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エッジにおける5Gとは

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この投稿は、2020年11月12日に、米国 IBM Cloud Blog に掲載されたブログ(英語)の抄訳です。

4Gの後継となる5Gは、通信サービス・プロバイダー(CSP)が提供するブロードバンド・セルラー・ネットワークの第5世代の技術標準です。

最近、通信事業者やサービス事業者による5Gに関する広告が多くなってきています。それはなぜでしょうか?人工知能(AI)アプリケーションのイノベーションは、エッジ・コンピューティングの出現によって爆発的に増加し、5Gはエッジ・コンピューティングの領域を再定義しました。それは、エッジ技術とAI技術の採用を促進し、加速させています。5Gの実用的なアプリケーションは、現在のパンデミック環境において、多くの例で見られます。これらの例は、高帯域幅と低遅延を提供するといわれ、遠隔学習やゲームからスポーツ視聴に至るまで、多くのユース・ケースをカバーしています。

エッジ・コンピューティングと5G技術を組み合わせることで、デジタル・エクスペリエンスの向上、パフォーマンスの向上、データ・セキュリティーのサポートなど、さまざまな機会が生まれます。このブログ記事では、エッジ・コンピューティングの観点から5Gについてご紹介したいと思います。

5G エッジ関連用語集

以前のブログ記事(こちら:英語)で、エッジ・コンピューティングがさまざまな業界にわたって新たなビジネス・チャンスを可能にしていることを見てきました。5Gがこれらのユース・ケースをどのように強化していくかを理解するために、まず5G関連の用語をいくつか押さえておきましょう:

  • gNB:gNodeBは、ユーザー機器(UE)とモバイル・ネットワークとの間で通信を送受信する5G基地局です。新無線(NR)と呼ばれる新しい無線アクセス技術を採用しています。
  • mmWave:ミリ波は、一般的に5Gで使用されます。マイクロ波よりも範囲が短いため、セルのサイズが小さく制限されます。ミリ波アンテナは、以前のセルラー・ネットワークで使用されていた大型アンテナよりも小さくすることができます。
  • MEC: Multi-access Edge Computing(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)の略。特にレイテンシーに敏感なアプリケーション用に、より多くの処理をモバイル・ネットワークのエッジに近づけたネットワーク・アーキテクチャーです。
  • NFV:Network Function Virtualization(ネットワーク機能仮想化)の略。IT仮想化の技術を利用して、ネットワーク・ノード機能のクラス全体を仮想化するネットワーク・アーキテクチャーの概念です。
  • RAN:Radio Access Network(無線アクセスネットワーク)の略です。無線接続を介して他のモバイル・ネットワークにユーザー機器を接続するものです。5Gでは、従来の物理的なネットワーク・コンポーネントに加えて、仮想的な無線アクセス・ネットワーク(vRAN)が可能になります。
  • SDN:Software Defined Networking(ソフトウェア定義ネットワーキング)の略。とネットワーク・スイッチやルータのリモート設定にオープン・プロトコルを使用するアプローチのことを指します。
  • UPF:User Plane Functionの略。パケット・ゲートウェイの5Gに相当する機能です。この機能には、パケットのルーティングや転送、他のデータ・ネットワークとの相互接続、ポリシーの強制などをサポートする機能が含まれます。UPFはデータ・プレーンとも呼ばれます。

5Gアーキテクチャーでは、規模、スループット、遅延、信頼性などの要件を満たすために、ネットワークとサービスの展開、運用、管理を最適化し、NFV(Network Function Virtualization :ネットワーク機能仮想化)とネイティブ・クラウドの標準/技術を採用しています。

5G エッジの主なユース・ケースのご紹介

eMBB(高速大容量)、(URLLC(超高信頼低遅延)、mMTC(多数端末接続)などの5G機能を活用したエッジ・コンピューティングのユース・ケースは、大きく分けて5つのカテゴリーに分類されます(図1)。これらのカテゴリは、すべてのマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)アプリケーションのサブセットを表しています。

edge computing use cases broadly fall into five categories, as shown in Figure 1. These categories represent a subset of all Multi-access Edge Computing (MEC) applications.

図 1: 5G エッジのユース・ケースのカテゴリー

これらのカテゴリーについて、それぞれ詳しく見ていきましょう:

  • インダストリー4.0:このカテゴリーでは、分散された機械や製造プロセスから深い洞察を集め、リアルタイムで対応することで、生産ラインを最適化し、無駄を削減することができます。
  • どこでもブロードバンド:このカテゴリーには、大容量化と接続性の強化という5Gの最大のメリットに基づいて、高品質のサービス(QoS)を備えたブロードバンドを広く一般の人々に提供することが含まれています。
  • コネクテッド・インフラストラクチャー:このカテゴリーには、分散したデバイスやセンサーからデータを引き出して分析し、個々の体験を向上させ、ドライバーの安全性を高め、交通機関を最適化するための新しいコネクテッド・エクスペリエンスの創出が含まれます。
  • ユーザー・エクスペリエンス:このカテゴリーには、待ち時間の短縮と帯域幅の改善に基づいて、夢中になれるようなユーザー体験と、コンテンツのピア・ツー・ピア配信機能が含まれます。さらに、リアルタイムのフィードバックやユーザー独自のコンテンツによって支援されています。
  • AR/VR(拡張現実/仮想現実):このカテゴリーには、ゲーム、エンターテイメント、ヘルスケア、小売などの業界で利用されるデバイスでGPU(Graphics Processing Unit)アクセラレーターを使用したAR/VRアプリケーションが含まれます。

