データを洞察に変え、世界水準のデジタル体験に反映する
1877年の第1回選手権以来、ウィンブルドンには、英国王室のメンバーから企業経営者、自宅のテレビで観戦する人に至るまで、あらゆる階層のファンが集まり、新鮮なイチゴ、クリーム、シャンパンを楽しみながら、世界最高のテニスを観戦してきました。
しかし、すべての人がロンドン南西部にあるAll England Lawn Tennis Club(AELTC)に行けるわけではありません。そのため、世界中の1,600万人以上の人々が、ウィンブルドンの公式アプリとWebサイトを通じて、ドラマチックで感動的なこの素晴らしいイベントを観戦します。このような世界レベルのデジタル・エクスペリエンスは、ウィンブルドンとIBMの30年以上にわたるパートナーシップを通じて構築、提供されてきました。
「伝統を核とする組織として、変化する世界に合わせて進化していくためには、IBMとのイノベーション・パートナーシップが不可欠です」と、AELTCデジタル戦略・製品担当シニア・マネージャーのChris Clements氏は述べています。「IBMの最新ツールと世界をリードする専門知識を活用することで、私たちは社会との関連性を長く保ち続けるための革新を実現できます。IBMとウィンブルドンは、豊かな歴史を持ち、未来に適合するために常に変化し続ける組織として、素晴らしい相乗効果を生み出しています」。
今年もウィンブルドンは、AIとデータ製品のポートフォリオであるIBM® watsonxの力を活用し、ファン体験を刷新するとともに、新機能を導入しました。AELTCのテクノロジー・ディレクターであるBill Jinks氏は次のように述べています。「私たちは、AIやその他のIBMのテクノロジーを使って、ファンのエンゲージメントをどのように向上できるかを常に考えています。どうすればワンランク上のデータをファンに届けることができるだろう。ウィンブルドンを前面に押し出し、人々がすぐには気づかない洞察をAIで引き出すにはどうすればよいのか。それこそが私たちをワクワクさせるイノベーションなのです」。
毎年、IBMは270万件を超えるウィンブルドン・データ・ポイントを取得しています
2024年のザ・チャンピオンシップ開催中、ウィンブルドンはデジタル・プラットフォームを通じて約1,600万人のファンにリーチしました。
ウィンブルドンでは、18のコートで数百もの試合が行われます。展開はスピーディーで、勝負の形勢は一瞬で変わり得ます。ファンが試合の展開についていけるよう、ウィンブルドンとIBMは協力して、女子シングルスおよび男子シングルスの試合中や試合後にファンからの質問に答えられるインタラクティブなAIアシスタント「Match Chat」を開発しました。
ファンは、あらかじめ用意されたプロンプトや自分で作成した質問を使ってアシスタントとやり取りできます。例えば「ブレークポイントをより多く取ったのは誰ですか」とか「試合でどちらがより良いパフォーマンスを発揮していますか」などの質問ですAIが提供する即時の応答と試合分析によって瞬時に洞察が得られ、ファンのエクスペリエンスが豊かになります。
Match Chatを構築するにあたり、IBMチームはウィンブルドンが持つ最も貴重な資産の一つであるデータの価値を活用しました。この世界的な選手権のすべてのゲーム、セット、試合から、スコアや速度などの重要な統計情報を含むデータセットが生成されます。大会期間中に、何百万ものデータ・ポイントが生成されます。この膨大で多様なデータ群を管理するため、ウィンブルドンはIBMのwatsonx.dataを使用しました。これは、複数のソースからデータを集約・統合し、構造化データと非構造化データを統一してAIモデルによる処理に備えるハイブリッド・データレイクハウスです。
Match Chatとのファンのやり取りを実現するため、チームはIBM watsonx Orchestrateを使用してAIアシスタントを構築し、ウィンブルドンの編集スタイルやテニス用語で訓練されたIBM GraniteなどのAIエージェントや大規模言語モデル(LLM)のコレクションを組み込みました。
Match Chatを支えるAIモデルは、ビジネス用途の生成AIモデルを構築・開発するための次世代スタジオであるIBM watsonx.ai®を使用して訓練されました。IBMチームは、IBM watsonx.governanceのガバナンス・ツールを使用して、AIモデルの継続的なパフォーマンスを監視します。
