予知保全と予測可能な列車情報。
Downer社とIBMは、最新の持続可能な資産管理によって、乗客の安全、確実、快適な移動を維持しています。
地下のレール上を移動している地下鉄車両の画像

ネット・ゼロは簡単ではありません。むしろ、多くの努力と協力が必要になります。何を食べ、どのように生活し、どこに向かうかについて、私たち全員がより良く、より持続可能な選択を行う必要があります。

実際、いつ、どこに、どのように移動するかをよりスマートに選択することは、より良い明日を実現するために不可欠な要素です。運輸セクターは世界の温室効果ガスの主な原因とされています。過去10年間、政府と民間企業は協力して、地球全体で人や物資を移動させるための持続可能なインフラストラクチャーを構築してきました。

例えば、オーストラリアでは毎日何百万人もの人が、目的地への移動にライト・レール・システムやヘビー・レイル・システムを利用しています。Downer Group社は100年以上にわたり、旅客列車を製造し、運行を維持することに注力してきました。

「ここ10年で本当に目にしてきたのは、政府が列車を管理する方法の変化です」と、Downer社の鉄道・交通システム部門成長責任者であるAdam Williams氏は説明しています。「以前は、私たち民間企業に列車を製造させ、運行とメンテナンスは政府が行っていました。オーバーホールやアップグレードについては私たちに任せることもありました。しかし今では、列車の設計と製造だけでなく、ライフサイクル全体のサポート、つまり通常25~30年にわたる列車のメンテナンスのすべてをパッケージ化することが望まれています」

同氏は次のように続けます。「現在、当社は旅客用鉄道車両のライフサイクル全体を通じた資産管理サービスを提供するオーストラリア最大の企業となっています。つまり、当社はオーストラリアのすべての主要都市で毎日数百本の列車を運行しているということです」

そして、このような継続的な管理だけでなく、より持続可能な交通網の構築に貢献することが期待されています。「現時点では、オーストラリア西側の自治体のほぼすべてが、2050年前後までに何らかの形でネット・ゼロを実現することを約束しています」とWilliams氏は説明しました。「これによって、民間企業に対し、効率性と長期的価値の向上に焦点を当てた技術投資や新サービスを提供するための動機を与えています。これは、単に当社が注力したいというわけではなく、当社の成功に不可欠なことなのです」

信頼性が向上

 

機器の誤作動を減らし、列車の信頼性を51%向上させました

高い処理能力

 

1時間あたり3000万件以上のメッセージに含まれる資産データを処理しています

[政府から] 列車の設計と製造だけでなく、ライフサイクル全体のサポート、つまり通常25~30年にわたる列車のメンテナンスのすべてをパッケージ化することが望まれています。 Adam Williams Head of Growth Rail and Transit Systems, Downer Group
単なる管理を超えた一歩

こうしたトレンドに対応するため、Downer社はIBMの技術を利用してTrainDNA鉄道車両資産管理プラットフォームを構築しました。しかし、時が経つにつれ、同社は単なるソフトウェア以上のものが必要であることに気づきました。Williams氏は次のように説明します。「当時すでに提供していたものを超えるため、当社は未来に目を向けていました。乗客に対するサービスを向上させ、海外にも目を向けたいと考えていたのです。しかし、このような規模になると、いくつかのことを再考する必要がありました。そこで、外部に助けを求めることにしました」

Downer社は、TrainDNAの継続的な開発と強化のために、IBM Consulting™と協力することにしました。このプラットフォームは現在、IBM® Maximo® Application Suiteによって稼働しており、複雑な分析とほぼリアルタイムのデータを活用し、オーストラリア全土で200両以上の列車の予知保全の取り組みをサポートしています。

「IBMに物理的な資産管理に関する経験と能力があることは明らかでした」とWilliams氏は語ります。「しかも、当社が取得しているデータを扱う能力、つまり、そのデータを当社やお客様、乗客にとって価値のあるものに変換する能力をもたらしてくれました」

「TrainDNAを使えば、列車の位置、時刻表上の位置、ステータスなどについて、すべての列車を監視することができます」と同氏は説明しました。「当社は、あらゆる車両のあらゆる資産をリアルタイムに確認できます。運転手たちが見ている画面なども見ることができるのです」

このデジタル・プラットフォームによりDowner社の業績は向上し、乗客により質の高いサービスを提供できるようになりました。オーバーンのメンテナンス・センターだけで見ても、Downer社はこの施設で維持できる列車の数を実質的に倍増させ、効率を20%向上させました。運行本数が増えれば、よりタイムリーなサービスを乗客に提供し、必要な時刻に、必要な場所へ乗客を運ぶことができます。

