基幹業務システムの刷新

レガシーシステムと共に変革を目指す – 長年お使いの基幹システムの効果的な刷新のアプローチとは –

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基幹システムの刷新は、組織における大きな変革を伴うプロセスであり、テクノロジーの進化や業務プロセスの変化、セキュリティー上の懸念や法的要件の変更などが主な動機となります。しかし、長年作りこんできた基幹システムの刷新は容易ではありません。方向性の決定が難航し、刷新に踏み出せないケースも少なくありません。方針の決定時にはビジネスニーズの明確化、テクノロジーアセスメント、リスク管理が重要です。また、刷新のアプローチとしては、一括刷新 vs. 段階的刷新や、オンプレミス vs. クラウドなどの選択肢があります。複雑な検討課題を明確にした上で、最適な手法を選択することが、プロジェクト成功の鍵となります。
本ブログでは、基幹システム刷新の方針決定時の考慮点や、アプローチ選択のポイントをお伝えするとともに、効果的な刷新を実現するソリューションやベスト・プラクティスをご紹介します。長年お使いの基幹システムの刷新をご検討中の方々の一助となれば幸いです。

基幹システムの刷新の動機にはさまざまな理由が考えられます。まず、一般的な理由としては、ビジネスの変化や拡張により機能不足が生じ、システム外での対応が増え、業務が非効率になっているケースがあるでしょう。類似の状況として、ビジネスボリュームの拡張による性能の劣化も想定されます。さらに、セキュリティーリスクのあるシステム構成や、内部統制や法改正に対応するために、システムの再構築が必要になるケースもあります。また、単純にハードウエアやOS、ミドルウエアの保守期限切れというケースも多いかもしれません。では、このような理由から基幹システム刷新の必要に迫られた際、刷新方針を決定する際の考慮点をご紹介します。

①ビジネス目的との整合性の確認

前述の動機もふまえ、自社のビジネスの方向性と照らし合わせて、まずは「どのような目的で」「いつまでに」基幹システムの刷新が必要なのかを明確にすることが重要です。目的を具体的にすることで、いつまでに刷新すべきかが、おのずと決まってくるはずです。この「目的」と「期限」が基幹システム刷新プロジェクトにおいて守るべき“制約”となります。これらが確定してから、どのように基幹システムを刷新していくのかを検討します。
次に、現状の基幹システムにおける業務運用と、「目的」達成までのギャップを洗い出し、整理します。この時、現場のニーズもヒアリングする必要がありますが、現場側では現状の基幹システムに対する不満を並べがちです。あくまでも「目的」とのギャップかどうかで判断し、その視点から外れないよう注意が必要です。これを業務領域ごとに分類し、重要度の判定を行います。

業務領域 目的とのギャップ 改善効果 重要度 緊急度
生産管理 ①○○の場合、自動計算が行えず、手計算した結果を入力しており、作業に時間を要している。
○○百万
購買 ①○○の場合、手作業での対応となっており、間違いも生じている。
○○百万
販売 ①顧客マスタが同一顧客でも複数発番されており、顧客分析に手間がかかっている。
○○百万
会計 ①フロントシステムとの連携に手間がかかっている。
②ペーパーレスへの対応
○○百万
人事 ①勤怠管理のチェック機能が不足しており、コンプライアンス違反が生じるリスクがある。
○○百万

②システム構成の技術的な検討(テクノロジーアセスメント)

基幹システム刷新の目的とギャップが明確になった段階で、次にテクノロジーアセスメント(技術評価)を行います。評価を行う対象項目は、基幹システムの性能、セキュリティー、拡張性、運用コストなどです。評価対象となりうるソリューションやテクノロジーを調査し、それらの機能、コスト、サポート体制などを比較評価します。将来の成長や変化に対応しやすいかどうかという点も重要なポイントになります。ここではテクノロジーに着目していますが、実際には業務パッケージやサービスを活用することが想定される場合、そのパッケージやサービスによってテクノロジーが限定されることが多いため、アプリケーションのソリューションと同時に調査を行うことが多いと考えられます。
このとき、各ベンダーに対しRFI(情報提供依頼書)を発行して情報を収集することが一般的ですが、無計画にRFIを各社に発行すると、その後の取りまとめや比較検討がうまくいかない可能性が高まります。そのため、事前にある程度の方向性は決めておき、その方向性に合致するソリューションを持っているベンダーにRFIを発行することが望ましいでしょう。基幹システムの刷新は企業にとって重要なプロジェクトです。アセスメントによって得られた情報を基に、自社にとって最適なアプローチを選択し、十分なリソースとサポートを確保することが重要です。

