IBM クラウド・ビジョン

アプリケーション管理、リアルタイムAI、インダストリー4.0──最新エッジソリューションはどこが凄いのか?

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エッジコンピューティングへの取り組みに際しては、多種多様かつ大量のデバイス上に分散したアプリケーションをどう運用するかが大きな課題となります。また、エッジデータの高度かつリアルタイムな活用や生産/保全作業の高度化にAIを活用したいという現場も多いでしょう。IBMのエッジソリューションは、これらのニーズにどう応えるのでしょうか?

望月 敬介

望月 敬介

日本アイ・ビー・エム 執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部
クラウド&データプラットフォーム事業部長
1992年入社。営業として流通業や製造業のお客様への各種ソリューション提供に従事した後、経営企画/副社長補佐/米本社アサイメント等を経て、2009年よりソフトウェア事業本部下でデータベース製品/クラウド製品を担当するブランド事業部長を歴任。2018年にクラウド事業本部でRed Hat買収業務を担当した後、2020年より現職。

 

エッジコンピューティングでは全体を見通す視点が不可欠

エッジコンピューティングの特徴は、データの発生源となるエッジデバイスの近くに、データの蓄積や処理を行う仕組み(エッジゲートウェイサーバー)が置かれることです。これを企業全体として見ると、さまざまな現場にデータとアプリケーションが分散化することを意味します。この環境を効率的に利用していくためには、エッジデバイスからエッジゲートウェイサーバー、それらと連携するバックエンドのシステムまで、全てを見通した計画と開発、運用を行うことが極めて重要になります。

例えば、すでに設備からのデータ収集を開始しているからといった理由で1つの工場、一部の現場や事業領域だけにフォーカスして施策を検討した場合、部分最適の仕組みとなり、バックエンドとの連携やシステム全体としての開発/運用がスムーズに行えないといった問題が生じるかもしれません。特定のベンダーやクラウドに強く依存した技術を採用してしまい、ベンダー・ロックインのリスクが生じる危険性もあります。それを避けるには、バックエンドも含めたさまざまなシステムとスムーズに連携し、統一的な技術/手法で運用できるオープンなテクノロジーを利用することが鍵となります。

また、エッジコンピューティングにより現場でのデータ活用を実現したら、そのデータをバックエンドとも連携したAIによってより高度に活用したり、生産現場の継続的なDX推進に生かしたりすることも検討すべきでしょう。

IBMは、エッジコンピューティングにかかわる全てのシステム領域について、これまでオンプレミスやクラウドの世界で培ってきた技術やノウハウ、AIを含む多様なサービスを、Red Hatのオープンなテクノロジーを基盤にしてコンテナ化し、各領域に展開しています。

IBMのエッジソリューション

これにより、エッジコンピューティングにかかわる全領域のアプリケーションやAIを同じテクノロジーで開発/運用しながら、セキュリティーも含めて多種多様なデバイス環境の一括管理や自律管理を実現し、エッジで生成されるデータの活用効果を最大化できるのです。以降では、「エッジコンピューティング環境全体におけるアプリケーションの運用」「リアルタイムAI」「生産/保全現場の改革(インダストリー4.0)」のテーマで主なソリューションをご紹介します。

エッジアプリケーションをコンテナベースで一括/自律管理──IBM Edge Application Manager

エッジコンピューティングでは、さまざまな現場のエッジデバイスやエッジゲートウェイサーバー、ネットワークエッジに大量のアプリケーションが分散化します。その多くは日々行われる業務/サービスの改善に伴って頻繁にアップデートされますが、この作業を個別に手作業で行うのは現実的ではありません。

また、それぞれの現場が部分最適によりアプリケーションで使う技術を選定した場合、利用する技術が社内でバラバラとなり、開発や運用、管理が極度に煩雑化する恐れがあります。

これらの課題を解消するのが、エッジアプリケーション管理プラットフォーム「IBM Edge Application Manager」です。Edge Application Managerはエッジアプリケーションの共通プラットフォームであり、さまざまな場所で稼働するエッジアプリケーションの一元的かつ自律的な管理を実現します。

Edge Application Managerでは、エッジで動く大量かつ多種多様なデバイスを特性に応じてグループ化してポリシーを設定すると、各グループに割り当てられたアプリケーションがアップデートされた際に該当デバイスに自動配信します。また、工場などの現場で新たなデバイスを追加し、それが管理サーバーに登録されると、そのデバイスに必要なアプリケーションを自動配信します。これにより、大規模なエッジコンピューティング環境の管理を効率的に行えるのです。

IBM Edge Application Manager

Edge Application Managerのもう1つの大きな特徴は、業界標準のオープンなコンテナ技術であるDockerやKubernetes、OpenShiftをベースにしており、これらのコンテナ技術で作られたアプリケーションの管理が集中的に行える点です。今日、多くの企業がオンプレミスやクラウドで利用するアプリケーションのコンテナ化を進めています。Edge Application Managerにより、エッジに関しても慣れ親しんだ同じ技術でアプリケーションを作り、同様の手法で管理していけるのです。

なお、Edge Application Managerを使うことで、この後にご紹介するIBM Cloud Pak for Data Edge AnalyticsやIBM Maximo Application SuiteのAIモデルも一元的に管理することができます。

