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「地域課題解決をDIYするためのデータ流通プラットフォームの取り組みと展望」レポート

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コロナ対策として完全オンライン開催となった今年のISEテクニカル・カンファレンス。

2日間に渡り多数のセッションが開催されましたが、今回はその中から、先日のプレスリリースも高い注目を集めている、「地域課題解決をDIYするためのデータ流通プラットフォームの取り組みと展望」セッションの模様をレポートします。


 

こんにちは、松井 加奈絵です。

皆さまと同じように、私も自宅からお話しさせていただきますので聞き取りづらいところもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。

まず簡単に自己紹介をさせていただきます。

私は、東京電機大学 情報システム工学科にて、准教授として知的情報空間研究室を運営させていただいております。他にも慶應義塾大学 KMD研究所のリサーチャーや、浦和美園の「アーバンデザインセンターみその(UDCMi)」というまちづくり拠点にも参画させていただいています。

 

技術領域としてはIoT技術をベースとしたアプリやサービスの開発を専門としております。そうした観点から、大阪大学の「Society 5.0 実現化研究拠点支援事業」や東京都押上地区の熱中症対策プロジェクトなど、いわゆるスマートシティやソサエティ5.0関連のプロジェクトにも関与しており、テクノロジーを通じて人びとの暮らしや生活を良くしていくことにこれまで注力し続けてきました。

タイプの違うものとしては、俳優さんの演技動画を分析して演技力向上につなげるという、ちょっと変わったプロジェクトにも取り組んでいます。

 

さて、今日お話しさせていただく地域課題解決の話ですが、さきほどお伝えしたプロジェクトが都市部における取り組みだったのに対し、こちらは過疎化が進みこのままでは存続が難しいと言われている中山間地という地域の話となります。

そしてなぜ中山間地なのか、なぜIoTやAIの活用が必要なのか。それからなぜデータ流通プラットフォームなのか、そしてなぜDIYなのか。そうした話を実証実験を行う長野県小谷村でのこれまでの取り組み、そして今後の展望などをまじえてお伝えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

■ なぜ中山間地なのか

中山間地とは、傾斜地や山林の多い地域のことです。日本の国土の7割が中山間地で、全人口の2割がそこに暮らしています。

今、私たちはこのパンデミックで、いかに自分たちの生活が脆弱なものかを実感しています。そして都心への一極集中はそうした脆弱性を加速してしまうものであり、中山間地の自立化を支援することは、レジリエンスな社会の形成につながるものだと考えております。

 

ここ数年、地方創生の一環として行政によるIターンやUターン施策も増えています。人が都心から地方へ向かうこと自体は良いことだとは思いますが、ただ、限られた人口を各地域で奪いあうという形になってしまっては、むしろ「負けた地域」の課題を大きくし、限界集落化を進めてしまいかねないのではないでしょうか。

そのような見方からも、定住人口だけではなく、複数拠点を持つ暮らし方の一拠点としていただくことや、観光で頻繁に訪れてもらう関係人口や交流人口として関わっていただくこと、あるいはオンライン上でその地域で活動するいわば「デジタル人口」となっていただき、地場産業の維持や新規産業の創出を目指すモデルが必要だと思うのです。

 

■ なぜIoTやAIの活用が必要なのか

超高齢化が進む中山間地では、まず人手が足りていません。都市部であれば人海戦術的な対応が取れることや体力のある若者にお願いしたいようなことでも、中山間地では無理です。

でも、IoTやAIは休憩いらずで24時間365日働けますよね。

「最後まで自分らしく住み慣れた場所で暮らし続けたい」という願いをお持ちの住人たちが、持続可能な村を実現する上で必要な道具がIoTやAIであり、こうした地域でも大いに活用されるべきだと思うのです。

 

今回、実証実験を一緒に行わせていただく長野県小谷村は、昨年私たち東京電機大学がほぼ丸一年に渡り水田水位管理システムの実証実験をさせていただいた地域で、実に十回の訪問を繰り返させていただました。

その小谷村で、対象範囲や目的、そして未来への展望も新たにして、今年はIBMさんと一緒に実証実験をさせていただきます。

 

■ なぜ小谷村なのか

みなさん小谷村はご存知ですか? 長野県の最北⻄部に位置する豪雪地区で、白馬や妙高などの避暑地やスキーで有名な地区と隣接している観光を基幹産業とした村となります。

人口は3,000人弱で人口減少率が10%に近く、高齢化率も38%弱ということで、深刻な少子高齢化問題に悩まされている典型的な日本の中山間地です。

 

