SPSS Modeler ヒモトク

データ分析者達の教訓 #15- データ分析は手段と割り切り情熱をもって目標に進め

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皆さんこんにちはIBMの河田です。SPSSを含むデータサイエンス製品の技術を担当しています。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

SPSS Modelerの書籍を私も共著で書かせていただいている本田技研工業の小川様です。

小川様にはこのヒモトクブログで度々ご登場いただいているのに加え、2023年秋のSPSSユーザーイベントをはじめ、多くのセミナーでご講演をお願いしています。

そしてその素晴らしいコミュニティへの貢献がIBMグローバルで認められ、この度「IBM Champion 2024」に選出されました!

 

 

小川 努 様

本田技研工業株式会社
電動事業開発本部
BEV開発センター
BEV企画統括部
データアナリティクス部

-この度の「IBM Champion 2024」受賞誠におめでとうございます。

ありがとうございます。これまで多くの方々からご支援頂いた事に深く感謝しています。

今回のインタビューを、これまで振り返り新たな気持ちでのスタートを切る良い機会とさせていただきます。

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

私の部門は、社内外から招集されたデータ&ビジネスサイエンティストで構成されたCoE(Center of Excellence)組織で、その主な任務は企業内の問題を課題化し解決することです。

例えば製造・品質・仕様/性能設計に関わる「硬い分析」から商品・サービスを「誰に」どの様な「価値」で届けるべきかを考えるマーケティングの「やわらかい分析」まで、幅広い領域に取り組んでいます。これらは、社内コンサルタントとして機能しており、各部門からの相談に始まり、データを活用して問題解決を進める支援となります。

これらの取り組みは、企業全体のデータ活用能力を向上させ、人材育成にも貢献しています。効果的な意思決定を可能とする競争力の強化につとめています。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

2010年代初頭から中盤にかけて、「ビッグデータ」という言葉がバズワードとして登場し、業界に大きな盛り上がりをもたらしました。

この期間、ビッグデータやデータドリブンといったコンセプトが広く受け入れられたものの、実際には多くの企業やプロジェクトが具体的な目標を定めずに進められることが多く見られました。

この問題は、データ分析者自身にも一因があり、具体的な課題とデータが定まることで解決策を提供できるという自信過剰が見られました。しかし、実際には課題の定義と期待される成果との整合性が極めて重要であるにも関わらず、これがしばしば見落とされました。

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

ビジネスサイドとの信頼関係の構築のためにも、ビジネス課題を解こうというパッションドリブンのコンセプトも重要ということです。データ分析を目的ではなく手段として捉え、技術や能力に囚われずに目標を見失わないようにすることが必要です。

このアプローチは、分析部門の役割と必要な人材を再評価し、組織の成長に貢献する貴重な教訓となりました。データドリブンの手法は、データが準備されていればすべてが解決するわけではなく、ドメイン知識と理解が重要です。

適切な課題設定と重要な特徴量の同定は、ドメインの深い理解から生まれます。このプロセスを通じて信頼を築き、革新的な行動につなげることができます。

「データドリブン」と「パッションドリブン」の相互作用から学んだことは、顧客理解と価値創造に不可欠です。AIの導入を進める際にも、目的を見失わない進め方が重要であることを忘れてはなりません。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

近年、生成AIに関する興味深い話題が絶えません。

この技術のマルチモーダルな進化は、感性の領域にも深い影響を及ぼすと予想されます。既に、この技術は私たちの業務プロセスを大きく変革し、精度加速をもたらしています。

これらの技術の活用は、データ分析や顧客理解の精度と効率を向上させ、新しい価値を創出する可能性を秘めています。

企業の真の競争力とは何かを追求することは刺激的であり、我々は、これに挑戦していきます。

 

データに関わるキャリアの中で取り組むスタンスに変化があれば共有ください

ヒモトク(紐解く)。分析のアプローチを象徴するこの言葉が好きです。しかしながら、その感覚が変化してしまいました。

かつては具体的なデータを元に「硬い分析」に取り組む際、まるで「パズル」を解くような感覚がありました。

ですが近年、顧客価値に焦点を当てた「柔らかい」分析にシフトしていく中で、そのアプローチは「推理小説」のような謎解きへと変化しています。

 

インタビューのお礼と感想

小川様、お話をいただきありがとうございます。

さて皆様、いかがでしたか?

データ分析が手段から目的化してしまうという苦いご経験から、今一度ビジネスの課題に立ち返るということは、あらためて大切だなと感じました。特に今、多くの生成AIをつかったPOCが行われていると思いますが、「生成AIを使うこと」が目的化してしまっていることも多いのではないかと思います。企業の競争力の追求という目的を見失うことの内容にしなければなと感じました。

 

次回はMAIの木暮様に「ステークホルダーの高い期待を使命感と創意工夫で乗り越えろ」を伺います。

 

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→SPSS Modelerノードリファレンス(機能解説)はこちらから

→ SPSS Modeler 逆引きストリーム集(データ加工)

 

 

河田 大

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 watsonx事業部
Data & AI 第テクニカルセールス

共著書に「実践! 異常検知と故障予測―IBM SPSS ModelerによるIoT時系列データ活用」

 

 

 

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