AIが埋立廃棄物の削減にどのように役立つか?

AIを活用した自動化によりHera社は循環型経済へ
ロブ・スペンサー
読了時間: 5分

AIは世界で最も深刻な課題にどう対処できるでしょうか?

簡単ではありません。 現実世界の複雑な問題に対峙するとき、スイッチ1つでAIに答えを求めることはできません。 労力を要することに加えて、挑戦する意欲と変化に対応できる真の柔軟性が必要です。

イタリアの大手マルチ・ユーティリティ企業であるHera SpAは、より再利用可能な資源を環境上のより良い結果に導くことで、AIが埋立廃棄物を最小限に抑えるのにどのように役立つかを模索しつつ、これらの恩恵を享受しています。

Hera社は、デジタル変革のフレームワークであるIBM Garage™を採用し、AIソリューションの設計、構築、および拡張に役立てました。 そしてHera社は、IBM® コンサルティングの協力とともに、IBM Cloud Paks®を適用してアプリケーション・インフラストラクチャーをモダナイズし、イノベーションに対するオープン性を高めました。

HERA社のコントロール・ルーム

89の施設全体でHera社は

630万トン

の廃棄物を処理 (年間)

現在リサイクル処理のために

1,400人

の人数が必要 (再利用可能な資材を手作業で見つけるため)

Hera社は絶対的な信念により、循環型経済のしくみを取り入れてきました。
Andrea Bonetti氏
Hera SpA社、ITアーキテクチャー担当マネージャー
環境保護にもたらすイノベーション

電気、水循環管理、および暖房サービス企業であり、またイタリア最大の廃棄物管理・リサイクル企業でもあるHera社は、廃棄物を削減して環境被害を最小限に抑えるため、最前線で奮闘しています。イノベーターとして知られる同社は、環境保護に将来を見通した考え方を取り入れています。

Hera社のITアーキテクチャー担当マネージャーであるAndrea Bonetti氏は、「Hera社は絶対的な信念により、循環型経済の形を取り入れてきました」と説明しています。Hera社は、従来のリサイクルは再利用循環全体の一部分に過ぎないとの認識に基づき、循環全体を完成させるための統合ソリューションを提供しています。例えば、プラスチックについては、廃棄物を回収するだけでなく、それ自体でリサイクル可能な、高品質な新規製品の生産に取り入れています。 Bonetti氏は、以下のように述べています。「現在、当社の管轄地域では、廃棄物の大部分が回収されています。」 「最終的に焼却されるのはごく一部ですが、その焼却は廃棄物発電の施設で行われ、新たなエネルギーを生み出しています。」

積み重ねられたリサイクル材を筒状にしたもの
積み重ねられた圧縮プラスチック容器

回収処理では、膨大な量のごみから再利用可能な資材をすばやく見つけ、分離することが肝要です。 Bonetti氏とHera社のITイノベーション責任者である同僚のAlessandro Collina氏は、そのプロセスに対して、AIによる自動化の支援により、効率の向上、および新規用途に転用できる資材の量を増やす方法を模索することにしました。

課題は2つあります。 廃棄物の分別におけるAIの可能性を評価することが、その1つです。 もう1つは、この種のイノベーションを取り入れるための、実験室から企業規模に拡張できるような柔軟性を持つことです。

廃棄物から探し出す資源

現在、Hera社の担当者は廃棄物を手作業で分析しています。 施設の入り口でトラックは収集物を降ろし、廃棄物がコンベアに押し出されると、スポッターが、プラスチック、ガラス、アルミニウム、有機物質などの回収可能な資材をモニターし、下流での選別に対する指示を可能にします。 その仕事 だけでも多くの労力が必要とされるのですが、大規模な視点で言うと、89 の施設全体に1,400人のスポッターが存在しています。 年間630万トンの廃棄物が処理されています。 つまり、効率をはるかに向上できる可能性があるということです。

