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Q&A:IBMによる、Red Hat買収完了後の展望とは

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これは、2019年7月9日に公開されたBlogの翻訳記事です。

写真左:Red Hat 製品およびテクノロジー担当エグゼクティブ・バイスプレジデント ポール・コーミア(Paul Cormier)、写真右:IBM クラウド&コグニティブ・ソフトウェアのシニア・バイスプレジデント アービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)

IBM クラウド&コグニティブ・ソフトウェアのシニア・バイスプレジデント アービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)、Red Hat 製品およびテクノロジー担当エグゼクティブ・バイスプレジデント ポール・コーミア(Paul Cormier)が、この歴史的な買収について議論しました。

 

IBMとRed Hat、ともにどのようなメリットが期待されますか

ポール・コーミア(以下コーミア): Red Hatはオープンソースによる開発モデルを取り入れたエンタープライズ・ソフトウェア企業です。その基本的な原則は、私たちが学ぶ新しい手法から私たちが開発する新しい技術まで、Red Hatが行うこと全てはアップストリーム・コミュニティーに戻ります。IBMと提携することで、お客様との接点が飛躍的に拡大するので、オープンなエンタープライズ・テクノロジーをさらに推進できるようになります。 IBMとは、以前からパートナーでしたが、既存のIBMのお客様は、ハイブリッド・クラウドの革新の基盤となる、次世代のオープンソース・ベースの技術に、より直接的にアクセスできるようになります。

アービンド・クリシュナ(以下クリシュナ):今後オープンソースへの投資は増加するでしょう。Red Hatは、オープンソース・コミュニティーで成果物を直接活用できるようになりますし、結果として、より多くの成果物がアップストリーム・コミュニティーに戻ることになるでしょう。もう1つの大きな利点は、Red Hat Enterprise LinuxやOpenShiftなど、Red Hat製品で実行するためのIBM製品の大規模な最適化です。このインフラを活用し他のオープンソース・プロジェクトを実行できるよう、注力していきます。

 

お客様にとってのメリットは何でしょうか?お客様の反応はいかがでしたか?

コーミア:より大規模に、より広範囲にわたって、両社のお客様にイノベーションをもたらすことだと考えています。Red HatとIBMの拡張性と専門知識を組み合わせることで、お客様のためにもっと多岐わたったご支援ができるようになります。私は最近、大手通信キャリアのお客様から、「我々はIBMもRed Hatも好きです」とコメントいただきました。このお客様は目の前にあるオープンソース技術が、次なる未来のビジネス機会を切り拓くのだと捉えていらっしゃるのです。これはIBMが買収によって実質的に規模が拡大したという単純な話ではなく、むしろもっと大規模な案件を生みだす可能性が高いことを意味します。すでに多くのお客様は、IBM製品や、テクノロジーを活用するために、IBMのコンサルティングを利用されていらっしゃいます。Red HatとIBMは以前からパートナーでしたが、これからは統合した形でパートナーシップを実現できるようになるのです。

クリシュナ:お客様にとっても、大きな変化です。デジタル変革を進めるためのテクノロジーやスキルをご提供します。両社のお客様はこれからの展望に興味をお持ちです。今回の買収は大規模な業界エコシステムを構築し、共通基盤の最適化を図る機会だと、多くの人が捉えています。もっと手軽にテクノロジーを利用できるという利点は明確です。Red Hatだけでは、規模的な制限があるかもしれませんが、両社であれば、他のパートナーを最適化するために、より多くのリソースを投入できます。これはIBM、Red Hat両社にとって、Win-Winなことであり、またそれはお客様にとってのWinであり、そして他のプロバイダーにとってのWinでもあります。

 

お客様や業界が現在直面している喫緊の課題は何ですか?

