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共同PoCで実証する運用高度化ソリューション IBM Turbonomic ARMの実力  ~IBMビジネスパートナーエグゼクティブフォーラム講演レポート~

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昨今の急速なクラウド化に伴い、企業のシステムが大きな変革を迫られている今、その運用の効率化や人材の確保が急務となっています。AIを活用した運用高度化ソリューションで見出す解決方法について、2022年11月25日IBMビジネスパートナーエグゼクティブフォーラムで行われたNTTデータ様とIBMとの共同セッションの内容を通してご紹介いたします。

クラウド中心のシステム運用を支える新しい取り組み “CloudOps”

従来までの人手中心でかつコスト削減を主眼としたシステム運用の延長線上では、クラウドとアジャイルで期待されるアジリティ、オンデマンドな伸縮性、AIなどの最新技術の導入容易性を発揮することは非常に困難です。近年クラウドとアジャイルを組み合わせた新しい開発手法へのシフトが進む中で、重厚長大なシステム開発を行うイメージが強いNTTデータ(以下NTTD)でも、“CloudOps”と名付けたシステム運用をモダナイズする新しい取り組みを始めています。このCloudOpsの取り組みを通じて、変化が求められるシステム構成に関してROIやワークロードの最適化、セキュリティ担保、ユーザエクスペリエンスや生産性向上の実現を目指しています。また、DevOps, SecOps, FinOps, AIOpsそれぞれの領域においてシステム運用のモダナイズに向けた成熟度モデルを定義し、お客様のCloudOpsトランスフォーメーションを支援しています。

・CloudOpsとは

マルチ・ハイブリッドクラウド、データセンター、エッジなどのクラウドベースの運用プロセスのベストプラクティスをまとめたものを “CloudOps” と呼びます。

「CloudOps トランスフォーメーション」 によりクラウド運用に関する様々な課題やシステムの健全性を常に観測できるようにし、自動化・標準化により運用改善を行うことで、迅速に課題に対応しシステムを常に健全で技術負債を解消します。

・CloudOpsにより得られる価値

次のようなクラウド運用を通し、様々なビジネス価値に寄与します。

  • ワークロードとITサービスのデリバリ
  • ワークロードの最適化、パフォーマンス確保
  • セキュリティ・コンプライアンス
  • コスト管理
  • モニタリング
  • マイグレーション
  • DRと事業継続のためのバックアップを維持

PoC(Proof of Concept: 技術検証)による共同検証

テクノロジーの進化に伴い、より解像度の高い有益なログデータが利用できるようになる一方で、複雑化するシステムへの対応が原因で本来注力すべき業務に人的リソースを割くことができず、効果的なデータ活用が困難であるなどの課題を抱える企業は多く、仮にアジリティの高い開発ができたとしても、受け入れる側の運用がボトルネックとなってしまいます。
そこで両社による共同PoCの取り組みとして、AWS, Azure上の400インスタンス規模の検証環境にTurbonomicを導入し、2022年8月から一ヶ月間のPoCを実施しました。
クラウドのアカウント情報を登録するだけで、Turbonomicが各リソースの稼働実績を収集でき、適切なサイジング、リザーブドインスタンスの調達状況などを分析して、450もの最適化アクションが自動的に提案されました。

IBM Turbonomic (以下Turbonomic)は専用のAIエンジンを搭載しており、リソースの最適化を効率的に実現できます。また、SRE (Site Reliability Engineering)を実装する有力な手段でもあります。稼働状況をリアルタイムに可視化するだけでなく、ITリソース最適化のためのアクションを自動生成すると同時に、アクションを実行した場合に実際どれくらいの効果があるのか具体的な数値情報を伴って提示されます。

リソースの最適化を実現することにより、直面するIT運用の課題を解決するIBM Turbonomic アプリケーション・リソース管理

複雑化した現在のインフラの課題

  • アプリケーション稼働環境において、適正な設計・構築判断となる指標を備えることが困難である
  • 適正な環境であるかどうかを人手により解析しているが、対応に限界がきている
  • オーバースペックな環境構築に対する費用が肥大し、当初の計画予算を上回ってしまっている
  • 指標を備えていない稼働環境の効率化や推測によるコスト削減により、アプリケーション品質劣化を招く恐れがある

Turbonomic ARM ができること

ハイブリッド・クラウド環境の運用・管理の簡素化 アプリの性能劣化を阻止 インフラを効率化(コスト削減)

特に下記のような課題に対して大きな導入効果が証明されており、第三者機関によるクラウド管理ソリューションに関する評価レポートの中でもLeaderポジションの製品として非常に高い評価を受けています。