その結果、ウィンブルドンのチームは、既存のテニスファンと新しいテニスファンの双方からの質問に、コート上でも世界中でも対応し、大規模にファンの好奇心を満たすことが可能になりました。「これはIBMのエンタープライズ向けAIなしでは実現できません」と、Jinks氏は述べています。
Match Chatに加えて、ウィンブルドンはIBMと協力し、アプリやWebサイトで好評を得ている「勝利可能性分析」を強化しました。今年までは、「勝利可能性分析」は、選手の統計データ、専門家の見解、選手の勢いをAIで総合的に分析し、試合前に提供される対戦予測でした。今年は「ライブ勝利可能性分析」として、各試合の進行中に随時更新され、試合展開に伴う勢いの変化を示す折れ線グラフで視覚的に表示されます。
Match Chatやライブ勝利可能性分析のような新機能を毎年開発するため、AELTCは迅速かつ的確に行動する必要があります。そのためには、適切な人材、プロセス、テクノロジーを組み合わせて、迅速なイノベーションを促進する必要があります。
AELTCのイノベーションは、ウィンブルドンのチームとIBM Consultingのエキスパートによる長年の協力から始まります。Clements氏は、「私たちは、関心のある分野で一致点を見いだすために協力し合い、ファンが将来どのように私たちの製品に接するかについて、統合されたビジョンを生み出しています。最高品質の体験を提供するという情熱が結集することで、私たちのパートナーシップはさらに強化されて、目の前にある機会を最大限に活用できるようになっています」と語ります。
ウィンブルドンとIBMの両チームは、IBM Garage Methodを活用して創造性を育み、テニス・ファンの理解を深めています。イノベーション・ワークショップの一環として、これらのチームは次の2つの重要な課題に取り組もうとしています。
このようなワークショップを通じて、IBMチームはアプリとWebサイトのコンセプトと機能を開発しています。例えば、IBM SlamTrackerは長年にわたりウィンブルドンの主要なスコアリング・アプリケーションとして、すべての試合のリアルタイムスコア、予測、統計、ポイントごとの分析を提供しています。今年は、SlamTrackerにMatch Chatとライブ勝利可能性分析が追加されました。
このような新しいアイデアをデジタル・リアリティーに変えるために、IBM Consultingは、構造化データと非構造化データを処理し、さまざまなソースからのテクノロジーを統合できる、ウィンブルドン用の革新的なプラットフォームを構築しました。自動化されたワークフローは、デジタル・エクスペリエンスを生み出すために必要なさまざまなアプリケーションとAIモデルを介して、データ・フローを統合および調整します。
こうしたワークフローが可能となっているのは、ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーと、Red Hat OpenShift上で動作するコンテナ化されたアプリケーションがあるからです。全体の運営を円滑に維持するため、チームはクラウド・インフラストラクチャーを統合および保護するHashiCorp Cloud Platform(ibm.com外部へのリンク)を活用しています。エンドユーザーのエクスペリエンスに影響を与えかねない不要なダウンタイムを回避するため、ウィンブルドンはIBM Instana Observabilityテクノロジーを活用しています。これによりアプリケーションのパフォーマンスを監視し、解決が必要な問題を可視化して、チームが迅速に対応できるようにしています。
最後に、開発チームは強力な生成AIアシスタントであるIBM watsonx Code Assistantを活用し、コードの効率と正確性を高めています。このソリューションは生成AIを活用してソフトウェア開発を加速し、開発者が自然言語プロンプトに基づいてコードを生成できるよう支援します。これにより、コード・スニペットの分析、注釈付け、共有、そして自動補完が可能になります。
ウィンブルドンは、データ、AI、そして継続的なデジタル・イノベーションを通じてファン体験を向上させる新たな方法を模索するため、今後もIBMとの協力を続ける予定です。
単に「ウィンブルドン」として知られるウィンブルドン選手権は、テニスの4大大会であるグランドスラムの中で最も古いものであり、世界で最も注目を集めるスポーツ・イベントの1つです。AELTC社が主催し、ロンドンに拠点を置くウィンブルドンは、1877年以来、世界的なスポーツと文化のイベントとなっています。
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