発注オートメーション

2025年4月28日

執筆者

Matthew Finio

Content Writer

IBM Consulting

Amanda Downie

Inbound Content Lead, AI Productivity & IBM Consulting

発注(PO)オートメーションは、デジタル・ツールとソフトウェアを活用して、発注書の作成、承認、追跡を管理および合理化するプロセスです。

紙の注文書への記入、Eメールの送信、承認の追跡などの手動プロセスに頼る代わりに、オートメーションによってこれらのタスクが最小限の人間の関与で実行され、作業が効率化されます。通常、手動での発注プロセスには2~3日かかりますが、オートメーションによりわずか数時間で完了できます。

発注オートメーション・ソリューションは通常、会計や在庫管理プラットフォームなどのコアビジネス・システムに連携して使用されます。これは、調達のオートメーション調達から支払いまで(P2P)のオートメーションビジネス・プロセスのオートメーションサプライチェーンの最適化など、より広範な取り組みに向けた初期ステップとなります。これらの分野では、サプライチェーン全体の業務を合理化および自動化するために、人工知能(AI)などの高度なテクノロジーがますます活用されています。

より大規模な自動化されたエコシステムに統合されると、POオートメーションが購入ライフサイクル全体の可視性を向上させます。また、データがリアルタイムで更新され、一元化されるため、意思決定者は支出パターン、サプライヤーのパフォーマンス、将来の調達ニーズに関するより深い洞察を得ることができます。

最近のレポートは、統合運用モデルを採用している組織は、高度な分析と予測アルゴリズムを使用してデータ主導の調達決定を下すのに有利な立場にあると結論付けています。実際、業績上位の企業は、資材とサービスの発注コストを最大52%も削減しています。¹

POオートメーションは、単に文書をデジタル化するだけにとどまりません。例えば、在庫レベルが事前に定義されたしきい値を下回ったときや、部門が人材募集を送信したときに、このシステムは発注書を自動的に生成することができます。これらの発注(PO)は確立された承認ワークフローを通じてルーティングされ、プロセス全体が加速されます。ベンダーは電子的に注文を受け取り、注文状況をリアルタイムで追跡できます。

全体として、発注プロセスを自動化すると、時間がかかり、エラーが発生しやすかった調達タスクが、合理化されたインテリジェントなワークフローに変わります。これにより、組織はより効率的に業務を運営し、サプライヤーとの関係を強化し、財務および運用チームが購買活動に対する自信を深め、明確なデータに基づき活動できるようになります。

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発注オートメーションが重要な理由

発注オートメーションは、業務運営に必要なプロダクトやサービスの取得という最も基本的な業務に構造、一貫性、信頼性をもたらすため、不可欠です。

スプレッドシート、Eメール、紙媒体のフォームを使用して手動で処理すると、注文プロセスはすぐに混乱し、エラーが発生しやすくなり、時間がかかるようになります。例えば、発注書への記載エラー、承認の遅れ、可視性における限界は組織全体に影響を及ぼし、予算、スケジュール、ベンダーとの関係に混乱をきたす可能性があります。

発注プロセスを自動化すると、デジタル化された追跡可能なワークフローに変換されます。このワークフローはバックグラウンドで静かに効率的に動作し、業務を支援し、チームの制御を強化し、ストレスを軽減します。そのため、調達は変革の重要な焦点領域として浮上しています。CSCOとCOOは、2025年には、調達が生成AIによって最も影響を受けるサプライチェーンと運用ワークフローになると予想しています。2

POオートメーションのメリット、時間を節約するだけではありません。依頼書、承認、注文、領収書、請求書を一元管理型システムにリンクすることで、複数の部門全体にわたり信頼できる唯一の情報源を確立します。こうした可視化により、過剰な支出を防ぎ、社内ポリシーの順守を確保し、より良い意思決定をサポートします。また、信頼性を高め、ベンダーはタイムリーに正確な注文を受け取り、社内チームはクリーンで最新の購買データを信頼することができます。

俊敏性と説明責任が重要な環境では、POプロセスを自動化することが戦略的なメリットとなります。

発注(PO)プロセスを効果的に自動化する方法

発注オートメーションは、適切なテクノロジーを選択することから始まります。そして、それを企業の既存の調達フローを反映した、より高速、スマート、そして信頼性の高いものに構築していきます。自動化されたPOプロセスを効果的に設定および管理するための一般的な手順は以下のとおりです。

適切なPOオートメーション・ソフトウェアを選択する

まず、ビジネス・ニーズ、現在の問題点、将来の目標、統合要件を特定することから始めます。次に、規模に合わせて拡張できる発注ソフトウェアを調査して選択します。ここでは、レビューを読み、ベンダーのデモを確認し、Webセミナーに参加して最適なものを見つけてください。理想的には、完全なP2Pオートメーションをサポートし、例えばSAP Aribaなどのノーコードおよびローコードのカスタマイズを通じて柔軟性を実現できるソフトウェアがよいでしょう。ワークフローに合わせて簡単に構成できるソリューションがお勧めです。事前に構築されたテンプレート承認ロジック、モバイル・アクセス、分析などの機能は、長期的な成功の鍵となります。

