定期保全とは

2024年10月29日

共同執筆者

Julie Rogers

Staff Writer

Alexandra Jonker

Editorial Content Lead

定期保全(メンテナンス)とは

定期保全とは、設備、機械、建物、またはシステムの定期的な整備を含む、事前保全戦略の一種です。

定期保全には、資産を良好な状態に保ち、予期せぬ故障を防ぐために継続的に実施されるさまざまな保全作業が含まれます。例として、設備の点検、オイル交換、ゴミの除去などを挙げることができます。これらの作業は企業が高額な緊急修理を回避し、設備の故障を減らし、システムと資産の安全性、効率性、信頼性を向上させるのに役立ちます。

定期保全は一般的に施設の保全、機械、輸送車両や設備といったその他の会社資産に関連するものですが、情報テクノロジー(IT)分野にも適用できます。ITの定期保全には、組織のITインフラの円滑な運用を管理することを目的とする定期的なタスクと手順が含まれ、ソフトウェアの更新、ハードウェアの点検、バックアップ管理、ネットワーク監視などはその数例です。

定期保全の例

定期保全作業は単純な作業であるため、設備のダウンタイムは最小限で済み、保全担当者は専門的なスキルを必要としません。これらの作業は、日々の業務効率を維持し、些細な問題の悪化を防ぎ、より安全な職場作りに役立ちます。

設備とシステムを良好な状態に維持するために必要な定期保全作業は、通常、メンテナンス・チェックリストに含まれています。一般的な定期保全作業には、次のようなものがあります。

  • 暖房、換気、空調(HVAC)フィルターの交換
  • 電気システムの点検
  • 電球の交換
  • ゴミの撤去
  • 設備の潤滑
  • オイル交換
  • タイヤのローテーション

定期保全の種類

定期保全のワークフローは、メーカーの推奨または運用上の必要性に基づいて、一定の間隔(毎日、毎週、毎月など)で行われます。定期保全は以下の3種類に大別され、組織は保全スケジュールを決定する際に参考にできます。

  • 利用基準保全
  • 時間基準保全
  • 状態基準保全(CBM)

利用基準保全

利用基準保全では、資産の使用量メトリクスに基づいて保全スケジュールを決定します。保全部門が将来実施する点検や作業の期日は、資産の平均的な使用状況や環境条件への露出状況を参考にして予測されます。例えば、配送車両では、走行距離1,000マイル(1,609 km)ごとにオイル交換のスケジュールが組まれます。

時間基準保全

暦または時間を基準とする予防保全は、定期的な間隔で行われます。このタイプの保全を実施する組織では、日常的なタスクの作業指示が特定の期日で事前に設定されます。例えば工場では、ピーク時の生産水準で機械を稼働させ続けるために、保全作業員が週に1度ベルトの保全作業を実行するようスケジュールを組む可能性があります。

状態基準保全(CBM)

状態基準保全(CBM)は、資産または設備の監視結果を目安に保全作業が必要な時期を判断する予防保全戦略です。CBMには、センサーなどの監視装置を使用して、設備の性能に関するデータを収集する作業が伴います。アルゴリズム、機械学習、AIを使用した収集データの分析により、保全の問題点や設備の故障を示唆するパターンや異常が特定されます。

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定期保全のメリットとは

定期保全計画には、業種・業務や用途全体で次のようないくつかのメリットがあります。

  • コストの削減
  • ダウンタイムの減少
  • 安全性の向上
  • 信頼性の確保
  • 効率向上

コストの削減

定期保全プログラムには定期的な投資が必要ですが、結果的に、事後保全や緊急保全戦略よりもコストが低くなるケースが大半です。緊急修理はコストがかさみがちで、部品を至急取り寄せる場合や残業を伴う場合もあります。定期保全を実施して問題を早期に検知することで、修理の費用対効果を高め、重大な損傷を防止できます。

ダウンタイムの減少

また、保全を規律に沿って行うことで資産の円滑な運用が徹底され、ダウンタイムの減少につながります。ダウンタイムの減少は、生産性の維持とコストのかかる設備のダウンタイム削減に寄与します。

安全性の向上

定期的な点検と整備は、安全に危害が及ぶリスクの特定に役立つため、そうした体制を整えることで、設備の欠陥やシステム障害によって生じる恐れのある事故や怪我から労働者、機械オペレーター、ユーザーを保護できます。

信頼性の確保

定期保全が実施される資産は信頼性が高く、性能が安定しているため、突発的な不具合が起きる恐れが比較的ありません。計画外のダウンタイムや障害が重大な業務の中断や経済的損失につながる可能性がある業種・業務では、信頼性は非常に重要です。ビジネスにおける信頼性は、製品の品質、顧客満足度・維持率の向上にもつながります。

効率向上

適切に保全された設備やシステムは、最大レベルの稼働効率を維持する傾向にあります。適切に機能するよう整備されたシステムは、エネルギーや燃料の使用量が少なめで、運用コストの削減、使用可能年数の延長、再販価値の向上といったメリットをもたらします。

定期保全と他の保全戦略の比較

定期保全は、資産が故障する前に保全を実施する事前保全戦略です。その他の事前保全戦略には計画保全予防保全予知保全信頼性中心保全などがあります。これらの戦略は、定期保全と似ていますが、以下のとおり明確な違いがあります。

計画保全

計画保全では、資産の維持、修理、交換に必要な保全タスクとリソース(工具やスペアパーツなど)を特定、明示します。計画保全のタスクは、定期保全タスクよりも複雑になる可能性があり、より多くのダウンタイム、専門的なスキル、または詳細な点検が必要になる場合があります。タスクは製造元の推奨事項、設備の使用年数、使用パターン、またはデータ分析に基づいて計画されますが、頻度はそれほど多くない可能性があります。

予防保全

予防保全は、将来の予期しない故障を防ぐために、定期的にスケジュールされた保全活動を完了する行為です。定期保全の目的が業務の円滑な維持にあるのに対し、予防保全の目的は潜在的な問題を故障の発生前に予測し、対処することにあります。

予知保全

予知保全は、状態基準保全を基盤とし、設備の状態をリアルタイムで継続的に評価することで、性能と使用年数を最適化します。固定されたスケジュールに従うのではなく、データと分析を尺度として、保全の完了時期を予測します。対照的に、定期保全は定期的にスケジュールされた作業から成り、現在の状態が考慮されるとは限りません。

信頼性重視保全

信頼性重視保全(RCM)は、設備のアップタイムを最大化しつつ、資産交換の必要性を減らすことにより、保全コスト削減の達成を目指す、カスタマイズされた保全プロセスです。定期保全の目的は定期的な整備にあるのに対し、RCMの目的は信頼性分析と設備の故障の重大度に基づいて保全戦略を最適化することにあります。

定期保全で利用されるテクノロジー

多くの企業は、定期保全などの保全戦略を管理するために、コンピューター化された保全管理システム(CMMS)を使用しています。

CMMSは、保全データと情報の一元管理用ソフトウェアであり、他の方法では時間がかかる保全業務プロセスを合理化するのに役立ちます。主目的は、作業指示管理、リソースと作業者の監視、レポート、分析、監査などの機能を含めた保全タスクをスケジュールし、能動的に保全を管理することにあります。

CMMSは、組織の企業資産管理(EAM)の構成要素です。EAMは、運用資産と設備を維持および管理するソフトウェア、システム、およびサービスを組み合わせたものですあり、ライフサイクル全体を通じて資産の品質を最適化し、生産的なアップタイムを増加させ、運用コストを削減することを目的とします。