Open for Data フォーラム

ポイントカードを対象とした 自社複数ブランドの「買い回り」分析への取り組み

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複数ブランドにまたがって商品を購入している顧客の行動を把握する

事例発表の2社目には、アパレル会社Aが、自社ポイントカード利用データを用いた顧客分析の取り組みについて発表しました。

衣類を中心とした雑貨・小物などのショップを全国展開する同社は、メンズからレディース、キッズまで幅広くカバーする多ブランド展開を行っています。

同社のポイントカードは2017年1月現在の会員登録は約300万人に達しています。

今回、同社が実施したのは、このポイントカードから得られる購買データを対象として、自社の複数ブランドにまたがって商品を購入している顧客の行動を把握する「買い回り分析」です。

「お客様の買い回りの状況を分析し、弊社とどれくらいのお付き合い(お得意様としての関係性)を築けているかどうかを検証します。さらに、買い回り行動が将来の売上につながることを実証できれば、お客様の購買行動の背後にあるニーズやシーンにあわせた買い回り・併買促進施策を社内に促すことが可能となります」と、担当者はその目的を話します。

そもそもなぜ、同社は「買い回り」に着目したのでしょうか。それまでの同社のマーケティング施策は、顧客と販売員が顔見知りとなることで、一人ひとりの顧客の嗜好やニーズを把握し、購入実績にあわせてサービス内容や提案レベルを上げていくといった、優良顧客を特定の販売員や店舗、ブランドに紐づけることに重点が置かれていました。すなわち他ブランドへの買い回りを促進するよりも、むしろ逆向きとも言える囲い込みに近い施策が行われていたことに、同社のマーケティング担当者が疑問を持ったことがきっかけです。

「客観的なデータ分析の結果として、買い回りの多いお客様の維持率と、買い回りが比較的少ない、すなわち店舗や販売員とのつながりが強いお客様の維持率のどちらが高いのかを知ることで、今後のあるべきマーケティング戦略を立てることができます」と担当者は話します。

複数の異なるブランド間の“相性”より正確に読み解く必要がある

ポイントカードの利用データに対してまずロジスティック回帰分析を実施し、明らかになったのは次のような傾向です。

  • 意外にも男性顧客は女性よりも離反しやすく、総じて維持率が低い
  • 買い回りに関しては、利用店舗数が多い顧客は維持率が高い
  • 利用ブランド数は短期的には維持率に影響がなく、買い回りが多くても翌シーズンもまた購入してもらえるかどうかはわからない
  • ただし長期間の購買状況を比較した場合、利用ブランド数が多い顧客は維持率が高い

「この結果から言えるのは、店舗とお客様の直接的なつながりを強めていくための活動は今後も不可欠であるものの、一方で買い回りの促進策を会社全体の施策として打っていかないと、お客様の継続的な購買を促すことは難しいという事実です」と担当者は話します。

 

さらに同社は、買い回りの多い顧客の特徴や購買パターン、同時期に購入する確率が高いブランドの組み合わせなどを明らかにすべく分析を進めていきました。

このステップで採用したのはアソシエーション分析の手法です。「単純にデータを集計したのでは、どうしても売上規模の大きい大型ブランドに買い回り先も集まってしまうことから、実態を読み誤るケースが少なくありません。複数の異なるブランド間の“相性”をより正確に読み解いていく必要があるのです」と、狙いを語ります。

そして、この分析から得られた最も大きな収穫の1つとして挙げるのが、「比較的多くの男性顧客が女性用ブランドを買い回りしている」という事実が見えてきたことです。ようするに顧客は自分自身の趣味趣向というよりも、家族構成や生活環境により大きな影響を受けて、買い回りを行っていることがわかりました。

ニーズやシーンの予測につながる分析レベルをさらに深化させていく

質疑応答に入り、レバレジーズ株式会社の阪上 晃幸氏から寄せられたのが、「ECサイトと実店舗での買い回り行動を区別なく分析しているのでしょうか」という質問です。

これに対して同社担当者は、「今回は区別なく行いましたが、本来はECサイトと実店舗は分けて分析したほうがよいと思っています」と答えました。さらに、「お客様は同じテナントに入っているブランドなど近隣店舗同士で購入する比率が高くなります。そうした距離による影響を排除してブランド間の本当の相性を読み解くためには、むしろECサイトのみを対象に分析を行うことが有力な方法として考えられます」と、今後の継続的な分析への方向性を示しました。

また、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社の多治見 和彦氏からは、「買い回り先のブランドにおいて、さらにその後にどんな買い回りが行われているのかといったところまで分析しているのでしょうか」という質問がありました。

現時点ではまだ対応できていないとのことですが、同社はこうした時系列をとらえた分析にも高い関心を見せています。「お客様が現在主に購入しているブランドに対して、どれくらいの将来に『テイストが合わなくなった』『自分には似合わなくなった』と感じて別のブランドに移っていくのかなど、ライフスタイルの変化に伴ったニーズやシーンを予測する指標を得るためにも、より深い分析に取り組んでいきます」と語りました。

 

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