IBM クラウド・ビジョン

これからの時代を勝ち抜いていくためのIT人材/スキルとは?

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クラウドも活用したデジタル変革を本格的に推進していくために、どのような人材を育て、どういったスキルを高め、どのような組織を作ればよいのか──このテーマに頭を悩ませているCIOは多いでしょう。デジタルエコノミーの先導役となるIT組織が持つべき人材、スキルについて、日頃、調査活動やソリューション提供などを通じて多くのユーザー企業と接するIDC Japanのアナリストと日本IBMのキーマンらが意見を交わしました。

※ 本記事は2020年8月に開催したWebセミナー「ニューノーマルを勝ち抜くデジタル変革」における対談「しなやかな組織に求められる人材・スキルとは?」の内容を基に構成しています。

 

ITスキルや人材の不足にどう対応するか?

 クラウドやAI、IoTなど、さまざまな領域で新たな技術や活用法が次々に登場している昨今、人手不足も続く中で必要なIT人材やスキルの確保に苦慮しているCIOは少なくありません。ニューノーマル時代に向けてデジタル変革(DX)の重要性が一層高まる中、自社に必要なIT人材をどう獲得して育成し、組織としてスキルを高めていくべきか──2020年8月に開催されたWebセミナー「ニューノーマルを勝ち抜くデジタル変革」では、多くのCIOが関心を寄せるこのテーマに焦点を当てた対談「しなやかな組織に求められる人材・スキルとは?」が実施され、ユーザー企業の動向に詳しいIDC Japan株式会社のリサーチディレクター松本 聡氏と、クラウド・ソリューションの提供などを通じて多くのお客様のDXをご支援してきた日本IBMの松谷 和明氏と前田 幸一郎氏が登壇。日本IBMで長年にわたりサービス・デリバリー活動をリードしてきた黒田 恭司氏の進行により、さまざまな議論が交わされました。

ニューノーマルwお勝ち抜くデジタル変革

写真左より、進行役の黒田 恭司氏(日本IBM)、松本 聡氏(IDC Japan)、松谷 和明氏(日本IBM)、前田 幸一郎氏(同)

松本 聡氏
IDC Japan ITサービス リサーチディレクター
松本 聡氏

 最初のディスカッション・テーマは「人材やスキルの不足」です。今日、さまざまな業界でDXの加速が求められる中、その推進に必要なIT人材の不足が指摘されています。これに関して、どのような点に課題があるのかという黒田氏の質問に対し、松本氏は「問題の根本は少し深いところにあるかもしれない」と指摘します。

 「クラウドやAIを扱う人材やスキルの不足を認識している組織は多いでしょう。また、昨年辺りよりCIOの方々から『人を雇ったり教育したりするための予算は確保したが、実際にどういう人を雇ったらよいのか、どう教育したらよいのかがわからない』という話を聞くようになりました。『DXのために業務部門と連携しなければならないが、どう進めたらよいかわからないし、組織をどう作ればよいかもわからない。実はそれが一番大きな問題なんだ』とおっしゃる方もいます」(松本氏)

 松谷氏は、大半の企業にとってDXは新たな取り組みであり、人材やスキルの不足を埋めるには小規模な取り組みを繰り返して経験を積むことと、新たなチャレンジにおける失敗を許容できる文化の醸成が必要だと話します。

松谷 和明氏
日本アイ・ビー・エム
オープン・クラウド・センター
松谷 和明氏


 「新しいことをやるときは、小規模な仮説検証型のPoC(Proof of Concept)を繰り返すなどのスモールスタートが有効です。それに、必ずしも全てが成功するとは限らないので、得るものがある失敗を許容できる信頼関係や文化を醸成していくことも、人材やスキルの問題とともに重要だと思います」(松谷氏)