  • ハイブリッド・クラウド環境の運用・管理を簡素化してインフラ運用負荷を減らしたい
  • インフラコスト削減しつつも、ビジネスを支える複雑化したアプリケーションの性能劣化を防ぎたい
  • 最適な投資判断基準に備え、効率的にオンプレミス環境からクラウド環境へ移行を実現したい

また、クラウドソリューションの強みでもある製品エンハンスメントも、お客様にとっての大きなメリットです。以前よりIBMでは、Turbonomicが実現するITリソース最適化が結果的にCO2削減に寄与できる点もご導入のメリットとしてお伝えしてきましたが、近年、重要な経営課題になりつつあるサステナビリティーへの取り組みを支援する機能追加をさらに強化しております。
Turbonomicから推奨されるITリソース最適化アクションには性能向上やコスト削減の具体的な数値情報を伴って提示されるのですが、それに加えて、アクションによって削減できる消費電力やCO2排出量も明確に提示できるようになりました。これにより、お客様はよりカーボンニュートラルへの貢献を意識したシステム運用が可能になります。

先進的に取り組みを進められた米国の世界的な大手銀行様では、Turbonomicを導入しITリソースを最適化することを通して、必要な性能を確保しながら、3年間でCO2を3万メガトン*を削減し、さらに8千万ドル(約109憶円)以上のハードウェア投資抑制を実現とコストの大幅削減を実現されました。
(*Turbonomic Sustainability Calculatorを用いて算出)

NTTデータではどのような評価がされたのか?

Turbonomic PoV

AWS/Azureに対して1ヶ月間のTurbonomicのPoVを実施し、
EC2・RDS・EBSに関する450もの最適化アクションの瞬時作成を確認しました

もしも従来の運用の延長線で運用の高度化を実現しようとした場合、各クラウドの新しいインスタンスファミリーなどの新メニューを継続的に収集し、サイジング最適化の判断ルールを常にアップデートし続ける必要があります。システム構成が多様化し管理対象のシステムの規模が膨大になるほど、それに伴うデータの整理や分析などの負荷に耐え切れなくなります。

一方Turbonomicを適用した場合、クラウドサービスの最新リリース情報にキャッチアップし、常に最適化されたルールに基づいて行うべき分析業務を洩れなく実行してくれるので、運用管理者の運用負荷が下がると同時に運用の精度も向上できます。

Turbonomic によるCloudOpsトランスフォーメーション

アプリケーションとリソースの関係性を可視化し、リソース管理の自動化により、
アプリケーションの安定稼働とコストパフォーマンス向上に繋がります

アクション実行前に、パフォーマンス&コスト最適値を確認可能。不足/余剰リソースを考慮してサイズ変更を行い、インフラの構成最適化・健全性担保を実現します。

連携されたシステム構成・稼働実績のデータを基に、AIエンジンが最適なリソース配分を算出し、構成変更の自動実行も可能です。

リソース不足懸念のあるアプリケーションに対して自動的にリソースを割り当て、パフォーマンスを安定化し、システム障害をプロアクティブに防ぎます。

アプリケーションとリソースの関係性を可視化し、リソース管理を自動化します。性能問題調査や手作業での変更作業の運用業務負荷が軽減します。

また、運用ポリシー上非推奨のインスタンスタイプを制限条件とした上での最適化ができるので、マルチクラウドの一元管理およびガバナンス確保を実現できると評価しています。
結果、アプリケーションとリソースの関係性が可視化され、管理が自動化されることで、システムの安定性と高いコストパフォーマンス維持が可能となり、CloudOpsトランスフォーメーションを推進する強力な製品と考えています。Turbonomicから提供される情報をDevOpsの考え方に基づき開発にフィードバックしていくことが重要であると同時に、組織内により質の高いシステムを目指していくためのKPI、プロセス、マインドが醸成され、サイクルがしっかり回る体制構築に向けて、従来の運用を変えていくことが不可欠です。

最後に

今回の共同PoCを通じ、より複雑化しつつあるシステム運用の課題に対してIBM Turbonomic ARMの有効性をご評価いただきました。企業のクラウド利用が進む中で、システムの運用負荷やコスト、ガバナンス等の課題を持つお客様に、このようなAIを活用した運用高度化の取り組みをご支援していきたいと願っております。

[関連情報]

高畑 知也

高畑 知也 氏

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
技術革新統括本部 クラウド技術本部 クラウド技術部
課長

波塚 欽也

波塚 欽也

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
Turbonomic セールスダイレクター


パートナーエグゼクティブフォーラムのセッションの様子はこちらからご覧いただけます。

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