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Think 2019現地レポート #4 “ミツフジのhamon – 今とこれから” by Watson IoT

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サンフランシスコで2月中旬に開催されたThink 2019では、多数のIoT先端事例を紹介するセッションが開催されました。

その中で最も大きな注目集めていたウェアラブルIoTソリューションが、ミツフジ「hamon(ハモン)」でした。

今回のレポートでは、ミツフジによる単独紹介として開催されたセッション「安全な職場環境をスマートなつながる繊維で – ミツフジとIBMによるAI活用(Smart, Connected Fabric: How Mitsufuji and IBM are Leveraging AI and IoT for Safer Work Environments)」の様子をお伝えします。

 


■ 職場の事故は毎年3億2千万件近く

セッションは、IBMのWatson IoT シニア・オファリングマネージャーのブライアン氏によるIoT市場とウェアラブル市場の拡がりについての説明からスタートしました。

ある国際機関による職場調査によると、以下のような数字が発表されています:

  •  15秒ごとに151人の労働者が怪我をしている
  •  3億2千万件近い事故が毎年発生している
  •  32万1千人もの人が職業上の危険により毎年亡くなっている
  •  毎年3兆ドルが職業上の怪我や死亡事故に対する雇用主の負担となっている

 

このような状況をそのままにしておいてよいはずがありません。しかし、これまでは十分な対策を取るのが技術的な側面からは難しかったというのも事実です。

今回のセッションでは、こうした状況を大きく変える、IBM Maximo Worker Insightsを活用した、ミツフジのウェアラブルIoTセンサー「hamon(ハモン)」について紹介します。

 

■ hamonが生まれるまで

ブライアン氏からバトンを受けたミツフジ 第一営業部の徳永 里奈氏による、ミツフジとウェアラブルIoTソリューションhamonの開発ストーリが紹介されました。

 

 

こちらのhamonは、私たちミツフジの、西陣織の帯を作ってきた繊維メーカーとしての技術と、最新の情報テクノロジーを発展させるIT企業としての技術により生まれた、ウェアラブルIoTソリューションです。

 

ミツフジは、1956年の創業以来、これまでに何度か大きな変革を経験しています。

中でも大きな変革の鍵となったのが、1994年の表面に銀メッキ加工を施した特殊な糸との出会いです。

この糸を元に、抗菌作用や電磁波シールドなどの機能性繊維として「AGposs」(エージーポス)の開発・製造・販売を進めてきました。

 

しかしその後、時代の変化とともに、この特殊な繊維に対する関心が変わってきました。抗菌性ではなく、高い「導電性」に注目が集まるようになったのです。

社内外から「ウェアラブルデバイスの素材として利用できないだろうか?」という声が多く聞かれるようになりました。私たちはこのチャンスに、それまでIT業界でグローバルなビジネスをしていた創業者の孫である三寺 歩代表取締役社長と共に、インターネット・オブ・ボディ(IoB)企業として世界への進出を決めたのです。

 

 

■ hamonのデモ

ウェアラブルIoTソリューション「hamon(ハモン)」の特長である高い導電性は、100回以上洗っても落ちません。そしてこうした特長を持ちながら着心地にも優れている繊維は希少です。

そしてこの特長こそが、グローバル市場への進出の決め手の一つです。

 

グローバル市場へ向けて、私たちは慎重にパートナーの選定を進めました。

時間をかけて複数のテクノロジー企業と協議した結果、高いスケーラビリティを土台としたスピーディーな展開力を持つIoTプラットフォームの魅力と、世界市場を知り抜いたグローバルな強みから、私たちはIBMのWatson IoTをジョイント・ソリューションを作り上げるパートナーとして選定しました。

 

hamonは、着衣型ウェアラブルデバイスにより取得した作業員の生体情報や位置情報を、ブルートゥースを通じてIBM Maximo Worker insightsに送り、周辺環境情報などの外部要因と合わせてクラウド上で解析し、安全を守るための情報としてワンストップで管理者へと送る仕組みです。

 

一例として建設現場を見てみましょう。現場には建設重機や長時間にわたる作業、騒音や変化し続ける天候など、事故やトラブルにつながる要因が無数にあります。

これらの「その時のその場所」における外部要因が、「その時のその人」の生体データと組み合わせて解析されます。

 

 

体調などを踏まえて、問題が発生しやすい場所や危険箇所への接近時に特に注意を呼びかけたり、あるいは休憩を促したり即座に回避行動を命じるなどして、危険予知や回避を通じて現場管理者と作業者により大きな安全と安心をもたらします。

まだ一部の実験ではありますが、こうした危険予知・回避の具体的なソリューションが提供されていることで、作業者のストレスが30%下がったという結果も手にしています。

こうして、作業員ご本人はもちろん、その安全を心から願っているご家族にも、Quality of Life(生活の質)の向上をもたらすのがhamonです。

 

■ hamonのこれから

昨年9月、私たちは日本有数の絹織物の産地である福島県の川俣町に、新しいウェアラブルデバイスの生産拠点をオープンしました。

 

 

この拠点により、これまで以上にプロトタイプを早く作ることができるようになり、グローバルなIoT市場により一層のスピード感で応えることができるようになります。

また、川俣町の子どもたちを中心とした地元住民の皆さまや行政と共に、町中で実証事業を重ねる共創活動「リビングラボ」の取り組みを進めていきます。

 

ミツフジのhamonは、単なるウェアラブルIoTソリューションではありません。

地方衰退や労働人口の減少など、世界的規模で訪れるこれからの社会課題に向き合うための、未来への鍵となるのです。

 


 

セッションの最後には、デモを見た来場者から、別システムとの連携性構築に必要な期間、セキュリティーに関する注意事項の有無などさまざまな質問が寄せられ、日本からやってきたウェアラブル・デバイスhamonへの関心の大きさを感じました。

 

関連ソリューション: IBM Maximo Worker Insights

 

参考: Think2019現地レポート #3 “ロレアル、ミツフジ、メルセデス、ビザ” by Watson IoT

参考: IoTは次のステージへ。 ミツフジとIBMが狙うInternet of Bodies新戦略

 

(TEXT: 八木橋パチ)

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