ガバナンスがリスクを強みに変える方法
AIエージェントは、もはや実験段階ではありません。AIエージェントはすでに、取引の実行、インフラストラクチャーの変更、機密データの照会、およびエンタープライズ・システム全体にわたるアクションを、多くの場合、人の介入をほとんど必要とせずに実行しています。変わったのは、自動化だけではありません。変わったのは、エージェンシーです。
そして、エージェンシーは、ID、アクセス、および説明責任のすべてを変えます。
これらのシステムは、単に指示を実行するだけではありません。実行するアクションを決定し、権限を委任し、トリガーされたときだけではなく継続的に動作します。これらのシステムは、自律的にツール、API、およびシステムを起動し、多くの場合、ユーザー、チーム、または他のマシンに代わって動作します。その結果、意図、権限、および責任に関する曖昧さが生じます。
ほとんどの企業は現在でも、過去20年間に設計されたIDモデル、つまりマシンではなく人間のオペレーター向けに構築されたモデルを使用してアクセスを管理しています。その結果、組織は、説明責任に関する基本的な問いに自信を持って答えられないまま、自律型エージェントをデプロイしてしまうリスクに直面しています。
こうした問いは、監査担当者、規制当局、および取締役会からだけ寄せられるものではありません。組織は、実行されたトランザクションについて顧客から異議を申し立てられるリスクを負っています。こうした問いには、さまざまなものがあります。
これらの問いに答えられないのであれば、監査の不合格や評判の低下を回避するために必要なガバナンスが整っていないということです。
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従来のIDアクセス管理(IAM)は、アクセスを事前に計画できるという考え方を基本としています。つまり、アクセスを既知のIDに割り当て、定期的にレビューし、ログイン時に適用するという考え方です。このアプローチは、動作が予測可能で、その範囲が限定されている場合には有効です。従来のIAMは、次の3つを前提としています。
エージェント型AIは、これら3つすべての前提に疑問を投げかけます。自律型エージェントは非決定論的であり、マシン速度で動作し、API、ツール、および環境全体にわたって継続的に動作します。このモデルでは、IDはもはや固定された人間のアカウントや長期間使用されるサービス・プリンシパルではありません。IDは、一時的なものであり、特定の機能、ワークフロー、あるいは単一のトランザクション専用に作成され、実行後すぐに取り消される場合があります。
エンドツーエンドのエージェント型フローでは、多数のエージェントがそれぞれ1回ログインし、個別のアクティビティを実行します。エージェントは「一度ログインして終わり」というわけではありません。エージェントは、1時間に数千もの判断を行う場合があり、多くの場合、ユーザー、システム、または他のエージェントに代わって動作します。エージェントはそれぞれ独自のIDを持ち、信頼境界をまたぐエンドツーエンドのトランザクション・フローの中で相互にやり取りします。
組織が人間向けのIAMパターンをエージェントに適用すると、4つの構造的な問題が生じます。
これはツールの問題ではなく、解決すべきガバナンス上の問題です。
企業が犯す根本的な誤りは、エージェントIDを認証情報の問題として捉えていることです。認証情報は重要ですが、エージェント型システムでは、それ以降のすべての信頼を確立する単一のログイン・イベントではなくなっています。
その代わりに、エージェントは継続的に動作し、複数のツールを起動し、システム間をまたいで、時間の経過とともに数多くの独立したアクションを実行します。つまり、IDと認可は、セッションの開始時に一度設定すればよいものではなく、ワークフロー全体を通じて検証され、一貫して適用されなければなりません。
エージェント型AIでは、アクセス制御から権限制御への転換が求められます。これは以下のことを意味します。
これはAIの進化を遅らせることではなく、自律性を安全なものにすることです。認証はあらゆるシステムにおける中核的な要件であり続けますが、認可はアクセス管理システムにおける主要な要素にならなければなりません。これは、IAMプログラムを実装する組織に重大な影響を及ぼします。
多くの組織は、ガバナンス管理策を部分的に導入することで、エージェントのリスクを軽減しようとしています。それぞれの要素は問題の一部を解決できますが、誰が何を、どのような条件で、どの認証情報を使用して認可したのかを証明できるものはありません。これらの要素には、次のようなものがあります。
これらはいずれも、それだけではエージェントを管理できません。真のガバナンスは、ID、ポリシー、および認証情報が単一のコントロール・プレーン内で機能するときに初めて実現します。そこでは、IDが「誰が、なぜ」に答え、認証情報が「何を、どれくらいの期間」に答えます。これらはユースケース全体で連携し、整合性と説明責任を実現します。
ここで、IBM VerifyとHashiCorp Vaultを組み合わせることの真価が発揮されます。両者を組み合わせることで、IDコンテキストと認証情報の制御の間にあるギャップを埋め、意図、ポリシー、および承認を、エージェントがランタイムで実際に使用するシークレットやトークンに結び付けます。VerifyとVaultは、IDとシークレットを別々の領域として扱うのではなく、文書化だけではない実際の適用を通じてエージェントの権限を管理するための統合コントロール・プレーンを提供します。
IBM Verifyは、ユーザーとエージェントが誰であるか、エージェントに実行が承認されている内容、およびユーザーとエージェントがどのような条件でその実行を承認されているかを管理します。
HashiCorp Vaultは、シークレットを安全に保管および仲介し、動的な認証情報をオンデマンドで生成するとともに、TTL、有効期限の更新、および失効を適用し、一元化されたポリシー管理と監査ログを提供します。そのため、エージェントでは、コードやワークフローに恒久的な認証情報をハードコードする必要がなくなります。
両者を組み合わせることで、企業はAIエージェント向けにこれまで実現できなかったもの、つまり、人によるボトルネックを生じさせることなく、証明可能な制御を実現できます。
規制当局はすでに動き始めています。監査担当者は、人間を対象としたID管理とライフサイクル管理という従来のアプローチでは満足しておらず、現在はランタイムでのプロセス評価を求めています。監査担当者が求めているものは次のとおりです。
攻撃者は防御側よりも速いペースで行動しており、AIエージェントを標的にしています。その理由は、AIエージェントが過剰な権限を持ち、監督が不十分な状態で動作している可能性が高いためです。
エージェント型AIは、これから到来するものではありません。すでに実用段階にあります。もはや問題は、エージェントがビジネス・クリティカルなアクションを実行するかどうかではありません。企業が、それらのアクションが適切に認可され、範囲が定められ、説明責任を果たせるものであったことを証明できるかどうかです。
今、計画的にガバナンスへ投資する組織は、監査への対応が標準で整い、厳しい監査や検証にも耐えられる体制を備え、安心して自律性をデプロイできるようになります。これが、エージェント型AIをリスクから持続的な競争優位へと変える方法です。
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