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EAMの勘所:第22回 企業ワイドの保全管理の仕組みづくり(6)

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システムの維持管理

EAMの勘所とは

企業資産管理を円滑に行うために「EAMの勘所」と題して定期的にコラムを掲載していきます。
第 22 回目は、「企業ワイドの保全管理の仕組みづくり(6) ビジネスの維持管理 」についてご説明いたします。

(※EAMとは、IBM Enterprise Asset Management の略です。)


 保全管理システム導入後の問題

長期のシステム導入プロジェクトを終え、保全管理システムの運用が開始されると、あらたな問題の発生に対して注意・配慮を行なわなければなりません。これは短期の活動ではなく、システム運用の全般に及ぶ長期にわたり忍耐の求められる活動です。
それは「導入されたシステムが健全に運用されていることを保証する」ことを意味する維持管理活動です。この維持管理活動は最も地道な活動ですが、新しく導入された保全管理システムの成否を大きく左右します。その理由は以下の通りです。

表 1 システムの維持が正しく行われない場合の問題点

システムの維持管理での問題点 説明
データの有効性 いかなる情報システムでも、そのシステムから出力される情報が有効でない(例:データが古く最新でない、データの入力に抜けがある・・・など)とシステム に対する信頼性が無くなり、システムを利用しない傾向が強まります。この結果さらにデータの入力がおろそかになり、悪循環につながります。
ユーザーのデータ記録要件の変化 エンドユーザーに必要な情報が情報システムに記録されない場合、エンドユーザーは管理のためにEXCEL表などを個別に作成し、独自管理を行います。このため、相対的に情報システムの価値が減少します。また情報が属人化するとともに、バラバラになる原因につながります。
システム更新 導入された保全管理システムが、きちんと実際の業務管理に適用されない場合には、その問題を解決するために別システムの構築を行ったり、更には導入された システムの更新を検討する必要が出てくる場合があります。これは社内の貴重な時間と資金を無駄にすることにつながります。

このような問題を防止するために以下のような活動が必要になります。


システム監査の実施

システム監査とは、導入された保全管理システムが正しく、適切に使用されているかを定期的に確認する活動です。システム管理の実施は、情報システムを健全に維持するために最も重要な活動項目です。

通常、システム管理という名称から情報部門の担当者が行う活動に見えますが、情報管理部門では入力されているデータの適切性は判断ができない場合があるため、情報部門と協力し、現場部門の管理者が参加します。

表 2 システム監査のチェック項目の例

問題カテゴリー チェック項目
データ入力の抜け漏れ
  • 要求されているデータの入力項目は正しく入力されているか?(例:担当者によっては入力していない・・・など)
  • 記述式で入力する項目の記述内容は的確か?
  • 記録すべき情報全体が抜けていないか?(例:発生した故障情報がすべて入力されているか?)
コード体系の有効性
  • 入力しているコード体系は現在のビジネス管理標準に合致しているか?
  • 現在のコード体系で十分なデータの分析が可能か?
管理対象の範囲の確認
  • 導入時点ではすべての項目をシステムで管理できない場合、計画的に管理対象の範囲を拡大しているか?(例:資産台帳の入力で、初期時点では重要設備のみ整備しているが、徐々に一般設備にも拡大しているか・・・などの確認)
データ入力タイミング
  • データの入力タイミングは適切か?(例:本来は当日に入力すべき情報が、週末や月末などの入力となっていないか・・・などの確認)
マスターデータの的確性
  • 設定された予防保全の周期は的確性か?
  • 資産・ロケーション、作業標準などのマスターデータに記録されている登録データは現状を反映したものになっているか?(例:作業の優先度を設定しているが、生産計画などの変更で当該作業の優先度に変更はないか・・・などの確認)
  • マスターデータは定期的に見直しをおこなっているか?
ビジネス管理プロセスの確認
  • システムに登録されているビジネス管理プロセス(ステータス遷移、ワークフローなど)は現状の管理プロセスを的確に反映しているか?
帳票の有効性
  • 定期的に出力する管理帳票はエンドユーザーの目的を反映しているか?
  • 日常的に帳票を再加工して、あらたな帳票を作成していないか?