「IBMと協力し、TrainDNAの管理用アプリケーションも数多く開発しました」とWilliams氏は付け加えます。「例えば、列車保守施設や操車場でスタッフが毎日扱っている何百両もの車両の識別と移動を管理するためのアプリケーションを開発しました。また、保守チームが安全に作業を行えるようにするため、車両を電気系統から切り離す絶縁作業の監督にも役立っています」

「すべてはMaximoを通じて行われます」とWilliams氏は続けました。「当社では主に、日々の保守活動の基本的な管理だけでなく、人員計画やスケジューリングにも使用しています。Maximoですべての資産の構成と健全性を管理しているのです。Maximoは、当社のシステムにある1,500台以上の車両から得られるデータがすべて揃っていることから、ある種の聖書であり、信頼できる唯一の情報源です」

そして、このデータ・プールのために収集された情報は、IBM MQを使用して集められます。Williams氏は次ように言います。「当社はすべての統合にMQを導入しています。各列車から10分おきに3万通ほどのメッセージが届きます。1時間あたり3000万通以上のメッセージが送られてくることになります」

Downer社とIBMは今後、TrainDNAプラットフォーム全体のデータの流れを合理化するためにIBM Cloud Pak® for Integrationを追加し、IBM Cloud Pak for Dataによってこれらの収集されたデータの統合、合理化、分析を支援する予定です。そして、IBMとDowner社の共同チームは、IBM Cloud Pak for Watson AIOpsでソリューションを強化し、収集した情報によってトリガーされるアラームや、対応するワークフローの調整に関するルールも定義します。

さらに、同社のスタッフは、IBM WebSphere® Hybrid Editionで利用可能なツールを使用して、同社の既存アプリケーションをクラウドネイティブ・アーキテクチャー向けに最新化する予定です。また、IBM Instana® Observabilityによって、アプリケーション・パフォーマンス・モニタリングを提供し、システム・オペレーターがリアルタイムに理解できるようにし、ボトルネックを除去して問題を迅速に解決できるようにします。

[Maximoは] 当社のシステムにある1500台以上の車両から得られるデータがすべて揃っていることから、ある種の聖書であり、信頼できる唯一の情報源です。 Adam Williams Head of Growth Rail and Transit Systems, Downer Group
次の目的地:より良い明日

2022年6月、Downer社はIBM Consultingと、より統合された共同開発プロセスを通じてTrainDNAの能力を強化することに焦点を当てた新たな契約を結びました。これらの変更は、Downer社の国際的な成長計画をより適切にサポートするだけでなく、TrainDNAの新しい機能と能力を提供できるようにするためのものです。

この新しい契約の下、Downer社とIBMは、エネルギー消費の削減に焦点を当てた共同サステナビリティー・チームを結成しました。「当社がビジネスとして直面している課題は、まさに社会全体が直面している課題です」とWilliams氏は指摘しました。「脱炭素化については明らかな課題があり、これは大きな挑戦であると同時に大きなチャンスでもあります」

Downer社はIBMとともに、保有車両のエネルギー使用量を削減する機会を模索しています。「Sydney Trains社やメルボルンのMetro Trains社のような鉄道事業者について考えてみると、そのネットワークは州全体で最大の電力利用者の1つと言えます。そして、どの鉄道システムが最もエネルギーを使用しているのか、一日を通して天候や乗客の需要の変化にどのように対応する必要があるのかをより適切に理解することができれば、使用量を最適化し、全体としてより良い結果を得ることができます」

同氏はこう続けます。「現在、それらを監視し、さらには制御する方法を考えているところです。空調を調整する必要があるか、エネルギー負荷や、主要な電力消費源のひとつであるトラクション・コントロールを、乗客数に応じてリアルタイムでバランシングすることはできるか、と考えています。数パーセントだけでも節約できれば、ネットワーク全体、そして国全体の二酸化炭素排出量に大きな影響を与えるでしょう」

Downer社は現在、こうしたパフォーマンスの評価を可能にすることを視野に入れ、IBM Garage™チームと連携して、より機敏に、よりイノベーションへの道筋を加速させるための設計努力を共同で生み出しています。「当社はウォーターフォール・アプローチから脱却しつつあり、リリースまでのサイクルをより早くすることで、より多くの実験を促進しています」とWilliams氏は付け加えました。

