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循環経済は工業製品産業にとって何を意味するのか

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今日の経済において、私達は地中から資源を取り出し、製品を製造しています。そして、多くの場合、製品は地中に処分されます。IBM グローバル・ビジネス・サービスのCircular Economy Global Centre of CompetenceのリーダーであるJad Oseyranは、次のように述べています。

Jad Oseyran

Jad Oseyran

「それを変えなくてはなりません。解決策は循環経済への移行です。循環経済は、経済の成長を未使用資源の使用から切り離すものです」

循環経済では、製品、部品、材料は様々な業界で再利用され、最終的には廃棄物ゼロを実現します。同時に、制約からの開放によって重要な社会的価値とビジネス価値を実現します。そして、マッキンゼーとエレン・マッカーサー財団による最新の包括的な研究によると、循環経済は2030年までに世界全体で1.8兆ドルのビジネス・チャンスをもたらすと見積られています。そこで、循環経済というアイデアと、工業製品産業にとって循環経済が意味することについて、Jad Oseyranにインタビューしました。

循環経済に移行するのはなぜでしょうか

2025年までに地球の人口がさらに増加するという明確な予測がなされています。もはや、産業革命以来営まれてきた「資源の投入、生産、廃棄(take, make, dispose)」というリニア(直線的)な経済モデルは実行可能ではありません。人類は驚異的なスピードで、地球を広範囲にわたって破壊しています。これは、人類の幸福に対する脅威であるとともに、深刻な経済的脅威でもあります。このようなリスクの重大さは科学界だけでなく政府や企業も認識しています。私達は、産業運営の原則を変える必要があるのです。

企業は循環経済をテストして恩恵を受けていますか

はい、さまざまな企業が循環型ビジネスモデルの恩恵を受けています。世界有数の自動車会社の製造工場が一例で、循環経済の運営モデルを適用することで、最も収益性が高い製造業者となっています。具体的には、ギアボックス、インジェクター・ヘッド、シリンダー・ヘッドは、再利用による再製造品としてサプライチェーンに再び供給されています。この結果、エネルギーが80%、水が88%、化学製品が92%、廃棄物が70%減少しました。また、IT資産の大部分の再利用によってビジネス価値を生み出しているIBMのGARS(グローバル資産回復サービス)も、循環経済の運営モデルの成功例の1つと言えるでしょう。

IBMでは循環経済は業界的には工業製品産業の一部ですが、他の業界にも適用可能でしょうか

簡単に言えば、すべての業界です。原材料、部品、製品が関係する資産集約型の業界や企業は、循環経済に取り組むべき候補と言えます。例えば、消費財業界では、プラスチックについて非常に多くの無駄があります。今のままでは、2050年の海中における重量は、魚よりプラスチックが多くなると推定されているのです。ファッション業界では、ファストファッションが生産した衣類の半分以上が1年以内に処分され、毎秒ごとにゴミ収集車1台分の繊維が埋め立てられるか燃やされると推定されています。

循環経済を実現するために、どのようなソリューションを提供していますか

廃棄物は「データ」または「アイデンティティー」がない物質です。現在、私達は、建物が関連する「アイデンティティー」を作成して、最終的には建築資材の需要と供給が可能となるマーケットプレイスへつながる、建築環境向けのデジタル・プラットフォームに取り組んでいます。このデジタル・プラットフォームは、建築物自身を供給元に変化させて、建物が廃棄物となる際に都市鉱山(レアメタルなどの再利用が可能な有用な資源が含まれる廃棄物)のような循環経済モデルの実現を目指します。その結果、デジタル・プラットフォームは、建築資材を供給する代替手段となるネットワークの構築につながります。さらに、デジタル・プラットフォームは、不動産評価の向上、CO2排出量と循環経済目標の監視、建物占有率の向上、エネルギー性能の向上などを実現するための洞察の提供を可能にします。

ブロックチェーンとAIは、どのような役割を果たすのでしょうか

新たなエコシステムへの製品の採用を成功させる重要な要因は「信頼」なので、ブロックチェーンが大きな役割を果たす可能性があります。都市鉱山の採掘業者のような従来とは異なるタイプのサプライヤーについても、製品のテストと認証を行い、信頼することを検討してください。AIについては画像認識を検討しています。具体的には、建物内の製品や材料と関連情報の容易な認識と収集を行うためのトレーニングです。画像認識は、これまでデジタルな情報が利用できなかった既存の建物について、建物自身を情報化する処理を促進するでしょう。私達は最初の再利用プラットフォームをパートナー企業と立ち上げたいと考えています。そして、そのプラットフォームが、無駄がなく生産性も高く、他の業界にとっても指針となるビジネスモデルとなることを願っています。

*本記事は、What a circular economy means for the industrial products industryの抄訳です。


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