Apacheサーバーとは

コンピューターを囲む人々

執筆者

Mesh Flinders

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

Apacheサーバーとは

Apache HTTP Serverは、一般的にApacheまたは単にApacheサーバーと呼ばれるフリーかつオープンソースのWebサーバーで、数多くのWebサイトやWebアプリケーションを支えています。

ApacheはWebサーバーとブラウザー間のやり取りを制御し、ユーザーがインターネット上でWebページ、HTMLページ、画像、テキスト、動画などさまざまなコンテンツを見つけられるようにします。1995年に初めてリリースされたApacheは、インターネット初期の発展において重要な役割を果たし、世界中の人々が自分のWebサイトを構築し、ホスティングできるようにしました。

ApacheはApache Software Foundation(ASF)によって管理されています。この非営利団体は、セキュリティー、新しい技術との互換性、トラブルシューティングなど、幅広い課題に対応するためにソフトウェアを定期的に更新しています。Apacheは、静的および動的コンテンツを迅速に配信し、複雑なユーザーとのやり取りを処理できる能力によって、Webホスティング分野における市場リーダーとなっています。

現在、Apacheは最も広く利用されているWebサーバーの1つです。多くの企業がApacheを利用して基幹業務を支え、自社のWebサイトやWebアプリケーションの円滑な運用を実現しています。W3Techsの最新レポートによると、世界のWebサイトの4分の1強(26%)がホスティングにApacheを利用しています。1

The DX Leaders

AI活用のグローバル・トレンドや日本の市場動向を踏まえたDX、生成AIの最新情報を毎月お届けします。登録の際はIBMプライバシー・ステートメントをご覧ください。

ご登録いただきありがとうございます。

ニュースレターは日本語で配信されます。すべてのニュースレターに登録解除リンクがあります。サブスクリプションの管理や解除はこちらから。詳しくはIBMプライバシー・ステートメントをご覧ください。

Webサーバーとは

Webサーバーは、インターネットを介してユーザーにWebコンテンツを配信するシステムです。通常はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで構成され、画像、テキスト、動画など幅広いコンテンツに対するユーザーからのリクエストを処理できます。ビジネス・アプリケーションを実行するアプリケーション・サーバーとともに、Webサーバーは多くの現代企業における基幹業務の重要な一部となっています。

Webサーバーは、クライアントとワールド・ワイド・ウェブの間をつなぐ橋のような役割を果たします。ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)やハイパーテキスト転送プロトコル2(HTTP/2)などの一連のプロトコルを通じて、データ転送を可能にします。Webサーバーはクライアントからのリクエスト(例えば、WebブラウザーのアドレスバーにWebアドレスを入力する操作)を待ち受け、コンテンツで応答します。

Apache環境では、バックグラウンドで動作しこれらのリクエストを処理するプログラムは「デーモン」と呼ばれ、HTTPd(Hypertext Transfer Protocol daemon)として知られています。

最新のWebサーバーは、パーソナライズされた推奨、広告、さらにはユーザーがカスタマイズ可能なダッシュボードといった動的コンテンツを生成できるように設計されています。この機能を実現するために、PHP、Perl、Pythonなど幅広いプログラミング言語との互換性を持つように設計されています。

Apacheサーバーの仕組み

Apache Webサーバーは、Webブラウザー(一般的に「クライアント」と呼ばれる)と、Webサイトのファイルが保存されているサーバーとの間の通信を円滑にするために構築されています。その基本的な目的は、Webブラウザーを介してWebページ、HTML、CSSなどのコンテンツを配信し、リクエストを処理することです。本質的に、Apacheを支えるソフトウェアは仲介役として機能し、ユーザーからのリクエストを常に待ち受け、コンテンツで応答します。

コンテンツの要求と生成

クライアント・リクエストの処理とコンテンツ生成に対するApacheのアプローチは、いくつかの重要な点で他のWebサーバーと一線を画しています。

クライアント・リクエストの処理

NGINXのような他の種類のWebサーバーがイベント駆動型のアプローチでクライアント・リクエストを同時に処理するのに対し、Apacheはリクエストごとに新しいプロセスを生成します。Apacheは受信したリクエストを待ち受け、それをマルチプロセッシング・モジュール(MPM)とリクエスト・ハンドラーのApacheモジュールに渡し、そこで次の処理が決定されます。