同氏は説明を続けます。「IBMと協力している分野の1つは、収集した資産データを活用して、メンテナンスの予測性を高めることです。例えば、空調システムにおいて、あるポイントを通過する気流の変化が故障の前兆であることに気づきました。現在では、そのような気流パターンの検出後、問題が発生する前に修理チームを派遣して介入できるようになりました」

「また、従業員の安全性と測定の再現性を向上させるために、ドローンやその他のロボット検査機器を使った試験も始めています」とWilliams氏は語りました。「メンテナンス・チームが点検のために立ち入らなければならないスペースには、本当に厄介で潜在的に危険な場所がたくさんあります。高所からの落下の危険性は言うに及ばず、つまずいたり滑ったりすることによる怪我が常に見られますが、ドローンはただ飛んできて計測するだけでいいのです」

「ドローンに列車がどのような状態であるべきかを教えると、ドローンは検査し、見つかった例外について技術者に伝えに戻ってきます」と同氏は言います。「スタッフは危険な可能性のある環境を歩き回ったり、這い回ったりするのではなく、ドローンのデータを使用して、より的確でターゲットを絞ったメンテナンスの決定を下すことができます」

列車を正常に保つことで利用者を幸せに。

「保有車両の信頼性が51%向上しました」とWilliams氏は付け加えます。「この信頼性は、いわゆる『平均故障間隔』と呼ばれるもので、要するに、故障がサービスに影響を及ぼす前に各列車がどれだけの距離を走行できるかを示すものです。現在、当社の長期的な平均値は75,000kmを超えており、これは当社のパフォーマンスが世界のトップクラスに匹敵することを意味しています」

その結果、乗客はより安定して時間通りに目的地に到着できると確信できるようになります。TrainDNAが提供する包括的で制御可能な安全性ポリシーによって、生産性の向上を促しながら従業員を保護しています。実際、Downer社は従業員をほとんど増やすことなく、保有車両を21%増加させました。

全体として、Downer社はIBMを選択したことに満足しています。「Maximoがすべてのデータを取得することで、列車内で何が起こっているのかを真に理解できるようになりました」とWilliams氏は付け加えます。「2010年当初は、30日、60日、90日の点検と、より大きな段階的オーバーホールを併用する保守体制でした。そのため、特に複数の列車が同時に大規模な修理を予定している場合、ワークロードのバランシングは非常に困難でした」

同氏はこう続けます。「当社が現在行っているのは、メンテナンス周期を最適化することです。当社は故障時期を予測できるため、介入が必要となる周期が長くなっていることを確信しています。これまでのところ、定期メンテナンスの間隔を2倍に延ばすことができました」

最終的に、IBM Consultingとの提携によって、ビジネス全体のイノベーションが推進され続けています。「IBMとは、直接的な取引関係から、コラボレーションと共創の関係へと変わりました」とWilliams氏は結論付けます。「私たちは共同で、製品やサービスの開発に取り組む最善の方法について話し合っています。そして、私たちは補完し合う能力を最大限に活用し、より多くのことを成し遂げる方法、つまり、1 + 1 = 3という考え方を見出すことができたと思います」

当社はウォーターフォール・アプローチから脱却しつつあり、リリースまでのサイクルをより早くすることで、より多くの実験を促進しています。 Adam Williams Head of Growth Rail and Transit Systems, Downer Group
Downer Group社について

150年以上前に設立されたDowner社(ibm.com外部へのリンク)は、44,000人以上のグローバル・スタッフを擁し、統合された都市サービスの大手プロバイダーです。グループの鉄道・輸送システム部門は、オーストラリアとニュージーランドで鉄道車両資産管理サービスを提供し、顧客にライフサイクル全体のサポートを提供する専門知識を備えています。

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© Copyright IBM Corporation 2022. IBM Corporation, IBM Consulting, New Orchard Road, Armonk, NY 10504

2022年10月米国で作成。

IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Cloud Pak、IBM Consulting、IBM Garage、Instana、Maximo、およびWebSphereは、世界の多くの国で法的に登録されているInternational Business Machines Corp.の商標です。その他の製品名およびサービス名は、IBMまたは他社の商標である可能性があります。IBM商標の最新リストは、ウェブ上の「著作権および商標情報(https://www.ibm.com/jp-ja/legal/copytrade)」で入手できます。

本書は最初の発行日時点における最新情報を記載しており、IBMにより予告なしに変更される場合があります。IBMが事業を展開しているすべての国で、すべての製品が利用できるわけではありません。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本書の情報は「現状のまま」で提供されるものとし、明示または暗示を問わず、商品性、特定目的への適合性、および非侵害の保証または条件を含むいかなる保証もしないものとします。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。