企業が全社的なルール、規制、標準に準拠するのにも役立ちます。

ERP統合は企業全体にメリットをもたらしますが、初期の統合プロセス中および統合ライフサイクル全体を通じてITチームが直面する可能性のある課題があります。ERP統合のハードルは、企業の範囲と規模、および選択した統合方法によって異なります。課題には次のようなものがあります。

ERPシステムはさまざまなチームや部門からデータを収集して管理するため、アプリケーション間でデータの形式が異なる場合があります。特にポイントツーポイントおよびESB統合ソリューションでは、データ変換の管理を支援する社内の技術的専門知識とITプロフェッショナルが欠かせません。これらの統合方法では、環境が複雑化するにつれて、技術スタッフが環境を拡張および維持する必要もあります。

iPaaSソリューションには、アプリケーションの統合とデータ変換の作業負荷の軽減に役立つ、事前に組み込まれたコネクターも含まれています。iPaaSソリューションは、他の方法よりも標準的な統合ツールと機能を提供し、拡張も容易ですが、特にセットアップ時や、より複雑または独自の統合の場合には、技術スタッフがデータ・フローをカスタマイズおよび監視する必要もあります。

複雑な統合には、多くの場合、追加のITリソースと人員が必要になります。ITチームは、確実にアプリケーションが更新され、これらの更新によってデータ・フローが中断されないことを確認しなければなりません。

iPaaS統合とクラウドベースのアプリケーションは通常、自動更新、統合、テストをサポートしますが、それでも定期的な監視が必要です。ERPソリューションを導入する際の初期データ移行を監視することで、組織は統合データが完全であることを確認し、ビジネスの中断を回避できます。

ERP統合ソリューションには、データ移行監視ツールが含まれている場合や、他の監視ソフトウェアと組み合わせられる場合もあります。

さまざまなソースからのデータを統合すると、機密データが公開されたり、セキュリティーに欠陥が生じたりする可能性があります。例えば、データ統合プロセスによって同じ集中システムにデータが統合されているにもかかわらず、人事部門によって保存されるデータには、顧客の販売データとは異なるセキュリティー要件がある場合があります。

統合ソリューションが社内で構築されるか、サードパーティー・ベンダーから購入されるかにかかわらず、組織はこれらのソリューションにデータ監視、規制、コンプライアンス機能が含まれていることを確認する必要があります。