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シェアとリアルタイム・データの追跡や分析を結合すれば、解決できる(Watson IoT 岡本 修治)

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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #13

岡本 修治 ソフトウェア・ラボ・サービス

 

IoTやAIが持つ可能性と描く未来について、Watson IoTチームのメンバーに個人的な視点を交えて話していただくインタビューシリーズ、今回は岡本 修治さんに登場いただきます。

(インタビュアー 八木橋パチ)

 

        — お久し振りです。2年振りくらいでしょうか。

本当にお久し振りです。そうですね、TEC-Jのシェアリング・エコノミー(シェアエコ)勉強会以来だから、たしかにそろそろ2年近いのかな。

あのときはパチさんがアドバイザーとして参画くださっていて、毎回クタクタに疲れるまで議論して(笑)、本当に刺激的で楽しかったです。いろいろとお世話になりました。

 

        — いえいえこちらこそです。そしてWatson IoT事業部でご一緒できるとは思っていなかったので、嬉しいです。

厳密に言えば所属している組織は違うんです。でも、大体いつも行動を共にしているのでWatson IoTチームのメンバーではあります。

私の役割は、お客さまと一緒にPoC(Proof of Concept)と呼ばれるコンセプトの検証作業をしたり、実際にサービスをお届けしたりということですね。

 

        — シェアエコ勉強会の頃は、違う事業部にいらっしゃいましたよね?

半年前までクラウド事業部にいました。会社としても最大限に力を入れてる分野なので、おもしろいしエキサイティングでした。

ただ、個人的には、実際のビジネスに新しい技術や考え方をどうやって適用するかに惹かれるんですよね。クラウド事業としてはどうしてもインフラというかプラットフォーム寄りになるので、もっと実際にそれを使う「人」に近いところの仕事がしたいと思っていたところ、タイミングよく今の仕事に移ることができました。

 

 

        — 人に直接関係しているかどうかがポイントだったんですね。昔から「人指向」だったんですか?

それがもう20年以上前ですが大学は経済学部で、IBMに新卒で入社したあと最初の3年間は、財務部門にいたんです。意外でしょう?

会社全体の短期資金繰りを担当していたのですが、当時はまだ人手を使った計算作業が多くて、これはコンピュータにやらせればいい仕事だよねというものが多かった。ただ、金融機関が相手ということで文化的な制約も大きく、自分がやりたいのはこれじゃないなってことがだんだん分かってきました。

 

        — たしかに意外です。

それで、志願してSEにキャリアチェンジしたんです。その後は所属部門こそ何度か変わってはいるものの、ここ10年くらいは自分が好きなことを意識しながらやってこれています。

私が好きなことって一貫していて、「技術変化の大きな波」と「それが引き起こすパラダイムシフト」を、その場で見たい、味わいたいってことなんですよね。そのためには、小さくてもいいから、実際に何かを動かしてみることが大切なんじゃないだろうかって。

 

        — なんとなく、岡本さんという人がそこに表れているような気がします。

「なにをすればお客さまに実質的な価値を提供できるのか」「どうすればビジネス上のメリットをもっと生み出せるのか」 — これを愚直にお客さまと一緒に考えていく。仮説を立て、実証して、また仮説を作り直してって、漸進的に進めていく。

やっぱりそういう風にしか進められないことってあると思うし、実際に動かしてみて、そこで新たな方向性が見えてくることって少なくないんですよ。

 

        — 社会は変わってきていると言われていますが、岡本さんがそれを感じる顕著なことってなんですか?

難しい質問ですね…。いくつか頭に浮かぶことはあるんですが、たとえばですが、ラズパイ(正式名称はRaspberry Pi(ラズベリー パイ))やアルデュイーノとGoogleとSNSが合わさって、お手軽にできることが増えたってことですかね。

費用面、技術面、知識面のどれか、あるいは全部でこれまで手が出せなかったこととか、無理だと諦めざるを得なかったようなことが実現できるようになったこと。それも多くの人にとって、ですかね。

 

        — もう少し説明してもらえますか。

ラズパイに代表される安価な小型ボードと、簡単に仕組みについて調べられるインターネット検索で、コンピューターやエンジニアリングが誰にでも開かれたってことだと理解しています。

それでも、やっぱり分からなかったり困ったりすることはあるんだけど、Googleで検索したりSNSで質問すれば誰かが教えてくれるようになった。技術の進歩と心の進歩が組み合わさって、これまで狭かった道がぐっと広がったんです。

 

        — 心の進歩ですか。なにが急速に進歩させたんでしょう?

うーん、見返りがなくても答えてくれる人、教えてくれる人に出会える社会になりましたよね。少なくともオンラインでは。やっぱり衣食住が満たされたってことが大きいんだと思います。

パチさんは「マズローの欲求段階説」ってご存知ですよね。

 

        — はい。人間は下層の欠乏欲求が満たされると、より高次の存在欲求や自己超越欲求に向かうっていうものですよね。

それです。日本という国で考えてみても、戦後の復興期からアメリカに追いつけ追い越せを目標にやってきたわけですが、その目標はある意味達成してしまって、次なる目標が必要になってきているのだと思います。いま起きていることって、その観点で説明できることが結構ある気がしませんか?