調達ポリシーと承認ワークフローを定義する

システムを設定する前に、組織内で現在の購買プロセスの流れを明確に把握します。誰がリクエストでき、誰が承認し、どのような基準で承認されるでしょうか。どのベンダーを使用すべきでしょうか。POテンプレートを使用またはカスタマイズして、ベンダーの詳細、支払条件、明細項目などのフィールドを標準化します。これらのビジネス・ルールは、購入プロセスの一貫性を保ち、会社の予算とポリシーに準拠するのに役立ちます。一度定義すると、ソフトウェアは手動でのフォローアップを必要とせずにそれを自動的に適用できます。

デジタル購買依頼システムを構築する

次に、Eメールやスプレッドシートを使用する代わりに、従業員が購入リクエストを送信できるデジタル・メソッドを構築します。これは通常、承認されたサプライヤーのリストからアイテムを選択したり、新しいアイテムをリクエストしたりできる簡単なオンライン・フォームを作成することを意味します。このシステムは、すべての購入リクエストが同じ方法で処理されるだけではなく、見落としを防ぐのに役立ちます。

承認担当者への送信を自動化する

誰かが購入リクエストを送信すると、システムは事前に設定されたルールに基づいて、これを承認のために責任者に自動的に送信します。例えば、金額が一定の限度を超える場合は、部門管理者または財務責任者に送信される可能性があります。承認者は、多くの場合、Eメールまたは電話で通知を受け取り、クリックするだけで承認または拒否できます。

注文書を自動生成する

リクエストが承認されると、システムは標準化されたテンプレートを使用して注文作成を即座に処理し、商品の説明、数量、価格、ベンダーの詳細などのすべての関連データを取得します。この機能により、手動入力が不要になり、かつ一貫性が確保されます。

発注書をベンダーに自動的に送信する

システムは、承認されたPOをEメール、サプライヤー・ポータル、またはEDI(電子データ交換)と呼ばれる特別なデータ共有形式を介してベンダーに直接送信します。すべてがデジタル化されているため、ベンダーは注文書を瞬時に受け取り、すぐに注文処理を開始でき、配送が迅速化されます。

注文状況と受領書を追跡する

注文が行われると、システムがそれを追跡するのに役立ちます。品目が発送され、受領されると、システムはそれに応じてPO状況を更新します。従業員または倉庫スタッフは、受領確認、受領数量、不足品や破損品などの不一致を記録できます。このリアルタイムの可視性により、問題があればそれを早期に発見し、記録を正確に保つことができます。

発注書と請求書および領収書を照合する(3者間照合)

ベンダーが請求書を送信すると、システムはAPオートメーションの重要な機能である第三者照合を自動的に実行します。この機能は、請求書が元の注文書および受領した内容の記録と一致するかどうかを確認するものです。3つの文書がすべて一致すると、支払い処理が開始されます。不一致がある場合、システムは確認のためにフラグを付け、過払いや重複支払いを防止します。

会計システムやERPシステムと連携する

業務をさらに効率化するために、POシステムは会計ソフトウェアおよびERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システムと統合されます。これにより、財務データ、コスト配分、監査証跡のシームレスな同期が可能になります。財務チームは手動で何かを再入力する必要がないため、時間が節約される上、ミスが起きる可能性も減ります。

監視、分析、継続的に改善する

自動化されたPOプロセスが稼働したら、システムのレポート・ツールを使用して、すべてが適切に機能しているかどうかをチェックすることから始めることができます。どの部門が最も多くの費用を費やしているか、承認にどのくらいの時間がかかっているか、ベンダーのパフォーマンスはどうなっているか、どこで遅延が発生している可能性があるかなども確認できます。このデータは、組織が調達プロセスを継続的に改善し、長期的により賢明な購入決定を下すのに役立ちます。

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POオートメーションで使用されるテクノロジー

発注オートメーションで使用されるテクノロジーと連携することで、手作業の労力を削減し、制御を強化するシームレスなオートメーション・ソリューションとなります。POオートメーションを推進するコア・テクノロジーは次のとおりです。

発注管理ソフトウェア:これはベースとなるソフトウェアです。専用のPOオートメーション・プラットフォーム(SAP Ariba、Coupa、Procurifyなど)は、POの作成、振り分け(ルーティング)、承認、送信、追跡を行うためのコア機能を提供します。調達ソフトウェアの大手プロバイダーが提供するツールには通常、ダッシュボード、テンプレート、ポリシー適用、セットアップと監視をよりユーザーフレンドリーにするインタラクティブなワークフロー・ビルダー機能が含まれています。

AIと機械学習(ML):最新のPOシステムの中には、AIを使用してベンダーを推奨したり、定期注文フィールドを自動入力したり、購入の異常を検知したり、購入ニーズを予測したりするものがあります。MLは、実際のユーザーの行動に基づいて、時間の経過とともにワークフローを最適化するのにも役立ちます。