コーミア:クラウドが最初に登場したとき、企業はすぐにすべてのアプリケーションがクラウドに移行できるだろうと言われていました。それは10年以上前のことです。しかし、今日、エンタープライズ・ワークロードのわずか20%ほどしかがクラウドに移行していないと業界アナリストは指摘しています。その理由の1つは、クラウドを管理するには複雑すぎる環境になったことです。これは、クラウド中心の開発プロジェクトとクラウド対応製品の構成要素が乱立しているためです。たとえば、Kubernetesは開発プロジェクトであり、製品ではありません。多くの顧客は、すべてのKubernetesディストリビューション(125以上ある)に互換性があると確信していました。しかし、実際はそうではありません。展開に関しては、これらは同じタイムラインやライフサイクルではないことがすぐにわかります。製品と同じように、すべてのクラウドは、基礎技術が同じであっても、全く異なります。そのため、お客様がクラウドをまたぐ利用を望まれる場合、開発者が開発しなければならないテクノロジ・スタックも4つか5つ持ち、その運用を行わなければならないことがわかりました。それは管理の観点からは継続は不可能です。

クリシュナ:もう1つ大きな課題があります。今日のビジネスは事実上テクノロジー・ビジネスになりつつあります。クライアントにとって大きな問題は、ワークフローを最適化する方法であり、テクノロジーを活用することです。プラットフォームの展開について語られる時、その上にあるものが最適化されることはほとんどありません。リカバリー、監視、セキュリティー、監査などの機能が組み込まれていることはめったにありません。また、ワンクリックで展開できないこともよくあります。通常、これらの設定はすべて手動で行う必要があります。よって、お客様が私たちにご期待されていることは、煩雑なプロセスを大幅に簡略化することなのです。

 

IBMとRed Hatはこれらの問題をどのように解決するのでしょうか。 

クリシュナ:プラットフォーム自体だけでなく、お客様が必要としているのは、専門知識と、安全な環境づくりです。それこそ、私たちが成し遂げるべきことです。Red HatはすでにコンテナとLinux上でプラットフォームを提供しており、さらにワークロードを提供できます。IBMにとって肝心なことは、IBMおよびオープンソースのミドルウェア、データ、そしてAIも確実に最適化されるということです。

コーミア:企業はIT環境を簡素化する必要があります。そのためにアプリケーション構築方法を変えなくてはならないこともあります。我々はモノリシックなアプリケーションの代わりに、ソフトウェア・エンジニアリング観点で優れたマイクロサービス・アーキテクチャに組み込まれたアプリケーションが今後主流になると見ています。そしてマイクロサービスの価値を享受するために、お客様はこれらを複数のITインフラに分散させることができます。そして、それらを自動化し、同期すれば良いのです。人間がツールなしで実行するには複雑すぎます。

クリシュナ:まだあります。世界はすでにLinuxを採用しており、今ではコンテナに向かっています。問題は、混沌とした方法で始めると、1000の異なるシステムが生まれることになります。1人のユーザーが1000個のインスタンスを管理する必要がないように自動化することが不可欠です。それがなければ、必要とされる、よりシンプルでまとまりのある環境を作り出すことは非常に困難になるでしょう。

 

IBMとRed Hatはともに、広範囲にわたって開発者コミュニティーと関係を持っています。開発者にはどのようなメリットがありますか?

クリシュナ:ITの世界は現在大きな変化を遂げています。1000の異なるシステムが存在する環境では、開発者の手の届く範囲は実際に利用可能な範囲よりも制限されます。企業がさまざまなパブリック・クラウドを使用できるようにするための共通のインフラを両社で構築していますが、開発者をその制限から解放するのに役立つはずです。すなわち、これらの結果から得られるネットワーク効果から大きな恩恵を受けるでしょう。

コーミア:パブリック・クラウドの展開から学んだことは、クラウドがITインフラの一部になることはありますが、ITインフラ全体の一部になることはめったにありません。お客様所有の、ベアメタル、仮想マシン、またはプライベート・クラウド上で稼働するオンプレミスのアプリケーションがあります。そして、複数のパブリック・クラウドをまたいで利用することがあります。ある開発者のニーズに基づいて、プラットフォームごとに異なるバージョンのLinuxが導入されています。つまり、開発環境もそれぞれのクラウドで異なります。これこそ、両社がハイブリッド・クラウドおよびマルチクラウドの世界全体で単一の共通のオペレーティング環境を提供することで解決しようとしている問題です。 1つの共通のオペレーティング環境を構築するのに役立つので、私たちは運用担当者を支援するだけでなく、開発者が単一の運用ポリシー、デプロイメント・ポリシー、およびセキュリティー・ポリシーを持てるように支援します。それらは、一度構築すれば適切なITインフラに展開できる環境を利用できるようになります。

 

IBMとRed Hatは20年以上にわたり協業してきました。Red HatとIBMは、パートナーとしてはこれまで実現できなかったことが、IBMのRed Hat買収により何が達成できるようになりますか?