システム拡張要件の確認

保全管理の分野では日々発生する事故(社内、同業他社)、法令・業界標準の変化などで、システムに新しい情報項目を追加記録や、管理プロセスの変更が発生 する場合があります。従ってこのエンドユーザーの要求事項を的確に把握し、システムに反映することは、システムの健全性を維持するためには重要な活動にな ります。この新たに発生するエンドユーザーの要求をタイムリーに反映できない場合、上記で説明したように、追加情報を管理するためにEXCELなどのスプ レッドシートで新たな資産台帳が作成されてしまい、導入した保全管理システムの価値を相対的に低下させてしまいます。

従って保全管理システムには、柔軟にシステムを変更できる機能と、定期的な要求事項の確認・反映を行う活動が必要になります。

表 3 保全管理システムに求められる柔軟性

要求事項 説明
データ項目の追加 保全管理システムに記録されるデータは、追加・変更が発生する可能性があり、システムに新規のデータ項目を簡単に追加できる仕組みが必要です。
ワークフローの変更 保全管理プロセスを標準化するワークフローは、お客様の組織変更、法律・業界の要請に伴い変更が発生します。ワークフローは簡単に変更できなければなりません。
評価指標の変更 保全のパフォーマンスを数値化して評価する評価指標は組織の変更、管理対象の増加、詳細な管理への拡大に伴い、柔軟に変更されなければなりません。
帳票の変更 保全管理システムが出力する帳票のデータ項目は、データ項目の追加に伴い、簡単に変更される必要があります。また、システムに記録されているデータはセキュリティーの許す範囲で、自由にダウンロードして再利用出来ることが推奨されます。

このような柔軟性は、システムの変更に際し大きな予算を準備して、実行するのでは対応時間が長くなり、システム自身の価値を相対的に低下させます。従ってシステムの構成の設定などの標準機能で実現できることが望まれています。


定期的なバージョンアップ

システムのアクセス環境はオペレーティングシステム、WEBブラウザーなどインフラが、好む・好まないに係わらず変化していきます。通常、保全作業に関連 する管理者、技術者は様々なデータ分析など技術的なデータ処理を行うこともあり、一般的なオフィスのパーソナルコンピュータと比べて、高速なコンピュータ を利用するユーザーも多いのです。

しかし、実態はコスト削減のため、旧型のコンピュータ環境を使用し続けるケースも多く見受けられ、遅い処理速度と格闘しているケースが存在します。

システムのバージョンアップは保全管理システムのサーバーやソフトウェアのバージョンばかりではなく、エンドユーザーのコンピュータ環境を含めて3年~4年程度に一度は見直しを行う必要があります。

またエンドユーザーは使用しているコンピュータが新しくなると「うれしく」、仕事の効率も向上します。このようなユーザー環境の変更を保全管理システム全 体としてのバージョンアップ管理の仕組み載せて実行することにより、予算を確保したり、またバージョンアップに係わりシステム機能の追加を定期的に行ない ます。


システムの健全性の確保

コンピュータシステムも故障します。従って故障により、保全管理システムが使用できなくなる場合に遭遇する可能性があります。またシステムに記録さ れるデータは日々増加するため、システムの性能は「放っておく」と劣化します。従って社内の情報システム部門の担当者と緊密に連携し、以下のようなシステ ム管理を行う必要があります。

表 4 保全管理システムのシステム管理

システム管理項目 説明
システムのバックアップ 保全管理システムの情報はその組織の管理ノウハウ自身を規則した貴重な情報です。また自社および他社で事故が発生した場合に監督官庁から保全活動の情報の 提供が求められる場合があります。従ってシステムのトラブルを想定したデータのバックアップおよびリストアが確実に実行できる仕組みを持つ必要がありま す。筆者の経験ではバックアップは取得しているが、リストアした経験のないお客様もしばしば見受けられます。バックアップが正しく取得されていることはリスト アしないと確認できないため、このような管理には問題があります。災害復旧計画などの一環としてデータのリストアの実験を行う必要があります。
パフォーマンス・チューニング 記録データの増加に伴い、データベースのチューニングを行い、パフォーマンスの劣化を抑制します。情報システムを使用したくない大きな理由の一つに性能劣化があげられますが、データベースのチューニングを行うことでこの問題を解決する場合があります。「遅い」システムは「イライラ」を招き、コンピュータシステムに批判的になる大きな要因です。
セキュリティーの確認 セキュリティーは情報管理の上で非常に重要な管理項目です。組織変更に伴い職責が変わっても、昔のアクセス権を利用できる。また退職者のユーザーIDが残っているなどの問題はよく見受けられます。
システムの導入を終えると、導入プロジェクトチームは解散となり、各部門や担当者がシステムを運用するようになります。しかし、ここに説明した維持改善活 動を長期に実行するためには、やはり正式な保全管理システムの管理部門が必要になります。また情報システムや社内の情報管理標準などとも連携する必要が出 てきます。従ってシステムの管理・運用には社内の情報管理部門と連携し、一体となった管理体系を構築することが必要です。
通常、保全管理システムには部門の1担当者が割り当てられる場合があります。このような運用体制の場合、担当者が変わると別のシステムの導入への要求が出 てきたり、また管理品質が個人に依存するためシステムとして大きなリスクを持つことになる場合があります。保全管理システムはそのデータの性格上5年、 10年と長期で利用できる環境を会社としても整えていく必要があります。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

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