構想としては、到着する廃棄物のビデオを撮り、AIに回収および再利用の条件となる、アイテムと資材の特徴を認識させさせることが考えられます。 「これは、循環型経済の焦点である回収、および処分活動のコストに、決定的な影響を与える可能性があります。」とBonetti氏は説明します。

Bonetti氏は以下のように述べています。「(このビジョンを実現するために) PoC (概念検証) という枠を実際に超えて、作業手法と効果的なツールの両方を使用して、プロジェクトを促進できるパートナーが必要でした。 IBM Garageには、それらがすべてあると当社は考えました。」

選別ラインでのリサイクル作業員
作業員付きごみ収集車

ユーザー中心に、協力型で進めていくIBM Garageチームが、ソリューションに向けてまず最初に行ったことは、作業環境の直接体験ができるデザイン思考のワークショップでした。 Bonetti氏は、以下のように述べています。「Garageのスタッフは、ここでの適した比喩である『手を汚す』必要がありました。」 「当社は、機械学習の専門家に、現状に浸ってもらうという経験によって詳細を得ることができていますが、その工程は常に実験室よりもはるかに複雑です。 そのため、IBM Garageチームは施設の見学に来ました。 当然ながら、廃棄物は変形、および密集しており、状況によって、照明条件が異なります。Facebookの写真から子猫を探すのとは事情が異なります。」

実際にHera社とIBM Garageチームは、施設が動画撮影には適していないことをすぐに認識しました。あまりにも短時間に多くの資材が通過してしまうからです。 彼らは上流により確認しやすい場所を見つけました。

ごみ収集車にカメラを取り付けることにより、収集車から出される比較的少量の資材に対して、ビデオ撮影が可能でした。Bonetti氏は、以下のように述べています。「流れる画像は、それでも非常に高速でした。」 「ただ、これらの画像の調査を通じて、施設外で収集する廃棄物を定性的に評価するための重要なパターンを特定でき、それによって変換プロセスの時間とコストを改善できました。」

さらに、Hera社のチームは、廃棄物品質のデータと収集位置情報をリンクさせ、ターゲットを絞った情報によって廃棄物分類作業の品質と効率の向上に役立てたいと考えています。

アジャイルなIBM Garage Methodologyに従い、Hera社とIBM Garageチームは8週間で、IBM Watson® Studioと IBM Watson® Machine Learningテクノロジーを組み込んだ実用最小限の製品 (MVP) を共同で作成し、主要な廃棄物の種類を認識する機械学習モデルを含む、ユースケース向けの特定ツールを生成しました。 Collina氏は以下のように述べています。「IBMのツールにより、以前は机上の理論であった内容を、非常に高速かつアジャイルに実現することができました。」

「現在、喫緊の課題はその実用化です。 たとえば、トラック1台1年分の廃棄物に関して、照明や天候のあらゆる組み合わせのプロトタイプを作成し、適切な洞察を年間を通じて得られる方法を見つける必要があります。」

リサイクル用ごみ箱にプラスチックごみを投入する女性
アプリのモダナイゼーション: ITによる循環型経済
廃棄物を選別する施設の描写が表示されたモニター

また、Hera社は自社のアプリケーション・インフラストラクチャーを廃棄物分類AIに対応させるために、循環型経済の概念を社内のITに適用しました。 数年前、Hera社はIBMと協力して「Beam」と呼ばれるカスタム・アプリケーションを開発済であり、ガスのスマート・メーターからほぼリアルタイムのデータを収集することでHera社のガス・ビジネスに役立てています。 Bonetti氏、Collina氏、およびチームは、Beamの機能を環境サービスや廃棄物収集などの他のビジネス分野に再利用し、トラックに取り付けたカメラからのビデオ映像など、より幅広いデバイスから多様な情報を引き出せる可能性を見出しました。

