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「脱Notes」を決断する前に検討すべき「3つの課題」

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「働き方改革」が注目され、従業員の生産性向上は企業の経営課題になっている。加えて、グローバルな競争力向上を目的にコミュニケーション基盤、コラボレーション基盤の見直しや機能の追加に取り組む企業は多い。その中で、長らく企業の情報基盤を支えてきたNotesの刷新を考える企業は少なくないが、いざ移行しようとすると「大きな落とし穴」にはまる企業が後を絶たない。ここではNotesのマイグレーションで陥りやすい3つの課題と、本来目指すべきコミュニケーション基盤の刷新のあり方、そして「レガシーシステム」と見られがちなNotesが保有する「データ」を有効活用し、付加価値を創出するためのポイントを紹介する。

 

コミュニケーション基盤、コラボレーション基盤の刷新を理由にNotesのデータ移行に取り組む企業は多いが、そこには見落としがちな3つの課題がある

コミュニケーション基盤、コラボレーション基盤の刷新を理由にNotesのデータ移行に取り組む企業は多いが、そこには見落としがちな3つの課題がある(© hanss – Fotolia)

 

「働き方改革」でコミュニケーション基盤に求められる変化とは

働き方に対する多様なニーズに応え、生産性向上を実現する「働き方改革」を推進することは、企業にとって喫緊の課題だ。そして、働き方改革は、ツール面の整備と、社員の意識改革が不可欠だ。

ツール面の整備については、メール中心だったコミュニケーションをチャット、Web会議、またモバイルなどを活用して刷新し、チームでの業務生産性を高めるコラボレーション基盤を整備する企業が増えている。

新しいコミュニケーション基盤に求められていることは、PCのクライアント端末を前提としたメール中心の環境では実現できないレベルでの「時間、場所、組織の制約からの解放」である。モバイル端末を活用し、クラウドを通じてメンバー同士が「いつでも、どこでも、誰とでも」コミュニケーションできる環境を実現することで、業務フローを変え、社員の意識を変革していくのである。

つまり、コミュニケーション基盤の変革とは、既存のメール環境のリプレースが目的ではなく、メールだけでは実現できない新しい働き方やコラボレーションを可能にするための変革である。

実際に、グローバルトレンドに目を向けると、海外の先進企業は新しいデジタルテクノロジーの活用で可能となる新たなビジネスモデル、新たな価値を創出する「デジタルトランスフォーメーション」に取り組んでいる。日本企業のコミュニケーション基盤の変革や「働き方改革」も、意思決定のスピードを高め、新たな価値づくりに取り組んでいくことで、グローバルにおける競争力を高めていくものでなければならない。

 

「Notesマイグレーション」「脱Notes」を決断する前に検討すべき3つの課題

コミュニケーション、コラボレーション領域で「IBM Notes/Domino」(Notes/Domino)を活用する企業は多い。Notes/Dominoは、1989年の発売以来、約30年にわたって多くの企業で利用されているグループウェア製品だ。 2018年に次期バージョン「Version 10」をリリースすることも決まっている。

Notes の特長のひとつが、メールやチャットなどのコミュニケーション基盤と社内のさまざまな業務アプリケーションを柔軟に構築できる基盤を兼ね備えた統合プラットフォームであることだ。

中島 治氏の写真

日本アイ・ビー・エム(IBM)
コラボレーション&タレント ソリューション事業部 事業部長
中島 治氏

 

日本アイ・ビー・エム(IBM)コラボレーション&タレント ソリューション事業部 事業部長の中島 治氏は、「日本企業においては、メールに加えて、部門ごとの情報共有や業務アプリケーションの用途でNotesが活用されている。一方で、昨今、企業内で求められるコミュニケーションの範囲や規模が拡大し、組織のフラット化を目指す流れの中で、組織を超えて情報連携を行いたいというこれまでNotesが得意としていた範囲とは異なるニーズが増えてきました」と説明する。

また、グローバル化や「ソーシャル」の普及により、事業部門や海外からの要請で情報のオープン化に踏み切るケースもある。中島氏は、「情報の種類によっては個人レベルでの閲覧や発信を可能にすることで、ビジネスをスピード・アップするだけでなく、社員のエンゲージメントを高めてイノベーションを促進したいというマインド・チェンジが進んでいる」と話す。

