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熟練者のノウハウと知見(匠の技能)をAIが伝承 〜 現場作業員向けAIアシスタント

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日本の製造業が持つ競争力の源泉は”現場の技術力”にあると言われています。今、製造現場では高齢化による退職や人材の流動化が進む一方で、熟練技術者が長年の経験で培ったノウハウや専門領域に対する知見は暗黙知となっており、社内で十分に共有されていません。これにより、企業の競争力が失われつつあることに危機感を覚える現場の声を良く耳にします。皆さんの身近な現場でも、少なからず以下のような課題が発生しているのではないでしょうか?

  • 設備マニュアルや過去の作業ログなどがPDFで電子化されているものの、どこに保管されているのか問題発生時にどこを参照すれば良いのか分からない。
  • 作業者の経験年数に応じて作業品質にバラツキが生じる。
  • 作業に必要なマニュアルを探すのに時間がかかる。また、マニュアルの情報が更新されておらず、古い情報によって作業ミスが発生してしまう。
  • 発生した事象に対して、担当者によって対処法が異なり、どの対応が最適なのか判断できない。

現場作業員向けAIアシスタント(IBM Equipment Maintenance Assistant :以下、EMA)は、これらの課題を解決するために開発されたソリューションです。

EMAは、マニュアルや規約、過去のトラブルシューティングや作業ログなどを一元管理し、AIがその内容を自動的に解析するとともに、自然言語による検索を可能にします。また熟練者の知見を学習して精度の高い検索結果を導き出し、自然言語による対話を通じて、ユーザーを最適な情報に誘導します。熟練者のナレッジやノウハウ、マニュアルをEMAに取り込むことで、あらゆるレベルの担当者に熟練技術者のノウハウと知見を伝承する仕組みが構築できるのです。

現場作業員向けAIアシスタント(EMA)の活用イメージ

図1:現場作業員向けAIアシスタント(EMA)の活用イメージ (クリックして拡大)

EMA導入事例:US Army

US Army (アメリカ陸軍)では、装甲車に関する15年間の保守データと5億以上のセンサーデータを収集。これらのデータを活用してエンジンの故障を予測分析するとともに、故障の予測内容に応じて、修復手順を現場作業員にガイドしました。装甲車の設計は非常に複雑で、関連する情報量は膨大です。設計情報をベースに、関連する書籍、過去の報告書や修理マニュアルなどを一元的に管理し、故障発生時は、原因と考えられる箇所を特定するとともに、過去の故障履歴から修復手順や修理に必要なパーツをAIが提案できるようになりました。その結果、無駄なエンジンの取り換えを回避できるようになり、1200万ドルのコスト削減を実現しました。

現場作業員向けAIアシスタント (EMA) の機能概要

このように、EMAは機器や設備を扱うお客様に対して、特に大きな効果を発揮します。複雑な機器や設備に関する知識や技術の習得には、関連マニュアルや文献などの基本情報を頭に入れるだけでも多大な労力が必要です。匠の技能と呼ばれる、熟練技術者が長年の故障対応経験から得た勘やノウハウに基づいてスピーディに原因特定・対応を行うことは、さらに難易度が高く、経験の浅い技術者には難しいことでした。

EMAは、機器や設備のマニュアルといった基本情報はもちろん、熟練技術者達が残した膨大な量の作業履歴や報告書などの非構造化データ(*)を取り込んで分析します。現場作業員が目の前で発生している事象をEMAに口頭で伝えると、それに対してどう対応すべきなのか、熟練者ならこうするはずだという最適解を、音声言語で提案します。

(*)非構造化データ:データベースなどに個別に定義された構造で格納された構造化データとは異なり、一定の構造を持たないデータを指す。一例として、メールや報告書などの文書、画像や動画、音声など。

Equipment Maintenance Assistant の機能概要

図2:Equipment Maintenance Assistant の機能概要(クリックして拡大)

EMA 機能一覧

EMAの主な機能は以下です。IBM Maximoやその他の設備管理・作業指示システムと連携することで、現場でのより効率的かつ高品質な作業を後押しします。

  • 自然言語による検索機能:現場作業員が自然な会話文を用いてシステムに問い合わせ、文書を検索できます。
  • 文書登録機能:Webブラウザ経由で文書を登録しバージョンを管理します。登録可能な文書のフォーマットはPDF、Word、HTML、JSONです。
  • チャットボット機能:ベテランの知見を取り込んだ自動会話機能が現場作業員に助言を与えます。
  • 検索精度改善機能:文書に含まれるお客様の専門用語の意味を学習し、高精度な検索が可能となります。
  • Maximo連携:Maximoのワーク・オーダーを検索し、ベテラン作業者の作業履歴を確認することができます。
  • グラフ検索機能:熟練者の頭の中にあるデータ構造を可視化し、ある事象の背後にある別の事象との隠れた関係性を視覚的に捉えることができます。

また、EMAは以下のWatson APIを含んでいます。

現場作業員向けAIアシスタント (EMA)の導入に向けたステップ

EMA導入と、AIの学習機能を高めていくための4つのステップ

図3:EMA導入と、AIの学習機能を高めていくための4つのステップ(クリックして拡大)

EMAを導入し、活用するまでの難易度やステップは、企業におけるマニュアル整備状況や電子化への取り組み状況、また作業指示システムの構築状況などに依存します。

すでに取り組みを開始している企業は、まずは自社の現場の実態を把握するところからスタートし、熟練技術者のノウハウ伝承の実現に向けて確実に一歩ずつ進んでいます。どこから始めればいいのか分からない、という場合は、現場作業員へのインタビューを通して、障害が発生する頻度が高い設備や現場にあたりをつけ、部分的にソリューションを導入していく方法も有効です。

何れにしても、まずは一歩を踏み出さないことには、状況は変わりません。IBMはEMAというソリューションだけでなく、現場の状況を可視化するスキルに長けた業務戦略コンサルタントや、運用保守業務に詳しい業界の専門家、膨大な紙文書を電子化した知見なども持ち合わせており、総合的にご支援する準備が整っています。

EMAに関する詳細な製品情報は、以下を参照ください。


 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 


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