“ここまで来た、ハイパーオートメーション!”の連載第2回目。
請求書電子化によって業務自動化を容易にし、デジタルレイバーによる業務の標準化と効率化を実現した事例を紹介します。
請求書電子化の取り組みは下記の背景と目的を実現するため、2019年夏ごろから検討が開始され、2020年にIT部門を中心にパイロット運用を実施、2021年から2022年に全社展開を開始しました。
AI-OCRの活用やBPO併用による効率化も検討しましたが、受領する請求書は書式を統一することが不可能であり投資対効果の観点から不採用となり、自社システムを保有せずにSaaSを積極活用することで柔軟性を確保するという方針に基づき、電子取引プラットフォームの「Tradeshift」を活用することとなりました。
これによって得られると考えたメリットは以下の通り。
受領側は、1請求書当たり20分の業務量削減とした場合、月間1,033時間の業務時間低減。
発行側は、 1請求書当たり20分の業務量削減とした場合、月間867時間の業務時間低減。
受領側は、 1請求書当たり10分の業務量削減とした場合、月間517時間の業務時間低減。
発行側は変化なし。
受領側は、請求書50件につき1件のミスがあるとして、1請求書当たり20分の業務量削減とした場合、月間21時間の業務時間低減。
発行側は変化なし。
事業部門ごとの商習慣の違いを標準化しつつ、SaaS製品の機能特性や制約を考慮した上で最適な業務プロセスとルールを定義し、小規模なパイロット運用を経てそれらを改善するという流れを、事業部門ごとに段階的に展開していきました。
請求書は着実に電子化され、電子化された請求書を回付するためのワークフローは徐々に定着化されました。関係会社間での請求データは会計処理に必要な各種コード値を自動変換することで、自動的に会計システムまで流れるようになりました。電子化前に慣習として残されていた押印業務は削減され、書式が統一されたことで確認作業も簡略化が図れました。
そして何よりも、支払業務においては毎月の期日までに発注部門での確認が終えられなかった請求書が3〜5割存在していたものが、請求書の受領や承認の状況をデータで簡便に確認することが可能となり、期日前に全ての支払承認を終えることができるようになったという業務サイクルと品質の改善が図れたそうです。
取引先にとっても同様の効果が得られています。請求書の授受だけに何日も要し、進捗の確認もままならなかった状況から脱し、Tradeshiftを活用することで迅速で正確なデータ連携を企業間で実現し、自動化による業務効率化やプロセス変革の機会を提供しています。
この過程でTo Be像は繰り返し見直されることによって、当該プロジェクトに参画していたメンバーの方々のITリテラシーも向上し、取り組みマインドも抵抗勢力ではなく、推進者へと変化していきました。
本請求書電子化の取り組みは、開始当初から業務プロセスの改善・改革を意識した取り組みとすることで、単なるデジタイゼーションに止まらず、社内外の業務プロセスに変革をもたらした真のデジタル・トランスフォーメーションへと進めている事例であると思います。
有効なテクノロジーを見極め、データを有効活用し、それによって業務プロセスを継続的に改善する。それらを実践する人材を今まで培った経験を通して育成しています。
採用した電子取引プラットフォームは、自社に限定せず、取引先もWeb APIを活用した自動化システムを独自に構築することができ、拡張性の高いプラットフォームです。実際にその機能を活用して関連会社からのデータ連携を実現したり、社内ワークフローを効率的に運用するための集計処理やデータ転記を自動化したり、進捗状況を迅速に把握できるようにすることでエラー率の低減やサイクルタイムの短縮を図っています。
このようにしてエコシステム全体の業務プロセス変革へとつながる仕組みを構築しています。
シリーズ 3分で読める|ここまで来た、Hyper Automation!
次回は、#3「線を伸ばす」デジタルレイバーの運用も自動化です。