 前田氏は、マネージメントと現場SEの2つの観点から、次のように指摘しました。

 「マネージメント面で大切なことは、自社のクラウド戦略やDX戦略を明確にすることです。これらが不明確なままでは、DXの推進に必要な技術として何を、どのくらいの人に学んでもらうかといった計画が立てづらくなります。これは現場のSEの方々にとっても重要なことです。なぜなら、どのスキルを身に付ければ会社の将来に役立つのかが明確になれば、現行システムの維持に追われている多忙な方々が無駄なく的確に学んでいけるようになるからです」(前田氏)

モダナイゼーションでは目的を明確に

 また、「既存システムを先進技術で更改するDX手法の『モダナイゼーション』について、人材やスキル、組織の面で顕在化している課題は何か」という質問に対して、松本氏は次のように答えます。

 「何を目的にモダナイゼーションするのかが明確でないケースが散見されます。『変化に対応できる』という言葉に引かれ、目的が不明確なままモダナイゼーションを進めた場合、『どのデータと連携させるべきかわからない』といった問題が生じる恐れがあります。まずは目的を明確にしたうえで進めることが肝要です」(松本氏)

 それでも、目的が不明確な表現になってしまうケースもあるようです。松谷氏は補足します。

 「新しいシステムを作る際は定量的なKPIやROIを出しやすいのですが、モダナイゼーションは既存システムを更改することで、その効果やKPIを明確に定量化することが難しいという事情があります。そのため、『セキュリティー強化』『機能拡張性の向上』といった定性的な目的が掲げられる傾向があるのだと思います」(松谷氏)

アジャイル/クラウドネイティブ開発の深化では事業部門とIT部門のより密接な連携が必要

 続くテーマはアジャイル/クラウドネイティブです。今日、変化への対応、ビジネス要件への迅速かつ柔軟な対応を目的にこれらの開発手法が注目を集めていますが、「アジャイルやクラウドネイティブは今後広く浸透していくと思うか?」という質問に対し、松本氏は「間違いなく浸透していく」と断言したうえで、開発だけでなく、運用にも気を配るべきだと付け加えます。

 「開発に関しては多くの組織に浸透した頃合いであり、次に運用が課題になります。これにきちんと取り組まないとコストばかりが上がってしまい、うまく回らなくなります。逆に運用まで見据えて取り組めば、浸透のスピードがより早くなるのではないでしょうか」(松本氏)

 前田氏も、アジャイルやクラウドネイティブ開発の浸透を実感していますが、それらのお客様が直面されている課題が「ビジネス価値をいかに的確に捉え、システムを迅速に実現していくか」ということだと話します。

 「現在は事業部門とIT部門がより密接に連携しなければ『ビジネス価値のスピーディーな実現』が難しい段階に来ています。従来の組織の壁を打破して密接な協業を促進するなど、企業文化や考え方の変革、マインドチェンジなどの取り組みも必要になってきていると感じます」(前田氏)

“しなやかな組織”に求められる人材、スキルとは?

 さらに、議論は環境の変化や多様化する顧客の要望にスピーディーかつ柔軟に対応していける“しなやかな組織”に求められる人材やスキルに及びました。

 松本氏は、“しなやかな組織”を実現するうえでの大前提として、全てをIT化/デジタル化するのは難しいため、まずどこを対象にするかを見極めることが大切だと話します。

 「この見極めができる人材や組織、とりわけCoEのような技術やビジネスの目利きをする組織がリードしながら、『これはデジタル化すべき』『こう対応すべき』と判断していくことが“しなやかな組織”につながっていくと考えています」(松本氏)

 松谷氏は、“しなやかな組織”作りがうまく進んでいる組織では、リーダーの資質も重要だと感じています。

 「強い信念と責任感を持ってマネージメントしながら牽引しているリーダーがいる組織やプロジェクトは、紆余曲折を経ながらも着実に前に進み続けています。1人ひとりのエンジニアのスキルだけでなく、リーダーの資質も非常に大事なのです。そうしたリーダーがいる組織や企業には優秀な技術者も集まります」(松谷氏)