でも、小谷村は「おたり54プロ」と呼ばれる地域コミュニティ維持の取り組みを率先して行なってきた地域でもあります。村にはSigfox(極めて軽量なデータを扱う、低価格・低消費電力・長距離伝送を特長としたIoTネットワーク)がすでに張り巡らされていて、これまでにもIoTを活用した住民の健康管理の実験や押しボタンデバイスによる「よろず相談システム」の構築、ドローンとスマートフォンを用いた災害時対応システムの実証実験などが行われてきました。

そうした下地がある中で、私たちは昨年、水位計測機器の開発と水田水位管理システムの実証実験を行いました。

 

実験の特徴は、村の実験協力者の意見を丁寧に聞いたことです。「地元のことを知らない東京から来た人たちが本当に村が必要としていることではなく、ちょっとズレたことをしている」と捉えられることがないようヒアリングをした結果、当初計画していた「自動化」ではなく、今回の現場で求められていた「見える化」を目指す方向へと変更しました。

結果として、「現在の水位は3センチなので、今、田んぼに行く必要はありません」といったメッセージを1日3回送るようにして、協力者の農家の方がたからは「遠方からでも情報確認が可能となり、近くにいる人に見回り作業をお願いできるので安心」や「見回り順番決めの参考になった」という感謝の声をいただき、手応えを感じることができました。

 

■ なぜデータ流通プラットフォームなのか。デジタルマーケットプレイスなのか

政府の地方創生構想がスタートして5年が経ち、さまざまな地域でさまざまな取り組みが行われてきました。ただ、こうした取り組みで得られたデータも、それぞれ別々のシステムに保管されていて、地区を超えた活用はもちろん、地域内ですらうまく連携できていないというケースも少なくありません。これでは課題解決のスピードは上がりませんし、スケールすることも難しいですよね。

データを保持している自治体の導入システムを、私どもが構想しているデータ流通プラットフォームに連携していただくことで、地域課題解決に取り組むプレイヤーにより効果的効率的に活用していただこうというのが今回の狙いの一つです。

プラットフォームは道具箱のようなものなので、そこに必要な道具が揃っていれば課題解決に集中して取り組むことができ、スピードも質も上げることができるでしょう。

 

そしてもう一つ。この取り組みの狙いであり特徴的な点が、デジタルマーケットプレイスです。

データ流通プラットフォームを通じて得た知識や学びをさらに発展させ、自らが開発したソリューションやサービスを、デジタルマーケットプレイス上で販売いただけるようにシステム検討を進めています。

こうすることで、課題解決に参加したい、あるいは応援したいという開発者や学生が、持続的にエコシステムに参加できるようになります。そして企業だけではなく、より多くの方に地域に関係するデジタル人口となっていただき、関係性を深めていただけるのではないかと考えています。

 

■ なぜDIYなのか

この取り組みの元となった研究は「自分が住みたい場所を作る、大切な人と暮らす場所を作る、そのためのデータ利活用を実現したい」という気持ちからスタートしています。

DIYは「Do It Yourself」の略で、自分たちで地域課題を解決しようということです。

なぜなら、解決策やサービスをお金で購入するという方法では、サービス提供会社が手を引いたらそこで解決策も途切れてしまうということが考えられるからです。

サービスを自分たちの手で作れば、当事者意識を持って、より主体的に自分たちのアイデアを活かした解決策を、長期的に使用することができますよね。また仮に、解決策が何らかの理由で途切れてしまっても、ノウハウはその人や地区に残りますし、それが新たな解決のアイデア創出や担い手の育成に役立ちます。

 

今、担い手と申し上げましたが、このDIYを進める上で重要なのが、日々の生活から解決すべき課題を見つけ、このプラットフォームを用いてデジタル技術を使ったシステムやサービスを開発できる人材育成です。

最近はSTEM教育が注目されていますが、単なる学習のための学習ではなく、自分の住んでいる地区に関係するものや、その地区で実際に用いられているものに小学生の頃から触れていくことで、より一層学習内容が身につきやすくなりますよね。そして早くから地域に根付いたビジネスをスタートすることで、その地域への愛着が深まり、長くその地で暮らすことへにもつながっていくのではないでしょうか。

そんなわけで、例えば「ビジネスパートナーは私のおじいちゃんです!」というような、中学生起業家を私たちは生み出したいと考えています。

私からのご説明は以上となります。本日はありがとうございました。

これまでの経緯や今後の取り組みについては、今後タイムリーにnoteでも発信して行きたいと思っていますので、ご興味をお持ちいただけましたらぜひフォローしてください。

ご静聴ありがとうございました。

 

参考: Note – 東京電機大学 知的情報空間研究室

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

 

 

(TEXT: 八木橋パチ)

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