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THINK Business

金融機関のデジタル・リインベンション データこそすべて

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岡田正雄の写真
岡田正雄
日本アイ・ビー・エム株式会社
グローバル・ビジネス・サービス事業
戦略コンサルタント
金融インタストリー・ストラテジー・リーダー 理事
IBM Industry Academy メンバー

1986年 日本IBM入社以来、金融機関のエンジニア、セールス、プランナーおよびコンサルタントといったマルチスキルを持つ。特に金融機関に関するインダストリーナレッジと最新のテクノロジーを活用した先進ソリューション企画とコンサルティングを強みとしている。また、大手金融機関に対して基幹系システムからチャネルシステムまで多数の案件のリーダーとして活動している。

「チャネルの高度化」と「個客志向サービス」に求められる5つの視点

日本における金融機関が持つべきビジョン、変革へのポイントを紹介する当連載。第2回は、第1回で概要を紹介した4つのポイントの中から「チャネルの高度化:ファンにさせる」と「個客志向サービス:最適なコミュニケーション」について、施策やユースケースを5つの視点からご紹介します。


1. 顧客の未来のためのパートナーになる

顧客はパーソナライズしたコンサルティングをしてくれる、未来のためのパートナーを求めています。多様化の時代において、顧客自らが自分の境遇に似ているリファレンスケース(参考事例)を探すことは難しく、それと同様に、金融機関側でパターンを定義することも困難です。
そのため、結果としてパーソナライズ化したサービスの需要が高まり、金融機関は、顧客とのエンゲージメントを確立しながら、彼らのライフイベントを捉えた「個客志向サービス」を提供する必要があります。


2. データでモバイル・エクスペリエンスを高める

フィジカルとデジタルが融合したカスタマー・エクスペリエンスを高めながら、顧客とのエンゲージメントを築くことが重要です。その近道として、最も身近なチャネルであるスマートフォンなどのモバイル端末を活用することが考えられます。このデジタル変革は「モバイル・ファースト」で進めることが求められますが、これはどのチャネルよりも真っ先にモバイル端末へのサービスを拡大・提供するといった類のことではありません。たとえば、既存のインターネット・バンキングなどで提供しているサービスをモバイル向けの簡単な操作に変更しても、利用者による評価は厳しいものになるでしょう。

「モバイル・ファースト」とは、モバイルを利用する顧客のニーズを最優先で考えることです。モバイルだからこそ得られる位置データやプッシュ型でのデータ通知機能などの外部データと、金融機関が持つ内部データを組み合わせることで実現できます。その結果、たとえば、近くにある手数料無料のATMの位置を地図情報と連動して知らせたり、クレジットカードの引落が残高不足となるリスクをタイミングよく通知したり、といったモバイル・エクスペリエンスを提供できるようになるでしょう。このように、デジタルの時代においてはあらゆるデータを顧客のために活用することが重要となってきます。


3. データで顧客のライフイベントを把握する

年齢層別といった区別によるアプローチが難しい時代において、金融機関は何らかの手段で顧客のライフイベントを把握し、アプローチをする必要があります。昨今、注目されるものの一つにインターネットを使った「コンテンツ・マーケティング」があります。コンテンツ・マーケティングとは、ターゲット顧客にとって価値のあるコンテンツを提示することにより、購買行動を起こさせるマーケティング施策です。

コンテンツ・マーケティング導入前の準備として、サイト上に学生生活、結婚、住宅購入、セカンドライフなどの幅広い情報コンテンツとそれらに該当する金融サービスを紹介します。そして、「詳しくは」と店頭へのWeb来店予約に誘導する集客型アプローチによりデータ収集を実施します。次のステップでは、ターゲットとなる顧客のイベントと集客型アプローチで得たデータにより実効性のあるエリアを定め、マーケティング型アプローチをデザインしていきます。顧客が魅力を感じる内容を提案するためには、金融の枠を超え、非金融・異業種と協業したコンテンツを用意する必要があるかもしれません。

海外の金融機関では、マーケットプレイスというサイトを立ち上げ、不動産、自動車メーカーなどの非金融・異業種サービスと連携し、ローンのシミュレーションや個別オファリングの提示を組み込んだサービスが始まっています。コンテンツ・マーケティングは顧客へのパーソナライズしたサービスを提供する上で、有効な手段と考えられているのです。


4. データがバーチャル・アシスタントを育てる

たとえば、AIスピーカーに「老後に向け、いくらの金融資産を用意すればいいか?」といった質問をしても、現時点ではおそらく一般的な答えしか返ってこないでしょう。デジタル世界ではあらゆる行動がデータ化され、それによってビジネスが変わります。ですが将来の、特にAI活用が容易に予想される金融ビジネスにおいては、顧客接点という観点から、バーチャル・アシスタントを育てていくことは急務です。

バーチャル・アシスタントは、AIによってデータをナレッジ(知識・知見)へと変え、質疑応答やリコメンデーションを提供する仕組みを実現します。AIを導入するにあたっては、優れた学習モデルを構築するための正確な学習データが必要であり、データを加工し利用できる状態になっていなければなりません。つまり、利用できるデータをいかに用意するかがAI戦略の重要な要素となるのです。

過程としては、質疑応答とリコメンデーションのための学習モデルを構築し、加工されたデータにアクセスしながらナレッジ、さらには洞察を得ることができるようになります。そのため、導入当初からバーチャル・アシスタントを実現することは難しく、まずはコンシェルジュ、次に社内向けのアシスタント、さらに顧客応対でのセカンド・オピニオンといった段階的な成長を考える必要があります。段階を踏んで実際のサービスで使用することにより、新たに取得したデータで学習を続け、最終的にバーチャル・アシスタントの実現につながります。


5. デジタル変革は共創で進める

デジタル変革は、データ戦略と言っていいかもしれません。目の肥えた顧客に対し、いかに共感できる体験を提供できるか。そのために「データの力」を活用していく必要があるでしょう。

IBMではデジタル変革を進める上でのロードマップづくりをするために、IBM Garageによる「デジタル共創セッション」を推進しています。「デジタル共創セッション」では、現状業務やその分析から想定するフォーキャストなアプローチではなく、未来の状態・状況を想定しながらあるべき姿を考えるバックキャストを取り入れています。このセッションにより、理想とするデジタル変革の骨格を共同で検討することが可能になるのです。

次回は、第1回で紹介した4つのポイントの中から、後半の「業務最適化」「エコシステム連携」について、さらに詳しく紹介していきます。

  1. 「チャネル高度化」
  2. 「個客志向サービス」
  3. 「業務最適化」
  4. 「エコシステム連携」

photo:Getty Images

 

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