RPA/AIなど、ノーコード・ローコード開発ツールを活用したDX推進において、現場担当者個々人の業務課題をヒアリングによって抽出するアプローチは、取り組みの初期段階では一定量の効果を発揮できます。しかしながら、このアプローチは聴き手と話し手の双方のスキルや経験に大きく依存し、時間と労力がかかります。
そこで活躍するのがプロセス・マイニングというツールを活用した業務可視化・分析です。業務アプリケーションの変更履歴データや操作ログ、業務担当者のPC操作ログなどから、実際に発生している業務の流れを可視化し、そこに潜在的に埋め込まれてしまっているボトルネックや改善の余地を定量的に把握することを可能にしてくれます。
紹介する事例で対象とした業務は、不動産管理業務としての基幹システムへ工事発注とその完了を登録し、予算管理を行う業務です。この業務に関与している人数は担当者14名、承認者2名でした。
このチームでは、RPAを活用した業務自動化を既に実施中でしたが、プロセス・マイニングを活用することで、更なる効率化の余地を発掘しました。
得られた成果と改善策、効果は下記の通りです。
引いては、運営管理対象物件の品質向上や顧客満足度向上にもつながっているそうです。
プロセス・マイニングに取り組む価値として、工数削減やサイクルタイム向上に加えて、組織としてのアウトカム(今回の場合は予算着地精度向上による物件の品質向上や顧客満足度向上)も意識することで非常に大きな価値を生み出せることを実証できた事例だと思います。
この事例では、国産ERPシステムであるOBIC7の操作ログを加工・分析することで対象業務全体を俯瞰し、課題の定量的な把握と解決策の検討を実施しています。
プロセス・マイニング・ツールは数百万行のデータでも数分で可視化してくれるため、そこから導き出されたインサイトに従って分析・議論が短期間で可能になります。
そのため、アプリケーション・ログの加工方法を確立することが重要ですが、データの正しい読み方を確認し、その背景にある事情を読み取る必要があります。効率的に分析し課題把握、解決策の検討を実施するためには、プロセス・マイニング・ツールの特徴を十分に理解した弊社メンバーだけではなく、対象システムの管理者によるデータや仕様書の提供などの協力、業務有識者の積極参画による週1.5時間程度のディスカッションが欠かせない要素でした。
また、分析の過程で発掘した業務改善の候補について、更に深堀分析をするためにタスク・マイニング機能を併用しています。
分析対象部門の要員数は僅か16名でしたが、十分な成果を出すことができました。
前述の成功事例を受け、隣のバック・オフィス部門でもプロセス・マイニングを活用した業務可視化と分析を実施することとなりました。対象業務の幅広さを鑑み、まずは当該部門で実施している業務をシステム操作マニュアルやシステム操作ログから鳥瞰し、どの業務を深堀分析すべきかを確認した上で、順次、課題の確認と解決策の検討を実施しました。
以上、プロセス・マイニングを活用した業務可視化・分析をPoCレベルではなく、社内横展開まで進めている企業様の事例でした。
なお、当該事例の企業様では、経理部門やIT部門での分析も実施するなど、更なる拡大も進めております。
シリーズ 3分で読める|ここまで来た、Hyper Automation!
次回は、 #2「強靭な線へ」請求書業務をすべてつないだデジタルレイバーです。