コンテンツ生成

Apacheのコンテンツ生成モジュールは、ユーザーのリクエストに応えるために、静的ファイルと動的コンテンツの両方を生成できます。コンテンツに加えて、生成モジュールはリクエストの送信元やコンテキストに関する重要な情報を含むHTTPヘッダーも返すことができます。

アーキテクチャーとLAMPスタック

Apacheサーバーの機能におけるもう一つの重要な側面は設計です。Apacheは、モダンなWebアプリケーションを実行するためのハードウェアやソフトウェアのツール群である最新のWebアプリケーション・スタック(テック・スタックとも呼ばれます)の重要な構成要素です。Apacheは、市場で最も強力かつ広く利用されているテック・スタックの1つであるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)の中核コンポーネントです。

LAMPの各コンポーネントを詳しく見てみましょう。

  • Apache:LAMPテック・スタックにおいて、Apacheは受信したHTTPリクエストを待ち受けて処理し、Linuxに依存してハードウェアおよびソフトウェア・リソースを制御します。
  • MySQL:MySQLは、構造化された形式でデータを管理するための、最も広く利用され効果的なオープンソースのリレーショナル・データベース管理システム(RDBMS)の1つです。LAMPテック・スタックにおいて、ApacheはMySQLに依存して動的コンテンツやアプリケーションを実行します。
  • PHP:PHPはサーバーサイドのスクリプト言語で、LAMPのユースケースにおいてApacheと統合し、動的なWebコンテンツの生成を支援します。
AI Academy

ハイブリッドクラウドでAI対応を実現

IBMのエキスパートが主催するこのカリキュラムは、ビジネス・リーダーが成長を促進するAI投資に優先順位を付けるために必要な知識を習得できます。

Apacheサーバーのメリット

Apacheの主な機能は、クライアントからのリクエストにコンテンツで応答することで、これはすべてのWebサイトやWebアプリケーションに共通する中核的な機能です。この機能を実現するために、Apacheは幅広い機能と能力を備えています。

オープンソース

Microsoft社、Google社、Oracle社などが提供する独自のWebサーバーとは異なり、Apacheはオープンソース・ソフトウェアです。言い換えれば、Apacheは無償で利用でき、専門家による大規模なコミュニティーによって支えられています。商用利用であってもApacheは無償で提供されており、開発者は独自のビジネス目的に合わせてコードを常に改良しています。

人工知能(AI)生成AIのような新しい技術が、企業のコンテンツの作成や保存の方法を変化させると、オープンソース・コミュニティーは迅速に対応し、Apacheの互換性を確保します。

プラットフォームの互換性

Apacheは、Linux、Unix、Windows、MacOSなど、さまざまなプラットフォームに対応しています。柔軟性とカスタマイズ性を重視したモジュール型アーキテクチャーにより、新しい機能を迅速かつ容易に追加できます。

例えば、大企業に支持されているIBMのAIXシステムでは、厳しい環境においてApacheが導入されることがよくあります。Apacheのオープンソースのアプローチにより、AIXに容易に統合できるとともに、新しい技術やユースケースが登場するたびに継続的に改良を重ねることができます。

仮想ホスティング

Apacheは、各インスタンスごとに専用サーバーを用意するのではなく、1台のサーバー上で複数のWebサイトを運用する「バーチャル・ホスティング」の実践に最適です。Apacheのバーチャル・ホスティングはコスト効率に優れ、高い拡張性を備えており、企業は追加コストをかけずに複数のドメインを管理し、必要に応じて迅速に仮想インスタンスを立ち上げることができます。

Apacheは、組織のコンピュート環境や特定のニーズに応じて、2つのアプローチを提供します。

  • IPベースのバーチャル・ホスティング:ホストされる各サイトには固有のIPアドレスが割り当てられます。
  • 名前ベースのバーチャル・ホスティング:複数のWebサイトが同じIPアドレスを共有し、ホスト名によって区別されます。

