モダナイゼーションとは

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モダナイゼーションとは:既存IT資産を活かした変革

「モダナイゼーション」とは、レガシー・システムを最新のテクノロジーやトレンド、業界標準に合わせて最適化し、新たな価値を生み出すように変革することです。

古いハードウェアやソフトウェアを最新のものに置き換えること、アプリケーションを更改すること、新しい開発手法や運用方法を採用すること、最新のセキュリティー対策を実装すること、ITインフラストラクチャーの総合的な効率性・信頼性・パフォーマンスを向上させるための改善を行うことを指します。 「モダナイゼーション」は modernization のカタカナ表記です。従来は社会・歴史の文脈において“近代化”、“現代化”などと翻訳されていましたが、今日ではIT分野を中心に外来語として用いられるようになっています。

ビジネス変化対応能力を実現する

モダナイゼーションはビジネスの課題を解決するためにとる手法であり、やみくもに「全てを刷新すること」ではありません。競争力の源泉となる業務プロセスや保持している大量のビジネスデータを活かしながら、変化に適応し続けるITシステム基盤へ進化させることが重要です。

既存IT資産(業務データ、ビジネスロジック、運用ノウハウ など)を最大限活用し、柔軟性やスピードの足かせになるシステム部分を変革することで、ビジネスの変化対応能力を獲得し、”成果(スピード/コスト/リスク)”を回収する — それがIBMの考えるモダナイゼーションです。

多くの企業が直面するレガシー・システムの課題

経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションレポート〜ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開〜」をきっかけにモダナイゼーションの必要性が注目されるようになりました。既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化がDXの足かせとなり、対応が進まなければ2025年以降に経済損失が生じ得るというシナリオを示しました。

その『2025 年の崖』を迎えた現在、日本企業が直面するDX推進の障害となるレガシー・システムの現状を把握し、レガシー・システムに纏わる問題の明確化および、これを解消するための戦略的なモダナイゼーションの取り組みが不可欠となっています。

  • 保守・運用コストの増大化:
    管理対象システム数や対象となるアプリケーション/プラットフォーム種別の増加により保守・運用コストが増大化し、新規開発への投資が困難になっています。
  • アプリケーションの複雑化:
    アプリケーション構造の複雑化・肥大化によりビジネス変化に伴う新たな要件への対応スピードが課題となっており、先進技術を取り入れたアーキテクチャへの刷新が必要です。
  • ITスキル人材不足:
    現行保守担当者の高齢化に伴う人材不足に加え、老朽化した技術により新たなITスキル人材の確保が困難で、新機能開発や改修を迅速・柔軟に行うことができません。
  • システムのブラックボックス化:
    既存システムが肥大化、複雑化しており、システムの全体像がつかめず、どのモダナイゼーション手法が適しているかの判断が困難です。

レガシー・システムとは

「レガシー・システム」とは、ビジネスのトレンドや変化のスピード、最新の業界標準へ対応できない過去のテクノロジーやアーキテクチャ、開発手法で構築されたITシステム(ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーション)のことです。システムの肥大化・複雑化・ブラックボックス化や、性能・俊敏性・拡張性の不足などが課題となっています。これら課題の解決にはモダナイゼーションが必要となります。「レガシー」は legacy のことで“遺産”、“相続財産”などの意味の転用です。

マイグレーションとモダナイゼーションの違い

本稿では、モダナイゼーションを目的概念、マイグレーションをその実現に用いられる代表的な手法の一つとして位置付けます。両者は排他的な概念ではありませんが、同義でもありません。マイグレーションは、システムやデータの実行環境・配置先を変更することを中心としたアプローチであり、一般にアプリケーション構造の変更は伴わないか、伴っても限定的です。一方、モダナイゼーションは、基盤だけでなく、アプリケーション構造、データ活用、開発運用、セキュリティーまで含めて、システム全体をビジネス価値の観点で最適化・変革する取り組みです。

  • マイグレーション(実行環境・配置先の最適化):システムやデータを既存環境から別の環境へ移行することを中心としたアプローチです。一般に、アプリケーションの構造変更は伴わないか、伴っても限定的であり、主な目的は基盤老朽化への対応、運用効率向上、クラウド活用の開始にあります。

     

  • モダナイゼーション(価値創出に向けた広義の変革):

    システム基盤だけでなく、アプリケーション構造、データ活用、開発運用、セキュリティーまで含めて、システム全体をビジネス価値の観点で最適化・変革する取り組みです。マイグレーションを含む場合もありますが、それだけにとどまらず、将来の変化対応力や競争力の獲得を視野に入れる点が本質的な違いです。

モダナイゼーションがもたらす価値

多くの制約を抱えるレガシー・システムや、業務プロセスそのものをモダナイゼーションすることで、最新のテクノロジーを活用し、システムや運用の効率を改善できます。これにより、日々変化するビジネス環境へ対応し、変化に強い環境を作り出すことが可能になります。その結果、既存ビジネスの確実な継続と新規ビジネス創出の両立が実現できます。