基幹システムの刷新で目指す方向性が見えてきたところで、次に、具体的に刷新を進めていくためのアプローチを検討します。選択にあたっての大きなポイントは、基幹システムの刷新を一括で行うか、段階的に進めるかという点です。一括刷新と段階的な刷新とでは、それぞれにメリットとデメリットがあります。

方式 メリット デメリット
一括刷新 目的の早期実現一度に全てのシステムを更新することで、新しいシステムを早期に利用開始することが可能。

全体的なコスト削減一度にプロジェクトを遂行することで、プロジェクトマネジメントなどの間接コストや、段階導入時に暫定的に必要となる機能開発を削減できる場合がある。

リスクの集中一度に幅広い業務領域のシステム変更を加えることで、リスクが積み上がり、失敗した場合の影響も大きくなり得る。

マネジメントの難度上昇プロジェクト規模が大きくなると、全体の状況把握の難易度が上がり、問題が検知しにくくなる。

社内リソースの大量消費大規模なプロジェクトになることで、社内のリソース(工数)を一時的に大量消費し、通常業務に支障をきたす可能性がある。

段階的刷新 リスクの分散小さなステップで進めることでリスクを分散し、失敗の影響を最小限に抑えることが可能。

適応性の向上段階的に導入することで、先行プロジェクトからフィードバックを得ることが可能。フィードバックを次の段階以降に生かすことでプロジェクト成功確率が高まる。また、ビジネスの変化や技術の進化にも臨機応変な対応が可能となる。

統合の複雑性複数のシステムやバージョンを統合することが必要になるケースや、暫定期間の対処についても検討が必要になる場合は、計画の複雑さが増す。

全体最適化の欠如段階的な導入により、先行するシステム側の考慮漏れが後で発覚するリスクがある。また、システムがバラバラになる場合は、セキュリティーやパフォーマンスの懸念もある。

 

一括刷新と段階刷新には一長一短がありますが、自社の状況を見極めて、どちらが適しているかを判断する必要があります。例えば、従業員数が多い大企業であれば、基幹システム刷新プロジェクトに専任の人員をアサインすることも可能かもしれません。しかし、中堅・中小企業であれば専任者をアサインすることは現実的ではないと考えられます。そのような場合、一括刷新のメリットに魅力を感じたとしても、実行は難しいでしょう。
社内リソースに限りがある場合は、段階刷新のメリットが大きいと考えられます。段階的に導入することで、システム全体の影響を予測しやすくなり、問題が発生した場合には早期に対処することが可能です。また、段階的な刷新では運用に与える影響を軽減できます。新しい機能やシステムの一部を導入する際に、徐々に運用への負荷を増やしていくことで、運用上の問題を最小限に抑えることもできます。
実際に、長年利用して追加開発を重ねてきた基幹システムを刷新するにあたって、以下のような問題に直面したお客様がいらっしゃいました。

  • 現行の基幹システムの全容や各機能の必要性(具備された背景)を知っている人がいない
  • 長年同じシステムを使い続けたため、システム刷新プロジェクトの経験者がいない

その企業では一括刷新のリスクが大きいと判断され、段階的な刷新を進められました。比較的、刷新しやすい領域から刷新を進めることで、システム更改に対するノウハウや社内人材のスキルも蓄積されていき、最後に本丸の業務領域を刷新する際には十分な準備ができ、全体刷新が成功しました。
この例における段階導入の成功の要因は、「比較的刷新しやすい領域から刷新を進めた」こと、そして「段階的に導入しやすいシステムを選定した」ことです。次の章では、この成功を実現したERPソリューションとして「ProActive C4」を紹介します。

ProActiveは、SCSKが開発した、国産初となるERPです。2023年には誕生から30周年を迎え、これまで6,600社、300を超える企業グループに採用頂いております。
導入されている業種も下図のように幅広く、特定の業種に限られてはいないため、グループ内で業容が混在している場合であっても対応が可能です。