ワークフロー・オートメーション・エンジン:これらのエンジンを使用すると、組織内でPOのフローをガイドするロジックとルールを定義できます。例えば、部署、金額、ベンダーに基づいた自動振り分けなどが可能です。最新のプラットフォームには、ローコードまたはノーコードのツールが含まれていることが多く、技術者でなくとも、プログラミング不要で複雑なワークフローを設定できます。

電子データ交換(EDI):EDIテクノロジーにより、Eメールや紙媒体の書類や伝票を必要とせずに、発注書、請求書、出荷通知などの文書をシステム間(お客様とサプライヤー間)で直接自動的に交換できるようになり、処理時間を短縮し、コミュニケーションミスを防ぎます。

光学文字認識(OCR)とインテリジェント・ドキュメント処理(IDP):OCRは、請求書の照合を自動化したり、文書をPOシステムにインポートしたりするときによく使用されます。より高度なIDPツールはAIを使用して、スキャンされたPDFやEメールなどの非構造化形式からデータを抽出して検証し、データ入力を高速化しながら、精度を向上させます。

ERPと会計システムの統合:NetSuite、SAP、QuickBooks、Oracleなどのシステムとのシームレスな統合により、POデータが予算、元帳、在庫管理の各種システムとリアルタイムで同期されます。これにより、財務記録の正確性が保たれ、重複データ入力が排除されます。

クラウドとモバイル・アクセス:クラウドベースのプラットフォームにより、チームはどこからでもシステムにアクセスできるため、リモート承認やリアルタイム追跡をしやすくなります。多くのツールではモバイル・アプリも利用可能で、関係者は外出先でも確認、承認、通知の受信ができます。

3者間照合機能:3者間照合機能は、発注書、商品受領書、仕入先請求書を自動的に比較し、支払いを実行する前にそれの内容が一致していることを確認します。請求書処理を効率化し、過払いや重複支払い、未受領商品の支払いを防ぐため、買掛金チームにとって重要な管理ポイントとなります。

POオートメーションのメリット

発注オートメーションの主なメリットは次のとおりです。

時間の節約:自動注文システムにより、注文書の作成、承認、送信に伴う手作業が大幅に削減されます。かつては何時間もかかっていた作業が、自動システムでは数分、あるいは数秒で完了します。

コスト削減:非効率性を排除し、エラーを減らし、不正な支出を回避することで、POオートメーションは直接コストと間接コストの両方を削減し、より広範な調達コスト削減戦略をサポートします。企業は、従業員の労働時間の節約や無駄な支出の削減という形で、投資の早期回収を実感するでしょう。

エラーの減少:手動でデータを入力すると、注文の重複、価格の誤り、ベンダーの詳細の誤植などの人為的エラーが発生しやすくなります。オートメーションにより、テンプレートを使用して統合システムから正確なデータを取得し、検証ルールを適用して一般的なエラーを回避することで、一貫性が確保されます。

承認の迅速化:自動ワークフローにより、購入リクエストが適切な担当者に即座に振り分けられ、アラートとリマインダーが組み込まれているため、注文書の承認が効率化されます。承認者は携帯電話やラップトップから確認して承認できるため、サイクル時間が大幅に短縮され、ボトルネックを回避できます。

より優れた経費管理:POオートメーションは、承認ポリシーを適用し、予算にリアルタイムでリンクすることで、財務および調達チームが支出をより詳細に管理できるようになり、健全なキャッシュフローの維持をサポートします。不正な購入は防止され、すべてのPOはリクエストから受領まで追跡可能になります。

一元化されたドキュメント:メールや紙のファイルを探し回る必要はもうありません。すべての発注書、承認書、請求書は、一元管理された検索可能なデジタル・システムに保存されます。これにより、注文履歴の追跡、監査への対応、ベンダーとの紛争の解決が容易になります。

強化された可視性とレポート:POオートメーション・システムは、支出の傾向、承認のボトルネック、ベンダーのパフォーマンスなどを示すダッシュボードとレポートを提供します。この可視性により、チームはよりスマートな購入決定を下し、より効果的に計画を立てることができます。

ベンダーとの関係の改善:POオートメーションにより、プロセスはより正確でタイムリーになり、サプライチェーン全体で遅延、紛争、コミュニケーションミスが減少します。一部のプラットフォームでは、サプライヤーがリアルタイムの注文状況にアクセスしたり、請求書をデジタルで提出したりすることもできます。

拡張性:ビジネスが成長するにつれて、手動のPOプロセスでは対応が追いつかなくなります。オートメーションを導入することにより、管理人員を増やすことなく、増大する量と複雑さをサポートし、調達業務を効率的に拡張することが容易になります。

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    脚注

    1  「Procurement transformation:Why excellence matters」、Derek Bush(IBM 調達アドバイザリー・リーダー、グローバル)、2024年1月

    2 「Amplify your buying power, The CEO’s guide to generative AI / Procurement」、IBM Institute for Business Value(IBV)、初回公開日:2024年6月24日。