エッジAIでリアルタイム分析を推進─IBM Cloud Pak for Data Edge Analytics

今日、多くの企業の現場では、生産設備の稼働情報などエッジデータの収集を始めています。しかし、それらのデータを分析するためにはバックエンドのシステムに送る必要があり、「ネットワーク帯域などの制限から大量のデータを送れない」、送れたとしても「ネットワークレイテンシーの制約からリアルタイムに分析して設備制御に利用するといった高度な使い方ができない」といった悩みを抱えるお客様が少なくありません。

この課題を解消するのが、エッジ向けAIソリューション「IBM Cloud Pak for Data Edge Analytics」です。Cloud Pak for Data Edge Analyticsを使うことで、エッジデバイスの近くでAIによってリアルタイムに分析したり、意味のあるデータだけを選別してバックエンドに送ることでネットワークへの負荷を下げたりすることが可能となります。

例えば、工場や小売店舗などの現場で稼働するエッジデバイスが収集したデータを、近くのエッジゲートウェイサーバーに送ります。このサーバー上ではエッジAIが稼働し、リアルタイムに推論やスコアリングを行い、その結果をデバイスに返します。これら一連の処理が現場で行われるため、ネットワークレイテンシーを極限まで抑えながら生産設備の制御や顧客サービスでの活用が行えるのです。

また、Cloud Pak for Data Edge Analyticsはエンタープライズ向けのデータプラットフォームであるIBM Cloud Pak for Dataをエッジ領域にまで拡張した活用方法であり、「データを収集して整理し、不要なデータを排除して価値あるデータだけを使って精緻な分析モデルを作り、実業務で活用する」という一連の流れを1つのツール上で行える点も大きな特徴です。

IBM Cloud Pak for Data Edge Analytics - エッジで高度なインテリジェンスを活用

さらに、エッジゲートウェイサーバーなどで動作するAIの分析モデルについて、次のような管理が行えます。

  • モデルの精度:作成したAIが期待した精度で動作しているかどうか
  • モデルの説明性:なぜそのような判定結果になったのか
  • モデルの公平性:学習データの偏りなどから、不公平な判定結果になっていないか

加えて、今後はフェデレーテッド・ラーニング機能が追加される予定です。この機能を使うと、例えば米国や欧州など地域ごとの規制で域外に持ち出せないデータについて、域内のエッジゲートウェイサーバーで分析モデル作成用の学習を行い、プライバシー情報などを除いたモデルデータだけを域外の管理センターに集め、他の地域に展開したり、より高度な学習に利用したりすることができます。

設備保全業務をAIで高度化─IBM Maximo Application Suite

最後にご紹介する「IBM Maximo Application Suite V8.0」は、“インダストリー4.0”などデジタルを活用した生産/保全現場の改革に取り組まれているお客様に向けたソリューションです。

Maximoは1985年のリリース以来、エンタープライズ資産管理基盤として製造業をはじめ世界中のさまざまな業界のお客様に広くご活用いただいています。その最新版となるMaximo Application Suite V8.0では、AI機能が強化され、設備保全のさまざまな作業が大きく効率化/自動化されました。

今日、多くのお客様の設備保全の現場は、次のような課題に直面しています、

  • 設備の老朽化やファクトリー・オートメーションの推進による保全作業の高度化(複雑化)
  • 担当者ごとの作業品質のバラツキや熟練者の退職による技能継承の途絶、働き方改革による労働時間の短縮
  • 労働人口の減少による働き手不足や外国人労働者の増加

Maximo Application Suite V8.0では、これらの課題の解決を次のような機能によってご支援します。

  • 設備の保全データをIoT連携によってリアルタイムにモニタリングしながら収集して分析したり、設備の写真を画像解析して劣化が進んでいないかなどの状態判定や性能予測を行ったりして設備の透明性を高める
  • 拡張現実(AR)を利用したリモートによる遠隔業務支援、過去の業務知見をAIで分析したナレッジデータベース(AIアシスト)による作業員支援などによって技能継承を支援する
  • 現場の温度や湿度など就労環境の監視、就労者が装着するウェアラブル・デバイスなどを介した健康状態のモニタリングなどを行い、労働現場の安全と健康を管理する

生産/保全現場のデジタル変革を実現する

なお、企業の生産現場ではさまざまな設備やシステムが混在しており、それらとの連携が不可欠です。Maximoは全てのAPIをオープンにしており、例えばMaximoのモニタリング機能で他社製システムをモニタリングしたり、特定領域に特化した他社製AIと連携したり、スマートフォンでMaximoのAIアシストを利用したりといったことが柔軟に行えることも大きな特徴です。

エッジからクラウドまで一貫したオープンな技術でデータの活用価値を最大化

このように、IBMはあらゆる業界のお客様にご活用いただけるエッジコンピューティング・ソリューションをご用意しています。繰り返しになりますが、これらのソリューションに共通しているのは、エッジからクラウドまで一貫したアーキテクチャー、オープンな技術、そしてAIによる自動化や自律化を積極的に推進している点です。

エッジコンピューティングとは、さまざまなデバイスやシステム、そして企業が連携する分散コンピューティングにほかなりません。IBMのオープンなソリューションをご活用いただくことで、その連携をスムーズに行い、エッジで生成されるデータの活用価値を長期にわたって高めていくことができます。エッジコンピューティングへの取り組みを検討されているお客様は、ぜひ一度私たちにご相談ください。

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