セキュリティー

組織は、暗号化や認証の設定、ファイアウォールの利用方法を調整することでApacheを構成できます。これをApache構成と呼びます。

  • 暗号化:ApacheサーバーはSSL/TLS(Secure Sockets Layer/Transport Layer Security)暗号化プロトコルをサポートしており、これはコンピューターがインターネット上で通信する方法を規定する暗号化プロトコル群です。Apacheでは、mod\_sslと呼ばれるモジュールを使用することで、各インスタンスごとに暗号化レベルをカスタマイズできます。
  • 認証:Apacheは強力で幅広い認証・認可ツールをサポートしており、ユーザーがリソースを監視し制限できるようにします。その例として、高度なパスワード保護、IPアドレスの許可リスト化、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)などがあります。
  • ファイアウォール:Apacheは、特定のコンピュート環境のニーズに応じて、さまざまな種類のファイアウォールを使用するように構成できます。例えばModSecurityは、オープンソースのWebアプリケーション・ファイアウォール(WAF)で、アプリケーション層を狙ったサイバー攻撃から機密性の高いWebアプリケーションを保護するのに役立ちます。

トラフィック分散

Apacheサーバーのロード・バランシング機能により、人気の高いWebサイトやアプリケーションでトラフィックが集中する状況において、リソースを最適化できます。クライアントからのリクエストを複数のサーバーに分散させることで、特定のサーバーにリクエストが集中して機能やパフォーマンスが低下するのを防ぎます。

Apacheサーバーはキャッシングにも優れており、頻繁にリクエストされるページを保存・再利用することで、サーバーのワークロードを軽減し、帯域幅を効果的に管理します。Apacheはリバース・プロキシーとしても機能でき、他のサーバーとクライアント・リクエストの間で仲介役を果たし、パフォーマンスとリソース分配の最適化に役立ちます。

アパッチ・サーバーと他のWebサーバー

Apacheは、そのモジュール型設計、オープンソースである点、他のプラットフォームや技術との互換性により、他の種類のWebサーバー・ソフトウェアと比べても優れた評価を得ています。1990年代後半から2000年代初頭のような圧倒的なシェアはすでにないものの、依然として多様なWebやWebアプリケーションのホスティングにおける有力な選択肢と見なされています。ここでは、Apacheが最も近い競合であるNGINXおよびMicrosoft IISとどのように比較されるかについて説明します。

ApacheとNGINXの比較

NGINX(読み方:エンジン・エックス)は、2025年のレポートによると市場シェア33%を獲得し、最近Apacheを抜いて世界で最も人気のあるWebサーバーとなりました。2

ApacheとNGINXの最大の違いはアーキテクチャーにあり、Apacheサーバーはプロセス駆動型アーキテクチャーを採用し、クライアント・リクエストごとにスレッドと呼ばれる新しいプロセスを生成します。一方、NGINXはイベント駆動型アーキテクチャーを採用しており、同じスレッド内で多数のリクエストを同時に処理できます。

NGINXは、より効率的なキャッシング機能を備えているため、静的コンテンツの配信においてApacheよりわずかに高速です。動的コンテンツの配信に関して、NGINXはPHP用のPHP-FPMのような外部プロセッサーを使用するのに対し、Apacheはサーバー側で内部的に動的コンテンツを処理します。

ApacheとMicrosoft IIS(Internet Information Services)の比較

Microsoft IISも人気のあるWebサーバーで、Apacheと同様にWebサイトやWebアプリケーションをホストし、ユーザーのリクエストに応じてコンテンツを提供するよう設計されています。Apacheとは異なり、Microsoft IISは他のMicrosoft社のソフトウェア・ソリューションやサポートと連携するように特化して構築された独自のソリューションです。Microsoft IISの強みの1つは、Webアプリケーション構築で広く使用される.NETおよびASP.NETフレームワークにおける開発とデプロイメントを簡素化する点です。

