業務自動化の取り組みを線から面へと拡げていくためには、フィードバック・ループによる改善が欠かせません。今回は、業務担当者が僅か2名、管理職を含めて5名という体制の財務部での取り組みから、デジタルレイバーと人が如何に協働作業を実施するのか、デジタルレイバーの稼働統計を用いて品質改善に取り組み、更なる適用範囲拡大を行えた事例を紹介します。
財務部で実施している業務の多くはお金にまつわる作業、入出金処理(出納管理)、現預金や借入金などの資金管理であり、作業ミスがあった時の影響範囲や実施期限に追われるなど、担当者は定常業務に多くのストレスを感じていたそうです。
比較的単純作業の繰り返しが多い一方で、作業時間数は毎月数時間や10時間程度という細々とした作業が大半。そのままでは自動化にかかる工数(費用)と自動化によって得られる効果のギャップを埋められず、自動化対象外とせざるを得ませんでした。
そこで、自動化しやすいように業務を単純化して切り出し、それら複数の作業を一連の業務として捉えることで、総合的に投資対効果を得ることを目指しました。
デジタルレイバーが処理した結果の再鑑や処理しきれなかった異例データへの対応を人が実施するように業務プロセスやルールを見直しながら、業務自動化による効率化を進めてきました。
その結果、複数のデジタルレイバーが人と協働し、チーム内の3割程度の業務を自動化することができました。
その一部を抜粋した概況図は以下の通り。
この取り組みによって、デジタルレイバーはチームの中に組み入れられ、これまではワークロードの問題から諦めていた作業を実施できるようになっています。
余談ではありますが、財務部の担当者ひとりが産休・育休で長期の休暇となることが決定し、代わりに派遣社員の方が数か月間、勤務されるようになったとか。そのようなイベントでもデジタルレイバーが活躍していることで心理的負担少なく業務を遂行できているとコメントいただいています。
累計すると年間1,500時間(0.75FTE)程度の業務自動化を果たしており、一定の効果を生み出していましたが、操作対象システムも多岐にわたり、実行頻度も月次と少ないため、新規のデジタルレイバーはリリース直後の暫くはエラー率が高いという課題もありました。
前回、ご紹介したAOCCというソリューションを用いたデジタルレイバーの稼働統計は収集しており、それに基づいてエラー率が高いデジタルレイバーのエラー原因を分析し、対応を進めることでエラー率の低減を図っています。
その結果で得られた余力を使って、更なる業務自動化・標準化を進められることができました。
社内業務の効率化・電子化・自動化を進めた結果、関連会社や取引先も含めた業務プロセスの改革につながる下地ができつつあります。
新しいSaaSのシステムを活用した債権管理業務を設計しなおす際、デジタルレイバーを効果的に活用する前提でプロセスを検討したり、これまでは実施していなかった直販(B to C)ビジネスを拡大していくための準備として仕分け処理や入金確認業務でのデジタルレイバー活用を検討したり、社外の新しいテクノロジーや環境変化への柔軟で迅速に対応するために欠かせない手段となっています。
以上、本記事が連載の最終回となります。