こうした変化の中で、企業の中で長く使われ、部門レベルでの情報共有や業務アプリケーションを担っているNotes/Dominoを「レガシー」と考え、刷新しようと取り組む企業もある。

「背景には、クラウドツールの台頭があります。実際に、メールに限れば社内環境からクラウドへの移行は比較的容易であり、モバイルでの利用が可能になるなどのわかりやすい効果があります。しかし、メール中心のコラボレーション・スタイルを変革するものではない上に、特にNotesユーザーでは、業務と生産性を支えていたアプリケーションの移行について、具体的な検討なく話が進んでしまうことがあるのが現実です」(中島氏)

確かに、「Notesマイグレーション」「脱Notes」に取り組む企業はあるものの、移行を完璧に行えたという話はあまり聞いたことがない。その1つ目の理由として中島氏は、移行が「文書の再現」に終わってしまうことを挙げる。

「Notes/Dominoは、文書型DBと呼ばれる統合データベースです。これは、リッチテキストや文書の検索機能など、さまざまな機能が包含されているものです。しかし、これらを移行すると、Notes以外のシステムでは、文書の『見た目』『体裁』は再現可能であるものの、ドキュメントに付されたリンクやファイルが追随されなくなったり、アクセス制御が変更できなくなるという問題があります。これは、その情報の活用方法や情報アクセスにおける操作性の検討が十分になされなかったため、移行後に以前のような使い方ができなくなってしまい、結果的に重要な情報を業務に活かせなくなってしまうのです」(中島氏)

データを移行して文書の「見た目」「体裁」は再現できても、ドキュメントに付されたリンクや、検索機能の移行がうまくいくとは限らない

 

また、Notes/Domino は PC、モバイルをはじめアプリケーションの開発から展開に必要なあらゆる機能が網羅されている。Notes/Dominoから移行してこれらの機能を実現するには、複数のシステムを使い、基盤環境を構築、維持する必要がある。そのための開発、連携、運用コストも積み重なってくる。これが2つ目の問題だ。

Notes/Dominoから移行して、これまでの機能を実現するには、複数のシステムを統合する必要がある

 

さらに、3つ目の問題がライセンスだ。多数のアプリケーションだけではなく、モバイルが普及し、多様な働き方を実現するためにユーザーが複数の端末を使い分ける時代だ。Notes/Dominoは、原則、ユーザー単位のライセンス体系であり、アプリケーションの数も端末の数もライセンスに影響しない。だが、上述したように、脱Notesのために複数のシステムを展開させた場合、ライセンス体系が複雑化し、結果として当初の想定以上のコストがかかる可能性もある。

脱Notesのために複数のシステムを融合させる場合、ライセンス体系が複雑化し、想定以上のコストがかかる可能性も

 

「中には、脱Notesによる再構築を試みたものの、Notesから移行して以前より使い勝手が落ちた上にデータが生かしきれなかったり、コストもかさみ、メール中心の働き方も変わらない、ということが分かって断念するケースもあります」(中島氏)

 

改めて考えたい「Notes/Domino」の有効活用

そこで改めて考えたいのが「Notes/Domino」の有効活用だ。「Notes移行は『Notesか、それ以外か』の二者択一ではなく、他のツールと合わせて引き続きNotesを使う選択肢も有力だから」だと中島氏は説明する。

その理由として中島氏は「Notes/Dominoの最新バージョンでは、Web化、モバイル化、クラウド化に対応し、さらにAPIによりクラウドの各種Webサービスをはじめとする他のシステムと柔軟に連携が可能になっている」点を挙げる。「REST API」により、Notes/Dominoに保存されたデータを外部サービスから利用することが可能となり、他のアプリケーションやサービスとの連携性、Notes上のデータの有効活用の可能性が高まった。