モダナイゼーションは、攻めのITと守りのITの両方の観点で価値を実現します。

攻めのIT:ビジネス変革を支える能力の獲得

既存IT資産(業務データ、ビジネスロジック、運用ノウハウ など)を活用しながらアプリケーション構造を変革することで、ビジネス変化対応能力を獲得します。

  • 柔軟性・俊敏性の向上レガシー・システムは古いテクノロジーやスキル要員の不足などにより、ビジネス環境の変化に対応するための柔軟性や俊敏性が不足している場合があります。システムをモダナイズすることで、これらの問題を解消し新業務・新商品の投入を迅速化できます。
  • 拡張性の強化:モダナイゼーションにより、アプリケーション構造(密結合)に起因するシステムの制約から解放され、機能の追加や拡張・変更が容易になるため、ビジネスニーズに応じて業務を拡大・進化させることができます。
  • データの利活用促進:レガシー・システムは、事業部門ごとの分断、複雑なシステム連携や厳格なセキュリティー、ガバナンスの制約などにより、データ資産へのアクセスに困難を抱えている場合が多々あります。システムをモダナイズすることで、データへのアクセスを容易にし、新たなビジネスの洞察や顧客体験の創出が可能になります。

守りのIT:効率化とコスト最適化

業務の効率化・省力化、生産性の向上によってコスト削減を図り、新たな変革のための投資を創出します。

  • コスト削減:レガシー・システムは、ハードウェアやソフトウェアの保守運用に多額のコストがかかる場合があります。システムをモダナイズして、より効率的な新しいテクノロジーを活用することでコストを削減でき、新規開発への投資が可能になります。
  • 生産性・品質の向上:レガシー・システムは柔軟でない開発運用プロセスといった課題を抱えています。現行アプリケーションを可視化し、一貫性のある全体アーキテクチャを構築して、DevOps・SRE等の最新の開発運用プロセスを適用することで開発・保守の生産性や品質を向上させることができます。
  • パフォーマンス・可用性の向上:モダナイゼーションにより、システムのパフォーマンスと可用性が向上し、セキュリティーや耐障害性が強化されることで、システム応答時間やダウンタイムが短縮され、ビジネスの生産性・継続性を向上させることができます。

モダナイゼーションの適用領域

モダナイゼーションの適用領域には、以下のようなものが挙げられます。これらの領域において、マイクロサービス、コンテナ化、API化など、最適な次世代アーキテクチャパターンを採用することで、システムの柔軟性と拡張性を向上させます。

  • ユーザーインターフェース(UI):レガシー・システムのユーザーインターフェースを更新して、使いやすさやユーザーエクスペリエンス(UX)を改善させます。
  • アプリケーション:レガシー・システムのビジネスロジックや機能性、構造を最適化・最新化して、組織の現在のニーズや要件を満たします。アプリケーション・モダナイゼーションの詳細はこちらをご覧ください。
  • データ:レガシー・システムに格納されたデータの管理やアクセスの方法を更新して、パフォーマンス、スケーラビリティー、セキュリティーを向上させます。
  • インフラストラクチャーハイブリッドクラウド戦略を採用し、柔軟性と拡張性を備えたセキュアなメインフレーム、サーバー、およびストレージに統合することで、段階的なモダナイゼーションを実現できます。
  • オペレーション:自動化やAIなどを活用して、ビジネスプロセスを改善しながら、新しい働き方を可能にすることで、ビジネスの効率性や生産性を向上させます。

モダナイゼーションの手法

モダナイゼーションの方法には複数の選択肢があります。リストの下の項目ほどコストや移行期間が大きくなります。ビジネスの目的と照らして、コストとスケジュールを勘案し採用する方法を決定します。

  • API化:既存機能やデータをAPIとして公開し、外部システムや新しいチャネルから利用できるようにする手法です。既存資産を活かしながら段階的な統合や拡張を進める第一歩になりやすい方法です。
  • リホスト/リプラットフォーム:ソースコードやアーキテクチャの大幅な変更を避けつつ、アプリケーションやデータを新しい実行基盤へ移行する手法です。基盤柔軟性や運用性の向上、コスト最適化を狙います。
  • リファクタリング/リライト:ソースコードや周辺コンポーネントを見直し、保守性、処理性能、セキュリティー、拡張性を改善する手法です。機能継承を重視しながら内部品質を高めたい場合に有効です。
  • リアーキテクティング/リビルド:既存の業務機能や中核資産は活かしつつ、アプリケーション構造やアーキテクチャを再設計する手法です。本稿では、従来資産を活かしながら構造を再設計するものと定義します。
  • ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)/スクラッチ開発:業務要件や業務プロセス自体を見直したうえで、既存システムを新しいシステム、パッケージ、SaaS等へ置き換える手法です。本稿では、既存システムを新しい仕組みに置き換えるものと定義します。最も変更範囲は大きい一方で、業務プロセスの抜本的見直しも狙えます。