クリシュナ:まずはビジネス・パートナーシップです。今後、ソフトウェア製品の開発と展開を行う主要なプラットフォームは、LinuxとOpenShiftになります。クラウドとオンプレミスの両方を含みます。また、Red HatはLinuxの最大の企業基盤を持っているので、今、私たちはもっと多くのことを成し遂げる立場にあります。両社だけが構築できるエンド・ツー・エンドのソリューションを提供できます。これは互いにコミットしていないと実現できないものです。

コーミア:アップストリーム・コミュニティーの観点からは、早い段階でより多くのエンジニアを最適なプロジェクトに参加させるという点で効率が向上します。例えば、5年前、10以上の異なるコンテナ・オーケストレーションのプロジェクトがありました。Red HatはKubernetesに注力をすることにしました。私たちはそのコミュニティーで働いていた影響力のあるエンジニアをRed Hatに招き入れ、Kubernetesが企業利用に耐えられるよう、人的リソースをさらに投入し、そして会社として影響力のあるコミュニティー・メンバーになりました。Red Hatは開発者全員をその方向に進めることに決めましたが、IBMは別の意見を持っていたかもしれません。現在、IBMとRed Hatはコミュニティーの利益のために上流プロジェクトのメリットを、オープンに議論できる立場なりました。

クリシュナ:Kubernetesの例を挙げれば、Red Hatが一番の貢献者です。しかし、Istioについては、IBMが一番の貢献者と言えます。だからこそ、一緒になることで広く網羅し、お互いに構築することができます。オープンソースの性質は、すべてをひとつの会社が実行することではないため、これは非常に重要です。重要な成功要因というのは、全く異なるところから、貢献があることなのです。

コーミア:その通りです。最も脆弱なプロジェクトは、ただひとつの会社とだけで行っているものです。一方で、最も成功したプロジェクトというのは、広範囲で展開しています。あらゆる背景からの異なるアイデアを持ち寄ることは、大きな価値があります。多くの企業が「我こそがオープンソース企業である」、と主張していますが、それらは単なるパッケージ業者にすぎません。実際、コミュニティーへの影響はほとんどありません。上流があなたの開発モデルであり、それがどこへ向かっているのか推進するのを手伝うことができないならば、あなたは将来的にあなたの顧客の問題を解決することができないでしょう。IBMとRed Hatはどちらも長い間上流で働いてきました。この理由により、私はそれがオープンソース全体にとって素晴らしいことになるだろうと思います。それは両社のDNAに組み込まれています。

 

あなたがオープンソースが発展し続けるために必要と考える最も重要な原則は何ですか?

コーミア:まず、最高の技術が勝つという原則があります。しかし、Red Hatが持っている、そしてこれからも持っているであろう、最も重要なコミットメントは、「アップストリームを先に」です。まだアップストリームになっていない、またはアップストリームに受け入れられることに非常に近い製品には、何も入れません。これはオープンソースの観点からは非常に重要ですが、さらに重要なのはエンジニアリングの観点からです。アップストリームの最初のポリシーは、オープンソース技術をベースにした100%の企業利用に耐えうる製品群を開発できるようにすることです。

クリシュナ:得る事と同様に返す事の重要性を付け加えます。いくつかの企業は単にオープンソースを利用してそれを分岐します。恩返しをすることで、今起こっているイノベーションの善良な市民になることができ、他の人もその恩恵を受けることができます。また、包括性とオープン・ガバナンスを追求するオープン・テクノロジーのコミュニティーは、最大のエコシステムになる傾向があります。多くの貢献者を持つプロジェクトは、単一のベンダーによって管理されているプロジェクトや、ガバナンスがより制限されているプロジェクトよりも堅牢で長寿命、そして低リスクです。

 

Red Hatは、ITのスイス、中立の立場だと言われることがあります。それが永続的な成功への鍵でした。 Red Hatの中立性を維持するためにIBMは何をしますか?

クリシュナ:Red Hatは中立を保持します。それについては、明確にしておきます。中立性が成功するためには、お客様が希望される任意の場所で、製品を展開できることが重要です。可能な限り広範なエコシステムへのアクセスを保証することが、お客様にとって真の選択を可能とします。Red HatがRed Hatであることは、誰にとっても高い関心の的です。

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