Windowsサーバー上でサイトやアプリケーションを運用する企業にとって、Microsoft IISは強力なソリューションで、Active DirectoryやExchange Serverなどの他のMicrosoftツールとのシンプルかつ高度な統合を提供します。また、セットアップや管理の容易さ、シンプルで直感的なグラフィカルユーザー・インターフェース(GUI)でも知られています。

Apacheサーバーのエンタープライズ・ユースケース

幅広い機能、オープンソースであること、セキュリティー機能、新しい技術との互換性により、Apacheは多くの企業で利用されています。ここでは、最も一般的なものをいくつか紹介します。

  • WebサイトおよびWebアプリケーション:Apacheは、PythonやPHPなど世界で最も広く使われているスクリプト言語との互換性を備えており、WebサイトやWebアプリケーションのホスティングにおいて好まれる選択肢です。多くのコンテンツ管理システム(CMS)、例えばWordPressやDrupalはApacheによって動作しており、SalesforceのようなCRMアプリケーションも同様です。また、The GuardianやSpotifyのような主要なメディア・ニュースサイトの多くもApacheに依存しています。
  • エンタープライズ・アプリケーション:Apacheは、大規模組織の中核業務やビジネス・プロセスを支援するために設計された複雑で負荷の高いエンタープライズ・アプリケーションのホスティングに適した選択肢とされています。世界の主要企業が利用する多くの金融サービス向けアプリケーション、データ分析プラットフォーム、そしてeコマースサイトをサポートしています。例えば、WalmartはApacheを活用してwalmart.comでの毎日の数千件に及ぶ取引を円滑に処理し、シームレスなユーザー体験を提供しています。
  • コンテンツ:Apacheは、世界最大規模の組織が静的Webページ、画像、動画などのコンテンツを大規模なユーザー基盤に提供するのを支援します。Apacheはパフォーマンスを最適化し、クライアントからのリクエストに数秒以内で応答するとともに、Webリソースを管理して、サイトやアプリケーションの読み込み時間を極めて高速に維持します。
  • イントラネットおよび社内Webサイト:多くの組織はApacheを使用してイントラネットや社内Webサイトをホストしています。これらは組織内部の従業員が安全かつ機密性を保ってデータやリソースを共有できるプライベートでセキュアなネットワークです。Apacheは、特定のネットワーク内のコンテンツのみを配信するよう容易に設定できりため、厳格なアクセス制御と幅広いカスタマイズ可能なセキュリティー・オプションを利用できます。
  • DevOps: Apacheは、現代のDevOps環境において重要な役割を果たし、多くの重要な機能を支えています。Apacheサーバーは、多くの場合、リバース・プロキシー、ロード・バランサー、および開発者が依存する複雑で要求の高いWebアプリケーション向けのバックエンドサーバーとして機能します。
関連ソリューション
Apache Spark on IBM Power

Apache Spark は、非常に高速で大規模なデータ処理用に最適化されたオープンソースのクラスター・コンピューティング・フレームワークです。

Explore Apache Spark on Powerの詳細はこちら
エンタープライズ・サーバー・ソリューション

ITインフラストラクチャー全体のセキュリティー、信頼性、コントロールを維持しながら、極めて重要なワークロードを処理できるようにします。

エンタープライズ・サーバー・ソリューションの詳細はこちら
ハードウェアとソフトウェアのサポート・サービス

IBMは、Webサーバーやデータセンター・インフラストラクチャーの事前対応型のサポートを提供し、ダウンタイムの削減とITの可用性向上を実現します。

Webサーバー・サービスの詳細はこちら
次のステップ

IBM® Power上のApache Sparkが、ビジネスにおける分析の加速、データ・パイプラインの簡素化、リアルタイムの洞察を大規模に解き放つのにどのように役立つかをご確認ください。ツール、参考情報、専門家によるガイダンスを利用することで、自信を持って前に進みましょう。

専門家への相談予約 詳細を取得する
脚注

1. Apacheの使用統計、W3 Techs社、2025年6月

2. NGINXとApacheの比較、W3 Techs社、2025年6月