しかし、まず必要となったのは、アプリケーションのモダナイズでした。 Bonetti氏は以下のように述べています。「Beamでは元々のタスクをとても順調に行うことができました。」 「しかし、基盤となるモノリシックなアーキテクチャーが、アプリケーションの成長と進化の妨げとなっていました。」

IBM Cloud Paksを使用することで、Hera社はモノリスの制約から解放され、マルチユーティリティ・ビジネス全体のユースケースをサポートするために再利用できる、柔軟でオープンなソリューションのBeam IoTを構築できました。

Bonetti氏は以下のように述べています。

「当社のシステム進化戦略は、3つのガイドラインに基づいています。」 「クラウドネイティブ開発、統合アーキテクチャー、および価値創造を目的としたデータ使用に対する洗練性の向上です。」 これらの3つのガイドラインは、Hera社がBeamをBeam IoTに変えるために使用したIBMソリューションと完全に一致しています:

  • IBM WebSphere LibertyおよびIBM Transformation Advisorソリューション (現在は IBM WebSphere® Hybrid Edition として提供) は、Hera社がモノリシック・アプリケーションを柔軟なマイクロサービス・アーキテクチャーに変換し、継続的な適応を容易にし、クラウド・ネイティブ開発をサポートするのに役立ちました。
  • IBM Cloud Pak for Integration では、自動化されたAPIベースの統合のための新しい統合ツールを導入して、Beamの機能をスマート・メーターのユースケースの枠を超えて拡張しました。
  • IBM Cloud Pak for Dataは、MVP に組み込まれている機能と同じIBM Watson機能を提供し、Hera社がAIを適用して廃棄物データの組織化と分析を自動化し、振り分けと回収に役立つインサイトの生成を自動化するのに役立ちます。
  • Red Hat® OpenShift®External Linkのコンテナ・プラットフォームは、すべてのIBM Cloud Paksの一部であり、Beam IoTをパートナーがホストするプライベートクラウドで完全にコンテナ化されたアーキテクチャーで実行するのに役立ちます。
  • 循環型経済における新たな勢い
    廃棄物の分別収集用の複数のリサイクル・ボックス

    Hera社がIBM Garage、IBM Cloud Paks、およびWebSphereソリューションと行っていることは、有限のプロジェクトではなく、循環全体の一部です。

    Bonetti氏、Collina氏、および社員が、IBM Garageチームと協力して、回収可能な廃棄物を見つけるためにAIをトレーニングする方法、および、そのようなイノベーションを日常環境に拡張する方法を学ぶにつれて、新しくて貴重な専門知識を育成するだけではなく、電力/ガス業界でAIを活用する他の方法も特定することになります。

    Hera社を通じてBeam IoTで実現したモダナイゼーションと柔軟性は、重要なシステムに信頼性とレジリエンスを浸透させるとともに、継続的な適応と拡張を容易にします。

    そして最も重要なことは、これらの尽力により、廃棄物を他用途に再利用するためのコスト効率が、大幅に改善される可能性があるため、産業に影響を与えて、循環型経済に大きな勢いをもたらし、地球がその緑の一部を取り戻せる可能性を秘めているということです。

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    Hera SpA社のロゴ

    Hera SpA社について

    Hera社外部リンクはイタリア有数のマルチユーティリティ企業で、エネルギー分配、エネルギー販売、水循環管理、暖房、廃棄物、リサイクル・サービスを提供しています。 エミリア・ロマーニャ州、ヴェネト州、フリウリ州で事業を展開し、8,000人以上の従業員を抱え、年間収益は60億ユーロ以上です。

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    Hera社外部リンクはイタリア有数のマルチユーティリティ企業で、エネルギー分配、エネルギー販売、水循環管理、暖房、廃棄物、リサイクル・サービスを提供しています。 エミリア・ロマーニャ州、ヴェネト州、フリウリ州で事業を展開し、8,000人以上の従業員を抱え、年間収益は60億ユーロ以上です。

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