当然、本来の目的であるコラボレーションの変革も忘れてはいけない。「長い歴史の中で定評を得ている使い勝手の良さに加え、メール、チャットのコミュニケーション基盤を有し、既存環境からのハイブリッド・クラウド化にも対応。また、『IBM Connections』のソーシャル・コラボレーション機能と連携し、ビジネス・ユーザーが慣れ親しんだメール中心の環境から新しいコラボレーション環境へと変革できます。また、メール自体も『人』を中心としたUIで生産性の向上を実現するメール環境『IBM Verse』が追加されるなど、コラボレーション環境の進化に取り組みながら、アプリケーション基盤としての機能は一貫性を持って継続しています」(中島氏)

もちろん、業務アプリケーションもそのままというわけではない。業務アプリケーションについては、PCを前提に開発された当初のUIを刷新し、モバイル最適化を図るNotes/Dominoのモダナイゼーションへのニーズが増えている。これについては「XPagesという技術でWeb化、モバイル化に対応しています。パートナー・ソリューションによるモダナイズ用のツールも提供されており、既存の Notes/Domino アプリケーションのデータや既存の設計を変更することなく、モダナイゼーションが可能になります」と中島氏は説明する。

さらに、Notesアプリケーションのクラウド化を実現するソリューションとして、2017年12月から新しいサービスとして、Dominoアプリ実行環境をクラウドで提供する「IBM Domino Application on Cloud」をリリースした。

「Notes/Domino 9.0.1のFeature Pack(FP)の次のリリースとなるFP 10では、DominoサーバーがDockerに対応します。Dominoサーバーの運用の選択肢が増え、クラウドへの移行がさらに容易になります。さらに、Domino Application on Cloudという新サービス、来年2018年にはVersion 10をご提供し、お客さまのクラウド化を一層ご支援していきます」(中島氏)

こうした新機能、サービスが相まって、Dominoアプリケーションはモバイルやクラウドで、最新のIT基盤を活用しながら、継続して利用できる。

 

Notes/DominoはIBM Watsonと連携へ

さらに、レガシーならではの膨大な「データ」ストックの活用も大きなポイントだ。たとえば、「IBM Watson」をはじめとするコグニティブ・テクノロジーを活用することで、社内に蓄積された膨大なデータを新たな価値創造につなげていくことができる。

「たとえばDominoアプリケーションには、各企業、各業務に固有のプロセスや過去の情報が蓄積されています。そのデータをコグニティブで分析することで、業務フローの最適化を図ったり、チャットボット化してその企業だけの応答サービスを提供したり、過去の生産情報や障害情報から事前に障害予告をユーザーに通知するといったことが可能になります」(中島氏)

コグニティブ・テクノロジーは、自然言語処理により、掲示板に記載された文章などの非構造化データを理解、分析し推論を得ることができる。データの分析結果をわかりやすい画面やワークフローとしてユーザーに可視化するためのインターフェースとして、Notes/Dominoを活用することも可能だ。「実際に、Notes上の社内規程や過去のQ&Aを活用して採用前の社員に対するオリエンテーションにチャットボットを実装している企業もある」と中島氏は説明する。

Notes/Domino の進化は新たに掲げられた「Domino 2025」ロードマップによりこの先も続く。次期メジャー・バージョンである「Version 10」に向けて、IBMは「JAM」と呼ぶセッションを世界各地のユーザーと開催している。その声を取り込みながら、バージョンアップにつなげていく仕組みだ。

具体的には、Face to Faceのワークショップだけでなく、「Domino2025 Jam」というWebサイトを立ち上げ、オンラインのイベントやコミュニティなどを通じ、グローバルの顧客から要望事項を吸い上げていく予定だ。

「こうした要望をまとめ、優先順位をつけ、Version 10、さらにはそれ以降のメジャー・バージョンに反映していきます。もちろん、日本発のニーズに基づく機能拡張が多く搭載されるでしょう。日本IBMとして、日本のお客さまのニーズをしっかりと取り込み、新機能として実現していきたいです」(中島氏)

業務に浸透したツール、企業文化を引き継いできたツールを有効活用し、新たなテクノロジーによる価値づくりになげていきたいと考える企業は、Notes/Dominoによる業務基盤整備を検討してみてはいかがだろうか。

 


本記事は、2018年に「ビジネス+IT」に掲載された記事を一部編集しています。肩書きや製品名、情報は取材当時のものです。

 

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