個人の行動を見たとき、10年前までは見知らぬ人の車に乗って移動するとか、見知らぬ人に家を貸すとか、一般的な人が取る行動ではありませんでしたよね。

まだ発展途上ゆえの問題も残ってはいるものの、この10年のソーシャルという技術や概念の広がりで、人びとの行動や考え方が大きく変わってきた。そして今、さらに高次なもの、たとえば行き過ぎた資本原理主義のもと経済合理性を追求してきた結果失われつつある、人と人とのつながりを求めるようになったんじゃないでしょうか。

 

 

        — シェアリング・エコノミー勉強会のこと、いろいろと思い出しますね。

限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭』、これはパチさんも数年前にブログで取り挙げられていたベストセラーで、いろいろ示唆に富んだ内容ですが、あの本に書かれていたことが今や実際に起きてきていると思うんです。

持続可能な社会を考えたときに、シェア、共有というのは欠かせない概念だし、世界中の全人類がみなアメリカ人みたいに消費しだしたら地球があと2個あっても足りないってことを多くの人が実感したんじゃないでしょうか。

 

  — そんな中でWatson IoTにできることってなんでしょう?

身近な問題に、一つずつ地道に取り組んで解決していく。それしかないと思います。

例えば物流の問題。大雑把に言えば、それぞれの企業が巨大な倉庫を持ち、荷台の半分しか埋まっていないトラックを走らせて、各社の利益最大化、つまり全体でみたら個別最適化しているのがいまの物流の仕組みですよね。

既にさんざん言われていることですが、これを解決するのは、シェアという考え方と、リアルタイム・データの追跡や分析の結合でしょう。それがこれまで解けないって考えられていたものを、変えていくと思う。

 

        — みんなが豊かに暮らすために、「過剰な便利さや個別最適化」を巻き戻すことは可能ですか?

可能かどうかは分かりません。そもそも巻き戻す必要があるのかも。

でも戻れないからって、このままで良いわけはないですよね。さっきも言ったように、地球をあと2、3個用意することはできないんですから。

簡単なことじゃないことは分かっています。それでも、エネルギー問題なんかも同じで、個々人や各企業が「自分たちだけの利益」を超えたところからスタートすれば、技術的には解決は見えていると思うんですよ。

 

        — IBMがシェアできるものはなんですかね?

「ビジネスとの関わりを通じて社会に価値をもたらす方法」を考える訓練をし続けているのがIBM社員だと思うんですよ。もちろん、全員がそうだとは言いきれない面もありますが(笑)。

そういうDNAを持ってアプローチをし続けてきた私たちが、「弱いAI」とか「ビジネス専用AI」と呼ばれるものを土台にしたWatson IoTという道具を用いれば、IBMだからこその価値はそこに生まれると思うし、それをいろんな組織や人たちにシェアしていければって考えています。

 

        — 最後の質問です。2040年の岡本さんはどこで何をしていますか?

どこでなにをしているか…うーん、全然見当がつかないです。でも、なにかしらの形で社会に関わっているとは思います。

何か、人の役に立つ価値を提供できているかは分からないけど、自分なりに意味を見出せる行動ができていればいいですね。

 

        — シンギュラリティは起きてる?

いわゆる専用AIはすでに人間の能力を超えているものもありますが、汎用AIとなるとどうでしょう。昨年のQCC休暇(勤続25周年の記念休暇)中に読んだウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』にえらく感銘を受けたのですが、曰く、「世の中に理論化できないことは山ほどあり、そういうことは物語らなければならない」。

それは、すくなくとも現時点では、AIではなく人間の範疇という気がします。

でも、それが起きるのか起きないのか、起きたらそこからどうなって行くのか、せっかくなら長生きして技術と社会の変化をこの目で見ていきたいですね。

 

インタビュアーから一言

何度か出てくる「シェアエコ勉強会」は、IBM社内の有志による勉強会で、シェアリング・エコノミーと呼ばれる範囲のサービスを実際に自分で使い、そこで感じたことや見えてきたことをシェアしながらその可能性をみんなで考えようというものでした。

参加メンバーの中で、人間のエモーショナルな部分にばかり目が行きすぐに熱く語るのが私でした。そして対照的だったのが岡本さんで、「人とビジネスのバランスを冷静に見出す人だなぁ」といつも思っていました。なんだか今回のインタビューで、改めてそれを感じて嬉しくなりました。

 

そんなクールで知的な雰囲気を常に漂わせている岡本さんですが、今回のインタビュー中にちょっとだけ雰囲気が変わったのを感じたのが「地球が2個あっても足りない」って話をしていたとき。それから本文中にはありませんが、「シェアが手にしたこの勢いを、中学生の息子のためにも止めたくない」と言われたときでした。

…今まで気づかなかったけど、本当はメチャ熱な人なんじゃないかな?

(取材日 2019年1月30日)

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