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バリアフリーアプリ「DiversMap」街歩きイベントレポート | PwDA+クロス4

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段差のない道、明るく照らされている道、幅が広い道——。

人それぞれ、自分にとっての「通りやすい道」は異なることでしょう。ただ、自分の好みだけでは判断できない、そんな特性や個性を持っている方たちもいます。その代表例が「車いすユーザー」ではないでしょうか。

 

1月27日(土)、福岡市のスタートアップ支援施設FGN(Fukuoka Growth Next)で、「DiversMap/ルート集め街歩きイベント」が開催されました。

「道幅2メートル以上」「段差が少ない」「灯りがある」など、イベント主催者の「学生アプリ開発団体 Divers」が定義した通りやすい道を共有しようと、多くの人たちが集まったこのイベントに、筆者も取材を兼ねて参加してきました。

当日のイベント様子をお伝えします。

歩きに出かける前のイベントオープニング

 

 ルート集め街歩き

イベントスポンサーや主催団体からの挨拶の後、この日の主目的である街歩きとルート登録の方法が紹介されました。その後、約30名の参加者は6グループに分かれ、およそ2時間半の「通りやすい道」の確認へと向かいました。

筆者が参加したコースは、全長7キロ強の以下のコースです。

Fukuoka Growth Next(イベント会場)〜 済生会福岡総合病院 〜 博多座 〜 キャナルシティ博多 〜 櫛田神社 〜 博多駅 〜 西鉄福岡(天神)駅 〜 Fukuoka Growth Next

 

学生団体Diversのボランティアスタッフの光安さんを中心に、計6名のメンバーで実際に車いすを押しながらの街歩きを行いました。

グループの4名は、天神・博多の街を毎日無料で案内しているという「福岡市観光案内ボランティア」の仲良しメンバー。イベント参加のきっかけを訊いてみたところ、メンバーの一人が西日本新聞に掲載された案内記事を目にしたのが最初だったそうです。

「誰もが歩きやすい福岡にしよう」と頑張っている学生たちがいることに感銘を受け、応援したくなったとのこと。そして今後、観光案内ボランティアとしても、自分たちから積極的に「車いすユーザーがより安心して楽しめるコース」を提案できるよう、勉強させてもらいたいという気持ちもあり参加を決めたとのことでした。

福岡市観光案内ボランティアの皆さんと車いすを推し続けてくれた光安さん

 

「ユニバーサル都市・福岡」というコンセプトを掲げ、バリアフリーとインクルーシブ・デザインの実装を続けている福岡市ですが、実際に車いすに乗り、街中を進んでみればまだまだ障害物や危険な道がそこかしこにあることに気づきます。

また、この日は土曜日午後ということもあり街にはたくさんの人が。人気ラーメン店やスイーツ店など、多くの人が行列する場所では、「広い歩道」も「車いすがギリギリ通れる」状態となっていることも少なくありませんでした(ときには通れない状態になってしまっていたことも)。今後、自分が列に並ぶ際などは、車いすや白杖を使用している人たちが安全に通れる状態が確保できているかを気にするようにしたいと思いました。


 

約2時間半の街歩きを終え、それぞれのグループがDiversMapに安全に歩けるコースの登録を終えると、体験を振り返り意見や情報を交換する懇親会が開かれました。

イベント協賛のVMO Japanやフジキカイ、太陽と月の明、アクセシビリティカンファレンス福岡からたくさんのフードやドリンクが提供され、多くの参加者が足の疲れを癒しつつ、自分たちが求める安全な街の姿について語り合っていました。

ここからは、イベントの主催でありウェブアプリDiversMapを開発している「学生アプリ開発団体 Divers」メンバーの声と共に、Diversのリーダーであり、自らも車いすユーザーである内山大輔さんにDiversMapについて、イベントの前後にお話しいただいた内容をご紹介します。

イベントオープニングでDiversMapとご自身の紹介をする内山さん

 

◾️ DiversMapとは

DiversMapは、「通りやすい道の共有」に特化したWebアプリです。

車いすユーザーを筆頭に、赤ちゃんとのお出かけでベビーカーを使う人たちや、大きなスーツケースを持ち歩く人にとって通りやすい、バリアフリーのルートを集めて提供することで、「安全・安心に暮らせる世の中を実現させたい」と考え開発・改良を進めています。

 

◾️ 学生アプリ開発団体「Divers」とは

僕は中学生の頃から車いすを利用していて、非常に困った思いをたくさんしてきました。高校生の時には、横断歩道のちょっとした段差が原因で大怪我をしてしまった経験もあります。

そうした経験から、安全な道を事前に確認できるウェブアプリを作りたいと考え、アプリ開発を学ぶために進学しました。最初は一人で開発し改良を続けていましたが、やがて仲間が集まりはじめ、僕が所属している「KCS福岡情報専門学校」も支援してくれるようになりました。

現在は、同学校のメンバーを中心に学生アプリ開発団体「Divers」として活動しています。

 

◾️ DiversMapの機能と使い方

「DiversMap」は、実際に歩いてみた、あるいはGoogle Earthで確認して投稿された通りやすいルート(道)が検索できる、バリアフリールート共有アプリです。

コメントと合わせて投稿してもらうことで、外出前に気をつけるべき点や、ルートの実際の距離・所要時間などを確認することができ、LINEで気軽に共有することができます。今後ルート情報をさらに増やし、一層便利なアプリへと成長させたいと思っています。

詳しい使用方法や登録されているルートは、こちらのウェブページでご確認いただけます: https://diversmap.com/

アプリの使い方を説明する内山さん

 

◾️ DiversMapが実現したい世界

車いす利用者や高齢者、足が不自由な方やベビーカー利用者が、安全・安心に暮らせる世の中を実現させたい——。

「DiversMap」が発展し、外出前に安全な道が確認できるようになれば、僕をはじめ、現在外出に不安や不満を抱えている人たちの意識を変えることができるのではないでしょうか。そして本来は不要なはずの心配を解消することで、積極的に新しい取り組みやチャレンジにも一層前向きになれるのではないでしょうか。

 

◾️ 今後の予定と展望について

この度の2回目のDiversMap街歩きイベントでは、ご参加頂いた30名の方に26件のルート情報を投稿いただきました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

まだ力不足な点も多々あるのは承知していますが、今後、街歩きイベントの実施などを通じてもっとルート登録情報を増やしていきたいです。そして今後は福岡だけではなく、オンラインを活用して複数都市での街歩きイベント同時開催なども実現できないだろうかとも考えています。日本中のさまざまな街でDiversMapが使われることで、安全・安心に暮らせる世の中に近づけると思うからです。

ただ、DiversMapだけでは社会は変わらないとも思っています。APIなどを用いて、別のサービスとの連携なども進めて行きたいと考えていますが、それにはさらに多くのスポンサーや、組織の方たちにご協力いただく必要があります。

どんな形であっても大歓迎ですので、共創のアイデアをお持ちでしたらぜひご一報いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

 

なお、2月23日(金)にも、福岡大名ガーデンシティ・テラスの「GROWTH I(グロース・ワン)」にて街歩きイベントを開催予定です。ぜひご参加ご検討ください! (詳細: https://www.facebook.com/share/yb2TZH2nTKVTyN8E/

そして5月にはAndroidアプリをリリース予定です。そちらもご期待ください。

 

「旧知の仲」という福岡市議会議員 浜崎太郎さん(左)にDiversMapの使い方を教える学生アプリ開発団体Diversの上杉さん(中央)と内山さん(右)。

 


TEXT 八木橋パチ

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