Apache HTTP Serverは、一般的にApacheまたは単にApacheサーバーと呼ばれるフリーかつオープンソースのWebサーバーで、数多くのWebサイトやWebアプリケーションを支えています。
ApacheはWebサーバーとブラウザー間のやり取りを制御し、ユーザーがインターネット上でWebページ、HTMLページ、画像、テキスト、動画などさまざまなコンテンツを見つけられるようにします。1995年に初めてリリースされたApacheは、インターネット初期の発展において重要な役割を果たし、世界中の人々が自分のWebサイトを構築し、ホスティングできるようにしました。
ApacheはApache Software Foundation(ASF)によって管理されています。この非営利団体は、セキュリティー、新しい技術との互換性、トラブルシューティングなど、幅広い課題に対応するためにソフトウェアを定期的に更新しています。Apacheは、静的および動的コンテンツを迅速に配信し、複雑なユーザーとのやり取りを処理できる能力によって、Webホスティング分野における市場リーダーとなっています。
現在、Apacheは最も広く利用されているWebサーバーの1つです。多くの企業がApacheを利用して基幹業務を支え、自社のWebサイトやWebアプリケーションの円滑な運用を実現しています。W3Techsの最新レポートによると、世界のWebサイトの4分の1強(26%)がホスティングにApacheを利用しています。1
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Webサーバーは、インターネットを介してユーザーにWebコンテンツを配信するシステムです。通常はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成され、画像、テキスト、動画など幅広いコンテンツに対するユーザーからのリクエストを処理できます。ビジネス・アプリケーションを実行するアプリケーション・サーバーとともに、Webサーバーは多くの現代企業における基幹業務の重要な一部となっています。
Webサーバーは、クライアントとワールド・ワイド・ウェブの間をつなぐ橋のような役割を果たします。ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)やハイパーテキスト転送プロトコル2(HTTP/2)などの一連のプロトコルを通じて、データ転送を可能にします。Webサーバーはクライアントからのリクエスト(例えば、WebブラウザーのアドレスバーにWebアドレスを入力する操作)を待ち受け、コンテンツで応答します。
Apache環境では、バックグラウンドで動作しこれらのリクエストを処理するプログラムは「デーモン」と呼ばれ、HTTPd(Hypertext Transfer Protocol daemon)として知られています。
最新のWebサーバーは、パーソナライズされた推奨、広告、さらにはユーザーがカスタマイズ可能なダッシュボードといった動的コンテンツを生成できるように設計されています。この機能を実現するために、PHP、Perl、Pythonなど幅広いプログラミング言語との互換性を持つように設計されています。
Apache Webサーバーは、Webブラウザー(一般的に「クライアント」と呼ばれる)と、Webサイトのファイルが保存されているサーバーとの間の通信を円滑にするために構築されています。その基本的な目的は、Webブラウザーを介してWebページ、HTML、CSSなどのコンテンツを配信し、リクエストを処理することです。本質的に、Apacheを支えるソフトウェアは仲介役として機能し、ユーザーからのリクエストを常に待ち受け、コンテンツで応答します。
クライアント・リクエストの処理とコンテンツ生成に対するApacheのアプローチは、いくつかの重要な点で他のWebサーバーと一線を画しています。
NGINXのような他の種類のWebサーバーがイベント駆動型のアプローチでクライアント・リクエストを同時に処理するのに対し、Apacheはリクエストごとに新しいプロセスを生成します。Apacheは受信したリクエストを待ち受け、それをマルチプロセッシング・モジュール(MPM)とリクエスト・ハンドラーのApacheモジュールに渡し、そこで次の処理が決定されます。
Apacheのコンテンツ生成モジュールは、ユーザーのリクエストに応えるために、静的ファイルと動的コンテンツの両方を生成できます。コンテンツに加えて、生成モジュールはリクエストの送信元やコンテキストに関する重要な情報を含むHTTPヘッダーも返すことができます。
Apacheサーバーの機能におけるもう一つの重要な側面は設計です。Apacheは、モダンなWebアプリケーションを実行するためのハードウェアやソフトウェアのツール群である最新のWebアプリケーション・スタック(テック・スタックとも呼ばれます)の重要な構成要素です。Apacheは、市場で最も強力かつ広く利用されているテック・スタックの1つであるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)の中核コンポーネントです。
LAMPの各コンポーネントを詳しく見てみましょう。
Apacheの主な機能は、クライアントからのリクエストにコンテンツで応答することで、これはすべてのWebサイトやWebアプリケーションに共通する中核的な機能です。この機能を実現するために、Apacheは幅広い機能と能力を備えています。
