読書メモ

助けっぱなし、助けられっぱなし – 話をきかないひとたち

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数年前に、岡壇さんの『生き心地の良い町–この自殺率の低さには理由がある』を読み、そのあまりのおもしろさに岡さんの話を聞けるイベントに参加してきました。

「生き心地の良い町」と「活き心地の良いコミュニティー」 岡檀さんのお話@みらい館大明

 

今回紹介する『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』は、精神科医の森川すいめいさんという方が、『生き心地の良い町』で取り上げられている徳島県の旧「海部町」をはじめとした数カ所の「自殺希少地域」を旅し、そこで見聞きしたことを中心に考察した本です。

 

書かれている内容を紹介する前に私のスタンスを書いておきます。

私は、自殺という不幸なできごとが減っていけばいいともちろん思っていますが、自分自身や身の回りに何か自殺に関する心配事があるとか、自殺予防に対する強い興味を持っているわけではありません。

この本を手にした理由は、ひとのつながり方やコミュニケーションのあり方、コミュニティーのあり方を考える上で参考になるかと思い手にしました。

ですから、医療関係者の方や自殺予防に取り組んでいる方から見ると、読み方や向き合い方に薄っぺらく感じられるところがあるかもしれません。あるいは、視点がずれていて腹立たしく感じられる人もいるのかもしれません。不快に感じる表現があるとすれば、それはこの本ではなくて私の表現のせいです。

 

読み終えてからググってみたら、この本ってとても反響が大きくて、いろいろな媒体で取り上げられていたり、著者を招いたイベントもたくさんあったようですね…。

もっと早く気づいていれば、著者の講演に参加できたかもしれなかったのに…。残念。

 

読みどころが多い一冊なのですが、私がとりわけ惹かれたのは著者の森川さんが体験した旅のエピソードのカラフルさです。

淡々と書かれてはいるものの、これまで社会的弱者の問題に関わり続けてきた森川さんならではの「コミュニティー」「ネットワーク」「社会制度」そして「オープンダイアローグ」という精神科治療アプローチの知識をベースにした「(個人として、コミュニティーとして)生きやすくするヒント」に溢れています。

いくつか並べてみますね。

 

  • 部屋に置かれていたお菓子が賞味期限切れだったことを宿の人に伝えたら「え、それがどうかしたの?」という調子で、自分の家から持ってきた別のお菓子と取り替えられた。

 

  • 普段の外出では家の鍵はいちいち閉めずに開けっぱなし。だけど数日間泊まりで出かける時は鍵をかける。その理由は「鍵をかけておかないと、おすそ分けの魚が勝手に部屋に置かれてしまう」から。

ハフィントンポスト『自殺が少ない地域" の「生きづらさ」を減らす仕組みを探して〜精神科医・森川すいめいさんに聞く』より

 

  • 手を挙げているひとを見つければ、バスは停留所じゃなくても停まる。
    運転手さんに聞いて見ると「バスは自力で移動できない人のためにある。だから手を上げている人がいれば停まれるように、ゆっくり走ってる」

 

  • 櫛を売っていないかとお店で尋ねたら「ない。でもちょっと待って」と、奥のタンスからおばあちゃんの形見の櫛を取り出し、「あげる、持っていって。その方がかえっておばあちゃんも喜ぶから」と気持ちよく渡される。

 

こんな調子で、生きやすい / 暮らしやすいコミュニティーにつながっているさまざまなエピソードが紹介されています。

また、他にも普段あまり考えたことがなかったコミュニケーションの仕組みやあり方に関する考察が、いろいろと出てきます。

 

  • ベンチがあるのは、休みを必要とする人を受け入れているというメッセージ
  • 派閥は作らない。派閥があると迎合しなくちゃならなくなり生きづらいから
  • 「トイレ借りるよ」は許可を求めていない。「勝手に上がるよ」という宣言
  • 雨が降り始めて洗濯物が干してあったら、それが人の家でも勝手に取り込む
  • 困難は「工夫によって何とかなる」のか「努力と根性で乗り越える」なのか
  • 「迷惑かけたくない」と躊躇させてしまうから「どうしますか?」と聞くな
  • 自分が助けたいから助ける。人助け慣れしていけば加減も絶妙になっていく

 

順番はどちらが先でもいい気がしますが、前述の岡さんの『生き心地の良い町–この自殺率の低さには理由がある』とセットで読んだ方が楽しめる、あるいは理解が深まるかもしれません。

 

この本に出てくる「助け合いではなく”助けっぱなし、助けられっぱなし”」という言葉。ちょうど数カ月前に自分の行動指針にしようと思ったものと同じ意味で、すごく嬉しくなりました。

Happy Collaboration!

 

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