5G エッジ・コンピューティング・トポロジー

5Gは通信業界と密接に関連しているため、5Gとエッジ・コンピューティング・コンポーネントを備えた通信業界ネットワークのトポロジーが、最もよくトポロジーを表しています(図2) 。

Given that 5G is closely related to telecom, a topology is best illustrated by a telco network topology with 5G and edge computing components, as depicted in Figure 2.

図 2: 5G 通信ネットワーク・エッジ・トポロジー

上記トポロジーを構成する主要な構成要素は、以下の通りです:

  • クラウド:クラウド・ネイティブのコンテナ・ベースのワークロードのリポジトリとして機能するパブリック・クラウドまたはプライベート・クラウドをさします。これらのクラウドはまた、さまざまなエッジ・ コンピューティング ・ノードのオーケストレーションと管理に使用されるアプリケーションをホストし、実行します。
  • ネットワーク・エッジ:ネットワーク・エッジは、仮想無線アクセスネットワーク(vRAN)の一部を含む5Gネットワークをサポートしています。ネットワークのコア機能には、5G コア、制御プレーン、ユーザー・プレーン、およびロケーションが含まれます。
  • エッジ・クラスター/ゲートウェイ:エッジ・クラスター/ゲートウェイは、5Gエッジ・ネットワーク・コンポーネントとマルチ・アクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)アプリケーションの実行をサポートします。アプリケーションは、アクセス・ネットワークから直接エンド・ユーザー/デバイスにトラフィックを送受信することができます。アプリケーションはMECサービスを提供したり利用したりできます。
  • エッジデバイス:エッジ・デバイスは、工場内の製造ロボット、ATM、インテリジェント・カメラ、自動車などのコンテナベースのアプリケーションを実行するために利用できるコンピューターとストレージを備えています。
  • センサー:センサーはこの図には示されていませんが、固定機能を持つIoTタイプのデバイスです。

上の図2のように、センサーおよび他の遠隔エッジ・デバイスは、関連する情報をキャプチャーします。エッジ・デバイスは、データをMECに送信する前にデータの処理を行う場合もありますが、センサーはデータをそのままMECに送信します。5Gネットワークは、無線ヘッドとvRANを介して、MEC上で動作するアプリケーションにデータを送信します。アプリケーションは、MECの代わりにコア・ネットワークや他のバックホール・コンポーネント上で実行することもできますが、そのようなアプリケーションは、MEC上で実行するアプリケーションよりも高いレイテンシーになります。

5G アプリケーション・レイヤー

以前のブログ(英語) では、IBM Edge Application Manager (IEAM) のような製品が、ワークロードを自律的にリモートのエッジ・ノードにデプロイし、これらのワークロードを管理する方法を説明しました。これは、Red Hat OpenShift Container Platform(英語)やその他のKubernetesベースのクラスターを実行している管理ハブ・クラスターから実行されます。IEAMの管理ハブは、エッジ・ノードの管理に特化して設計されており、デプロイの際のリスクを最小限に抑え、エッジ・ノード上のサービス・ソフトウェアのライフサイクルを自律的に完全に管理することができます。

真の5Gアプリケーションはレイテンシーに敏感であり、telcoのネットワーク・エッジのパブリック/プライベートMECにより、新たなエッジ・ノードの展開が可能になります。IEAMのポリシー・ベースのコンフィグレーション機能は、ワークロードの配置を単純化するだけでなく、規模に応じて自律的に実行します。

5Gとスマート・エッジ・コンピューティング・デバイスにより、エッジでのデータの急増が予想され、AIと組み合わせたデータはイノベーションを促進することができます。リアルタイムのエッジ・アナリティクスを活用してデータとエッジ・コンピューティングを活用する機能は、デジタル革命をもたらしています。

IBMクラウド・アーキテクチャー・センターでは、AIフレームワークを含む多くのハイブリッドおよびマルチクラウド・リファレンス・アーキテクチャーを提供しています。エッジ・コンピューティングのリファレンス・アーキテクチャーや関連記事(英語)をご確認ください。

このブログでは、通信分野におけるエッジを紹介し、5Gとエッジ技術がいかに表裏一体であるかを示しました。私たちは、5Gに関する洞察を共有し、新たに登場した5Gエッジのユース・ケースの例を提供しました。この記事により、5Gとエッジがもたらすパワーについての新たな思考とイノベーションに拍車がかかることを願っています。

エッジ・コンピューティングに関しては、以下の記事をご覧ください:

さらに詳しいことは


翻訳:IBM Cloud Blog Japan 編集部

*このブログは、2020/11/12に発行された”5G at the Edge“(英語)の抄訳です。

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