Microsoft社、Google社、Oracle社などが提供する独自のWebサーバーとは異なり、Apacheはオープンソース・ソフトウェアです。言い換えれば、Apacheは無償で利用でき、専門家による大規模なコミュニティーによって支えられています。商用利用であってもApacheは無償で提供されており、開発者は独自のビジネス目的に合わせてコードを常に改良しています。
人工知能(AI)や生成AIのような新しい技術が、企業のコンテンツの作成や保存の方法を変化させると、オープンソース・コミュニティーは迅速に対応し、Apacheの互換性を確保します。
Apacheは、Linux、Unix、Windows、MacOSなど、さまざまなプラットフォームに対応しています。柔軟性とカスタマイズ性を重視したモジュール型アーキテクチャーにより、新しい機能を迅速かつ容易に追加できます。
例えば、大企業に支持されているIBMのAIXシステムでは、厳しい環境においてApacheが導入されることがよくあります。Apacheのオープンソースのアプローチにより、AIXに容易に統合できるとともに、新しい技術やユースケースが登場するたびに継続的に改良を重ねることができます。
Apacheは、各インスタンスごとに専用サーバーを用意するのではなく、1台のサーバー上で複数のWebサイトを運用する「バーチャル・ホスティング」の実践に最適です。Apacheのバーチャル・ホスティングはコスト効率に優れ、高い拡張性を備えており、企業は追加コストをかけずに複数のドメインを管理し、必要に応じて迅速に仮想インスタンスを立ち上げることができます。
Apacheは、組織のコンピュート環境や特定のニーズに応じて、2つのアプローチを提供します。
組織は、暗号化や認証の設定、ファイアウォールの利用方法を調整することでApacheを構成できます。これをApache構成と呼びます。
Apacheサーバーのロード・バランシング機能により、人気の高いWebサイトやアプリケーションでトラフィックが集中する状況において、リソースを最適化できます。クライアントからのリクエストを複数のサーバーに分散させることで、特定のサーバーにリクエストが集中して機能やパフォーマンスが低下するのを防ぎます。
Apacheサーバーはキャッシングにも優れており、頻繁にリクエストされるページを保存・再利用することで、サーバーのワークロードを軽減し、帯域幅を効果的に管理します。Apacheはリバース・プロキシーとしても機能でき、他のサーバーとクライアント・リクエストの間で仲介役を果たし、パフォーマンスとリソース分配の最適化に役立ちます。
Apacheは、そのモジュール型設計、オープンソースである点、他のプラットフォームや技術との互換性により、他の種類のWebサーバー・ソフトウェアと比べても優れた評価を得ています。1990年代後半から2000年代初頭のような圧倒的なシェアはすでにないものの、依然として多様なWebやWebアプリケーションのホスティングにおける有力な選択肢と見なされています。ここでは、Apacheが最も近い競合であるNGINXおよびMicrosoft IISとどのように比較されるかについて説明します。
NGINX(読み方:エンジン・エックス)は、2025年のレポートによると市場シェア33%を獲得し、最近Apacheを抜いて世界で最も人気のあるWebサーバーとなりました。2
ApacheとNGINXの最大の違いはアーキテクチャーにあり、Apacheサーバーはプロセス駆動型アーキテクチャーを採用し、クライアント・リクエストごとにスレッドと呼ばれる新しいプロセスを生成します。一方、NGINXはイベント駆動型アーキテクチャーを採用しており、同じスレッド内で多数のリクエストを同時に処理できます。
NGINXは、より効率的なキャッシング機能を備えているため、静的コンテンツの配信においてApacheよりわずかに高速です。動的コンテンツの配信に関して、NGINXはPHP用のPHP-FPMのような外部プロセッサーを使用するのに対し、Apacheはサーバー側で内部的に動的コンテンツを処理します。
Microsoft IISも人気のあるWebサーバーで、Apacheと同様にWebサイトやWebアプリケーションをホストし、ユーザーのリクエストに応じてコンテンツを提供するよう設計されています。Apacheとは異なり、Microsoft IISは他のMicrosoft社のソフトウェア・ソリューションやサポートと連携するように特化して構築された独自のソリューションです。Microsoft IISの強みの1つは、Webアプリケーション構築で広く使用される.NETおよびASP.NETフレームワークにおける開発とデプロイメントを簡素化する点です。
Windowsサーバー上でサイトやアプリケーションを運用する企業にとって、Microsoft IISは強力なソリューションで、Active DirectoryやExchange Serverなどの他のMicrosoftツールとのシンプルかつ高度な統合を提供します。また、セットアップや管理の容易さ、シンプルで直感的なグラフィカルユーザー・インターフェース(GUI)でも知られています。
幅広い機能、オープンソースであること、セキュリティー機能、新しい技術との互換性により、Apacheは多くの企業で利用されています。ここでは、最も一般的なものをいくつか紹介します。
1. Apacheの使用統計、W3 Techs社、2025年6月
2. NGINXとApacheの比較、W3 Techs社、2025年6月