さらに、国産ERPならではの法改正への対応力と、高い業務適合率を誇っており、会計、人事給与、販売管理、資産管理などの業務領域において、個別最適から全体最適まで包括的に対応可能なERPです。また、最新バージョンのProActive C4では、SaaSでのサービス提供のほか、オンプレミスでの導入も可能です。業務領域や提供形態において組み合わせの選択肢が多いことから、ProActive C4はさまざまな企業の基幹システム刷新プロジェクトにおいて、段階刷新のソリューションとして採用を頂いています。
先の事例でも、「比較的刷新しやすい領域から刷新を進めた」ことが成功の鍵となりましたが、ProActive C4における段階的な刷新は、会計、資産管理、人事給与など、比較的企業ごとの特性が少なく、法改正の影響を受けやすい(法改正対応の負荷軽減効果が見込める)領域から始めるケースが多くなっています。これらの領域は、社内においても特定の部署が主に使用するシステムであり、現場へのシステム刷新の負荷は限定的と言えます。そのため、基幹システム刷新プロジェクトにおいて、社内マネジメントの観点からも難易度は高くないことから、段階刷新の初期段階での最適な選択となります。
その後、現場部門が使用する受発注管理などの領域を刷新する場合でも、ProActiveには販売管理システムがあるため、マスターの共通化も含め、拡張は容易となります。仮にProActiveではなく、個別開発のシステムを採用する方針を選択した場合も、会計などの領域の刷新が終わっていれば、連携仕様は明確になっているため、個別開発システムの構築に注力することが可能になります。

さらに、ProActive C4はIBM Power上でも稼働可能です。IBM Powerは、Windows(x86)サーバーと比較して、高パフォーマンスで稼働するサーバー製品です。

※ SPECrate 2017 Integerより: https://www.spec.org/cpu2017/results/

ProActive C4をIBM Power上で稼働した際の実績として、Windows(x86)と比較した場合も高い処理速度が確認できています。
IBM PowerでProActive C4を稼働させるメリットは、その処理速度だけではありません。IBM PowerのPowerVMの機能を活用し、同一サーバー上において、IBMiで動作するシステムとの共存が可能です。ProActive C4はLinux(Red Hat Enterprise Linux =RHEL)で動作するのですが、例えば、「生産管理や販売システムは現行のIBMiのまま」+「ProActive C4会計/人事給与はRHEL」といった組み合わせを、同一サーバー上で動作させることが可能です。

既にIBM Powerサーバーを導入済みである場合は追加のインフラコストは最小限とすることができますし、管理するサーバー台数が減ることにより運用負荷、CO2削減を含めたトータルコストの削減ができます。

また、同じIBM Powerサーバー上で動作させることによるメリットとして、

  • パーティション間でのリソース共有
  • PowerのVLANでのデータ連携

が可能であり、セキュリティーやパフォーマンス確保の点で優位性があります。
PowerVMによるワークロード分離、FirmwareからOSまで統合されたセキュリティーによって、仮想サーバー上で実行されているワークロードは厳格に分離されます。さらに、Power10ではパフォーマンスに影響のないサイドチャネル攻撃への対策が実装され、一層強固なワークロード分離が実現されています。このような鉄壁のワークロード分離は、以下の図のようなユースケースで威力を発揮します。

これらのIBM Powerのメリットを活かし、基幹システムの刷新も効率的な計画が実現可能となります。下図に例を示しましたが、例えば、最初は「比較的刷新しやすい領域」である会計や給与計算システムをProActive C4で刷新し、後から販売管理領域もProActive C4に切り替えていくといった進め方が考えられます(パターン①)。その先の段階として、給与計算システムのような法改正の影響を頻繁に受ける業務領域の場合、SaaS利用に切り替えてメンテナンス負荷を下げる方向性も考えられます(パターン②)。このように、ProActive C4 on IBM Powerは、システム刷新の段階や、将来的な環境変更にも柔軟に対応できる選択肢を持つソリューションとなっています。

ここまで、段階的な基幹システム刷新を計画し、ProActiveを活用することで以下のメリットがあることをお伝えしてまいりました。

  • リスクの最小化
  • 社内リソースの効率的活用
  • ユーザーの適応性向上
  • ビジネスニーズへの柔軟な適合
  • 技術の進歩への迅速な対応

さらに、導入の例として、サーバー製品であるIBM Power上でProActive C4を稼働いただくことによる相乗効果もご紹介しました。

ERP製品のProActive C4やProActive C4 on IBM Powerのソリューションについてより詳しい情報をご提供いたします。長年お使いの基幹システムの刷新を実現されたお客様の事例を、業種、業務領域を問わず幅広くご紹介可能です。ご質問などについては以下ボタンからお申し込みいただけます。お気軽にご相談ください。

徳田 友美

徳田 友美

SCSK Minoriソリューションズ株式会社
産業・金融ビジネスユニット 産業ソリューション第一事業本部
ProActiveソリューション部 部長

福岡 祐希

日本アイ・ビー・エム株式会社
デジタルセールス事業部
ソフトウェア事業 ソフトウェアデジタル第二営業部

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