前田 幸一郎氏
日本アイ・ビー・エム
クラウド・アプリケーション開発
前田 幸一郎氏

 そして前田氏は、“しなやかな組織”を「未来が不確かな状況の中で、何が起きても大きな失敗をせずに進んでいく組織」だと解釈する場合、大事なことは3つあると話します。

 「まず、自社の顧客とマーケットをよく理解する人を抱えること。次に、ビジネス課題に対して何をITで解決でき、何を解決できないかを、自身のスキル領域に留まらず人脈やビジネス・パートナーを活用して的確に判断できる技術者を抱えること。最後に、自社の企業文化や既存システムをよく知る人を抱えること。これらの能力を持つ人材をバランス良く組織内に抱え、多様性を保つことが重要です」(前田氏)

企業も個人もコミュニティーへの積極的な参加を

 最後のテーマは「人材の育成や確保をどう行うべきか」。これに関しては、やはりスモールスタートが一番の近道であり、コミュニティー活動に参加することも重要だと松本氏は力説します。

前田 幸一郎氏
日本アイ・ビー・エム
グローバル・ビジネス・サービス事業本部
エンタープライズ・オートメーション
理事 パートナー
前田 幸一郎氏

 「例えば、最近はクラウド関連のコミュニティー活動が活発であり、そこに参加すれば、他社がどのようにして人材を獲得したのか、新たなスキルをどう習得しているのかを知ることができ、刺激になるはずです。また、人手が足りない今日、全てのIT業務をユーザー企業の中で閉じてやるのは不可能です。マネージド・クラウドなどのサービスやパートナーを徹底的に活用し、社内組織はデジタル・サービスの企画やアーキテクチャー設計などに注力できる体制を整えることも必要だと思います」(松本氏)

 IBMもコミュニティー活動に力を入れており、2020年7月に「IBM Community Japan」を発足させました。これは組織の枠組みにとらわれずに誰もが“個人”で参加できるコミュニティーであり、IBMが蓄積してきた知恵と経験、既存の枠組みを全て開放し、研究プログラムや共同研究、成果物の作成、成果発表などの取り組みによる「学ぶ」「作る」「つながる」を通じて“未来”をともに紡いでゆく参加型の“場”だと黒田氏は説明します。

IBM Community Japan
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 このようなコミュニティー活動への関心はあるものの、業務が忙しくて参加する時間を作るのが難しいという技術者も少なくありませんが、松本氏は「自分のためになることなので、興味のある人は有休をとってでも参加したほうがよい」とアドバイスします。

 さらに、松谷氏はCIOなどマネージメント層が、機会の提供や経済的な支援などの面で技術者をバックアップすることも必要だと強調します。

 「IBMの場合、学ぶ環境や実践する環境、学んだスキルを生かせる環境の確保については『Future Skilling』という取り組みをマネージメント主導で進めるなど力を入れていますが、学んだ内容を人に教えることによってさらにスキルを定着させるということについては個人が意識を高めていかなければいけない面もあり、今後は『会社に投資してもらった分をコミュニティーに還元する』という意識を各自が持つ必要があると感じています」(前田氏)

Future Skillingとは
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※ 環境の変化が常となった今日、中長期的なプランニングではなく、1人ひとりが日常的に状況を見極めながら継続的な新スキルの獲得に取り組み続けられなければ、会社としても個人としてもゴールを達成することはできなくなってきています。Future Skillingでは、それぞれの個人に対し、現在のスキルを基にすると次にどのような可能性が待っているのか、その可能性を最大化するためにはどのようなスキルを追加で獲得する必要があるのか、どうすればそのスキルを獲得できるのかについての情報を提供したうえで、実践レベルに至るスキル獲得を支援します。

 こうして議論を終えると、最後に黒田氏は、今回のディスカッション・テーマはお客様とIBMをはじめ多くの企業が抱える共通課題だとしたうえで、「IBMは今後もこれらの課題にスピード感を持って継続的に取り組み、さまざまなトランスフォーメーションへのチャレンジを先駆けて実践し、蓄積したノウハウをお客様に提供していくことを通じて真に信頼される“Trusted Partner”であり続けたい」と総括してディスカッションを締めくくりました。

 

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