モダナイゼーションの進め方

一般的にモダナイゼーションを実施する場合は次の5つのステップで進めるのが理想です。詳細については、モダナイゼーションの始め方と成功のポイントをご覧ください。

  1. ビジネス戦略・IT戦略の整理
  2. IT資産の現状分析
  3. モダナイゼーション方針の決定、あるべきアーキテクチャーの策定
  4. 移行ロードマップ・計画作成
  5. 継続的なモダナイゼーションの実行

成功のポイント

  • 段階的実行計画と現状可視化:現行資産、依存関係、非機能要件を可視化したうえで、影響を分割しながら進めます。必要に応じて、現新比較や並行稼働を含む設計を行います。
  • ビジネス目的と優先順位の明確化:コスト削減、迅速な機能追加、運用安定化、データ活用高度化など、何を優先して実現するのかを明確にし、手法選定とロードマップに反映させます。
  • 主要リスクを明示した設計・検証:データ整合性、可用性・信頼性、セキュリティー、現行保証、運用保守性などのリスクを事前に特定し、それぞれに対して設計・テスト・運用の対策を講じます。

モダナイゼーションで活用される代表的なテクノロジー

ここでは網羅的な列挙ではなく、代表的なテクノロジーを示します。

  • クラウド/ハイブリッドクラウド: システム基盤の柔軟性、拡張性、可用性を高め、段階的な最適化の土台になります。
  • コンテナ/マイクロサービス:疎結合化、移植性向上、継続的な変更容易性を実現します。
  • API/Web API/API管理:既存機能やデータを安全に公開し、オンプレミスとクラウドをまたぐ統合、再利用、段階的な拡張を可能にします。
  • 自動化: IaC、CI/CD、運用自動化、ワークフロー自動化などにより、開発・運用・業務プロセスを効率化します。クラウド・オートメーションは、クラウド環境のプロビジョニング、構成、管理に関わる手作業を減らし、DevOpsワークフローの重要要素とされています。
  • 生成AI/Agentic AI:現行資産の可視化、コード理解、設計書補完、コード変換、テスト支援などを通じて、ブラックボックス化の解消、知識継承、生産性向上を支援します。

これらのテクノロジーを組み合わせることで、レガシー・システムのモダナイゼーションをよりスムーズかつ効果的に行うことができます。

IBMと進めるモダナイゼーション

IBMは以下のような強みを持っており、IBMと一緒にモダナイゼーションを進めることで、DXをさらに前進させ、業務をスムーズにし、お客様により良いサービスを提供することが可能になります。

  • 業界専門知識:IBMは幅広い分野で深い業界専門知識を持っており、組織が抱える独自の課題を理解し、適切なソリューションを提供することができます。
  • 最新テクノロジー:IBMはクラウドコンピューティングやAI(人工知能)、自動化、IoT、ブロックチェーンなど最新のオープンテクノロジーを幅広く提供しています。
  • 豊富なデリバリーと運用保守の経験:IBMはエンタープライズ領域におけるミッションクリティカルな基幹システムの構築、運用の豊富な経験があり、システム連携、移行、運用を考慮したモダナイゼーション設計が可能です。
  • 実績のある方法論と実行のノウハウ:IBMには、IBM Garage Methodologyなどの実績のある方法論と、マルチベンダーを含めた豊富なプロジェクトマネジメント、大規模で高度なシステム・アーキテクチャー検討のノウハウがあります。
  • グローバルレベル知見の活用:IBMは体系的に整理されたグローバルのベストプラクティスを提供可能です。また広範囲なモダナイゼーション検討領域に対する最適なアプローチを共創します。

FAQ

Q1. 全面刷新と何が違う?
A. 「使える資産を活かし、変える所に集中投資」する点が異なります。

Q2. 業務への影響を最小限にできる?
A. 可能です。段階実行と影響最小化の設計が前提です。
注:完全無停止を保証するものではありません。システムの特性や移行方法により、計画的なメンテナンス時間が必要な場合があります。

Q3. 最初にやるべきことは?
A. 棚卸し(見える化)→優先順位→ロードマップの順です。

Q4. 2025年の崖はもう過ぎたのでは?
A. 過ぎたのは”年号”で、課題は継続しています。

Q5. 失敗するリスクは?
A. リスクはありますが、適切な計画で最小化できます。

IBMのサービスとソリューション

阿部 孝志

日本アイ・ビー・エム株式会社, コンサルティング事業本部, ハイブリッドクラウド&データ

髙尾 凌我

日本アイ・ビー・エム株式会社, コンサルティング事業本部, ハイブリッドクラウド&データ