第三章
一言で言うとプロセス・マイニングとは、エンタープライズ・ソフトウェアのカテゴリーに属するもので、企業内プロセスのディスカバリー、マッピング、継続的な最適化を自動的に行います。
プロセス・マイニングでは、まずユーザーがシステムを操作した時やシステムが自動化タスクを実行する度に生成されるイベント・ログを分析(「マイニング」)します。次にAIで各プロセスにおけるさまざまな非効率性を特定して、修復が推奨される分野を特定します。一方でタスク・マイニング機能は、プロセス内のアクティビティーを構成する個々のステップを分析することで、自動化に適した候補タスクを特定します。
プロセス・マイニングとRPAはそれぞれ異なるベンダーによって開発されてきた経緯があるため、異なる目的のツールとして販売されてきました。そのため、必ずしも互いに補完的な関係にあるとは見なされてきませんでした。こうしたことから、一般にプロセス・マイニングはエンタープライズ全体でのIT投資の対象とされる一方、RPAは各部門が場当たり的に購入するものとされてきました。
しかし現在では、この2つのソリューションを併用することで手つかずの膨大な価値を引き出せる可能性があることが、数多くの証拠で示されてきています。プロセス・マイニングには、RPAにはない可視性、洞察、拡張性があります。これらを活用することで、企業全体のポテンシャルを最大限に発揮できるようにRPAを利用できるようになります。実際に、Gartner社による2021年の調査では、「多くのCFOは、プロセス・マイニングへの投資がRPAの利益を引き出す鍵と考えている」⁵という結果が発表されました。
高い価値を持つプロセス・マイニング・ソリューションの機能
どのような機能のプロセス・マイニング・ソリューションを選択するかによって効果は異なりますが、特に高い効果を期待できるソリューションとしては、このような例が考えられます。
- 企業全体で、プロセスに関連する全アクティビティーを自動的に取り込む。この例では、理想的なプロセスである「ハッピー・パス」だけでなく、日々の業務プロセスも含まれます。手作業での修正や手直しだけでなく、あるシステムのデータを取り出して別のシステムに手入力する作業など、プロセス・マイニング・ツールはそのようなプロセスをすべて取り込みます。
- ボトルネックが発生している場所の特定とその根本的な原因の診断。ボトルネックはあまり目立たない場所で発生することが多いため、プロセス・マイニングでエンドツーエンド・プロセス全体を視覚化した時に初めて表面化するということがよくあります。根本原因を診断することで具体的な情報を獲得し、効率性を悪化させている各原因にどのように対処すべきかを決定できるようになります。
- プロセスの非効率性を解消するインテリジェントな推奨事項を提供する。自動化すれば非効率性を必ず解決できるわけではなく、自動化に取り組んでも従来と同じ結果しか得られないこともあり得ます。KPIを達成すべく最も効果的な方法を提案して非効率性を解決できなければ、優れたプロセス・マイニング・ツールとは言えません。
- 企業の精密なデジタルツイン(DTO)の作成。これはプロセスの視点から企業をモデル化したもので、プロセスに変更を加えた場合にどのような影響があるかをシミュレーションから評価します。具体的には、プロセスを変更することで上流や下流の利害関係者のワークロードやルーチンにどのような影響があるかなども含めて、さまざまな次元で評価されます。
- 精密なDTOで実際の企業をきめ細かくモデル化することにより、実世界での影響をシミュレーションで正確に予測できるようになります。より精度を向上させるためには、様々なレベルとオブジェクトを包摂する複合的なプロセス・マイニングを実行できる技術力が重要な鍵となります。P2Pのように複数の階層関係を持つ各種のエンティティーやオブジェクトで構成される複雑なプロセスでも、正確なマッピングが可能になります。プロセス・マイニング・ツールにこうした機能がなければプロセスを正確にモデル化することができず、シミュレーションの結果が実際の結果と異なる場合もあります。
- 高精度なROIの計算。プロセス・マイニングで特に強力な機能として、プロセス変更(任意のタスクの自動化を含む)のROIを計算できる点があげられます。この機能は企業のKPIに基づいて、さまざまな次元でROIを計算することが可能です。例:コストの節約、コストの回避、時間の節約、顧客体験への影響、etc。
- ソフトウェア・ボットの自動作成:高度なプロセス・マイニング・ツールなら、自動化に適したタスクの候補を特定するだけでなく、統合されたRPAがワンクリックで適切なソフトウェア・ボットを生成します。
IBM Process MiningおよびIBM RPAの導入
現在、このような機能をすべて提供するプロセス・マイニング・ソリューションは、IBM Process Miningだけです。これはIBM RPAと統合されており、IBM Intelligent Automationプラットフォームの重要な柱を形成しています。IBMのインテリジェントな自動化の詳細はこちら